やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
『ファウード』の体内を移動している私たちだが、その道中があまりにも険しいものだった。
「『ガンズ・ニオセン』!」
ウマゴンやモモンの腕を器用に渡ったリーヤが後ろから迫っていた『ファウード』の体内魔物たちへ弾丸を何発も放ち、押しとどめる。もちろん、そんな攻撃では倒すことはできない。だが、目的は足止めだ。
「よし、ウマゴン!」
「メルメルメ~!」
サンビームさんの指示を聞いたウマゴンが跳躍し、頑丈な角で天井を破壊する。崩落した天井が後ろの通路を塞いだ。これで後ろから追ってこられないだろう。
「メッ!?」
「ホント、何体いるのよ! こいつら!」
しかし、前方の壁や天井から新しい個体が生まれてしまい、それを見たティオが悪態を吐く。脳を目指して移動してから私たちは何十分もこの体内魔物たちと戦い続けていた。心の力は肝臓で手に入れた『ファウード』の回復液で何とかなるが精神はすり減るばかり。集中力も切れ始める頃だろう。
「キャンチョメ、また行くぞ! 『ディマ・ブルク』!」
回復手段があるとはいえ、この先のことを考えて心の力を温存するために戦況を見守っていたフォルゴレさんが動いた。呪文を唱えるとキャンチョメ君が8人に分身する。
「くっ……」
体内魔物が分身たちに殴られて吹き飛んでいくのを見ながら奥歯を噛み締める。私たちは移動のためにモモンの腕にしがみつかなければならず、攻撃呪文の少なさもあり、戦闘に参加ができない。回復するにしても足を止めなければならず、少しでも早く脳へ辿り着きたい今、回復する暇はないものその要因の一つだ。
「ウマゴン、こちらも行くぞ! 心の力を上げる! 炎で通路内の敵を焼きつくせ!」
「メルメルメ~!」
そのため、小柄な体を活かして前後の敵を足止めするリーヤ。ギガノ級の呪文すら受け止めてしまうキャンチョメの分身。スピードと炎を使い、道を切り開くウマゴン。この3体の仲間が率先して体内魔物の相手をしていた。もちろん、モモンは皆で移動するために腕を伸ばし続けているし、ガッシュ君は清麿君が意識を取り戻していないので術が使えないから戦えない。今も悔しそうに顔を歪めながら皆の戦いを見ている。
「よし、焼き払っ――」
「――ッ! きゃあああ!」
「ティオ!」
ウマゴンが炎で体内魔物を燃やしたが、その隙を狙って天井から生まれた体内魔物がティオの背中に一撃を与えた。咄嗟にキャンチョメ君の分身がティオを受け止めたが彼女の顔は痛みで歪んでいる。
「い、いい加減にしなさあああああい!」
いや、違う。あれは痛みではなく、怒りだ。今ならあの術が使えるはず。守りや回復の術を得意とするティオが覚えた異質なあの攻撃呪文。
「『チャージル・サイフォドン』!」
「せえええええええいいいい!」
キャンチョメ君の分身に背負われたまま、ティオが剣を持った女の顔が現れる。そのまま後方から迫る体内魔物へ向かって投げつけ、その全てを消し去った。ティオの痛みや屈辱、怒りなどを蓄積することで威力を発揮する術だが、その威力はやはり凄まじい。見たことのあるウマゴンやシスターはさほど反応していなかったが、他の皆は少しだけ唖然としていた。なお、モモンは顔を青ざめさせてガタガタと震えている。その身であの術の破壊力をわからされたからだろう。
「よ、よし! 今のうちに少しでも進むんだ!」
「あ、ああ!」
それから私たちは『ファウード』の脳へ向かい、何とかその入り口に辿り着いた。ここから上に行くと脳に辿り着くらしい。
「日本到着まであと25分……」
サンビームさんが難しい顔をしながら腕時計で制限時間を呟く。ここまで来るのにそれなりに時間を使ってしまったため、時間がない。そして、おそらくこの先に『ファウード』の力を手にした元リオウの手下たちがいるはずだ。
(八幡君……サイちゃん……)
彼らはこの先にいるのだろうか。無事でいるだろうか。不安で仕方ない。でも、だからこそ行かなければならない。彼らが助けを求めているのなら今度こそ、私たちが助けたいから。
「皆、回復液で体力と心の力の回復を! この先、どんな敵が現れるかわからん!」
「……ええ」
アリシエが水筒を片手に指示を出し、私もリュックに入れていた水筒を取り出す。だが、皆で分けていると全員の水稲が空になってしまった。体内魔物たちとの戦いが激しすぎたせいだ。
「よし、準備はできたな。僕とリーヤが先行する! 戦う準備だけはしておくんだ!」
そう言ったアリシエはリーヤと共に脳へ繋がる入り口に近づく。すると、扉が自動ドアのように開き、大きな部屋が私たちを出迎えた。その部屋の奥にどこかへ繋がりそうな扉がある。その上に筒が伸びているのでエレベーターなのかもしれない。
「……リーヤ、敵はいないか?」
「うん。あれがきっと上の階へ行くエレベーターだ!」
「よし、敵のいない今のうちに一気に行くぞ!」
彼の合図で清麿君が休んでいる治療用カプセルをティオ、ガッシュ君、キャンチョメ君が押す。その前をリィエンとシスターが走っていく。モモンもそれに続き、周囲を警戒しながら跳んでついて行っている。
「恵、そっちに敵は?」
「……いえ、いないわ」
私とフォルゴレさんはカプセルの後ろを走っているが周囲を見渡しても誰もいない。あまりに静かすぎて不気味なほどだ。
(ここで敵が待ち伏せしてると思ったけど……考えすぎ?)
