やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.246 なんだかんだ言って彼は最初から彼らを説得することを諦めていた

 正直、期待していなかったわけじゃない。

 アースはサイに対して並々ならぬ感情を抱いており、封印を解いた途端、攻撃を仕掛けるほどだ。

 アース本人から攻撃を仕掛けると事前に知らされていたし、彼がサイを攻撃する理由にも納得(・・)している。

 仲間が攻撃されるのを許容するのは嫌だったが、『ファウード』の封印を解くためにアースの協力はどうしても必要だった。それにサイならアースの攻撃をやり過ごせる。そう判断した上でオレたちは頷いた。

 それにアースとサイの戦いはさほど長くは続かないだろうと思っていた。『ファウード』の封印が解けた後、リオウ、もしくは奴の協力者の誰かが動き、事態が動くと予想していたからである。実際、アースとサイ――実際に戦ったのはハイルだったが、リオウの介入により2人の戦いはすぐに終わった。

 アースは『ファウード』の封印を解くことを躊躇ったのは『ファウード』が暴れて人間界が崩壊してしまうことを恐れたからだ。そんな彼なら『ファウード』を魔界に帰す装置が作動するまでの90分もの間、人間界への被害を最小限に抑えるため、協力してくれるだろうと考えた。俺の予定ではその時、サイも一緒に戦ってくれる、はずだった(・・・・・)

 アースがサイに対する感情はそう簡単に消えるものではない。たった1度の共闘でどうにかできるものではない。

 しかし、人間界を救うため、懸命に戦うサイの姿を見て何かが変わってくれるのではないか。そう考えていなかったと言えば嘘になる。

「さ、い? 八幡、さん?」

 だが、彼らはリオウが用意したプレートの上に立っていた。こちらに視線を向けず、黙って前を見つめている。

 アースが攻撃を仕掛けたから? 確かに突然、攻撃を仕掛けてくる相手がいる中、『ファウード』の相手をしろ、と言われたら躊躇うに決まっている。どさくさに紛れて魔本を燃やされる可能性があるからだ。

 いや、そもそも、アースが攻撃を仕掛けた時、サイではなくハイルが割って入った? ハイルがサイに執着していることは聞いていたが、あれほどスムーズに攻撃を受けられたのはおかしい。まるで、サイは最初から攻撃されることを予測していて事前にハイルに協力するようにお願いしていたようだ。

「……」

 状況を理解したオレは奥歯を噛み締め、浅く呼吸を繰り返す。落ち着け。今はとにかく、『ファウード』

をどうにかしなくてはならない。作戦を立てた俺が冷静さを欠けばせっかくの布石を無駄にすることになる。

「ぇ、サイ? ねぇ、清麿! サイが! 八幡が!」

 オレの視線を追ったのだろうか。ティオが目を見開き、悲鳴のような声をあげる。その声で皆が八幡さんたちに気づき、息を呑んだ。

「ど、どうしてあっちにいるんだ!? そこにいたらリオウの手下になっちゃう!」

「清麿、これはどういうことなんだ? もしかして八幡にも呪いがかけられていたりするのか!?」

 キャンチョメとフォルゴレが慌てたように叫んだ。確かにリオウの呪いによって苦しめられた仲間たちがいたのだから八幡さんも呪いをかけられたと考えてもおかしくない。

「いや、呪いはかけられていない。そうだろ、アリシエ」

「……ああ、封印を解く前に顔を合わせただけだが、八幡が呪いをかけられた様子はなかった」

「じゃあ、なんであっちにいんのよ!」

 オレの問いかけにアリシエは神妙な表情を浮かべながら頷く。しかし、それだけでは疑問が解消されず、ティオが同じ質問をしてきた。

「……八幡さんたちは自分の意思(・・・・・)であのプレートの上にいる」

 オレたちとは違う方法で『ファウード』をどうにかする方法を思いついたからか。本当にリオウの手下になるつもりなのか。それはわからない。だが、少なくともオレたちとは行かないことを選んだのは間違いなかった。

「そ、んな……」

 よほどショックだったのだろう。恵さんは掠れた声で言葉を零し、八幡さんたちへ視線を向ける。視線に敏感な彼らは俺たちが見ていることに気づいているだろう。それでも彼らはオレたちを見ることはなかった。

(どうする……)

 オレが立てた作戦は成功すれば八幡さんたちはピンチになってしまう。一応、『ファウード』の機能はある程度、把握しているのでその機能を使えば大丈夫だろう。しかし、リオウがどのように動くのかわからない以上、その機能を使ってくれるとは限らない。

「……八幡さんたちにも考えがあるんだと思う。オレたちはオレたちにできることをやろう」

 少しでも皆を安心させるため、言葉を選びながら声をかけた。作戦を中止するには『ファウード』をコントロールする機械があるあの部屋に行かなければならないため、現状では止められないのだ。

 それならばオレたちは予定通りに動いた方がいい。きっと、八幡さんたちなら上手くやってくれる。そう、信じて動くしかなかった。

「皆、よく聞いてほしい。これからオレたちは『ファウード』の攻撃をやり過ごす」

 八幡さんたちのことが気になる。それはここにいる全員、同じ気持ちのはずだ。

 それでもオレのその一言で意識を切り替えてくれたのはそれだけ『ファウード』の脅威が計り知れないと理解しているからだ。

 それから手短に作戦の詳細を説明する。それを聞いた皆の顔色はさほど良くはない。まぁ、無理もないだろう。作戦が実行されるまで残り数分の時間がある。それまでの間、『ファウード』の猛攻をやり過ごさなくてはならないからだ。

「ふん、どうやらバカな奴らがいるようだな」

 作戦を伝え終わったところでリオウがボソリとそう呟いた。オレたちの様子から手下にならないと判断したらしい。

「まぁ、よかろう。『ファウード』の準備運動として格好の獲物ができたわ! せいぜい、飛び跳ね、逃げ回ることだな! ノミどもが!」

 そう叫んだリオウは幻を消す。そして、八幡さんたちを乗せたプレートが動き出し、『ファウード』の体内へと入っていく。これでもう、後戻りはできない。

「やれ、『ファウード』よ!」

「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 リオウの言葉に『ファウード』が絶叫する。

 こうして、オレたちと八幡さんたちは別の道を選んだ。選んでしまった。

 

 

 

 

 もし、ここで彼らを説得できていればあんなことにならずに済んだかもしれないのに。

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