あたしと弱味と仮彼女:R   作:近衛龍一

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不幸が重なるというのはどうやら本当らしい

「本当にゴメンね優子! 何でも協力するって言ったのに……」

「いいってば。部活のミーティングなら仕方ないわよ。それに二人きりって言ってもただ作業するだけだし」

 

目の前の愛子はぱんっ、と両手を合わせて謝る。

朝のHRで高橋先生に頼まれた仕事は予想以上に大変そうな物だった。

原稿を数枚渡され言われたのはクラス人数分印刷してからそれを全て一つずつ冊子にしてほしい、と。

どう考えても1人で出来ない……もっと言うなら二人でも放課後遅くまで残らないと終わりそうにない。

だから水谷君にも頼んだのだろう。

正直放課後まで残っての作業に問題はない。

先生に任せられる仕事が大変であればあるほどそれだけ信頼されているからだ。

模範生を目指すものとしてこれほど嬉しいことはない。

ただ、躊躇うべきところは終わるまで水谷君と一緒という部分。

こいつと長時間一緒に作業なんて嫌に決まっている。

表立って言ったりはしていないものの、心で毒吐いたあたしであったが代表と愛子そんなあたしの気持ちを汲み取ってくれたらしく手伝いを申し出てくれた。

が、愛子はさっきも言った通り突然の部活のミーティング。

今度の大会に関して緊急招集らしい。

愛子は全国大会レベルを誇る実力の持ち主なので2年生ながらもこんな風に大会関係で呼ばれるのはよくあることだ。

むしろ呼ばれるほどに頑張っているのだからあたしは応援しなくてはならない。

こんなあたしの我儘に付き合わせる方が申し訳ない。

 

「代表もいいですよ。坂本君、待ってるんでしょ? 」

「………本当にごめんなさい」

「坂本君もタイミングが悪いというか何というか……」

「確かに悪意を感じるタイミングではあるわよね。だけどどうにせよ代表にとっては喜ぶべきことなんだから。さ、行ってください」

「………ありがとう、優子」

 

一方では代表の方も用事が出来てしまっていた。

昼休みに珍しくFクラス代表の坂本君が来たかと思えば今日一緒に帰らないかと誘いにきたのだ。

いつも代表から逃げ回っているだけに槍が降るのではないかと思わざるを得ない発言ではあるものの、代表にとっては千載一遇のチャンス。

もしかすると今後誘われることがないかもしれないというのにおちおちあたしの手伝いをする暇なんてないだろう。

 

そんな紆余曲折があったことにより、当初の通りあたしと水谷君だけ。

昼休みの時点で他のクラスメイトにも頼んでみたりしたが皆ダメ。

作業相手に水谷君を推薦してくれた鈴木さん同様『わかってるよ』オーラを出しながら温かい目でご丁寧に断ってくれた。

Aクラスとて国語の小説問題で主人公の心情は読めても実際生活でクラスメイトの心情は読めないらしい。

 

「じゃあボクも行くね、優子。一応部活が終わった後に行くつもりだから」

「ありがと、愛子。でもそんなに長く作業はやってられないわ」

「ふふっ、そうだね。ばいばい」

 

カバン片手に愛子は走って教室を出て行った。

そんな様子から本当は放課後すぐに集合場所にいかなくてはならなかったことが伺える。

本当に愛子ったら……。

 

「木下さん、水谷君。作業は職員室横の印刷室で行っていいのでよろしくお願いします」

「はい、分かりました。完成した冊子は職員室持って行けばいいですか?」

「そうですね。そうしてもらった方が助かります」

「じゃあ終わったら持っていきますね」

 

いつもの優等生スマイルで高橋先生を送り出し、あたしもあたしで印刷室へ向かう準備に取り掛かる。

これ以上躊躇っても仕方が無い。

出来るだけ早く終わらせて帰るしか策が残ってないのだから。

宣言通り愛子の部活が終わる前に終わらせて、愛子と一緒に帰るとしよう。

 

 




今気がついたんですが短編が意外と見られてた……。

あんなに見られるんだったらもっと洗練してから投下した方が良かったかな……。

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