魔法少女リリカルなのは ~若草色の妖精~   作:八九寺

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さて、投稿しようかな(PC起動)
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    ふぁっ!?

……ということが、10月半ばに起こってました。

更新遅れた理由は9割これのせい、残りの1割はグリザイアのシリーズをプレイしてたせいorz

    _______  
   / 睡眠の重要性!!
  / |      睡眠の重要性!!
/ (;`-ω)」☆
|  ノ  ノ
|  >⌒>

なお、あとがきにて皆様へのアンケートを実施します。


38:戦闘前夜&アリサの初めて

38:戦闘前夜&アリサの初めて

 

 予定されたタッグ戦の前日、僕とアリサは持っていく得物(えもの)や作戦を最終確認するために、僕の部屋へ集まっていた。

 僕たち二人、既にお風呂も入り終わって既に寝間着姿。寝る前に見直しておこうという話になったのだ。

 

「えーと、魔力刃(まりょくじん)用のノーマルタイプの(つか)が60振り、特殊効果付与のタイプが30振り……足りるかしら?」

「余裕で足りると思う」

 

 装備を一通り、何故か僕のベッドの上で並べて吟味するアリサにアドバイスしつつ、僕も持っていく武装類を点検していく。

 

 P90が2丁、ファイブセブンが1丁に非殺傷弾を詰めたマガジンを必要数。

 生命に関わる怪我をさせないという誓約の元、今回僕が使用する剣群乱舞用のナイフはアリサと同様に魔力刃タイプだ。

 実体剣型だと、不殺はともかく命に関わる怪我を負わせ無いというのはさすがに厳しい。

 

 基本の武器はこの2種だ。

 

 あとは回復魔法やら強化魔法――FFでいうケアルやマバリアだ――に必要な触媒やらだけど、これは既に準備済みだし使わないで発動するのも可能だ。

 純粋な攻撃魔法を使えない――ドラ○エで言うとメラゾーマやライデイン――僕は、攻撃魔法の触媒を準備しないだけ準備が楽でいい。自分の体と武器と触媒が有れば問題ないのだ。

 

 防具に関してはアリサと揃いで作ったコートで事足りるけど、今回は追加で急所部分の裏地に作ってあったポケット部分へ薄い金属板を差し込んで、防御力を増強しておく。

 物理防御的に強化されるのはもちろん、入れる金属プレートには防御の刻印を刻んであるから魔術防御的にも有用。

 

「はいアリサ」

「ありがと」

 

 プレートを入れ終わったコートをアリサに渡す。重量の増加量はそうでもないはずだ。現にアリサも持ったコートを何度か上げ下げしてみたあとに、頷いて異空間へとしまいこんだ。

 

「明日の戦闘、何か作戦はあるの?」

「いや、無いけど」

「はぁ!?」

 

 目を見開いたアリサが素っ頓狂な声を上げた。

 いや、なぜそこまで驚くのか。

 

「こーいうのは綿密に作戦練って挑むもんじゃないの?」

「……逆に、集団戦が初めてのアリサは綿密な作戦通りに動けるの?」

「……ぐぬぅ」

 

 反論しないところを見るに、自覚はしているようでなにより。

 

「ちょうどいい機会だし、アリサはフェイトに再挑戦でもしてればいい。僕が他の3人を相手取るから」

「いやいやいや、さすがにそれは無茶――――でもないの?」

「ん、3人位なら片手間でいける」

 

 そもそも僕と師匠そしてアリサの『剣群乱舞』は、『個 対 多』や『個 対 軍』などに向いている戦闘スタイルなのだ。

 複数相手の戦闘に不慣れなアリサは別として、僕には造作もない人数差である。

 

「……そ。じゃあ私はフェイトにリベンジマッチに専念するわ。……今度は負けないんだから」

「ん。今回はタッグ戦、久しぶりに僕の本領発揮」

「それ、どういう意味?」

「僕の使う魔法は僕一人でも良いけど、仲間がいるともっといい。だけど誰かと組んで戦うの、故郷にいたときぶりだから」

 

 ――――そう、僕の故郷がまだ有ったとき以来(・・・・・・・・・)……だ。

 

「……ジーク――」

「ん?」

「――今までパパに止められてたから聞こうとしなかったけど、ね。……いつか、ジークの故郷の話、私に聞かせて欲しいわ」

 

