やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
「ここが……」
巨大な扉が自動ドアのように開き、俺たちはコントロールルームのメインステージに辿り着いた。広大な部屋の中に見たことのない鉱物でできた柱が数多く建っており、壁や天井はない――ように見えてスクリーンか何かで外の様子を投影しているのか青空が広がっている。更にいくつものモニターが浮いており、『ファウード』が見ている視点や読めない文字が書かれたもの、気象情報を映しているものもあった。
「……?」
「どうした?」
物珍しいその光景にキョロキョロと見渡しているとサイが不思議そうに首を傾げていることに気づく。質問しても彼女は訝しげな顔を浮かべるばかりで黙っているだけだった。
「サイ、聞いてるか?」
「っ……うん、大丈夫、なんだけど」
俺の声が届いていなかったようで肩を震わせた彼女は歯切れの悪い返事をする。しかし、それについて聞く前にサイは駆け足で一つのモニターの前まで移動し始めてしまう。
「ねぇ、これって」
「……『ファウード』の視点じゃねぇか?」
サイが注目しているモニターは海を映しているだけのものだった。今日はさほど波が立っていないようで穏やかな海面が映って――。
「……泳いでない?」
「うん、『ファウード』が止まってるんだよね」
海面もそうだが、周囲の青空も動いていない。確か10分ぐらいで海溝を抜けるとザルチムが言っていた。しかし、これではいつまで経っても海溝を抜けられないだろう。
(『ファウード』を止める理由でもあったのか?)
リオウは高嶺に話を聞きに行っているらしいので交渉か何かをして『ファウード』を止めた? 可能性はありそうだが、正義感の強い高嶺がリオウの話に乗るとは思えない。やはり、何かあったと思った方がいいか。
「これが気になったのか?」
「……誰かいたような気がして」
「は?」
「一瞬、あの端末の傍に人影が見えた……ような?」
サイの視線を追うとそこには何かを操作できそうな端末があった。特に人影はなく、耳を澄ませても何も聞こえてこない。『魔力探知』に誰か引っ掛かった? なら、もっとはっきりと言葉にするはずか。
「気のせいじゃないのか?」
「……多分、気のせいかな。リオウについてきた魔物たちの反応は別の場所にあるっぽいし」
「まぁ、警戒しておくか」
「そうだね」
ここで悩んでいても仕方ない。とにかく今はリオウを倒すための準備をしなければならない。幸い、『ファウード』の動きが止まっているのなら時間に余裕はある。リオウが来る前に可能な限り、進めよう。
「じゃあ、始めるか」
「うん」
サイが頷き、俺は魔本を開く。これから何度も呪文を唱えることになる。心の力は潤沢。
「行くぞ、『サグルク』」
そして、今回の作戦の要となる呪文を唱えた。
「やっと全ての傷が癒えたか」
『高嶺 清麿』の殺害に成功したリオウだったが、その顔に喜びの色はなかった。
彼からしてみれば清麿とガッシュは格下の相手であり、倒すのも容易であり、少し力の差を見せつけたらすぐにでも『ファウード』に掛けられたロックを解除する方法を吐かせられるはずだったのだ。
しかし、現実は違った。清麿の自分の命すら賭けた決死の一手にリオウは『ファウード』の回復液に浸かってもすぐに傷が癒えないほどの大怪我を負ってしまったのである。
「バニキス、行くぞ」
治療室から出たリオウは扉の近くに設置されていた椅子に座って本を読んでいた己の
「やっと回復か?」
「黙れ、オレのダメージの大きさはお前の能力の低さでもあるんだぞ」
「おお? 無敵のリオウ様が泣き言か?」
「……コントロールルームのメインステージに戻る」
バニキスの馬鹿にしたような態度にリオウは顔をしかめる。しかし、これ以上何を言ってもバカにしたような発言しか返ってこないだろうと判断し、反論せずにメインステージに向かって歩き始めた。
「なんだよ、つれねーな。それよりよ、今度『ファウード』の主砲ってやつを撃たせてくれ。あれぶっ放すと最高にスカッとできそうだ!」
「エネルギーが溜まったらな。それより今は日本を目指す方が先だ」
治療室はメインステージの近くにあり、そんな会話をしている間に巨大な自動ドアの前に辿り着く。清麿を殺すのに不本意ながらそれなりに時間がかかってしまった。おそらく、すでに海溝を抜けて高速移動に切り替わっているはずだ。
「……なんだこれは」
そう思いながら自動ドアが開かれた先に広がっていた光景にリオウは声を低くする。
清麿に会いに行く際、コントロールルームのメインステージにいたがここは術を無効化する特殊な鉱物でできた床と柱、端末などしかなく、空中に情報が映ったモニターがいくつも浮かんでいるだけだった。
だが、たった十数分ほど経ったこの部屋はあまりに様変わりしていたのである。
術を無効化するはずの床や柱に貼り付けられた小さな円盤。それが大量にばらまかれ、唯一置かれていないのはリオウたちが立っている入口付近だけだった。
「おいおい、まるで
「……こんなこざかしい真似をしたのは貴様らか?」
そんな中、リオウは端末の近くに立っている二つの人影に声をかける。
「……ああ、そうだ」
もちろん、その二人はリオウが不在の間に準備を終えた八幡とサイだった。