やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
ですが、やっぱりルミルミのお話しは大事なので丁寧に書きました。
「あ、ルミ!」
草むらから出て来た鶴見留美を見てサイが笑顔を浮かべた。ぼっち仲間だからな。
「よっ」
俺も軽く挨拶しておく。留美はじゃれつくサイを鬱陶しそうにしながら頷いてくれた。少しは心開いてくれたのかしらん。それにしてもサイったらあんなにはしゃいじゃって。ルミルミが迷惑そうにしていますよ。離れて差し上げなさい。
注意しても珍しく言うことを聞かなかったので引き剥がして俺の膝の上に乗せた。するとあら不思議。安心したように俺の胸に背中を預けたではありませんか。
「どうした?」
だが、さっきのサイはいつものサイっぽくなかった。俺以外にはあんな風にじゃれつかないのに。留美に聞こえないように小さな声で問いかけると彼女は川で遊んでいるリア充(1人だけどうしたらいいのかわからないからかキョロキョロしている)たちを見ながら答えた。
「……何か嫌な感じがしたから」
(嫌な感じ?)
「何で2人は泳がないの?」
サイの言葉に首を傾げているといつの間にか隣に座っっていた留美が質問して来る。
「水着持って来てねーんだよ」
「私はー……泳ぎたい気分じゃないからかなー。ルミは?」
「今日自由行動なんだって。朝ごはん終わって部屋に戻ったら誰もいなかった」
お、おふ。それはまたえぐい。自由行動だからこそやることが容赦ない。そして、何よりタチが悪いのはやっている本人たちはさほど気にしていないこと。ただ普通に遊びに行っただけなのだ。最初から留美と遊ぶ選択肢がなかった。
「じゃあ、私たちと遊ぶ? 川で泳ぐ以外ならいいよ」
「……やめておく」
「そんなこと言わずにほら!」
いつもより強引にサイは留美の手を引く。魔物の怪力で引っ張られた留美はそのままサイの隣――つまり、俺の膝の上に乗った。
「……おい、サイ」
「いいでしょ? 余ってるんだし!」
そう言う意味じゃないんですよ! 色々とアウトなんですよ! 小学1年ほどの少女と小学6年生の少女を侍らせているのは犯罪なんです! やっぱり、小学生は最高だぜとか叫ばないから!
「ちょ、ちょっとサイ!」
留美も顔を真っ赤にして俺から離れようと暴れる。その拍子に何度も殴られているのでちょっと痛い。だが、サイは留美の体に抱き着いて離れない。
「落ち着いて……」
そして、優しく留美の頭を撫でた。
「ッ……」
「大丈夫、私たちは離れないよ。ハチマンだって口では文句言ってるけど無理矢理引き剥がさないでしょ?」
接触するのもNGだからなんですけどね。ただ、ここはサイに任せておいた方がよさそうだ。そう思って視線を川に戻すと由比ヶ浜が俺たちを見て不安そうにしていた。すぐに口を動かして何か伝えようとする。読唇術は覚えていないが、何か出来ることはないかと言っているらしい。首を横に振って拒否した。それだけで由比ヶ浜もわかったのか頷いて皆のいる方へ戻る。
「ほら、ゆっくりハチマンの胸に背中を預けてみて」
「で、でも」
「大丈夫。ハチマンってあったかいんだよ?」
「……うん」
お、ルミルミがデレたぞ。サイの指示通り、俺の胸に背中を預ける。小学6年生ということもあってサイより重い。さすがに口にはしないが。
「どう?」
「普通」
「でも安心するでしょ?」
「……うん」
やだ、俺の胸にそんなアロマセラピー的な効果があったなんて知らなかった
「こうやってハチマンとくっついてると落ち着くの。ハチマンって捻くれてるけど……私の気持ちを汲み取ってくれるから。今だってルミを落ち着かせる役目を任せてくれてる」
おお、ばれてーら。なんだ、ものすごく恥ずかしいぞ、これ。
「2人は仲がいいんだね」
留美は俺たちを見て少しだけ羨ましげに呟いた。
「羨ましいの?」
「……」
サイの質問に無言を突き通す留美。
「私は違うと思うよ」
「え?」
「確かに私とハチマンは仲がいいよ。でも、私たちはぼっち。私の言いたいことわかる?」
留美は首を横に振った。俺もよくわからない。
「つまり、ぼっちっていうのは友達がいない、もしくは少ない人のことを言うの。私もハチマンも友達少ないし、他の人と一緒に何かするという行為に慣れてない。そんな私たちをルミは羨ましがった。おかしいと思わない? ルミがなくしちゃった友達を持っていない私たちを羨ましがるなんて」
「サイと八幡は友達じゃないの?」
「うん、友達じゃないよ」
サイの言う通りなんだが、そんなはっきり言われちゃうと傷つくんだけど。
「私たちは一緒に並んで歩くパートナーなんだよ。上辺だけの関係じゃない。お互いに必要としていてお互いに答えを求めて一緒に答えを考えるパートナーなの。ルミはそんな関係に憧れてるんじゃない?」
