やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
4月からきちんと返信しようと思います。
また、今までの感想ですが返信せず、新しい感想に返信しますのでご了承ください。
俺たち3人が同時に呪文を唱えるといきなりモモンの耳が大きく伸びた。それはもうビョンという効果音が付きそうな勢いで彼の身長の2倍以上の長さまで伸びたのである。
それに対し、両手を真上に掲げているティオの頭上に『サイフォジオ』に似た剣状の何かが出現した。『サイフォジオ』は水晶とその周りに羽のような装飾が施されており、対象に刺した後、回復中、その羽の部分が水晶の周りを回転していたが、今回の術――『チャージル・サイフォドン』はその水晶と羽の部分に女性の顔があり、刀身部分を両手で掴んでいる。また、顔の下にはこれまた水晶がはめ込まれ、顔と刀身を掴む手は翼のような装飾部分から伸びていた。
そして、肝心のサイの新呪文、『サルジャス・アグザグルド』だが、『サウルク』や『サグルク』のように彼女の体はオーラには包まれていないので肉体強化ではない。しかし、『サフェイル』のように羽も生えず、何も変化は起きていなかった。まさか不発? 確かガッシュの『ジケルド』は磁石にくっつく物が周囲になければ発動自体しなかったと聞いたが『サルジャス・アグザグルド』も何か発動の条件が――。
「ハチマン、なんか出てきた」
そう思っていた矢先、こちらを振り返ったサイの手には何やら直径30cmほどの群青色の円盤が握られていた。厚さは1cmもなく、投げやすそうではあるがこの円盤を使ってどう戦えばいいのだろうか。フリスビーのように投げて攻撃するとか?
「ウヌ!? 清麿、あの者の耳が動き始めたぞ!」
サイと二人で円盤を眺めながら首を傾げていると不意にガッシュの大声が耳に届いた。慌ててモモンの方へ視線を戻すとそこには伸びた耳をヘリコプターのプロペラのように回し始めたモモンの姿。そのままゆっくりと体が浮かび上がり、高度を上げながらこちらに背を向け、この場から逃げ出した。まさかの展開にシスターも慌てた様子でモモンの名前を叫んでいる。
「に、逃げた!? こっのぉ!!」
さすがに空を飛んで逃げるとは思わなかったのか、サイが動き出したのはすでにモモンの姿がそれなりに小さくなった頃だった。ティオの親友発言で冷静さを欠いていた彼女は全く用途のわからない『サルジャス・アグザグルド』を円盤投げの要領でモモンへと投擲。
「っ!?」
しかし、『サルジャス・アグザグルド』は術によって生み出された円盤だったのでモモンの『魔力探知』に引っかかったのかギリギリのところで体を捻られて円盤は回避されてしまう。そのまま『サルジャス・アグザグルド』は公園の奥に生えている林の中へと消えていった。え? 結局、『サルジャス・アグザグルド』ってどんな術だったの?
「は、ハチマン! 次、次の呪文!」
「お、おう……えっと――ッ!?」
サイも投げた後も何も反応しないとは思わなかったようで次の呪文を使うようにせかし始める。だが、その言葉に従い、もう片方の新呪文を唱えようとした瞬間、ティオの方向――具体的に言えば彼女の頭上に佇んでいた『チャージル・サイフォドン』から凄まじい
「ォ……ォオ……オオオオオオオオォ」
ティオが低い声でうなり声を漏らす中、『チャージル・サイフォドン』の顔が目を開け、その胸の水晶部分に何かが映し出されている。どうやら、モモンがティオのスカートを捲っている絵のようだが、見覚えがないので俺と大海が合流する前の出来事なのだろう。そして『チャージル・サイフォドン』の顔が怒ったように顔を歪ませる。
それから次から次へと水晶部分にこれまでティオが受けた恥辱が映し出され、その度に『チャージル・サイフォドン』の顔が、形が、
そう、『チャージル・サイフォドン』はこれまでティオが受けた恥辱、屈辱、憎しみ、痛みなどの『負の感情』が術の力に加算され、大きくなっていく
「ハチマン!? 大丈夫!?」
浮足立っていたサイだったが俺の異常に気付き、駆け寄って俺の体を支えてくれた。もし、『サジオ』のコントロールができていなければ気絶していただろう。それほど『チャージル・サイフォドン』は恐ろしい術だった。
