魔法少女リリカルなのは ~若草色の妖精~   作:八九寺

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期末考査が終わるまでは更新しないつもりだったんですが、テスト失敗したので厄落としに(?)投稿……

今回は過去話です、唐突ですがご容赦を・・・・・・
たしか当時これを書いたときは、スランプで『過去編でも書いてみるか!』ってノリで書いた記憶があったり無かったり。


13:~幕間 戻らぬ過去~

~幕間 戻らぬ過去~

 

 

突き抜けるような晴天の下、城内の中庭に僕のあきれた声が響く。

 

城……と言っても、御伽噺(おとぎばなし)に出てくるような高い石造りの城ではなく、周囲を城壁で囲んでいる巨大な邸宅っていうのが正しい表現だと思う。

 

もともと街の周囲は見上げると首が痛くなるほど高い城壁で囲まれている。

つまりはこの街そのものが巨大な城のようなもので、差し詰めこの屋敷は城で言う“本丸”みたいな物だ。

 

この都市(くに)は自由商業都市『アルカディア』。

どの国家にも属さず自立、各国に囲まれた地でありながら流通の要所にある事、そして少数精鋭、強力な魔法騎士団を持つ事で自治権を守る都市国家だ。

 

 

……話を戻そう。

 

 

僕の目の前に居る細身で長身、藍色の短髪で掴みどころの無い男……彼が僕の師匠の『レンフィールド・フォン・メイザース』だ。

 

「……師匠、訓練の前に酒を馬鹿飲みするのは愚かだと思います」

 

僕は訓練用に刃引きされた剣を腰に下げたままため息をはいた。

刃引きされた剣による訓練とはいえ金属の塊ではあるから、斬りつけられたら間違いなく骨折する。

だから、僕も師匠も得物以外は完全な戦装束。

 

僕は魔鋼金属製の肩当て・胸甲・腰当て・手甲、武装は片手用長剣と魔鋼金属製の盾、後は体の各部に小刀が備えられている。

 

対して師匠は龍革製の革鎧一式。武装は愛用する片刃の双剣『紅空(べにぞら)』『蒼天(そうてん)』の刃引きされた影打ちのみ。

……後は、手に持っている安酒の酒瓶だろうか。

あの大きさの瓶なら充分鈍器になる。

 

……酒は命と豪語する師匠が、酒瓶を武器にするとも思えないけど。

 

「我が弟子ジークよ、甘いな……。少し酒が入ってた方が動きにキレが出るって――――うぇっぷ」

 

……飲みすぎて吐きかけているこの人間がこの国、それどころかこの大陸最強の剣士だとはとても見えない。

この酒癖の悪さが無ければ非の打ち所のない人なのに……。

 

「どうします? 酔いが醒めるのを待ちますか?」

「……うんにゃ、剣を振るってた方が気が紛れる」

 

師匠がふらつきながらも立ち上がる。

 

「本当に大丈夫ですか?」

「……大丈夫だ。酔いの醒めるような鮮烈な攻撃を頼――――」

 

――――話しが終わる前に距離を詰めて抜剣、首筋に向け本気で振るってみた。

 

しかしその一撃は師匠が抜いた剣に迎撃されて不発に終わる。

 

「ちょ!? おま!? 万が一止め損ねたらどーするんだよ!?」

「……不意を打ったのに“万が一”なんですね、僕の攻撃が師匠に通るのは」

 

……僕と師匠とのこの理不尽なまでの力の差は何なんだろう?

僕は師との差にため息を吐くしかない。

 

「うんにゃ、並の奴なら剣の柄を握った瞬間にソイツのクビが飛んでるからな。お前さんは充分一流だよ」

「……それは、褒めてるんですか?」

「おう」

「…………」

 

……正直に言う、そこまで認められようと師匠に勝てるとは全く思えない。

そんな思いが顔に出たのか、師匠が苦笑いを浮かべた。

 

「やれやれ、将来はこの国を背負って立つご身分――王子様――なのに何処まで剣の高みに至ろうとするんだか……」

「……この街(くに)と市民(こくみん)を守れるくらいの高みまで」

 

僕の答えを聞いた師匠が呆れた表情で、僕の頭を小突く。

 

「戦いは大人に任せて、年相応に遊んだらどうだ?」

「“年相応”って言われても、周りは年上ばっかりですから」

「……それが最大の問題だよなぁ」

 

師匠がため息を吐くけれど、僕は剣の修行が楽しいから別に気にならない。

 

「……それより師匠は早くお相手を見つけたらいかがですか? 身を落ち着けろとお父君から急かされているのでしょう?」

「余計なお世話だ! 俺だってその気になりゃあオンナの一人や二人……簡単に…………簡単に…………」

「…………」

「…………」

 

