やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.220 第一の関門は順調に中盤戦を終える

「フォルゴレ、お前なんてことを!?」

 キヨマロはフォルゴレの胸倉を掴みながら絶叫する。あの骸骨の問題に1人でも間違えたら胃液に落とされるのだ。ここはみんなで相談して答えを出すべきだった。仕方ない、一か八か。私とモモン、機動力の高いウマゴンで脱出を試みるしかない。ハチマンはすでに魔本に心の力を注いでいる。なら、優先すべきは飛ぶまでに予備動作の必要なモモン。その後にサンビームさんに声をかけてウマゴンを強化してもらえばギリギリ間に合うかもしれない。

「シスター! 空を飛ぶ術を――」

「――正解!」

「……は?」

 私の言葉を遮るように叫んだ骸骨にフォルゴレ以外のみんなが素っ頓狂な声を漏らしてしまう。正解、ということはこの骸骨は『ウンコティンティン』というふざけた名前なのか?

「さっきフォルゴレくんが私を『ドクロ』と言った時、私は『 NO(ちがう)、ウンコティンティン』と言った。すなわち、私は『ドクロ』ではない。『ウンコティンティン』ということだ」

「……」

 うん、そうだね。その通りだよ。むかつくぐらいの正論だ。キヨマロも真顔のまま、フォルゴレの胸倉から手を放し、ハチマンは溜息を吐きながら魔本に心の力を注ぐのを止める。なんというか、おそらくみんな同じような気持ちなのだろうと簡単に察した。

「賢者よ、こちらへ」

「ウハハーイ」

 私たちの気持ちに気づかなかったのか、骸骨――ウンコティンティンは手に持っていたリールのようなものを下げ、フォルゴレに掴まるように言う。フォルゴレも第一の関門を突破できたことを喜びながらリールに掴まるとすごい勢いで下へと降りていく。出口は下にあるのだろう。

「……あの、出口が見えませんが?」

 だが、そう簡単にこの部屋から出してもらえないようで下を覗くと胃液の水面ギリギリの場所でフォルゴレは立ち往生していた。見れば出口などどこにもない。

「みんな正解したら現れる。言ったはずだ、全員答えられねばここは通さん、と」

「ヒィイイ!? 胃液の蒸気でズボンが溶けてる! みんな……みんな、私を救っておくれぇ!」

「フォルゴレー!」

「……」

 勝手に答えて、勝手にリールに掴まって、勝手にピンチに陥ったフォルゴレに対して私は呆れ以外の感情を抱けない。とりあえず、道の端で眼下にいるフォルゴレに手を伸ばしているキャンチョメの首根っこを掴み、安全な場所まで移動させた。キャンチョメなら手を滑らせて落ちてもおかしくない。

「では、次の問題だ。山本山、逆さまに読むとなんて読む?」

 ウンコティンティンは騒ぐ私たちにお構いなしに次の問題を口にした。てっきり、魔界に関する問題を出すと思っていたがそんなことはなかったらしい。『山本山』など完全に日本語である。

「キャンチョメ、答えを教えてやる」

 油断はまだできないが拍子抜けしてしまい、脱力しているとこの問題を逃すとキャンチョメが答えられない可能性があると判断したのか、キヨマロがキャンチョメに声をかけた。

「知ってるよ、『山本山』だろ?」

「違う、『まやともまや』だ」

「え……ま、『まやともまや』?」

「正解!」

 答え、教えてもいいのか。そう思っているとウンコティンティンは徐に右手を動かし、モモンを指さす。まさか、答える人を指定することもある? 運が悪ければ指定された人が答えられず、みんな溶かされ――。

「ウサギとサル、どっちでもないお前はなんだ?」

「……モモン」

「正解!」

 ――そこまで心配しなくてもいいらしい。思えば答える人を指定されても答えを教えていいならそれだけで解決である。

「おい、ウンコティンティン」

 キャンチョメとモモンがリールに掴まりに行くのを見送っているとキヨマロがウンコティンティンに話しかけた。何だろうとキヨマロの顔を見ると彼はもうどうでもよさそうな表情を浮かべている。『警戒して損した』と言わんばかりの顔だった。

「なんだ?」

「なんの捻りもないが、それでいいのか?」

「黙れゴミムシが! 私が神だ」

 それでいいらしい。私もどうでもよくなってきた。

 それからウンコティンティンは次々に問題を出し、みんなも柔軟に頭を働かせて答えていく。いや、ガッシュへの質問など『お前の好きな食べ物』だったので正直、適当に聞いているとしか思えなかったが。

