魔法少女リリカルなのは ~若草色の妖精~   作:八九寺

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3日連続投稿の2日目です。


34:脱衣場での遭遇&砲火後ティータイム

34:脱衣場での遭遇&砲火後ティータイム

 

「……有意義な話し合いだった」

「あれは断じて話し合いなんてものじゃないの、言葉の殴りあいというか、別の何かなの」

 

 ゆすr……いや、脅はk……ではなく、話死合いを無事終えた僕と、それをただ呆然と眺めているしかなかった高町とユーノは、ついさっき戦闘していた海沿いの公園へと戻ってきていた。

 

 仕事をやりきった後の爽快感を覚えながら息を吐く僕に、半ば恐怖の混じった視線を向けた高町がありえないとばかりに大きく首を横に振った。

 

「艦長さんと執務官さん、最後はひどい表情だったね……」

「人を舐めてかかるのが悪い」

 

 にべもなくそうユーノに言ったら、苦笑いで返された。

 

 あちらに行く前は14時過ぎ位だったのに、もう夕焼けが綺麗な時間になっている。

 さすがの携帯電話もあの船の中じゃ通じなかったから、アリサに連絡も取れなかった。

 心配を掛けてないといいんだけど。

 

「じゃあ僕はもう行く、あんまり帰りが遅れると弟子が心配する。今度現場で会って、邪魔するようなら敵だから」

 

 暗に『邪魔しなきゃ、こっちから手は出さない』と言ってるのだけど、察してくれたかどうか。

 

「う、うん。あれで良かったのか分からないけど、交渉ありがとうございましたなの」

「お礼を言われる事のほどじゃない。あと、なのなの言い過ぎ」

「それは私のアイデンティティなの……!?」

「知らないよ、そんなこと」

「あ……そう言えば預かったままのジュエルシードは……」

「……保留、また後で。お前が預かっといて、ただし管理局に渡さないこと。僕はさっさと帰りたい」

 

 それだけ返事をして、地面に手を当てて転移魔法陣を展開する。

 別に跳んだり走ったりして帰ってもいいんだけど、こっちのが早い。

 

「う、うん、分かった。……えっと、またね!」

「会わずに済んだ方が、平和だとは思うけど」

 

 その言葉を最後に、僕たちは別れたのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

 無事にアリサの家へ戻ってきた僕は、取りあえずお風呂へ向かってた。

 戦闘でP-90をかなり撃ったせいで、髪が火薬臭い。

 あと、体が全体的に埃っぽい。

 

 こんな姿でアリサに会いに行ったら怒られる。

 

 そんなこんなで、とにもかくにも汚れを落とすことを最優先にしたのだ。

 

 シャワーだけでいいかなと思いつつ、敗北とはいえ初戦闘をこなしたアリサをどう褒めようか――というか僕自身は初陣の 後、師匠にどうされたか――をぼーっと考えながら、不用心にも脱衣所の扉を開けた。

 

「「「…………」」」

 

 扉を開けた先、肌色成分9割位の3人と目があった。

 

 まず一人目、こっちを向いて前かがみになりつつ下着を履こうと、膝まで引き上げた状態で固まるフェイト。

 上半身はなにも身につけず、申し訳程度に肩からバスタオルを掛けてた程度なので、隠れてないも同然。

 露出度合いで言ったら、前の温泉の時より数倍ヒドい。

 

 そして二人目。

 下がミニのズボンで、上半身が生まれたまま、肩に掛けたタオルで濡れた髪をタオルで拭いていた犬耳人型のアルフ。

 目があった瞬間、『……ありゃ』って表情を浮かべた後で、困った感じで頬を掻きながら腕で胸を隠しつつ、『よっ』と小さく手を挙げて挨拶された。

 

 最後に三人目、護衛対象でありながら僕の弟子で友人、アリサの姿。

 こちらはまだマシで上下共に下着は着用済み、シャツを羽織ってボタンを留めてるまっ最中。

 そして、一番奥にいたアリサの対応は見事の一言だった。

 

