やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
一応、弁解させていただきますとクリスマスイベントの時点で清麿が八幡のやり方を否定していますし、そもそも八幡のやり方自体、清麿たちの前でほとんどしたことがなく、否定も肯定もできない状況だったりします。
もちろん、恵はガッシュサイドの中で最も俺ガイルサイドのお話に関わっていますので八幡のやり方について知っていましたが、それすらも全てが終わった後に聞かされただけなので止めることもできませんでした。
その点に関して今回のお話で改めて説明しますのでご了承ください。
「はぁ……はぁ……オイ、どうする? 本、の持ち主呼んで戦うか?」
「はぁ……はぁ……い、いや……できれば今日はもう、戦いたくないのだ」
「……よし、そうしようか」
「ウヌ……」
巨大な岩を地面に降ろしたテッドとガッシュはその場で寝転がり、夕焼けによって赤に染まった空を見上げながら停戦協定を結ぶ。『優しい王様』を目指しているガッシュはよっぽどの理由がない限り、自分から戦いを挑むことはなく、テッドもまた今まで出会ったことのないタイプの魔物に興味が湧いたのである。
「よお、オレはテッド。お前は?」
「ウヌ、ガッシュ・ベルなのだ!」
だからだろう、疲労困憊の体を必死に動かしながら自己紹介をした時点で2人の中で先ほどまで燃え上がっていた怒りの炎は鎮火されていた。それどころか、河原で殴り合いをした後の男たちのような不思議な友情が芽生え始めている。
「そうか……ハハ……
「ヌ? そうなのか?」
「当たり前だろ? 普通、出会ってすぐに本をかけて戦うじゃねぇか?」
「ウ、ウヌ、しかし私は――」
千年に一度、行われる魔界の王を決める戦いのルールは“バトルロワイヤル”。100人の魔物の子供が1人になるまで戦いは終わらない。だからこそ、魔物たちは生き残るために本を燃やし合う。どんなに仲良くなっても最終的には戦わなければならない運命にあるのだ。
もちろん、ガッシュもいずれ仲間たちと戦わなければならなくなることは理解している。しかし、だからといって仲良くしてはならないわけではない。むしろ、『優しい王様になってこの戦いを繰り返し行わせない』というガッシュの目的は彼本人が魔界の王様にならなくても仲間の誰かが王様になれば達成される。
つまり、ガッシュに限っていえば彼の願いに賛同してくれる仲間が増えれば増えるほど目的が達成される確率が上っていく。もちろん、彼の仲間たちが最後まで生き残り、戦う羽目になったとしてもガッシュの願いは確実に叶うのである。
だからこそ、ガッシュは向こうから攻撃を仕掛けて来ない限り、魔物と出会ってもいきなり戦うことはしない、テッドの発言とは真逆の珍しい魔物だった。
「――そうだ、滅多にない機会だから聞いておこう」
しかし、説明する前にテッドがベンチに腰掛けた途端、隣に座ったガッシュへ顔を向ける。彼の表情はどこか必死に見え、ガッシュは思わず口を噤んでしまう。
「お前、『チェリッシュ』って魔物、知らねぇか!? そいつを探してんだ! 女の魔物で帽子被っててよ! 髪がいい匂いでウェーブがかかってんだ!」
テッドの言葉を聞いてすぐに今までに出会った魔物を思い出すガッシュ。しかし、『チェリッシュ』という名前に聞き覚えはなく、彼の言った特徴を持つ魔物も見たことがなかった。
「ウ、ウヌ、わからぬのう……」
「そうか……見たことねぇか……」
首を振るガッシュを見てテッドは肩を落とす。これまでチェリッシュを見つけるために世界中を旅していたのに見つかるどころか情報すら一切、集まらなかったのでそこまで期待していたわけではなかった。だが、心のどこかでもしかしてと期待していた自分もいたため、落胆は大きかった。
「……仲良し、なのか?」
「ああ……仲良しっつうか。オレの唯一の家族みてぇなもんだ、親父もお袋もいねぇオレにとって……あいつだけはオレにとってとても大切な奴なんだ」
