やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
活動報告にも書きましたが、今後の展開に繋ぐためのお話がなかなか思いつかずここまで引っ張ることになってしまいました。
この先も考えている部分まで行くまで話に詰まってしまい、更新が止まるかもしれません。そうなってしまった場合、活動報告にてお知らせしますのでご了承ください。
これからも『俺ガッシュ』をよろしくお願いします。
『ファウード』の肝臓で半数以上の仲間を見捨ててなんとか敵から逃げた俺たちは血管の迷路へと辿り着いた。道中、ちょっとしたいざこざはあったものの、サイと同じように『魔力探知』ができるモモンの力を借りてなんとか突破することができた。
その次に俺たちが出会ったのは封印されている『ファウード』の心臓を叩いている巨大な体内魔物だった。最初はその体内魔物に『ファウード』を魔界に帰す装置の場所を聞いたが、体内魔物は装置はおろか、ここが人間界ということすら知らなかった。
その後、背骨へと移動した俺たちはそこにあったモニターで『ファウード』の体内の図解を見つける。その図解は前に見つけた簡易的なそれよりも『ファウード』の体内について詳しく載っていた。もちろん、説明文は全て魔界の文字だったため、読むことはできなかったが心臓との会話で『ファウード』を魔界に帰す装置の場所は何となく把握していた。
心臓は『ファウード』を魔界に帰す放置の存在を知らなかった。それは装置が後付けされたことに他ならない。また、『ファウード』ほどの大きな物を魔界から人間界に移動させるとなるとそれ相応のエネルギーが必要となる。そして、そのエネルギーは『ファウード』の心臓から供給されているはずだ。
これからのことからエネルギーが供給されているのにその供給されている部屋が『ファウード』の体内の図解に載っていない場所に『ファウード』を魔界に帰す装置がある。その場所は確かに図解に存在していた。
しかし、その場所までの道を覚えるところで俺たちは限界を迎えた。30時間以上も動きっぱなしだったのだ。意識が遠のくのも無理はなかった。
それを見たモモンが俺たちを休ませるために道を覚えると言い、俺たちを休ませてくれた。まぁ、本当は道を覚えるだけじゃなく、寝ている俺たちを一人で件の部屋まで運ぼうとしていたらしい。そのことを知ったのは件の部屋の前に着いた後――。
「清麿! 起きるのだ、清麿!」
――何故か、件の部屋にいたアースとウマゴンのような馬型の魔物との交戦中のことだった。
「カルディオ、あいつらを凍らせろ!」
「『ディオエムル・シュドルク』!」
「メルメルメ~!」
馬型の魔物――カルディオが放った冷気を呪文によって強化されたウマゴンの炎が受け止め、相殺する。シスターとモモンが時間を稼いでくれている間にガッシュとウマゴンが俺とサンビームさんを起こし、なんとか戦う準備を整えることができた。もう少し遅ければ今頃、あの冷気に飲み込まれ、氷漬けにされていただろう。
「アース、話を聞いてくれ!」
「聞く必要などない! 某の目的は達成寸前。邪魔者は消し去るのみ!」
その隙に話し合いに持ち込もうとアースに声をかけるが一蹴されてしまう。それどころか冷気と炎がぶつかり合ってできた壁を強引に突破してきた。
「ぐっ……」
慌てて魔本に心の力を注ぐ。少し眠ったおかげで心の力は回復していたようで魔本が光った。だが、全快しているわけではないため、少しでも心の力を節約しなくてはならない。
「『ラウザルク』!」
そもそもアースに並大抵の遠距離攻撃は通用しないだろう。今のところ、向こうは呪文を使用していないが、『ザケル』や『ザケルガ』ではあの剣で弾き飛ばされるだけで終わる。それならば、まだ
「ヌゥウ!」
『ラウザルク』によって強化されたガッシュはアースの前で躍り出る。すかさず剣を振るうアースだったが、彼の右手首を渾身の裏拳で弾くガッシュ。アースの剣は触れた相手の力を吸収する能力がある。前回はそれにやられたのをガッシュは覚えていたのだろう。
だが、剣を弾かれただけではアースは止まらない。凄まじい速度でガッシュへ何度も剣を振るい続ける。
「シッ」
ガッシュはギアを切り替えるようにほんの少しだけ息を吐き出し、体を可能な限り小さくしてそれらを躱していく。何度も、何度も、何度も。きっと、サイの特訓が活きているのだろう。
チャンスが来るまでひたすら躱し続け、一瞬の隙を突く。
口で言うのは簡単だが、相手の技量が高ければ高いほどその難易度は跳ね上がる。
相手の攻撃を瞬間的に捉える観察力。
どう動けばより自分に有利な状況へ持ち込めるか、判断する瞬発力。
なにより、その時が来るのを待ち続ける胆力。
その全てをガッシュはサイに文字通り、体に叩きこまれている。元々、ガッツのある子だ。サイの戦い方はガッシュに合っていたのだろう。
そして、ついにその時が来た。
「ッ――」
剣が振るわれる直前、ガッシュは右腕を振り下ろし、アースの右の二の腕を地面に叩きつける。すかさず、地面に落ちた彼の右手を左足で踏み、完全に動きを封じた。
「アース、聞かせるのだ! あの部屋には『ファウード』を魔界へ帰す装置があるのだな!?」
おそらく、まだガッシュは話し合いの余地があると判断してアースの動きを止めることにしたのだろう。彼の言葉を聞いたアースはなんとか右腕を動かそうともがきながら口を開いた。
「やはり、あの装置が目的で来たか! だが、あれは我々が使わせてもらう! 今すぐにでもあの装置を起動させ、『ファウード』を魔界へ帰す!」
「なっ、今すぐだと!?」
アースの絶叫に思わず声を荒げてしまう。今、『ファウード』を魔界へ帰せば確かに人間界は救われる。しかし、その代わりにリオウによって呪われた人たちが犠牲になってしまう。それに、きっとそんなことをすれば呪われた人たちだけじゃない。捕まってしまった仲間たちだって無事ではすまないはずだ。
「いけません! あなた、『ファウード』の封印を解く前に『ファウード』を魔界に帰すつもりですか!?」
「その通り。今のこの機を逃せば、次にチャンスがくる保障はない!」
すぐに反論したのはシスターだった。彼女は心の優しい女性だ。彼の言葉を見過ごせなかったのだろう。
だが、それでもガッシュを左腕で殴り飛ばしたアースの答えは変わらない。少しの間、空中へ投げ出されたガッシュはアースの呪文を警戒して腕をクロスさせて防御するが、何故か術は発動しなかった。
(いや、待て……エリーはどこにいる?)
そうだ、何故、気づかなかった。アースはこれまで一度も術を使用していなかった。それどころか、彼の
「アースと言ったな! 『ファウード』の封印を解かねば呪いで命を奪われる人がいる! その人たちを犠牲にしてまで今すぐ『ファウード』を魔界へ帰すつもりか!?」
「だまれぇ!!」
嫌な予感がする中、サンビームさんが説得しようと言葉を重ねる。しかし、その言葉に対するアースの反応は絶叫に近い、拒否だった。そのまま、彼は身に纏っていた外套に手をかけ、俺たちに見せつけるようにそれを翻す。そこには――。
「呪いをかけられているのは我が本の使い手も同じ! 封印を解かず、今すぐに『ファウード』を魔界へ帰すことはこの子の意志だ!」
――落ちないためだろうか、アースの胴体に巻き付けられている布に包まれた、苦しそうに呼吸をしているエリーがいた。