「あ、ああ……なん、とか……」
さっきはティオの魔力で吐血してしまったがあれのおかげで『チャージル・サイフォドン』発動時も『サジオ』の出力は全開だったので命拾いしたのだ。震える声でサイに返事をしながら再び『チャージル・サイフォドン』を見れば最初は彫刻のように無機質なほど綺麗だった女性の顔は見る影もなく、頭から角が5本ほど生え、鋭い牙をいくつも口の隙間から覗かせている。術そのものも大きくなっているし、まさに怪物のようだ。パートナーである大海を含め、『チャージル・サイフォドン』を見た人はその恐ろしさにガタガタと震えていた。
「それ、じゃ……次の呪文、行くぞ」
「で、でも……」
「てか、早、く終わ、らせなきゃ、俺が死ぬ。第九の術、『サルド』」
『チャージル・サイフォドン』の
「行って!」
サイは『サルド』の両端を両手で掴み、右端をモモンに向かって投げた。すると、1メートルしかなかった『サルド』は不自然なほど伸び始め、左端をサイの左手に残しながら凄まじい勢いでモモンへと迫る。
「キキッ!?」
再び、魔力を帯びた物体が迫ったからかモモンが悲鳴を上げ(すでに彼は遠いところまで逃げていたので微かにしか聞こえなかった)、その身を翻し、『サルド』を躱した。
「逃がす、わけないでしょ!」
だが、『サルジャス・アグザグルド』の件もあり、躱されることぐらいサイは予想していたようで伸ばした『サルド』を右手で再度、掴んでグイっと手繰り寄せるように引っ張る。するとどこまでも伸び続けていた『サルド』の右端の先端がUターン。そのままモモンの体へ巻き付き、瞬く間にグルグル巻きにしてしまった。
第九の術、『サルド』。群青色の綱で対象を捕縛する呪文。サイの手によってコントロール可能であり、なにより
「捕まえたっ……ティオ!」
「ジェヤアアアアアアアアアアアアア!!」
「キ、キキィ!?」
サイの合図にティオが獣のような雄叫びを上げながら両腕を振り下ろし、『チャージル・サイフォドン』をモモンへ投げる。どうにかして『サルド』から抜け出そうともがく彼だったが迫る『チャージル・サイフォドン』に気づいて目を大きく見開くが『サルド』で身動きが取れない現状、回避できるわけもなく、そのまま直撃して絶叫した。その直後、
「これで一件落着、かな」
『チャージル・サイフォドン』がモモンに直撃する直前に『サルド』から手を放していたサイは立ち上がろうとする俺の体を支えながらホッと安堵の溜息を吐く。確かにティオから放たれていた『負の感情』が乗った魔力もなくなっているし、モモンにもきついお仕置きができたので終わりなのだが、無関係でありながら被害を受けた俺的にはもう少しあのエロザルが酷い目にあって欲しいと思ってしまうのは仕方ないと思う。
そんなことを考えていたからだろうか、『チャージル・サイフォドン』を受けて林の方へ墜落し、消えていくモモンの姿を眺めていると少し遠くの方から『ピー』という機械音が聞こえ――。
「キキィイイイイイ」
――群青色の衝撃波が突如として発生し、林の向こうへ消えたはずのモモンが再び、大空へと打ち出された。
「……は?」
「え? 何? なんなの、今の」
「あの方向って……サイが投げた円盤が落ちた方向?」
「ウヌ? では、あれはサイの術によるものなのか?」
まさかの事態に混乱する中、俺はティオの言葉を思い出していた。
――あのサルを捕まえて、ぶっ飛ばして、この世から葬り去るの。
もし、この言葉をサイが鵜呑みにしてそのまま術に反映されたのだとしたら『捕まえる』術である『サルド』。そして、『ぶっ飛ばす』術は『サルジャス・アグザグルド』ということになる。
ぶっ飛ばす効果。
円盤状の術。
あの『ピー』という機械音。
投げても何も反応せず、モモンが林の中へ消えてから発生した群青色の衝撃波。
もし、林の中に落ちたモモンの傍に『サルジャス・アグザグルド』が落ちていたのなら。
この観点を考慮し、俺の持つ知識の中に該当するものは――。
「――地雷?」
第十の術、『サルジャス・アグザグルド』は地雷型の
新呪文については次回、解説します。