えもいわれぬ沈黙が僕たちの間に落ちた。

 

「……良いんだ良いんだ! 俺は酒と添い遂げるんだ!!」

「……すいません、謝りますから拗ねないでください」

 

呑んだくれてなければいい男なんだろうけど、いつもこんなだから……深く語らないであげるべきだろう。

 

「…………ええい! どうしてこんな話題になった!? 訓練だ! 訓練を開始する!! 使用可能なものは、己の体と両の手の武器と剣技のみィ!!」

「……ん。わかりました」

「準備はいいな? じゃあ始めェ!!」

「ちょっと僕の準備はまd――――ッ!!」

 

金属と金属がぶつかる甲高い音が響く。

 

(イカズチ)の如く斬り込んできた師匠の双剣を、左手に持つ盾で受け止める。

けど、勢いを殺すことが出来ず、腕1本分ほど後退させられた。

 

僕は魔法で自分の筋力を強化して戦っているが、筋力強化の魔法すら師匠は純然たる生身。

本来なら拮抗するはずも無いんだけど、師匠は拮抗どころか軽くソレを凌駕してくる。

……あぁ、なんて理不尽な。

 

心の中でそう呻いた刹那、師匠と僕の視線が交差した。

 

「フッ……!」

 

一気に左腕に力を込めて双剣を上に弾くと、その勢いのまま独楽(コマ)のように1回転して、がら空きになった師匠の胴体に剣を振るう。

双剣が弾かれた瞬間に師匠が全力で後ろに飛ぶが、それは読み通り。

 

読んだ上で、ただ普通の一閃を放つはずが無い。

 

「アルカディア騎士団流魔法剣闘術、壱の型、『烈斬』」

 

僕の剣の斬線に沿って、魔力で編まれた刃が飛ぶ。

風を斬り裂き高速で駆ける魔法刃が、狙いを違<たが>わず着弾する寸前、後退し地に足を着いた師匠がそれを迎撃した。

 

「ハッ! 我流剣技『朧霞<おぼろがすみ>』!」

 

双剣が目にも止まらぬ速さで縦横無尽に幾重にも奔った。

ガガガガガッという音が刃から響き、魔力刃が粉々になって四散する。

 

「……非常識にも程があります」

 

普通、魔力刃に対抗するには障壁で受け止めるか、同じく魔力刃で相殺するのが一般的で、何の加工も施されていない純粋な金属剣でいとも簡単に魔力刃を破壊できるのは、世界広しと言えども師匠以外に存在しない……と信じたい。

 

“一点への瞬時多重斬撃”……師匠が行なっているのはそういう行為だ。

 

魔力刃という存在は、結合した魔力の集合体……みたいなもの。

師匠がやってみせたのはその魔力結合の一点を破壊することで、魔力刃の構造を連鎖的に破壊している……言葉にすればこれだけだけど、実行するのは至難の業だ。

 

……さすが、“剣爛武踏”の二つ名は伊達じゃない。

 

これが戦だとこの剣技に加えて、浮遊魔法によって浮かべられた無数の剣が全方位からそれぞれが意思を持ったみたいに飛んでくるんだから、想像しただけでゾッとする。

 

「ほらほらまだまだァ! それで仕舞いか!?」

「……まだまだ、訓練は始まったばかり」

 

さらりと言い放つと、僕は剣を握りなおす。

 

次の瞬間、高速移動技法“瞬動”で師匠に肉薄すると、僕は再び剣戟を開始する。

 

そして――――

 

 

◇◇◇

 

 

「――――師匠はホントに純粋な人間なんですか?」

 

現在、試合の反省会の真っ最中。

……うん、もちろん負けたよ?

 

“はふはふちゅるちゅる”と、初めて食べる目の前のものに息を吹きかけ冷まして口に運びながら、僕は師匠に問いかける。

 

「む、失敬な。お前と違って、俺は純粋な人間だぜ?」

 

いかにも『心外だ』という表情を浮かべる師匠。

 

「亜人種……特に蜥蜴人系の血を引いてたりはしません?」

「んなわけないだろ、俺の体の何処にウロコがあるよ?」

 

知ってる、聞いてみただけだ。

 

「……確かにウロコは無いですけど。…………じゃあ、あの訓練中のアレは一体どうやって」

「ん? 俺何か変なことしたっけ?」

 

……本当に心当たりが無いらしい。

僕は意を決して口を開いた。

 

「普通の人間は、壁を走らないです」

 

今日、僕の“師匠の信じられない行動烈伝”に新たな伝説が刻まれていた。

 

それは訓練の途中、僕に中庭の片隅にまで追い詰められた師匠は、中庭の壁を走って逃げると言う奇想天外な行動だ。

 

真剣な僕に対し、師匠は“ずぞぞぞぞぞッ”と凄まじい音と共に目の前のお椀の中身を口の中へと消していきつつ答えた。

……というか僕と同じものを食べているはずなのに、どうしてここまで音が違うんだろう?

