やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
アースとハイルの戦いに気を取られている間にリオウは密かに行動していたようで宙に浮いてオレたちを見下ろしていた。そして、何より好き勝手に動いていた『ファウード』を一言で操ったことからすでにリオウが『ファウード』の所有権を得ているのだろう。
もちろん、それはすなわちリオウを倒せば『ファウード』が手に入ることに他ならない。
「ハァ! そこにおったか!」
「『ギガノ・ギニス』!」
「バカが、ノコノコ現れやがって」
「『ギガノ・ラギュウル』!」
最初から封印が解かれた時点で『ファウード』を奪う予定だったのだろう。頭がUのような形になっている魔物とガッシュの友人であったレインを襲ったロデュウがほぼ同時に攻撃を仕掛ける。
「ふっ」
しかし、リオウは回避行動すら取らず、二つの術をまともに受け――いや、それらの術はリオウの体をすり抜けてしまった。あの目の前に浮いているリオウは幻なのだろう。
「くそ、本体はどこにいる!?」
「隠れてないで出てきて勝負しろ、リオウ!」
攻撃を仕掛けたロデュウたち以外にもリオウを倒して『ファウード』を手に入れようとしている奴らがいたらしく、周囲を見渡しながら絶叫する。だが、襲われるとわかっていて出てくるわけもなく、リオウは騒いでいる魔物たちを見て鼻で笑った。
「貴様らの魂胆などわかっている。封印を壊し、『ファウード』の力を横取りする。バカ共よのう……オレが『ファウード』の力を操る
どこか呆れたように話すリオウはため息を吐いた後、目を見開く。その口は少しだけ悦に歪んでいた。
「『ファウード』の力をなめるなよ! 『ファウード』よ、放てぇ!」
リオウの指示に大人しくしていた『ファウード』が弾かれたように顔を前に突き出し、その口からビームを放った。『ファウード』が放ったビームは
爆発によって飛び散った海水が再び海へ落ちていく光景にここにいる全員が言葉を失う。ここに来るまで『ファウード』の機能を調べていたため、ビームを撃てることは知っていたし、その威力も予想していた。しかし、いざその威力を目の当たりにして背中が凍りついてしまう。
「く、ははは……はーっはっはっは! これだ! これが『ファウード』の力!」
だが、たった一人。その強大な力を手にし、意のままに操ることのできるリオウだけは違う。奴が望めば『ファウード』はこの地球を破壊することができる。それが可能なのだと嫌でも思い知らされた。
「……」
チラリと周囲を見渡せば『ファウード』の力を奪おうとしていた魔物たちが悔しそうに顔を歪ませているのが見えた。リオウがこの場にいない以上、『ファウード』の力を奪えない。ここで逆らえばリオウは『ファウード』を差し向けるはず。それがわかっているから、動けないのである。
「オレは今、『鍵』を持つ者のみが入れる部屋、『ファウード』の脳にあるコントロールルームにいる」
リオウは簡単に自分の居場所を吐いた。教えたところで入れなければ意味がない。だからこそ、オレたちはリオウを見上げることしかできなかった。
「お前らがオレに敵対するということはこの力と真正面から戦うことになる。どうする? オレの手下になるなら助けてやるぞ。それどころか、残った魔物を一掃する時に『ファウード』の力も分けてやる」
そして、リオウは勝ち誇った顔でそう提案する。これまでは『ファウード』の封印を解くまでの協力者だった。そう、仲間ではなく、ただの協力者。目的が達成された時点で解消される薄情な関係。
だが、リオウを裏切ろうとしていた奴らは封印を解いてしまったせいでその力の均衡が崩れ、リオウに手を出せなくなった。そんな状況下で手下になれと言われ、その提案を跳ねのけられるだろうか。
「オレが魔界の王になった暁にはそれなりの地位をくれてやろう。いい話と思わんか? 我が手下になる者はこのプレートの上に乗るがいい。さぁ、選べ。我が手下になるか。それともここで消えるか。」
リオウはそう言いながら円形のプレートが出現させる。微かに光をまとったそれをここにいる全員が見つめ、誰がともなくそれに向かって歩き始めた。動いた奴らの多くは『ファウード』を奪おうとしていた魔物たち。一人、また一人とプレートに乗っていく。
「清麿、『ファウード』を魔界に帰す方法は!?」
そんな中、アリシエが焦ったように声をかけてくる。いや、アリシエだけじゃない。奴らに捕まって状況をまだ把握しきれていないティオたちもこちらへ視線を向けている。
「ああ、『ファウード』を魔界に帰す装置は見つかった。タイマー機能も起動できたから
「おお!」
「いや、長いよ! 90分もこいつを止められない!」
今は時間がないので手短にそう答えるとアリシエたちの顔が明るくなった。しかし、キャンチョメは『90分』という言葉に反応して涙目になってしまう。
ああ、そうだ。確かに『ファウード』は90分後に魔界に帰る。だが、その90分の間、『ファウード』を好き勝手させてしまったらどれほどの被害が出るか計り知れない。それに加え、オレたちはリオウの手下になるつもりもなく、奴は『ファウード』の力を駆使してオレたちを全力で倒しにくるだろう。
「いいや、止めるんだ。100%上手くいく保証はないが……『ファウード』が魔界に帰るまでの90分間、生き残るための仕掛けはした」
だからこそ、たった一つだけ手を打った。時間もなかったため、碌な対策は立てられず、運任せなところも多いあまりにも粗末な一手だが、試してみる価値はある。いや、試さなければオレたちはここで全滅してしまうだろう。
「だから、皆の力を合わせてこの小さな光を死ぬ気で守り通す」
オレの言葉に仲間たちは真剣な表情を浮かべ、しっかりと頷いてくれる。リオウが乱入してからオレたちの傍まで移動してきたアースとエリーも協力してくれるようでオレの視線に気づくと彼らも皆と同じように首を縦に振ってくれた。
(あれ、そういえば八幡さんとサイは……)
リオウの言葉を聞き逃さないように集中していたため、彼らのことが意識から外れてしまっていた。きっと、アースたちがいたせいで近づくことができなかったのだろう。一先ず、アースへ『ファウード』が魔界に帰るまで休戦してもらい、サイたちを呼んで作戦を伝えなければ――。
「……は?」
――そう考えていた時、八幡さんとサイがリオウの用意したプレートに乗る姿が目に入った。