「ふッ……!」

 

 手元にあったタオルを掴んで素早く一振りしつつ、まっすぐ延びきった所で固定の魔法と硬化の魔法を同時施行。

 これでタオルが一種の鈍器に様変わり。

 そしてそのまま加速と筋力強化の魔法で自分を加速、アルフとフェイトの間を縫って僕に肉薄した。

 

「目を閉じて、さっさと……扉を……閉めなさい!!」

 

 そう言いながら自ら後ろ手で扉を閉めて、フェイト達を隠した手腕は見事なものだ。

 もとから運動神経がいいお陰だろう。

 

 『な、なんでまたこんなカッコの時にッ!?』、脱衣所内からそんなフェイトの悲鳴にも似た叫びが聞こえるが、全くもってその通りだと僕だって思う。

 

 と、現実逃避をしている場合では無かった。

 アリサの命令に、体は反射的に目を閉じている。

 

「お゛ぅ!?」

 

 勘で体を後ろへ反らして初撃を避けたが、つい寸前まで顔があった場所を鈍器が通り過ぎていった。

 そのまま勢いをつけて後ろに体を倒しバク転、そのまま距離をとる。

 

 感じた風圧的に、タオルへ重量増加の魔法も発動してるな、これ。

 

「待って、話せば分かる」

「問答無用ッ! 一発叩く!」

 

 いま、脳内に5・15事件って言葉がよぎった。

 僕が首相で、アリサが青年将校だ。

 

 僕の状況的に、死亡フラグって呼ばれる台詞なんじゃないか。

 

 明らかに悪いのは僕なので、防御に徹する構えをとった。

 短剣での刺突の如き踏み込みを半身で避けた瞬間、近づいたアリサが囁いた。

 

「(急ぎで話したいことがあるの、争う振りして此処を離れて)」

「(わかった)」

 

 小さく頷いて、扉の向こうのフェイトに聞こえる程度の声を出す。

 

「ふはは、師匠より優れた弟子など居ないのだよー。悔しかったら一撃与えて見せろー(棒読み)」

「……今更だけど、随分こっちの世界に毒されて来てるわねッ!」

 

 言葉の割に、アリサの攻撃が苛烈極まりない……。

 

 そんなこんなで脱衣所から距離を取った僕らは、近かったアリサの部屋で落ち着いた。

 

「……ちょっと後ろ向いてて、着替えるから」

「……んむ、そう言えばさっきはゴメン」

「…………良いわよ、もう。偶然だったんだろうし。でも、あとでフェイトたちには謝っておきなさいよ?」

 

 『ん』とコクリと頷いておく。

 しかし、フェイト達の裸を見るのは二回目か……この国のことわざを信じるなら、もう一度見る機会があるのかもしれない。

 

「着替えたからこっち向いていいわよ」

 

 そう言われて振り向いたものの、非常に気まずい。

 アリサ自身に許されたのだから気にする必要はないんだろうけど、とうのアリサ本人が顔を赤くしたまま僕から目を逸らしている。

 

 気まずさをかき消すように、僕はアリサへ話を振った。

 

「で、話っていうのは?」

「さっきお風呂に入ってたのは知ってるわよね。その時に見たフェイトの背中、鞭で打たれたみたいなヒドい怪我があったのよ――――」

 

 

◇◇◇

 

 

 アリサから聞いた話を纏めるとこうだ。

 

 僕と別れた後、共にアリサの家へ転移した3人は、『爆風なんかで埃っぽいし、親睦も兼ねて一緒にお風呂にでも入らない?』とアリサの強引な誘いでお風呂に入る流れになったらしい。

 

 で、そこで服を脱いだフェイトの背中の傷をアリサが発見、どうしたのかと問いつめようか躊躇した時に、フェイトも傷を見られた事に気がついて気まずい雰囲気に。

 そこでアルフが僕に貰った魔法薬を見せて、とりあえず使ってみようという話に。

 