「パートナー……」
「私、少しだけ表情から相手の考えてることを読み取れるんだけど……ルミは一度、友達から見放された。シカトされてるよね」
「……」
「だからこそ、仲良くなっても見捨てたり、見捨てられたりしない……そんな関係を築きたいんじゃないの? 簡単に壊れない友達が欲しいじゃないかな?」
シカトされているのに動こうとしないのは諦めてしまったから。どうせ、仲良くなってもいつかまた裏切られる。だから、もう仲良くならない。仲良くなって裏切られたらまた傷ついてしまうから。
「私もずっと独りで生きていくんだと思ってた」
唐突に語り出したサイを留美は真剣な眼差しで見つめていた。
「大切な友達が皆、いなくなっちゃって……こんな苦しい思いをするならいっそのこと作らなきゃいいって。だから独りだった。そんな私に……手を差し伸べてくれた人がいた」
駄菓子屋のおばあちゃんだ。こっちに来てからも独りだったサイに笑顔で手を差し伸べてくれた人。だが、もうその人はいない。
「それで、手を差し伸べてくれた人――おばあちゃんが死んじゃって。本当に辛かったよ。やっぱり仲良くならなきゃよかったって後悔もした。ずっと胸が痛くて苦しくて……でも、わかったんだ」
そこでサイは俺の手をギュッと握って留美に笑顔を向ける。
「この胸の痛みは生きてる証拠なんだって」
痛いのは人の温もりを求めているから。
苦しいのは人と関わりたいから。
悲しいのはこれからも仲良く出来ると思っていたのに裏切られたから。
それすら感じられなくなったら死んでいることと同じ。感情のないただのロボットだ。
「だから、ルミ。怖がらないで手を伸ばして。絶対に手を伸ばしてくれる人がいるから」
そう言いながらサイは隣に座っている留美に手を差し伸べる。
「……私は、見捨てちゃったから。無理だよ。そんな資格ない」
しかし、彼女はその手から目を逸らしてデジカメを握りしめた。
「それ何?」
デジカメを見たことがなかったのかそれを指さしながら問いかけるサイ。
「お母さんから貰った……臨海学校でたくさん写真撮って来なさいって。いつも友達と仲良くしてるかって聞いてくるし」
「ふーん。それでデジカメって何?」
サイが聞きたかったのはデジカメそのものについてだった。まさかデジカメを知らないとは思わなかったのか留美は少しだけ目を丸くしながら『カメラだよ』と教える。
「へー! ねぇ、試しに撮って!」
「え?」
「コマチに小さかった頃のハチマンの写真を見せて貰ったけどどんな感じで撮るのか知らないんだよね」
おい、小町さん、勝手に見せるんじゃないよ。恥ずかしいじゃないか。
「じゃあ、俺が撮ってやるよ」
サイと一緒に撮れば留美ママも安心するだろう。いやまぁ、サイは小学1年生ほどだから何で一緒に撮ることになったのか説明しなきゃならないけど。
「ハチマンも一緒に撮ろうよ!」
「は? いやいいよ」
友達の写真が見られると思ってデジカメの中身を見たら小学1年生ほどの女の子と目が腐っている高校生と一緒に撮った写真があるとか吃驚しちゃうでしょ。しかも、他の友達と撮った写真はないから余計、目立つし。
「駄目! ユイー!」
大声で由比ヶ浜を呼ぶサイ。聞こえなくてもいいのに聞こえたのか由比ヶ浜は近くのブルーシートに置いてあったタオルを取り、体を拭いながら俺たちの方へ歩いて来た。
「どうしたの?」
「ルミのデジカメで私たちを撮って!」
「いや、それは――」「だから、それは――」
「うん、いいよー!」
俺と留美がサイを止めようとするがその前に留美からデジカメを奪って(首から提げていたのに目にも止まらぬ速さで奪っていた)由比ヶ浜にデジカメを渡してしまう。急いで立ち上がって阻止しようとするが俺の膝の上にサイと留美がいるので動けない。留美も留美で俺に体を預けていたのでワンテンポ遅れてしまった。
「それじゃ、行くよー!」
こうして、目を見開いている俺。手を伸ばして止めようとする留美。満面の笑みを浮かべて笑っているサイが写った奇妙な写真がデジカメに残った。
このお話を書いていて思ったのが『原作の部分はナレーションだけで進めるべきなのか?』でした。
今回で言うと八幡とサイが魔物を倒した後、ルミルミの事件を全てナレーションで済ませてしまうと言うことです。
そうすればかなり早いペースでお話を進めることはできます。まぁ、多分薄っぺらくなりますけど。
私的にはこんな感じで丁寧に書きたいのですが、読者様はいかがでしょう?
感想を書く時にでもチラッと書いてくれれば幸いです。
あ、決してアンケートではないのでご理解の方、よろしくお願いします。
後、おかげさまでニコニコ動画に投稿する動画、完成して無事に投稿することができました。
これからは執筆に集中できます!