やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.271 蝙蝠少女は友達(予定)をぶん殴りに行く

「そ、れは……」

 私を見つめるテッドに言葉を詰まらせる。何か言わなければならない。でも、何を言えばいい? 素直にそうだと頷く? それとも、はぐらかす?

「げ!? お前、ハイルじゃねーか! なんでこんなとこいんだよ! オレたちを連れ戻しに来たのか!?」

 だが、そんな私を救ったのはこちらを指さしながら叫んだパピプリオだった。どうやら、私がゼオンの手下として彼らを連れ戻しに来たと勘違いしているらしい。

「違うわ」

「じゃあ、なんだってんだよ!」

「……逃げるのよ。ここから」

 このまま誤魔化し続けて攻撃されても困るので正直に白状した。すると、私の返答がぅ意外だったようでパピプリオとルーパーは顔を見合わせる。

「お、お前が逃げる!? そんなゼオンってやつはやべーのか!?」

「ええ……そうよ」

 嘘。実際に戦えば魔物本人の力以上に本の持ち主(パートナー)との連携などが関わってくるので断言はできないのだが、魔力量や雰囲気だけで言えば私ならゼオン相手でも時間稼ぎ程度には戦えるだろう。こうして怯えて逃げ出すほどではない。

「なら、なおさらここから早く逃げねーと! な、話は聞いただろ? 飛行機に乗せてくれー!」

「だから、駄目だって言ってんだろ」

 パピプリオの懇願を一蹴するテッド。しかし、彼の視線は私から外れない。まるで、私の嘘を見抜いているように。

「……何よ?」

「いや、別に。お前ら、『ファウード』の中にいたんだろ? ここの道案内を――」

「――あれ、ここはどこだ? オレは誰?」

「チョバアア。私、宇宙人~。地球の言葉、ワ・カ・ラ・ナ・イ♡」

「あ?」

「ぎゃああああああ!?」

 テッドの言葉に嫌な予感がしたのだろう。パピプリオとルーパーは下手くそな演技をしながらその場から脱出しようと試みる。しかし、それがテッドの怒りを買ったのだろう。瞬く間に二人はボコボコにされてしまった。

「道、知ってんだな? 案内しないとジャブくらわすぞ」

「もうくらわしてます……」

 頭にたんこぶを作りながら地に伏す二人にため息を吐くテッドは私の方を見やる。その鋭い視線に思わず肩を震わせた。

「これでも勘はいい方なんだ。本当は何に怯えてんだ?」

「ッ……教える必要は――」

「――あ、お前、あれだろ! 災ってやつに怯えてんだろ!」

「ちょっ」

 私の言葉を遮って叫ぶパピプリオに後ろにいたユウトが小さく声を漏らす。だが、そんな彼の様子に気づいていないようでパピプリオは続きを話した。

「一瞬だけしか見えなかったけどあれはゼオン以上にやべーんじゃないか!? なんというか、本能が訴えるんだよ。近づくなって……ゼオンはまだ強者って感じだけど、災はもはやばけ――」

「――化け物なんかじゃない!!」

 気づけば彼の言葉を否定していた。いつの間にか歯を食いしばっていたのか、歯茎が傷ついて口の端から血が流れる。

「サイちゃんは……そんな子じゃない。そんな子、じゃないの……私は、知ってる」

 

 

 

 ――落としたよ。

 

 

 

 そう、知っているのだ。サイちゃんはそんな子じゃない。本当は優しい子だって私は知っている。

 魔界にいた頃、学校に変な時期に編入した私は年上だったこともあり、クラスメイト達から煙たがられていた。

 そんな時、たまたま隣に座っていたサイちゃんは優しくしてくれた。彼女からしてみれば本当に些細なことで覚えておくようなことじゃないかもしれない。でも、私はその優しさに救われた。絶対に友達になりたいと思った。