(でも……どうしよっかな)

 問題に答えるのはいつでもできる。だが、私の場合、鬼門はあのリールだった。正解した人はあのリールに掴まり、全員が答えられるのを待つシステムだ。その間、下にいる人はこちらの様子を窺うために見上げている。つまり、ワンピースを着ている私の足が下にいるみんなに見られてしまうのだ。別にパンツを見られるのは構わないが、足を見られるのがまずいのだ。誰も答えられないような問題が来たら仕方ないが、できれば最後に答えたい。そういえばメグちゃんもティオもシスターも問題に答えてしまったがパンツを見られるのは気にしないのだろうか。下にはあのエロ魔物のモモンがいるのに。

「さて、そろそろお前の番だ。ゴミムシめ、気に食わないお前にはこの問題だ」

 そんなことを考えていると気づけば残っているのは私、ハチマン、キヨマロ、ウマゴンになっていた。そこで次にウンコティンティンに目を付けたのはキヨマロだ。何故かは知らないがウンコティンティンはキヨマロを毛嫌いしている。自分よりも頭がいいと本能的に理解しているのだろうか。

「では、問題。829,735×961,527は?」

 今までふざけた問題ばかりだったのに対し、キヨマロに出した問題は6桁同士の掛け算だった。計算機などがない今、頭の中で暗算するしかない。きっと、メモを使った筆算もキヨマロを毛嫌いしているウンコティンティンは認めないだろう。

「わはは、ゴミムシが! どうだ、答えられまい? みんな揃って死ぬが――」

「――797,812,605,345だ」

 だが、キヨマロは天才である。6桁同士の掛け算の答えなど暗算で簡単に導き出してしまった。

「……」

「……」

「……もう一回、言ってみろゴミムシよ。適当に言っても二回同じ答えが――」

「――797,812,605,345だ、ウンコティンティン。どうした? これが正解かも計算できんか? ウンコティンティン」

 よほど鬱憤が溜まっていたのだろう。キヨマロが『ウンコティンティン』と叫ぶ度にウンコティンティンは涙目になっていく。キヨマロの言うとおり、6桁同士の掛け算を暗算でできないのだろう。問題を出す最低の条件として出題者は答えを知っていなければならない。だからこそ、ウンコティンティンは言い返せないのだろう。

「おい、聞いているのか、ウンコティンティン! さぁ、ウンコ――」

「――掴まるがよい、賢者よ!」

 言い返せないからこそキヨマロの答えが正解かわからない状況でも正解にしなければならない。キヨマロはどこか腑に落ちない様子だったがこれ以上、ウンコティンティンの機嫌を損ねて胃液に落とされてはたまらないので大人しくリールに掴まった。

「フン、今のが正解なのは一瞬でわかったわ! ウンコティンティンがゴミに負けてたまるか! 次の問題、世界最大の動物は?」

「……それは大きさって意味か?」

 ウンコティンティンが出した問題に対し、今まで無言のままだったハチマンが質問する。サンビームさんも『カツ丼と天丼、カロリーが高いのはどちらか?』という問題の時にカツ丼に使われている肉の種類を聞いていた。

「ああ、大きさだ」

「動物の種類に限定はあるか? 全動物中、世界最大の動物を答えればいいのか?」

「そうだ」

「じゃあ、シロナガスクジラだ」

「正解!」

 ほとんど迷いなくハチマンは答える。よほど自信があったのだろう。でも、少し気になることがあったのでリールに向かうハチマンの背中に向かって声をかけた。

「ねぇ、ハチマン。もし、動物の種類を限定されてたらどうしてたの? 昆虫とか、魚類とか」

「……男ってのは世界最大とかに一度は憧れるもんなんだよ」

 つまり、子供の頃に図鑑などで様々な種族の世界最大を調べて覚えていたのだろう。どこか恥ずかしそうに言った後、そそくさとリールに掴まりに行ったハチマンを見て思わず笑みを零してしまう。

 しかし、問題はここからだ。私はチラリと隣に立つウマゴンを見ながら気づかれないように深呼吸する。

 覚悟を決めろ、私。この交渉が私たちの運命を左右するのだ。

 堂々と偽れ。

 胸を張って嘘を吐け。

 笑顔を浮かべながら騙せ。

 さぁ、勝負だ、ウンコティンティン。知恵比べの時間だ。

 




来週、11月3日の更新は諸事情により、中止です。
次話の更新は11月10日ですのでご注意ください。
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