 

「あ? あれか? あれは、ほら、アレだよ……勢い?」

 

……なんで疑問系。

 

「…………(ジト目)」

「……いや、仮にも師匠をそんな胡乱な目で見るなよ。ホントだって、勢いつけて走れば出来るんだよ!?」

「僕だって中庭の壁の一面くらいなら出来ますよ? でも師匠は中庭の壁を延々とぐるぐる走れるじゃないですか、もっと言えばさっき走って城壁乗り越えたじゃないですか……非常識極まりないです」

 

走って上れるような壁じゃ、屋敷の防衛網を見直す必要さえあるんだけど。

 

「…………………………ああ、そういやこのメシはどうだ? 東方の国の料理で“うどん”とか言うらしいぞ?」

 

形勢不利を悟ったらしい師匠があからさまな話題転換を行なった。

ここで師匠の傷口をえぐるように追撃を加えるほど僕は残酷じゃない。

 

「はい、つるつるしてて食べにくいですが、美味しいです」

 

今更だけど、僕たちは城の外の『屋台広場』と呼ばれる所に居た。

この広場は名前の通り、小さな飲食店が軒を連ねている一角だ。

 

店を持つほど資金が無い人々や、流れの料理人などが屋台を借りて店を出している。

 

『ここにくれば大陸中の料理が食べられる』……そういう話しがまことしやかに囁かれているけど、あながち間違いじゃない。

 

交易都市でも有る此処は各地の食材も集まってくるから、誰がどんな材料を求めようと大抵対応できる。

料理人にとっては夢の如き環境だとも言われているが、あいにく僕はその辺りに詳しくないからなんとも言えないけど……。

 

「他の騎士連中が話してるのを聞いてな、一度行ってみようと思ってたんだが当たりだったな」

 

話しながらも、お椀の中のつゆを一息で飲み干した師匠が“ふぅ~”と一息ついた。

すっかりくつろぎ体制に移行した師匠を横目に僕はあくまで自分の速度で食べ進め、少し遅れて完食する。

 

そして、重大な事態が現在進行形で進んでいることを突きつけた。

 

「師匠、僕を城から連れ出すこと……許可取りましたか?」

「…………ヤベェ」

 

師匠の頬に冷や汗が流れた。

 

「というかそれ以前に『メシだ、メシに行くぞ! 最短距離でな!』って言いながら僕を担いで城壁駆け上って城から出ましたけど、事情を知らない人が見たら、城から誰かを担いで逃亡した怪しい人間ですし」

 

心なしか、雑踏にまぎれて僕を探す仲間の騎士たちの聞こえてくる。

同時にそれに比例するように師匠の顔色が青くなってきた。

 

「…………ふ、酔った勢いってのは恐ろしいぜ!」

「何でも酒のせいにすればいいってもんじゃないですけど?」

 

爽やかに笑って誤魔化そうとする師匠を、僕は笑顔で追及する。

間違っても負けた腹いせなどではない、断じて違う。

 

そうこうしているうちに、明らかに僕を探している声が聞こえてきた。

 

「……さて、ジーク、……食後ではあるが帰りは城まで競争だ! 今ならまだ誤魔化せる!」

「手遅れだと思いますけど……」

 

うどんの代金を払う師匠を待つ間、軽く筋肉を解す。

 

「まだ間に合う! というか間に合わないと俺の給料が減らされる! 経路は自由、追っ手の騎士に捕まったら無条件で負けだ! それでいいな!?」

「はい、了解です」

 

あたふたと財布を仕舞っている師匠とは対照的に、僕は静かに競争の開始を待つ。

 

そして――――

 

「位置について――――」

「――――よーい」

 

僕と師匠の声が重なる。

 

「「ドン!!」」

 

――――僕たちは、城へと向けて駆け出した。

 

 

◇◇◇

 

 

――――この一ヶ月後、街が滅び、この日常が二度と見られなくなるとは思っていなかった。

 

――――……思えるはずも、無かった。

 

……これは僕の取り戻せない、遥か遠くの故郷での、大切な、大切な思い出。




2013/07/18:改訂完了
旧版とは各所変更あり。


以下、どうでもいい戯言

島風ちゃん、ウサ耳可愛い。
雷ちゃん、八重歯可愛い。
電ちゃん、なのです可愛い。
文月ちゃん、ドジっ娘可愛い
皐月ちゃん、ボクっ娘可愛い。
響ちゃん、銀髪可愛い。

全て改造済みの艦娘たち。
ふと悟る、『やっぱり私は貧乳が好きなんだ!』と。

『艦これ』横須賀鎮守府にて提督中。
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