そう語ったテッドを見てガッシュは目を見開く。まだ出会って間もないが彼の言葉にはどこか重さがあることに気付いた。そして、魔界にいた頃の記憶がないガッシュもテッドの気持ちが少しだけわかってしまう。彼も父親と母親の顔を思い出せないから。
「あーあ……こんなことなら魔力感知も教えてもら――」
「――ウヌ、私も……」
「あ?」
「私も魔界にいた頃の記憶をなくしてしまっておる。私も父親も母親の顔も全くわからぬのだ。だから、その者がとても大切な人というのはわかるのだ!」
魔界にいた頃、少しの間だが一緒に時を過ごしたむかつく女の顔を思い出しながら悪態を吐くテッドを遮ってガッシュは落ち込んでいるテッドを励まそうと必死に言葉を紡ぐ。
「……」
ガッシュの言葉が落ち込んでいる彼を励ますための虚言ではないことをテッドは本能的に理解していた。ガッシュと同じように彼もその言葉に重みを感じたからである。
パートナーであっても他人に変わりはない。他人の感情を共感できるのは同じ体験、または似たような経験をした場合に限る。そう、一緒に旅をしているジードでさえテッドの事情を知っているが理解まではできないのだ。
つまり、人間界に来てチェリッシュを探しながら魔物と戦い続けてきたテッドにとってガッシュは初めて自分の気持ちを共感してくれた人物だった。
「……よぉ、手ぇ出しな。ガムやるよ」
「ウヌ!? 本当か!?」
だからだろうか、気付けば彼は全財産であるガムをポケットから取り出していた。ガッシュも何の疑いもなく、ガムを受け取るために嬉しそうに右手を差し出すとポトリとガムを落とす。その瞬間、ガムごとガッシュの手を掴んだ。
「ヌ!?」
「……」
まさかいきなり握手されるとは思わなかったガッシュは困惑した様子でテッドへ視線を送るが当の本人はそっぽを向いているため、テッドの真意を探ることはできなかった。
「何をやっているテッド!!」
「イテェ!?」
だが、その握手もすぐに終わった。テッドのパートナーであるジードが彼の後頭部を本気で殴ったからである。後頭部を擦りながら後ろを振り返ったテッドが見たのは腕を組んで彼を見下ろしているパートナーの姿だった。
「宿はどうしたよ」
「う、うるせぇ! 今探してるとこだよ!」
「嘘つけ! 公園にいるってこたぁ、野宿の準備してるってことだろ!?」
「ちがわい! 本当に宿は……ん!?」
「……ヌ?」
今夜、ガッシュの家に2人のお客様が訪れることが決まった瞬間である。
すっかり太陽も沈み、ガッシュのパートナーである高嶺 清麿はビデオテープを片手に夜空に輝く星を眺めながら帰路についていた。いつもならば部活動に入っていない彼の帰宅時間は夕方ぐらいだが、今日ばかりはクラスメイトである岩島の家に寄ったため、帰宅が遅くなっていた。
(さすが岩島だ。UFOの研究をしてるだけあって一昨日のニュースを録ってあったぜ)
手の中にあるビデオテープを見てすぐに一昨日のことを思い出す。
あの建造物がテレビの画面に映った時、それを見たサイは手に持っていたペットボトルを落とすほど動揺していた。きっと、彼女は何か知っている。だが、あの時のサイの様子を見るにあの建造物ではなく、
そして、彼女が気付いた何かは彼女の過去に関わっている。八幡からサイは自分の過去について語りたがらないと言っていたのを思い出し、そう結論付けた。
(でも、それ以上に……)
清麿が気になっていたのはサイよりも八幡の反応だった。あの建造物の映像が流れた時、一瞬だけ八幡が目を見開いたのを清麿は見逃さなかったのである。しかも、彼の驚き方は建造物そのものに驚いたのではなく、
問題はそれを八幡が清麿たちに報告しなかったこと。そして、サイが八幡に視線を送っていなかったこと。
どこであの建造物に関する情報を得たのか知らないが報告しなかったのは何かしらの理由がある、と思いたい。そうでなければただ単純に八幡が清麿たちを信用していないから話さなかったことになる。また、サイが八幡から何か聞かされていたのなら何かしらのアクションを起こすだろう。しかし、あの時、そういった反応は2人の間に見られなかった。
「……はぁ」
