やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
もちろん、すぐにリオウに喧嘩を売るわけにはいかない。さすがに真正面から戦っても攻撃呪文を持たないサイが圧倒的に不利だ。そのために色々準備をする必要があるのだが、それをリオウに嗅ぎつけられたら終わり。
「今はコントロールルームのメインステージから離れてるみたい。どこにいるかまではもっと探らないとわからないけど」
リオウが俺たちを『ファウード』の体内へ移動させた際、簡単に説明を受けたのだが、コントロールルームに入るためには鍵を持つリオウの許可を得なければならない。しかし、リオウに協力するのであればコントロールルーム内にある部屋を自由に使っていいそうだ。
部屋の外にもメインステージや治療室など様々な施設があるらしいのだが、リオウは基本、メインステージにいるらしく、用があるならそこに来いと言っていた。
そのメインステージでリオウを倒し、『ファウード』を操る鍵を奪う。それが俺たちが考えた『ファウード』を止める方法。
その準備のためにリオウの動向を探っていたのだが、俺の前を歩くサイが『魔力探知』で調べた結果、リオウはどこかに行っているらしい。『ファウード』自体、魔力を持つ存在なのでなかなか魔力を感知するのが難しいそうだが、そこまでわかっただけでも動きやすくなった。
「でも、その前に――」
「――お前たち、こんなところで何をやってる」
サイが何か言いかけた時、前からあまり聞きたくない声が聞こえる。そちらへ視線を向けるとどこか落ち着かない様子のザルチムがメインステージの方から歩いてくるところだった。
因みにハイルはすでにここにはおらず、治療室の方を見に行ってくれている。もしかしたら、千年前の魔物たちと戦った時に使われた『月の石』のような回復アイテムがあるかもしれないし、手に入れることができれば戦いやすくなるだろう。
「リオウがメインステージにいないから何かあったのかと思って様子を見に来たの」
「リオウは黒髪の人間に話を聞きに行った」
黒髪の人間――高嶺のことか。リオウが今、高嶺に会ってもさほどメリットがあるとは思えない。もしかしたら『ファウード』を魔界へ帰す装置を止める方法がわからず、無理やりにでも言うことを聞かせるつもりなのかもしれない。
「そっか。日本に向かってるみたいだけどどれくらいで着くの?」
「高速移動が可能になるまで10分ほどかかる。そこから高速移動をして向かうらしい」
サイの質問にザルチムは不気味なほど素直に答えた。何か企んでいる? いや、何かに気を取られていて俺たちに集中していない感じだ。
「……お前も魔力を感じ取れるよな?」
「うん、そうだけど」
「何か……違和感はないか?」
どこか震えた声でザルチムが俺たちに聞いてきた。その様子に思わず俺たちは顔を見合わせてしまう。やはり、何かあったのだ。ザルチム自身、その何かに気づいていながら正体まではわかっていないようだが。
「今のところはないよ。私の場合、『魔力探知』の精度が良すぎて『ファウード』の魔力が邪魔で上手く探れないから役に立てないんだ」
「そうだったのか。いや、忘れてくれ」
そう言ってザルチムは俺たちの横を通り過ぎてどこかへ行ってしまった。俺たちを放置して歩いていってしまうほどその『違和感』は気になっているようだ。
「本当にわからないのか?」
「うん、さすがにあれだけじゃわからないでしょ」
「それもそうか」
その違和感が『ファウード』に関することなのか、それとも魔物のことなのか。それ以外の可能性もある。そんな曖昧な情報では探りようがない。
「あの様子だと術を使ってもバレなさそうだね。さっさと準備しちゃお」
「……ああ」
ザルチムの言っていた違和感も気になるが今はリオウだ。あいつを倒さなければ『ファウード』は日本を滅ぼしてしまう。ぼっちである俺でも小町を始めとした大切な人たちがいる。絶対に『ファウード』を止めなければならない。
「ハチマン、心の力は大丈夫?」
「ああ、問題ない」
元々、俺の心の力は仲間の中でも多いらしい。『サザル』を数発、撃ったとしても全然余裕がある。でも、それ以上に気になることが一つ。
「高嶺は大丈夫か? リオウに狙われてるんだろ?」
「皆いるから大丈夫だと思う……そもそも、心配しても私たちにできることはないからこっちに集中しよ」
「そう、だな」
サイの言う通りだ。俺たちは高嶺たちと合流せずに『ファウード』をどうにかすると決めた。そう決めたのなら俺たちがすべきことに集中しよう。
再び、俺たちはコントロールルームを目指す。結局、コントロールルームに着くまでサイは俺の前を歩いていた。
そして、俺たちが知らないところで高嶺はリオウに殺された。