やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
「ウヌ、清麿、お魚売り場は1階なのだ!」
大海に引っ張られるようにして皆に追い付いた後、2階に移動するためにエスカレーターに乗ろうとしたところでガッシュが食品売り場の方を指さしながら叫ぶ。どうやら、モチノキデパートは1階のほとんどが食品売り場であり、2階より上に雑貨や服屋が展開されているようだ。もちろん、今回の目的はサンビームさんの引っ越し祝いを買うことなので用があるのは2階より上のフロアだ。完全に魚目当てだな、こいつ。この前もブリのロケットを追いかけて誘導されたらしいし。
「まずは引っ越し祝いの贈り物! 食材はいたむから後」
「食材も買うのか?」
高嶺の言葉に渋々といった様子でついてくるガッシュを尻目に疑問をぶつけた。てっきりお祝いだけ買って終わると思っていたのだが。
「ああ、引っ越し作業でご飯の用意する時間もないだろうから。サイが来てくれてホントに助かったよ」
どういうことだ、とサイに視線を向けるが彼女はティオと何を買おうか話していたので無視されてしまった。なんだよ、絶対に知っていただろう、お前。なんで教えてくれないんだよ。
「こんな大人数の食事を作るのは大変だろうから水野にも応援を頼んだけど……」
そう言いながら大海に話しかけられてガチガチに固まっている水野を見る高嶺。その顔にははっきりと不安と書かれていた。そんなに不安になるなら呼ぶなよ。正直、サンビームさんと水野は無関係だろうに。
「まぁ、サイがいれば何とかなるだろ。あの由比ヶ浜……知り合いの飯マズもサイの指導でマシになったし」
「め、飯マズ?」
「料理が下手ってことだ」
「あ、ああ、そういうことか……でも、水野の場合、飯マズというか、包丁さばきしか自信がないというか」
包丁さばきに自信があるとか物騒すぎませんかね。むしろ、何故、包丁さばきに極振りしちゃったんだよ。もっと他にも上げるべき料理スキルあっただろ。味付けとか。
そんな話をしている内に台所用品など比較的引っ越し祝いに向いていそうな物が売っているフロアに着いた。
「ところで、清麿君、予算はどれくらいなの?」
「大体2千円前後かな?」
エスカレーターで話していた流れで自然と高嶺と並んで歩いているといつの間にか俺の隣にいた大海が高嶺に質問する。さっきまで水野と話していたはずだが、彼女を放置していてもいいのか? そう思いながら後ろを振り返ると案の定、水野は大海と高嶺を交互に見て呆然としていた。
「ハチマンハチマン」
「なんだ?」
その時、水野の隣にいたサイに呼ばれ、水野と入れ替わる形で彼女の元へ移動する。サイは久しぶりに会ったからか嬉しそうに甘えてくるウマゴンを撫でていた。てか、ウマゴンをデパートに入れてもよかったのだろうか。今のところ、店員には注意されていないが問題になりそうで少し不安だ。
「コマチのプレゼントも買うんでしょ? どんなものにしようか考えてる?」
「あー……いや、まだだけど」
「じゃあ、あとで一緒に選ぼうね」
今日、小町へのプレゼントを選ぶことは話していないのだが彼女にはお見通しだったようだ。もうこうなったらサイに任せちゃおうかな。小町の好きな物とか俺より知っているし、変に高い物は選ばないだろう。信じているぞ、サイ。俺の懐事情はお前のセンスと良心にかかっている。
「清麿。サンビームさんへの贈り物は私に任せてはくれぬか?」
財布の中身を思い浮かべていると高嶺に話しかけるガッシュの声が耳に届き、自然と視線が彼らの方へ向いた。どうやら、ガッシュはプレゼント選び――というより、買い物をしてみたいらしい。そんな彼に続く形でウマゴンとティオもプレゼント選びに立候補し、言い争いが始まってしまう。
「わかった、わかったから! じゃあ、お前たちが選んできたもので一番良かったものを引っ越し祝いにする。それでいいな?」
さすがに他の客の迷惑になると判断したようで高嶺は『サンビームさんへの引っ越し祝い選び選手権』の開催を宣言した。きっと、ガッシュたちも自分が選んだ物をサンビームさんに送りたいのではなく、プレゼント選びそのものをしてみたいだけだし、選ばれなくても満足するだろう。子供が選んだ物なら変な物でもサンビームさんなら喜んで受け取るはずだ。俺たちは小町のプレゼントを選ぶことに集中しよう。
「わ、私も! 私も探すわ!」
「あ、ああ……」
しかし、話がまとまりそうだったのにいきなり水野が参加すると言い始めた。高嶺も戸惑った様子で頷いている。なんかややこしいことになってきたな。
「恵ちゃん!」
「ん? 何?」
「ま、ままま負けないんだから!!」
……いや、本当にややこしいことになってきたぞ。大海は参加すると言っていないのに何故、水野は彼女をライバル視しているのだろうか。めちゃくちゃ必死だし。