暴走しているサイちゃんが『ファウード』の体内を彷徨っているらしいので全員が一か所に集まっているのかもしれない。つまり、上に行けば集団戦となる可能性もあり、その戦いは今まで以上に激しくなるはずだ。
そんなことを考えている間に最後尾で周囲を警戒してくれているサンビームさん、ウマゴン、アリシエ、リーヤ以外の全員がエレベーターに乗り込んだ。
「モモン、動かせる?」
「キキッ!」
エレベーターの基盤は魔界の言葉が刻まれており、私たちには読めない。でも、モモンは違ったようでシスターの言葉に力強く頷いた。
「いいわ! サンビームさんたちもこちらへ!」
「ああ、わかった!」
私の合図を聞いてサンビームさんたちもエレベーターへと向かってくる。これで上に行ける。そう思った時だった。
「イヤ、ちょうど2対2だ。お前たちはここで消えてもらう」
そんな低い声と共にエレベーターの扉が勝手に閉じ始める。このままではサンビームさんたちと合流する前に完全に閉じ切ってしまう。
「モモン、扉を開けて!」
「う、動かない!」
慌てた様子でシスターがモモンに声をかけるが彼が基盤を操作しても扉が止まらず、完全に閉まってしまった。フォルゴレさんとガッシュ君が力づくで開けようとするがビクともしない。怪力な彼らでも開けられないなら私たちでは無理だろう。
「さすがにお前ら全員を相手にすると手こずりそうなんでな。まずは2体確実に消させてもらう」
「貴様……ザルチム! それにファンゴ!」
エレベーターに乗れなかった彼らの前に現れたのは肝臓で私たちを捕まえた影を操る魔物、ザルチムと『ファウード』の封印を破壊する時に巨大な炎を術を使っていた魔物――ファンゴだった。ザルチムの
(でも、なんか様子が……)
あの時、檻に閉じ込められていたため、しっかりと顔を見たわけではないがもう少し子供らしい容姿をしていたような気がする。もしかして、ファンゴは『ファウード』の力を得たのだろうか。でも、ザルチムの様子は変わっていない。つまり、ザルチムは『ファウード』の力を得なかった?
「くっ、キャンチョメ! この扉を壊すぞ!」
「おっと、バカな真似はよしな。その扉を力ずくで壊そうとするとエレベーターそのものが壊れるぜ。扉だけじゃねぇ、床も、壁も、天井もだ。変なことをすりゃ上の階に行けなくなる。上に行きたきゃ、オレとファンゴを倒すこったな。そうすりゃ、エレベーターの横の制御盤をいじってエレベーターを正常に戻せる。もちろん、オレたちを倒せなかった時はお前たちをずっとそこに閉じ込めておくことになる」
私たちは人質にされてしまったのだろう。ただでさえ時間がないのにこんなところで足止めされてしまうとは。
「クソ、ザルチム、貴様!」
「フッ、アリシエ、リーヤ。お前たちとは腐れ縁らしいな」
「ウマゴン、あのファンゴって魔物、様子がおかしい。例の『ファウード』の力を得た可能性が高い。気を付けるんだ。『ディオエムル・シュドルク』!」
「メルメルメ~!」
サンビームさんもファンゴの様子がおかしいことに気づいたらしく、ウマゴンにアドバイスしながら術を使う。ウマゴンの体が大きくなり、鎧をまとった。
『室内で『ファウード』以外の魔力を感知しました。室内保護のため、防御壁をはります』
そんなアナウンスと共に部屋の壁を守るようにシールドが展開される。これで外からの攻撃でエレベーターが壊れることはないだろう。
「さぁ、
こうして、また目の前で戦いが始まる。それを私たちは黙って見ているしかなかった。
VSザルチム&ファンゴ戦は基本、カットさせていただきます。
ご了承ください。