 お湯に溶かして入ってみたら、フェイトの傷はみるみる内に治っていってアルフが大喜び。

 オマケでアリサとアルフの肌もツルツルに。

 

 その喜びように流されて、どうして怪我したのか聞けないまま、さっきの事態に至ったそうだ。

 

 『ちょっと話しただけだけど、フェイトは何か追いつめられてるというか余裕が無いというか……。ジークも少し注意して見てあげて?』

 との言葉でこの話題を締めくくった。

 

 背中を預けて戦ったせいか、アリサはフェイトとアルフに“戦友”っぽい気持ちを抱いたらしい。

 互いに信頼できてるなら戦友っていうのは良いものだ、うん。

 

 

 閑話休題(ソレはともかく)

 

 

 あまり話が長引くと二人を心配させるということで、僕たちは脱衣所に戻った。

 フェイト達にさっきのことを謝ってから入れ違いに僕はシャワーを、アリサ達はリビングへと向かう。

 

 ちゃちゃっとシャワーを終えた僕がリビングに向かうと、そこではちょっとしたお茶会が開かれていた。

 

「おー、ふぃーふふぁふぁいふぁ。ふぁやいふぇ、おとふぉのふぉふぁ」

「アルフ、口一杯に食べながら話しちゃダメだよ」

 

 ほっぺたをお茶受けのビスケットでハムスターみたいに――狼なのにハムスターとはこれ如何に――膨らませたアルフが何かを喋ったけど、さすがに解読できなかった。

 そしてその隣に座るフェイトに咎められてしまっている。

 

「んくっ……。さっきは助かったよ、とりあえずはありがと」

「どういたしまして、こっちもアリサを送って貰えて助かった」

「あ、私からもお礼言わせて貰うわ、ありがとう」

「あ、その、私もシャワーまでお借りした上に、お菓子もご馳走になって……」

 

 ……おぉ、なんだこのお礼の言い合い。

 

「鮫島呼ぶから、お茶淹れて貰いなさい」

「だいじょぶ。淹れ方は教わった」

 

 アリサの護衛をするなら知っておいた方が何かと便利だと、何だかんだで教えもらった知識は非常に多い。

 自分の分を淹れるついでに、ほかの3人にも新しいお茶を淹れる。

 

 特に今は仕事――つまりは護衛業務――中じゃないから、わざわざ立ったままではいない。

 

 そのまま、空いていたアリサの隣に座る。

 

 仕事中はともかく、アリサはプライベートでは一歩引いたつき合いをされるのは嫌らしい。

 現状は『護衛』・『師弟』・『プライベート』と、計3つの使い分けか。

 

「ありがとう。……あ、そのクッキー、美味しかったわよ」

「どれ?」

「コレよ。……あ~ん」

「……あむ」

 

 差し出されたクッキーをくわえる。

 濃厚なバターの香りと、厚い見た目に対して軽い食感、そしてすっきりとした甘さ。

 これは確かに――――

 

「ん、美味しい」

「そう、まだあるわよ?」

「…………えっと、二人はお付き合いしてたりするのかな?」

「ぶ……っ!? つつつ付き合ってないわよ!?」

 

 お茶を飲んでいたアリサが()せる。

 苦しそうなので、アリサの背中をさする。

 

「そ、そうなんだ。…………よかった」

「え、何か言った?」

「な、何でもないよ!?」

 

 安心というか何というか、よく分からない表情で、フェイトが首をぶんぶんと左右に振ったのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「さて、じゃ一息ついたところで……今回出くわした、管理局とかいう奴らとの、話し合いの結果を話したいのだけど」

 

 僕の言葉に、3人が居住まいを正した。

 

「見解の相違、相手の対応その他諸々、納得いかないところが有ったから、敵対関係……とは言わないまでも、無駄に関わるな、と釘を差してきた」

「……穏便に?」

「もちろん、交渉における常識の範囲内で」

 