「……よし。じゃあ、私も参戦よ!」
「え? 恵さんまで!?」
ライバル視されたからには参加しなければ、と言わんばかりに大海も参加を決意した。まさか引っ越し祝いを選ぶだけでこんな大事になるとは思わなかったのか、高嶺は『どうしてこうなった』と頭を抱え――縋るように俺たちの方へ顔を向けた。そんな顔しなくても俺たちは不参加だよ。小町へのプレゼント選ぶのに忙しいから。
「え、やだよ」
高嶺たちと別れ、別のフロアへとやってきた俺たちは早速、小町へのプレゼントを選ぶことにしたのだが、サイに全部任せる作戦は本人たっての希望により拒否されてしまった。
「送りたい人が送る人のことを考えながら選ばなきゃ駄目でしょ。それに今回のプレゼントは特に重要なんだからハチマンが選ばきゃ意味がないの」
「そうは言っても全然思いつかないんだが」
「まずは色々見て回ろうよ。アドバイスはしてあげるからさ」
「……はぁ」
俺の手を引いてプレゼントに良さそうな物を見て回るサイの背中を見てため息を吐いてしまう。こんなことなら素直に小町に欲しい物を聞いておけばよかった。あの日は色々あってそれどころではなかったし、次の日から特訓が始まったので今朝まですっかり忘れていたのである。
「予算はどれくらい?」
「一応、諭吉は連れてきたけど」
「うーん……それだと服はちょっと厳しいかな」
「は? 服だぞ? 諭吉いれば買えるだろ」
「ハチマンの服なら何着も買えるかもしれないけど女の子の服は高いんだよ? 諭吉ひとりじゃ心もとないでしょ」
『わかってないなぁ』と肩を竦めたサイは近くの服屋に入って1つのワンピースを手渡してきた。そして、ワンピースの値札を見てすぐにサイに返す。やばい、女の子の服やばい。ふえぇ、こんなの諭吉1人じゃ太刀打ちできないよぉ。
「まぁ、今のは高い方だし、もちろん安いお店もあるよ? ただ服は自分で選びたいと思うし、今回はやめておこっか」
「あ、ああ……頼む」
それから俺たちは店内を歩き回ったが目ぼしいものは見つからず、とうとう大海から電話が掛かってしまった。時間切れらしい。先ほどのフロアに戻って来て欲しいと言われ、サイと手を繋いで戻ってくると高嶺と水野が向かい合って何かしていた。なんか『ブィー』と妙に腹の立つ間抜けなブザー音が聞こえる。
「なに、してんだ?」
「……ウソ発見機らしい」
「つ、次! 次の質問!」
おそるおそる高嶺に話しかけるとどこか死んだような顔でそう言った後、水野の質問に『イイエ』と答えていた。そして、再び『ブィー』というブザー音が鳴る。うわ、うさんくさ。絶対、信憑性ないだろ、これ。でも、水野があまりに必死に高嶺に質問をしていたので止めるに止められなかった。
「なぁ、あれいつから?」
『ブィー』、『ブィー』と鳴り続けるウソ発見機を指さしながら少し離れた場所にいた大海に問いかける。彼女も水野の剣幕に止めることができなかったのだろう。もしかしたら俺たちを呼び出したのはこの状況をどうにかして欲しかったからかもしれない。
「え、えっと、かれこれ15分くらい?」
「暇かよ」
「あ、あはは……でも、ちょっと楽しそうかも。ねぇ、ちょっとだけ試し――」
「――だああああああ! いい加減にしろ! 早く真面目に引っ越し祝いを探せ!」
「ご、ごめんなさああああい!」
大海の言葉を遮るように絶叫した高嶺。さすがに限界だったようだ。怒られた水野は謝りながらウソ発見機を持って引っ越し祝いを探しに駆け出した。
「まだ時間かかりそうだな……で、なんか言ったか?」
「う、ううん、何でもない! 私も探して来るね!」
話の途中だったので続きを聞こうと思ったが大海は両手をブンブンと振った後、逃げるようにプレゼントを探しに行ってしまう。なんだったんだ、一体……というかせっかく、集合したのにまたバラバラになったらここに来た意味がないだろうに。
「……ヘタレ」
「え? 何が?」
「べっつにー? それよりコマチのプレゼント探さなきゃ。プレゼントは気持ちって言うけどやっぱりコマチが喜んでくれそうな物がいいよねぇ……何かないかなぁ」
小町が喜ぶプレゼント、か。俺が知っている小町が好きな物で、諭吉1人で用意できる物。そんなものがここにあるのだろうか。そうだ、引っ越し祝いのついでに大海にも選ぶのを手伝ってもらえば――。
「……あった」
「ハチマン?」
「あったぞ。小町が絶対に喜ぶ上、上手くいけば数百円で手に入るプレゼント」
それに加え、価値は諭吉数人分にも跳ね上がる、とっておきのプレゼントだ。さて、そのためには色々と準備が必要である。きっと、彼女のことだ、喜んで協力してくれるだろう。
今週の一言二言
・FGOでやっとBBきました。いやぁ、よかったよかった。これで私の夏は終わりました。さぁ、秋はネロ祭とハロウィンですね。今年もネロ祭は開催されるのでしょうか。