あたしと弱味と仮彼女:R   作:近衛龍一

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ひっさびさのこうしーんw
最近マギレコにハマっててですねはい……
少しずつですがぼちぼち更新していきたいと思います


羞恥心、悲壮感

 

 

「明久。そこ違うぞ」

 

「ううっ……。なんで陸人が僕の課題見てるのさ……」

 

「お前が1番勉強しないからだろうが。雄二は霧島に見てもらってるしムッツリーニは工藤が見てる。秀吉は木下がいる手前、真面目にしてるしな」

 

「僕だけ女の子じゃないじゃん!」

 

「仕方ない。じゃあ姫路に任せるか」

 

「わ、わたしですか?」

 

「姫路さんが教えてくれるの!?」

 

「あぁ。間違える毎に姫路の手料理をプレゼント。どうだ?」

 

「水谷様。ぜひ僕に勉強を教えてください」

 

 

西村先生が来てくれたおかげであの場は収まり、今は皆真面目に勉強している。

 

意外なのは水谷君が積極的に吉井君に勉強を教えているところだ。

 

 

「だいたい何で勉強なんてしないといけないのさ……。こんなのが将来役に立つとは思えないよ……」

 

「勉強しないやつの常套句だな。いいか明久。確かに今習ってることの大半は将来使わないかもしれない。でも勉強する行為自体は将来必ず使うんだ。学生の間の勉強ってのはそのために必要なことを学んでいるに過ぎん」

 

「うーん……イマイチよく分からないんだけど……」

 

「例えばお前がパエリアを作る時、適当に材料ぶち込んで一気に作るのか?」

 

「いや……ちゃんと順番に沿ってやるけど……」

 

「だろ?お前はパエリアの作り方を『学習』したから今はレシピを見なくても作れる。そしてそのレシピを『応用』することで違う味に変化させたりもする。これが勉強だ」

 

「つまりこの勉強は料理を作るのに必要ってこと?」

 

「飲み込みが悪いな……。今はパエリアを例に出したが他にもたくさんのレシピを頭の中に入れたやつが料理人になる。それが仕事になるんだ。明久、お前将来の夢とかあるのか?」

 

「ないね!」

 

「堂々と言うことじゃないだろ……。将来の夢がないなら、将来の夢が見つかった時に必ずその仕事に必要なことを勉強しなくちゃならない。その時になって勉強の仕方が分かりません、じゃ困るだろ?」

 

「な、なるほど……?」

 

「別に頭が良いからって何かあるわけじゃねぇ。でも、勉強のやり方を知っているやつは夢が見つかった時にそれに近づくのがより早くなる。それだけの話だ」

 

「じゃあ演劇の道に進むって決めてる秀吉はこういう勉強はしなくてもいいってこと?」

 

「極端な話をするとそうだな。でも秀吉は本当に将来演劇の道に進むのか?挫折したら?気が変わったら?人生ってのは何があるか分からねぇんだ。もしもの時の切り札があるに越したことはないと思わないか?」

 

「まぁ……そうだね。はぁ……やっぱり陸人には言葉で敵わないよ……。大人しく勉強します……」

 

「むしろお前に言葉で負けるヤツを知りたいくらいだが。どうせ負けるって分かってるなら最初からそうしろ」

 

 

なんというか、思ってたより真面目じゃない。

 

流石は学年次席というところだろうか。

 

てっきり勉強なんてまともにしたことないけど点数は取れるみたいなウザイやつかと思ってたけど案外そうでもないのね。

 

 

「……どうした木下。こっちをジーッと見て」

 

「いや、少し見直したわ。ちゃんと考えてるんだなって」

 

「惚れたか?」

 

「それはない」

 

「さいですか。って、お前ここ違うぞ」

 

「え?なんで?」

 

「ここでこんな式使ったらダメだろ。変なやつ求めちゃってんじゃねーか。ちょっとシャーペン貸せ」

 

 

ふむふむなるほど……。

 

だから何か違和感のある数字になっちゃったのか。

 

うーん……数学には割と自信がある方だったんだけどまだまだね。

 

 

「じゃあこれはどうすれーーっ!?」

 

 

気がつけば水谷君は肩が触れ合いそうなくらい近くにいた。

 

そりゃそうだ。

 

あたしのプリントに手を伸ばして問題を解いているんだから近いに決まってる。

 

だけどそれを認識した瞬間、驚くくらいに顔が熱くなるのが分かる。

 

な、何を意識してるのよあたしは……!

 

ただ問題を教えてもらってるだけじゃない!

 

そう、これはクラスメイトに質問するだけ!

 

他意はないんだから!

 

 

「ん?どした?」

 

「な、なんでもない。ついでにこの問題も教えて欲しいかな、と」

 

「いいぞ。ちょっと待ってろ」

 

 

問題をちらっと見ただけでサラサラと別の紙に解答を書いていく。

 

多分細かい解説まで書いてくれてるのだろう。

 

その様子を眺めながら意外と髪は柔らかそうだなとか、指が細いなとか、普段意識しない部分に目線が持っていかれてしまう。

 

あんまり認めたくないけど、やっぱりモテるだけあって顔立ちは整ってるのよね。

 

黙っていればいい男……なのかな。

 

性格悪いのも周りはあまり知らないみたいだし、評価が高いのも頷ける。

 

そういうところはあたしと似てるのかも。

 

まぁこいつの場合は周りにバレるほど人と関わり合いを持たないからバレてないだけで、あたしみたいに猫かぶってるのとは訳が違うけど。

 

 

「……のした。木下〜」

 

「ふぇ!?」

 

「何もぼーっとしてんだ。ほら解説。これでも分からなかったらまた聞け」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「なんで敬語なんだ?ってコラ明久。人がちょっと目を離した隙に寝てんじゃねぇぞ」

 

 

居眠りする吉井君の元に戻った水谷君がいた場所に残ったのは、綺麗な字で書かれた解説のプリントと羞恥に悶えるあたしの姿。

 

真っ赤になったであろう顔は段々と冷めていく熱と共にどんどん白くなっていく。

 

 

気づいたら水谷君のことを考えてた

 

 

そんな事実にあたしは人知れず打ちのめされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 


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