 嘘は言ってない、嘘は言ってないから問題ない。

 

「ただし、さっきからこっちを調べようと、何か飛ばしていろいろ調査してるみたいだから、絶賛妨害中」

「飛ばしてるって……サーチャーの事かな?」

「たぶん、そうだとは思うけど……」

 

 フェイトとアルフが、何か納得してる。

 

「サーチャーって?」

「えっとね、アリサが分かるように言うなら……魔力で動く機動型の調査端末?」

「……地上を思い通りに動かせる、監視衛星みたいな認識でいいのかしら」

「うん、いいと思う」

「フェイト、分かりやすい説明ありがとう」

 

 僕からフェイトにお礼を言って、説明を続けていく。

 

「相手さん、よっぽど僕たちを調査したいのか、街中にソレをばらまいてる。

現在、僕の鋼鷹の部隊が、そのサーチャーを全力で破壊して回ってるところ」

 

 大型(一般的な鷹の実寸大)の隊長格が1羽、中型(大型の半分)の分隊長が4羽、小型(両手に乗るくらいの大きさ)が分隊につき30羽ずつの計120羽。

 

 それらを市内全域を四分割、サーチャーとやらを警戒し、見つけた8割程度(全滅させると、相手も躍起になるだろうし……)を随時破壊。

 この屋敷を中心とした警戒にしないのは、そうすることで警戒範囲がばれ、この屋敷周辺に注意が向けられるのを防ぐためだ。

 

「それ、結構ジークに負担掛かるんじゃないのかな?」

「大丈夫。僕が現時点で指示を出してるのは、隊長機だけ。それより下の部隊は、一度作れば後は半自動だから」

「便利なんだね、ジークの魔法は」

 

 挙手したフェイトの質問に、近くを飛んでいた小型を呼んで見せ、答えておく。

 

「わぁ……♪」

 

 僕の肩の上を、小さくぴょんぴょん跳ね、時折首の部分を『クリッ?』と傾ける小型から、フェイトの視線が外れない。

 というか、見る目が心なしかキラキラしてる気がしないでもない。

 

「――――腕、こっちに伸ばして」

「え、うん」

「お手を拝借」

 

 僕へと伸ばされた手を取る。 

 僕たちの間で繋がった道を、鋼鷹が跳ねてフェイトへと渡っていった。

 

「小型でも、これくらいは利口」

「ふ~ん? 私たちのサーチャーと違って、可愛げがあるね」

 

 アルフがフェイトの肩に乗った小型を、指でつつく。

 

「あ、でもその子の(くちばし)、鉄板くらいは普通に貫くわよ」

 

 首筋に鉄板を貫くような生物が止まってたら、誰だってこんな反応を返すだろう。

 アリサの言葉に、フェイトが固まるのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「じゃあ、そろそろ真面目な話に移る」

 

 僕は日常生活レベルに緩んでいた空気を引き締める。

 僕の雰囲気が変わったのを察した3人が、それぞれ居住まいを正した。

 

「僕たちは管理局に不干渉を要求した。ただし、相応の対価があれば助力はするし、ジュエルシードの引き渡し……というか売り渡しも応じる。

 さて、フェイトとアルフはどうする?」

 

 同様に敵対するか、不干渉か。

 あるいは共同戦線を張るか……まぁこの3つが大体の選択肢だろう。

 

「とりあえず、僕の立場……というかスタンス?はアリサの安全、ひいてはこの街の安全を守ること。これに反する意向なら、共同戦線は無いと思えばいい」

 

 僕の言葉に、目を合わせるフェイトとアルフ。

 二人の間で念話か何かが交わされたのか、フェイトがうなずいて話し出す。

 

「私がジュエルシードを集めてるのは、母さんがそれを望むから。……集める理由は分からないけど」

「ふむ……個数の指定は?」

「可能な限り多く……21個全てが目標」

「……あんな危険物、21個も集めて何するつもりだ」

「私は何も知らないから……」

 

 僕はまだ見ぬフェイトの母親に疑念を抱く。

 あれだけの物、2~3個あれば並大抵の魔法を使うに十分な魔力が供給できるだろう。

 あるいは、ジュエルシードの願望器としての効果を期待しているのか?

