やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.264 彼女たちはその時が来るのジッと待つ

 モチノキ町にあるホテルの一室。ナゾナゾ博士の仲間たちが守ってくれているとはいえ、狙われている可能性も考慮して私たちはこの部屋から出ないようにしていた。

 小町さんたちはナゾナゾ博士の別の仲間が秘密裏に護衛しているらしい。しかし、比企谷君の仲間の一人が重要な役割を持っているため、その家族も狙われる可能性がある。

 もちろん、ナゾナゾ博士の仲間も有限だ。別々のところにいる人たちを守るのにも限度がある。そのため、可能な限り一か所に集めたかった。そこで魔物のことを知っている私たちはその家族が住んでいるこの町に来たのである。

 その提案に私たちは頷いた。だが、正直、やることがない。由比ヶ浜さんもご飯の時や入浴、就寝時以外のほとんどは携帯電話を弄っている。私もナゾナゾ博士の仲間にいくつかの小説を買ってきてもらい、暇を潰していた。

「……」

 しかし、いくら小説に集中しようとしてもなかなか文字が頭に入ってこない。きっと、由比ヶ浜さんも同じだ。携帯の画面を眺めているが操作している回数は部室で見た時よりも明らかに少ない。

(本当に……)

 小説に栞を挟み、ホテルの部屋に備え付けられていたテーブルに置く。そして、目の前にある鏡に映る自分を見つめた。目の下に酷い顔だ。気を付けてはいるものの、どうしても眠りが浅い。もちろん、私の睡眠を邪魔するのはあの目の腐った男と彼のパートナーである小さな女の子だ。

 ナゾナゾ博士の話ではあの巨大な建造物――『ファウード』はとても大きな魔物らしい。今は封印されているがその封印を解こうとしている魔物がいる。もし、そうなった場合、地球は大きな魔物に蹂躙され、滅ぼされてしまうかもしれない。それを阻止するために比企谷君たちが『ファウード』に乗り込んでいる。

 だが、問題は『ファウード』の封印を解こうとしている魔物、リオウの呪いだ。その魔物は本の持ち主(パートナー)に呪いをかけ、無理やり『ファウード』の封印を解く手伝いをさせている。

 何より、そのリオウに私と由比ヶ浜さんが利用された。比企谷君を言いなりにするために私たちを人質にした。たとえ、あの手紙の内容が嘘だとすぐにわかったとしても『魔物』という未知がそれを許さない。

 だから、彼はそれを利用することにした。その内容は知らないけれど、彼なら私たちには考え付かないような方法で解決しようするはず。

 そう、それによって自分自身が傷ついたり、周りの人から嫌われることになったとしても。

 これまで奉仕部に来た依頼を私たちに頼らず、独りで解決してしまったように。

「……」

 気にならないはずがない。心配しないはずがない。なにより、最終的には利用する形になったが私たちが足枷になったのは紛れもない事実。それが胸の奥でずっと引っ掛かっている。

「由比ヶ浜さん」

「ッ……どうしたの、ゆきのん」

「いえ、そろそろ寝る時間よ」

「あ、そうだね。じゃあ、寝よっか!」

 時刻はすでに23時を超えている。おそらく、今日も眠れないだろうが目を閉じるだけでもある程度の休息は可能だ。私の言葉に由比ヶ浜さんも携帯を閉じ、ベッドへ潜り込む。私も部屋の電気を消して彼女と同じようにベッドに横になる。

「……」

 シン、と静まり返った部屋。一向に襲ってこない眠気に小さくため息を吐いてしまう。

「……ねぇ、ゆきのん。起きてる?」

 どれほど時間が経っただろう。不意に由比ヶ浜さんが私に話しかけてきた。ほぼ反射的に目を開けて彼女の方へ顔を向ける。部屋が暗いものの目が暗闇に慣れたおかげで微かに彼女の顔が見えた。

「どうしたの、由比ヶ浜さん」

「えっと……ヒッキーとサイ、大丈夫かなって」

「……どうでしょうね」

 彼女の問いに私は少しだけぶっきらぼうに答えてしまう。前、由比ヶ浜さんが入浴している時、冷蔵庫に入っているミネラルウォーターを取りに行った際、彼女のベッドの近くを通った置きっぱなしにされていた携帯の画面が見えてしまったのである。プライバシーがあるのですぐに目を逸らしたがおそらく『ファウード』の情報を探しているようだった。由比ヶ浜さんは彼女なりに動いていた。

 それに比べ、私は何もしていない。何もできないと諦めている。だから、こんな状況なのに小説へ逃げた。そんな自分が情けない。

「ナゾナゾ博士は絶対に大丈夫だって言ってたけど……すごく、嫌な予感がするんだ」

「……そうね」

 2月、比企谷君とサイさんは魔物関係でアメリカに行った。そして、大怪我を負うような事件に巻き込まれた。いえ、違う。巻き込まれたのではなく、解決しに行ったのだ。

 きっと、あの『ファウード』もそう。比企谷君たちは2月と同じように事件を解決するために現地へ飛んだ。私たちのこともあって飛ぶしかなかった。

「あたしたちに……できること、ないのかな」

「……」

 何もない。そう、私は結論付けたはずだ。だから、彼女の質問にもそう答えるべきだった。

 でも、いつまで経っても喉は震えない。どうしても、言葉にできない。したくなかった。

「もちろん、今から『ファウード』っていう建物のところに行くとか……一緒に戦うとかは無理だけど……ここでジッとしてるだけなのはいやだよ」

「……そう、ね」

 気づけば彼女の言葉に頷いていた。頭では何もできないと理解していながら感情はそれを否定している。

 何かできることはないか。

 ただの人間にできることはない。

 些細なことでいい、私たちにできることはないか。

 ない。そんなものはない。だから、この部屋に閉じこもっている。

 そんなことは、ない。ないと思いたい。

(だって、もう見ているだけは嫌なのだから)

「ゆきのん?」

 ベッドから降りた私に由比ヶ浜さんが声を漏らす。それを意図的に無視して締め切ったカーテンを開ける。モチノキ町はそこまで大きくない町だ。それでもこのホテルはそこそこの高さがあり、部屋の窓からは海が僅かに見える。

 何となく比企谷君たちがいるはずのニュージーランドがある方角を調べたが丁度、この窓の先に見える海の向こうだった。

 今の私たちにできることはない。それは確かだ。認めざるを得ない事実だ。

 でも、もう嫌なのだ。見ているだけなのは。気づいた頃には全てが終わっているのが。何もできず、傷つく仲間を見ているのはもう嫌なのだ。

「比企谷君、サイさん……」

 海の向こうで頑張っている仲間の名前を呼ぶ。今は何もできない私たちだけれど、きっと何かできることがあるはずだと信じて。




諸事情により、『俺ガッシュ』の投稿を8月まで延期させていただきます。
また、チェリッシュの過去を一部、オリジナル設定とさせていただく予定です。
アニメのようなことにはならないので大丈夫だと思いますが、その結果、鉄扉辺りのお話がかなり変更されます。
チェリッシュ関係のお話は原作が最も美しく、サイの介入によって変にこじらせてしまいたくないと思いましてこのような形にさせていただきます。
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