やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.247 彼らは希望を胸に行動する

リオウの言葉に『ファウード』が絶叫する。それと同時に動き出してオレたちはバランスを崩してしまった。

「皆、説明したとおりだ! 5分、まずは5分でいい! こいつから生き延びるんだ!」

 『バオウ・ザケルガ』の影響で体に力が入らず、両膝を付いてしまったオレは改めて皆に声をかける。『ファウード』が魔界に帰るまでの90分という時間を稼ぐための仕掛けが発動するまであと5分ほどかかってしまう。それまでの間、何もしなければ『ファウード』ほどの巨体な魔物が暴れればオレたちを簡単に全滅させることなど容易い。だから、全力で生き延びる必要がある。

「オオオオオ!!」

「くっ……」

「ヌゥ、清麿!」

 全員が頷いてすぐに『ファウード』が雄叫びを上げながら右手を自身の頭に向かって振り下ろす。そのまま頭部の周囲に造られていた建造物を粉砕した。凄まじい衝撃にその場で倒れ伏してしまう。慌てた様子でガッシュが駆け寄ってくるが身動きが取れず、奥歯を噛み締める。

「清麿、こっちを向いて!」

「『サイフォジオ』!」

「ウマゴン、清麿の方へ!」

 倒れてしまったオレを見てティオと恵さんが『サイフォジオ』を発動させた。更にサンビームさんとウマゴンもオレを助けるために近づいてくる。

「こざかしい!」

 だが、それを見たリオウが煩わしそうに叫び、『ファウード』が左拳で再びオレたちのいる広場を殴った。その衝撃で足場が崩れ、オレの体は地面を滑り落ち始める。

(駄目だ、このままだと全滅する!)

「皆、オレに構うな! 固まっては格好の的になってしまう! バラバラに散ってくれ!」

 恵さんたちだけじゃない、他の皆にも聞こえるようにオレは大声で指示を出す。特に恵さんとフォルゴレは捕まっていたとはいえ、体力や心の力に余裕があるはず。『ファウード』から逃げるために積極的に動いてもらわなければならない。

 きっと、オレの指示の正当性に皆は気づいている。それでも恵さんたちは悔しそうに顔を歪ませるだけですぐに離れないのはオレを見捨てられないからだろう。

「早く!! 絶対に固まるんじゃない!!」

 だからこそ、もう一度同じように叫んだ。それを聞いた皆はそれぞれ違う方向に走り始めた。それでいい、バラバラに散ればその分、『ファウード』の攻撃が分散して逃げやすくなる。

「『ラウザルク』!」

「ヌゥウウウウウ!」

 もちろん、オレだって無策で皆を離れさせたわけではない。少しだけ休むことができたおかげで心の力もそれなりに回復している。急いで強化の術を唱え、虹色の雷に打たれたガッシュはオレを担いでその場を離れる。そのすぐ後に『ファウード』の拳が降り注ぎ、広場を粉々にした。

「『ガルドルク・ニオルク』!」

「『ジャン・ジ・ソルド』!」

 他の皆もただ逃げるだけではない。最強呪文を撃ったとはいえ、心の力を全て使い尽くしたわけではないアリシエとエリーが少しでも『ファウード』の気を引こうと術を放った。しかし、あまりにも『ファウード』が巨体なため、大したダメージにはなっていない。

「そんな攻撃、何のダメージにもならん。主砲のエネルギーが溜まるまで時間はかかるが『ファウード』の兵器はまだまだあるわ!」

 リオウが二人の攻撃を鼻で笑った後、今度はこちらの番だと言わんばかりに声を張り上げる。

 確かに『ファウード』には最初に放ったビーム以外にも兵器が山ほど搭載されていた。『ファウード』のコンピューターを操作していた時に見つけ、その多さに背筋が凍りついたほどである。

 だが――。

十指砲(カーファーロウ)!」

 十指砲(カーファーロウ)は十本の指先からビームを放つ兵器だったはずだ。標的は小さいとはいえ、リオウによって俺たちの場所を特定されており、そこに向かってビームを放たれたら被弾してしまうかもしれない。

「ッ!?」

 しかし、ビームを放つ直前になって『ファウード』の指が不自然に動き、最初の標準よりも上に向かって十本のビームが放たれた。そのおかげでビームに被弾した人は誰もいなかったようでホッと安堵のため息を吐く。

「……」

 『ファウード』の挙動にリオウは訝しげな表情を浮かべる。やはり、思ったようにビームが放てなかったようだ。

(僅かな時間しか残ってなかったから大したことはできなかったが……今のところ、上手くいってる)

