やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
ゼオンがリオウを倒し、『ファウード』を手に入れてから数十分が過ぎた。今はゼオンのいる『ファウード』の脳を目指して通路を全力で進んでいる。
『
「……」
後ろをチラリと見てモモンが掴んでいる、人が入れるほどの大きさを持つ筒状のカプセルを見る。そのカプセルは『ファウード』の肝臓にあった物で『ファウード』の回復液で満たされており、中には清麿君が入っていた。一時は心肺停止にまで追い込まれた彼だったが、ようやく回復液で回復することができているのである。本当は肝臓に置いていく予定だったのだが、ガッシュ君が清麿君の声が聞こえたそうで一緒に連れていくことになったらしい。
(実際に見たわけじゃないけど……ガッシュ君と清麿君の絆なら多分、本当のことなんだと思う)
皆が肝臓で作業をしていた頃、私とティオは別行動を取っていた。肝臓に向かう途中であの忌まわしきウン――なんとかが襲ってきたのである。『ファウード』が目覚める前、胃袋の壁に下半身が埋まっていた奴は『ファウード』の封印が解かれると同時に移動できるようになっていたのだ。
何とか振り切ろうとしたのだが、動けない清麿君を庇いながらでは難しく、時間稼ぎを買って出たのがウォンレイだった。ウンなんとかが分厚い壁を出現させてしまったせいで私たちはウォンレイと分断されてしまったのである。
ウォンレイ一人にはさせられないと彼の
しかし、結果的にはウォンレイは魔界へと帰った。追い詰められたウンなんとかが自爆したのである。その破壊力は奴が出現させた壁さえも粉砕し、壁の向こうにいた私たちも危ないところだった。だが、ウォンレイが最後の力を振り絞り、身を挺して守ってくれたのである。
(あの時、ウォンレイの魔本はあいつの自爆よりも早く燃え尽きるはずだった……)
ウォンレイが奴の自爆で死なないように私が魔本に火を点けた。でも、魔本はウォンレイの想いに応えるように輝き、奇跡を起こした。きっと、ガッシュ君が清麿君の声を聞いたのもそれに近いものなのだろう。
本当にこの本は不思議だ。ウォンレイの一件もそうだが、私の魔本に発現した読めない呪文も未だに謎は解明されていない。多分、私の知らないところで同じような奇跡が起きているのだろう。
そして、その不思議な出来事は決して良いことばかりではない。八幡君の体質がいい例だ。彼はある日突然、負の感情が乗った魔力を浴びると体が傷つくようになってしまった。きっと、何かしらの原因があり、その大本は魔本だと思う。
(八幡君……サイちゃん……)
あれから八幡君やサイちゃんの情報は入ってこない。心配で仕方ないのだが、今の私たちにできることはないのも事実。それこそ、一刻も早くゼオンのいる『ファウード』の脳へ向かい、彼らの安否を確認した方がいい。
『『ファウード』、高速移動体勢に入りました』
「ッ!?」
その時、不意に通路にそんなアナウンスが響き渡った。これまで『ファウード』が泳いで移動していたのは清麿君によって『ファウード』の身長よりも深い海溝に瞬間移動させられたからだ。つまり、とうとう『ファウード』の足が海底に着く深さの場所まで移動されたことになる。
『ルート確定、ルート上に障害物はありません。到着まで50分。高速移動開始まで5秒前……』
(『ファウード』が魔界に帰るまで残り60分……それって!?)
まずい、このままでは日本に着いてから10分もの間、『ファウード』が暴れてしまう。ビームなどの一部の兵器は清麿君のおかげで陸地に撃てないようになっているが適当に本土を歩くだけで被害は甚大。おそらく、日本は壊滅されられてしまう。
『4、3、2、1……高速移動開始』
アナウンスはそこで途切れた。特に変化はない。だが、外では『ファウード』が凄まじい速度で移動しているだろう。
「くっ……ウマゴン、急いでくれ!」
「メルメルメ~!」
清麿君の代わりに指揮を取ってくれているサンビームさんも焦りが出始めている。彼の掛け声でウマゴンは更に速度を上げた。
「ッ! キキッ!」
だが、その直後、いきなりモモンが危険を知らせるように声を出す。何事かと皆がモモンへと視線を向け、前方に通路の壁から何かが飛び出すのが見えた。
「あ、れは!?」
それは二足歩行で走る化け物だった。鋭い牙を生やし、明らかに私たちを狙っている。確か、ゼオンが『ファウード』に侵入した外敵を排除する魔物がいると言っていた。おそらくあれがその魔物なのだろう。
「ウマゴン!」
「メルメルメ~!」
牙をむき出しにして突っ込んでくる魔物にウマゴンが炎を放って迎え撃つ。だが、魔物は両腕を振るってその炎を振り払ってしまった。
「何!?」
「リーヤ、前へ!」
まさか簡単に防がれると思わなかったようで驚くサンビームさん。しかし、冷静なアリシエはすぐにリーヤに指示を出す。リーヤは器用にモモンの腕を伝い、ウマゴンの頭の上に飛び乗った。
「『ガルバニオ』!」
アリシエが呪文を唱えるとリーヤの角が伸びる。その角は黒い魔物へと直撃し、動きを止めた。そう、止めただけだった。
「駄目よ、あいつ強い!」
角から逃れるために後ろへ飛んだのを見てティオが大声を上げる。おそらく『サイス』では歯が立たないだろう。それなりの術を使わないと倒せない。
「……嘘」
そして、悪夢は終わらない。私たちの前に立ち塞がる魔物の後ろから同じ魔物が壁や床から現れた。それも一体だけじゃない。どんどん出てくる。
(こんなのを相手に……進まなきゃ駄目なの?)
『ファウード』の回復液は水筒に入れて持ってきている。だが、こんな魔物相手にまともに戦っていたらいくら回復手段があっても圧倒的に足りない。
「それ、でも……」
進まなければならない。日本を守るためにも。八幡君たちを助けるためにも。私たちを守ってくれたウォンレイのためにも。
「行くぞ、皆! 無理に倒さなくていい! 強引に突破して少しでも前に進むんだ!」
サンビームさんの掛け声に私たちは頷く。そして、黒い魔物たちとの長い戦いが始まった。