ため息を吐いた後、再び夜空を見上げた。思い出すのは去年の総武高校と海浜総合高校の合同クリスマスイベント。あの時、初めて清麿は八幡の異常な依頼の解決方法を目の当たりにした。事前に大海 恵から八幡の危うさについては聞いていたのだが、まさかあれほど酷いものだとは思わなかったのである。
彼の解決方法は基本的に自分のことを計算に入れていない。自分が傷つくことで誰かが助かるのなら自ら傷ついてしまう。そんな自己犠牲ありきの解決方法。
また、千年前の魔物たちとの戦いでデモルトと戦っていた時もそうだ。彼らは戦況を確認した瞬間、2人だけで時間稼ぎを買って出た。攻撃呪文を持っていない彼らは危険を顧みず、自らあの化け物へ立ち向かった。
もちろん、あの時はああすることがベストだった上、何を言ってもサイがすでにデモルトの方へ向かっていたので止めても無駄だとわかっていた。清麿自身も可能な限りデモルトに近づいてガッシュに指示を出していたがデモルトの視線は常にガッシュたちに釘付けだったし、自分が狙われないように立ち回っていた。
しかし、八幡は違う。魔物であるサイはともかく、サイの術で強化されていたとはいえただの人間である八幡が何の躊躇いもなくデモルトへ近づき――あろうことか、サイが吹き飛ばされた時、彼女を守るためにデモルトへ投石して気を引いた。パートナーを守るために自ら囮になったのである。きっと、術で強化されていたとしてもデモルトの一撃を受ければ確実に死んでいた。それがわからない八幡ではない。
八幡とサイがずっと願っていた『共に戦う』という異常な戦い方。それが悪いとは言わない。むしろ、魔物と人間がお互いに守り合う姿にどこか憧れを感じてしまう自分もいる。どんなに頭が良くても清麿自身に戦う力はない。彼にできることはガッシュを勝利へ導く方程式を組み上げるだけ。だからこそ、八幡とサイの関係は最も歪で美しいものだと思えた。
だが、それと同時に清麿の目には2人の関係がどこか危うく見えた。肩を並べて戦うということはどちらかが潰れればその途端、破綻してしまう。どちらかの心が折れたらその時点で負けてしまう諸刃の刃に近い戦い方なのだ。つまり、八幡がやられた瞬間、サイの負けも確定してしまうのである。
お互いにお互いを信頼することはとても素晴らしいことだと思う。でも、背中を預けるにはあまりにお互いのことを知らな過ぎる。サイが自分の過去を話さないのも、八幡が清麿たちはもちろん、サイにも手に入れた情報について話していないのも彼らの背中を預け合う戦い方と相反する行動。信じていると言っておきながら本当に重要なことは話さない矛盾。
それが今後、2人の身を危険に曝すのではないか、と清麿は常日頃から気にしていたが一昨日の出来事でその予感は更に強まった。
「ただいま」
しかし、だからといって清麿にできることは少ない。清麿が八幡とサイに何か言ってもどうにかなるとは思えない。他人に言われてすぐに変わるのならすでに解決しているだろうから。
(とにかく、俺にできることをしよう。まずはこれをダビングしてナゾナゾ博士に……)
2人の歪な関係についてはチャンスがあれば諭す程度に留め、一先ずあの建造物について調べることが最優先。情報はあればあるほど仲間を危険に曝す可能性が低くなる。それは2人を守ることに繋がるのだ。
「……ん? そういえば靴が多いな。お客さんか?」
家に着き、靴を脱いだ時に玄関に置かれていたそれの数が多いことに気付いた清麿はそうぼやきながらリビングへと入る。
「清麿、お客さんよ。ガッシュちゃんのお友達」
「よっ!」
「……」
「ウヌ、今日、
そこにいたのは金髪リーゼントの子供と図体のでかい外人がリビングにいた。子供の方は人懐っこい笑顔を浮かべて挨拶したが外人はどこか気まずそうに清麿のことを見ている。
「……こんばんは」
「こ、こんばんは」
外人とぎこちない挨拶を交わしながら謎の巨大建造物のことや八幡たちのことも気になるがまずはガッシュに今の状況を聞くのが先だとため息を吐く清麿であった。
今週の一言二言
・FGOでネロ祭の情報が出ましたね。今回は英雄王が……なんというか今年も大荒れしそうですね。