 

「ダメだな、現状じゃ僕からは共同戦線は組めない。極論だけど、フェイトの母君(ははぎみ)がジュエルシードに世界の破滅を願ってたりしたら、目も当てられない」

「母さんはそんなことしない!」

「あくまで例え。『最悪を想定し、最善の準備をする』、が基本だもの」

 

 フェイトの母に対する感情を探りつつ、僕は小さく肩を竦めてみせる。

 この盲信に似たフェイトの母に対する言動……これはもしかして。

 

 1個の暴走を相殺しただけであのザマだ、あれが複数個同時に暴走したら目も当てられない。

 

「それに、だ――――」

 

 僕は眼を細めてフェイトに問いかける。

 

「――――お風呂でアリサが見た、背中に付いてたっていう傷、それはもしかして母君に付けられたんじゃないのか」

「そ、それは私が母さんの頼みを叶えられ無かったから……ッ!」

「……図星か」

 

 フェイトほどの実力者が、ただただ黙って鞭に打たれるはずもない。

 だとしたら考えられるのは、逆らえない相手によって傷つけられたと言うこと。

 

 僕の言葉に否定じゃなく、母君への弁護が飛び出すあたりが既に異様だ。

 母君なりのフェイトに対する(しつけ)なのかもしれないが、戦闘に影響がでるほど痛めつけている時点でその線は消える。

 

 ……そもそもが、自分の娘にそれほどの真似ができるのだろうか?

 

 母君はフェイトのことを嫌っている、あるいは憎んでいる?

 ……いかんせん、判断するには情報が足り無すぎる。

 

 アリサが何か言おうとするのを目線で制す。

 

「僕たち側の結論を伝える。管理局は治安維持と平和を名目に、僕はこの街の……ひいてはアリサの安全のためにジュエルシードを集めている。だけど、フェイト側が目指してる先が僕には分からない。それがはっきりするまで、僕たちは味方にも敵にも成れないし、交渉でのジュエルシードの取引にも応じない」

 

 管理局には、まだ商談によるジュエルシードの譲渡という選択肢がある。つまり、現状のフェイトはそれ以下の状況と言うわけだ。

 

 フェイトは何か言おうと、何度か口を開きかけ……結局何もいえずにそのまま黙り込んでしまった。

 

「……とは言え――――」

 

 僕の言葉に、視線を落としていたフェイトが顔を上げる。

 

「僕としては、さっさとこれらの回収を終えて、元通りのこの街になってくれればそれでいい」

「……?」

「つまり、だ。フェイトが先にジュエルシードを見つけて、処理してれば僕から強奪には動かない。無理しない程度にさっさと回収してしまえ。……それにまぁ、疲れたらこの屋敷に来ればいい。アリサが喜んでもてなすだろうし、鮫島の料理も美味しい」

「……いいの?」

 

 いつでもいらっしゃい!とばかりにウィンクしながらグーサインをフェイトに突きつけるアリサを片目に見つつ、僕は付け加える。

 

「この屋敷の敷地内は不戦区域だ、敵意の無い者は拒まない」

 

 まぁ、悪意ある者が入り込もうとしたら、手ひどい目に会う結界なんかも組んであるし。

 管理局のあの黒服レベルの奴らなら、1個師団で来ても帰り討てるはず。

 

 フェイトとアリサが、『ありがとう、ございます』『いーのよ! ……あー、それにほら、私たちはもう友達でしょ?』『と、友達……私が、友達でいいの?』『いいのよ! 私たちは友達、いいわね! Yesかハイで答えなさい!』『……う、うん!』『ハイかYesって言ったでしょ!』『ふぇえ!?』などと会話している横で、感極まった表情でご主人を見ているアルフを手招きする。