「知ってるのに……怖いの。サイちゃんが本当に災だったらって……ここにいる全員を皆殺しにしちゃうような化け物だったらって……怖くて怖くて仕方ないの!!」

 力が抜けてその場で両膝を付いてしまう。口の端から流れ、地面に落ちた血液を上書きするように涙が零れていく。

 本当に情けない。こんな有様では到底、『ツペ家』の繁栄など達成できるわけがない。サイちゃんと友達になれるわけがない。

 私は――あの頃から何も変わっていない。出来損ないの『逆さ尻尾(・・・・)』。それが生まれた時からツペ家の面汚しとして過ごした武姫、ハイル・ツペの正体だ。

『『ファウード』、再度、高速移動に入ります。高速移動機関、再起動。なお、ただ今のトラブルにより日本到着の予定時刻が約10分遅れます』

「……」

「お、おい! 黙ってオレをバイクに乗せるな!」

「ああ、パピー!」

 私の悲鳴に誰もが口を閉ざしていると『ファウード』の体内にそんなアナウンスが流れた。それがきっかけになったのか、テッドは無言のまま、パピプリオをバイクに乗せる。大切なパートナーを人質にされたルーパーは肩を落としてテッドの本の持ち主(パートナー)の後ろに座った。

「……ハイルっていったか」

「……」

「お前の言うサイって奴がオレの知ってるサイなら……知ってる。あいつがいい奴だってことをな」

「……え?」

 その言葉に顔を上げる。そこにはこちらを振り返らずに話すテッドの背中があった。

「オレたちとつるんでた頃はただ黙ってついてくるだけの気色のわりぃ奴だった。でも、オレたちのために色々と動いてくれてた。オレの頼みを受け入れてくれた。そのくせ、金を置いて消えやがった。ほんと、最後まで気に食わねぇ奴だった」

 そこで彼はこちらをチラリと見る。その顔は文句を言っているのに少しだけ嬉しそうに笑っていた。

「だからよ、少し心配だったんだ。あいつ、ガッシュたち以外に友達いんのかって……でも、お前みたいな奴がいてくれんなら安心だ」

「何、言って……」

「だって、そんな苦しそうに泣くほど大切だってことだろ?」

「ぁ……」

 簡単に諦められたのならここまで苦しんでいない。サイちゃんが災だと気づいた時点で復讐していたのならサイちゃんは私にとって復讐よりも大切な存在じゃなかった。

 でも、違った。サイちゃんが災だと知り、私は悩んだ。逃げた。苦しくて、悲しくて、情けなくて、泣いた。みっともなく泣き叫んだ。

 それだけの話。それだけのことだったのだ。

「じゃ、先に行く(・・・・)。あいつと話がしたいなら後で追いついて来いよ。もし、暴れてるなら一緒にぶん殴ってやろうぜ」

「いえ、その必要はないわ」

「ハイちゃん!」

 バイクのエンジン音に負けないようにはっきりとテッドに告げる。そして、目元を拭って大きく翼を広げた。それを見たユウトが後ろで嬉しそうな声を漏らす。

「おかげさまで目が覚めたわ。私も一緒に行く。そして、『ファウード』を……サイちゃんを止める。一緒にぶん殴ってやりましょう」

「……へっ、いい面になったじゃねぇか。ジード、ぶっ飛ばせ!」

「おう!」

「え、おい! ハイルがいるならオレたち必要ねーじゃん! 降ろしてくれ!」

「いやあああああ!」

 喚くパピプリオとルーパーを無視して私はユウトを抱えて飛翔する。そんな私たちの後ろをテッドたちがついてきた。

(待っててね、サイちゃん!)

 パピプリオたちのおかげで『ファウード』が日本に到着するまでのタイムリミットは伸びた。だが、ゼオンがそう簡単に脳までガッシュたちを通すとは思えない。今は急いで合流した方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 

「何よ、これ……」

 だが、私が立ち直るにはほんの少しだけ遅かったらしい。移動装置を使い、一気に『ファウード』の首まで移動した私たちを出迎えたのは地面に鉄の扉の残骸が大量に散らばったボロボロの部屋だった。

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