 『ファウード』を魔界に帰す装置のロックを外した時、メインコンピューターにもアクセスした。そこで『ファウード』の兵器などの情報を確認し、何か対策を立てなければたくさんの犠牲が出ることがわかったのだ。残念ながら兵器を撃たせないということはできなかったがその標準を海や空に向けられたので変更し、魔界に帰す装置を操作できないように新たにロックをかけた。そのロックも簡単には解除できないようにしたのでリオウも戦い辛いはずだ。

「……なるほど、知将がいたか」

 その様子を見て状況を察したのか、リオウはオレとガッシュの方を見てボソリと呟く。小さい声のはずなのに自然と耳に届いたのは『ファウード』の力のおかげだろうか。

「ならば、その希望を潰せばいい。『ファウード』よ、金髪のチビといる黒髪の男を狙え!」

 どうやら、オレが皆に指示を出していたところを見ていたらしく、リオウはオレを標的に選んだ。その直後、『ファウード』の拳がオレとガッシュに迫る。

(駄目だ、避けきれない!)

 『ラウザルク』の効果はすでに切れている。だが、たとえ掛け直したとしても『ファウード』の拳が大きすぎてそれから回避行動を取っても間に合わないだろう。

「ガッシュ、奴の方を向け! 『ザグルゼム』!」

 ガッシュに指示を出しながら呪文を唱える。そして、ガッシュの口から雷のエネルギーが凝縮された光球が放たれた。『ファウード』の拳は光球にぶつかり、僅かに光を纏う。

「『ザグルゼム』!」

 すかさず、二発目の『ザグルゼム』。光球が激突して更に光が強くなった。だが、『ファウード』の拳はすでにすぐそこまで迫っているため、三発目の『ザグルゼム』を撃つ時間が足りない。

「『ザケルガ』!!」

 そして、俺が次に選んだのは最大呪文である『バオウ・ザケルガ』ではなく、それ以外で最も火力の高い『ザケルガ』だった。ここで『バオウ・ザケルガ』を放てば今度こそオレは動けなくなってしまうはずだ。残り時間は3分。リオウはオレを狙っている今、確実に逃げられないだろう。なにより、『バオウ・ザケルガ』の最大火力を出すためには他の呪文を使わなければならないのだが、その数が足りていないのである。

「何ッ!?」

 ガッシュの口から放たれた『ザケルガ』は『ファウード』の拳に当たった。だが、止まるどころか勢いすら全く落ちていない。まずい、このままでは――。

「『ゴライオウ・ディバウレン』!」

「『シャオウ・ニオドルク』!」

 ――その時、ウォンレイとリーヤの最大呪文が放たれ、『ファウード』の拳を横から叩く。そのおかげで僅かにズレた。だが、奴の拳が大きすぎるせいでまだ当たる。

「恵!」

「『マ・セシルド』!」

 だが、当たる直前にティオと恵さんが俺たちの前に割って入り、盾を出現させた。あれだけバラバラに動くように言ったのに駆けつけてくれたのはオレたちのフォローに入れるように近くにいてくれたのだろう。

「きゃあ!?」

 しかし、ティオの盾でも奴の拳は止まらない。砕け散る盾の向こうから巨大な拳が迫り、襲う衝撃に備えるために体を小さくした。

「メルメルメ~!」

 すると、拳が当たる直前、横から強化状態のウマゴンが体当たりするようにオレたちを連れ去る。『ファウード』の拳は誰も捉えず、通り過ぎて行った。

(でも、勢いが強すぎる!)

 空中で態勢を立て直し、周囲を見渡したが加減をする余裕はなかったのだろう。オレたちは『ファウード』の体から投げ出され、海がすぐ目の前まで迫っていた。この高さから海面に叩きつけられたら骨の一本や二本は確実に折れるだろう。

「カルディオ!」

「パルパルモーン!」

 だが、強化状態のカルディオが海面を凍らせた。これで海面に叩きつけられることはなくなったが勢いが強すぎてこのままでは大怪我は免れない。

 しかし、チラリと上を見ればサンビームさんとシスター、そして、モモンが『ファウード』から飛び降り、オレたちに向かってきていた。

「『オラ・ノロジオ』!」

 そのまま動きが遅くなる術を使い、勢いを殺す。これで凍りついた海に落ちてもダメージを減らすことができるだろう。オレたちの動きは遅くなっているので受け身を取れないのだが、今度は上からフォルゴレとキャンチョメが落ちてくる。

「『ディマ・ブルク』!」

 そして、キャンチョメの分身が現れ、オレたちを受け止めた。その直後、動きが元に戻ってキャンチョメの分身がオレたちを氷の上に降ろす。

「皆……」

 オレが見ていないところで他の皆も態勢を立て直すためにオレの周囲に集結していた。


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