 

 近づいてきたアルフの耳元に口を寄せてささやく。

 

「アルフ、お前のご主人様はたぶん、ここまで言っても遠慮したり、決心付かずおろおろするだろうから、何かあったら簀巻きにして連れてくること」

「わ、分かった。フェイトの為なら、アタシは何でもする! バインドは得意なんだ、何かあったら言われたとおりに連れてくるよ!」

 

 アルフが力強くうなずきを返す。

 これで何かあったら、芋虫状態のフェイトが僕たちの元へ来ることになる。

 

 まぁ、そんな事になったら、魔法で動けないフェイトをくすぐり回そう。

 笑わせて笑わせて笑わせて、死んだ目で痙攣が止まらない状態にまで追い込めば、次からは自主的に来てくれるだろう、うん。

 

 故郷だと、これへ更に体中の感度を上げる薬を飲ませることで、拷も……いや、なんでもない。

 強引に笑わせ続けるとね、呼吸できなくなって……みなまで言うまい。

 

 度を過ぎたくすぐりは『死に至る(やまい)』ならぬ、『死に至る笑い』足りえるのだ。

 

『コンコン』

 

 

 軽いノックの音とともに、鮫島が顔をのぞかせる。

 

「お嬢様方、坊ちゃん、お夕食の支度が整いました。食堂へどうぞ」

「ありがとう、鮫島。じゃあフェイト、続きはご飯食べながら話しましょ?」

「ん」

「うん、アリサ」

 

 僕たちは連れ添って食堂へ向かう。

 

 

 結局このあと、フェイト達はバニングス邸に泊まることになるのだった。

 




>……有意義な話し合いだった
本文中ではテンポの関係で割愛。この場でなのは組の契約(ジークが代理で交渉)とジーク組の契約がそれぞれ交わされた。
内容を箇条書きで纏めると、
①命令に対する拒否権(管理局に手を貸すなのは組のみ)
②出撃1回当たりの固定報酬と、ジュエルシード確保成功の際の成功報酬の設定(なのは組のみ)
ジュエルシードの売買交渉に関して(手に入れたジュエルシードを、それぞれ値段交渉の上で管理局へ譲渡~という感じの内容)(ジーク組のみ)
その他、細かい条件設定などが為されたが、メインは上記の2つ。

毎回、リリカルなのはを見た際に疑問に思ってたのが上記の2点。
義務教育の小学生を、学校を休ませた上でジュエルシードの回収任務につかせる管理局に、一言物申したい所存。


>無事にアリサの家へ戻ってきた僕は、取りあえずお風呂へ向かってた。
『Q:汚れや臭いくらい、魔法でなんとかなるんじゃね?』
 ↓
『A:何とかなるが、気持ちの問題。あと、ラッキースケベを起こさせるための布石』


>扉を開けた先、肌色成分9割位の3人と目があった。
独断と偏見による、三人の下着の色の予測
アリサ:淡いブルー
フェイト:黒
アルフ:白
異論・別案がある方は感想欄にてどうぞ、長々と語りますw


>サーチャー(アースラの監視班)vsジークの鋼の鷹の群れ(オートパイロット)
現在、海鳴市各所にて熾烈な攻防中。
鋼鷹のイメージは、『Fate/Zero』にてアイリスフィールが使用したワイヤーの鷹。
あるいは『仮面ライダー 響鬼』のディスクアニマル。
お好きなイメージでどうぞ。


>悪意ある者が入り込もうとしたら、手ひどい目に会う結界なんかも組んであるし。
護衛対象の屋敷を魔法で要塞化していく、まさに護衛の鏡。攻める者にとっては、悪夢でしかない。

というわけで34話です。
ご意見ご感想・誤字脱字・その他質問事項などありましたら感想欄にてお聞きくださいませ。
些細な事でも真面目に回答いたします。

また、評価ポイントなどつけていただけますと嬉しいです。

では、次回更新をお待ちください。

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