 僕の気配か表情から何か察したのか、神妙な面持(おもも)ちで僕に向かって身を乗り出してくる。

 というか、好奇心旺盛なアリサが聞いてこないのを不思議には思ってたけど、デビッドさんが言い聞かせてたのか。……気を、使われたのか……な。

 

 僕は少し逡巡し、小さく頷いた。

 

「……今すぐは無理だけど、いつかきっと時が来たら」

「うん、待ってるわ」

 

 ふふっとアリサが僕に小さく微笑んだ。

 

「――さて、私は点検終わったけど、そっちは?」

「問題なし」

 

 頷いて荷物一式をしまい込む。

 

「お疲れさまー」

「ん、お疲れさま」

 

 こてんと後ろ向きに倒れ、くてーっと力を抜いてベッドで横向けに寝転がる。『たれぱ○だ』ならぬ『たれありさ』だ。

 そしてそのまま僕の枕に顔を埋めると、『ん゛ー』と形容し難い声を上げつつ小さく足をパタつかせた。

 

「何してるの?」

「…………何でもない」

 

 いや、何でもないなら何故(なにゆえ)顔を枕に埋めて不満げな気配を滲ませてるのだろう。

 お風呂上がりでいい匂いのするアリサの長い髪が、そんな事をしているせいでベッドの上にふわっと広がってしまっている。

 

 髪同士が絡まらないよう、取り出した髪留めでアリサの髪を纏めておく

 

「……ありがと」

「ん、僕の髪留めで悪いけど……アリサの髪は綺麗だから絡まらせちゃもったいない」

「ふ、ふーん……ジークは女の子の髪が短いのと長いの、どっちが好き?」

「長いほうが好き」

 

 即答して、結んだアリサの髪を手櫛(てぐし)()く。

 んむんむ、柔らかくていい触り心地。

 

 髪は女の命……なんて言葉が有るけども、魔法的にも髪が長いほうが便利なのは事実だ。

 自身の髪は魔法を使う上での媒体に最適だし、過剰魔力の貯蔵なんかにも用いることが可能。

 そのため僕も髪をアリサ並に延ばしている。

 

 けど、そんな事を抜きにしても長い髪は好きなのだ。

 

「……ふふっ、そっか、長いほうが好きなのね」

「ん、好き」

 

 さっきまで放たれていた不満げな気配はドコへ行ったのか、喜色を隠そうともせず鼻歌を歌い出すアリサ。

 アリサの機嫌が良いに越したことはない。

 

 うつ伏せに寝るアリサの頭を撫でつつ髪を梳き続ける。

 しばらくの間、毛繕いをされている猫のように喉を鳴らしていたアリサだったけども、いつの間にか本当に寝入ってしまっていた。

 

 起こして自室まで連れていこうかと考えて、それを断念する。

 下手に起こした結果、寝付けなくなって明日の対戦に差し障ったら困る。

 

 ……しかし、ベッドを取られた。

 とりあえず明かりを消し、僕は適当に居間のソファで寝ようかと思いベッドを降りようとしたところで、寝間着の裾を引っ張るアリサの手に気がついた。

 

「…………」

 

 裾を摘んで、無言で引っ張ってみるが……ほどけない。

 指を解けば行けるかなと思い、試そうとして諦める。キツく握りしめてて、これじゃ解こうとした拍子に起こしかねない。

 

「……まぁいいか」

 

 早々に解くのを諦め、僕もアリサの隣に横になって布団を掛ける。

 むにゃむにゃと何かアリサが寝言をこぼしつつ、もぞもぞと僕の腕を抱き枕のようにして抱え込んで静まった。

 

「……おやすみ」

 

 聞こえてはいないだろうけど僕はそう呟いて、最後に一度髪を撫でると目を閉じるのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「おはよー、フェイト」

「うん、おはようアリサ、ジーク」

「ん、おはよ」

「おはよう、二人とも体調は……万全そうだねぇ」

 

 決戦当日。僕とアリサ、フェイトとアルフは管理局が指定してきたポイント、海鳴公園に集まっていた。ここから転送で戦闘用に魔法結界で固定し、隔離した海上空域へ転送するらしい。

 

『――――すまない、待たせたようだ』

 

 目前に現れた画面に黒服の姿が現れる。

 

『じゃあ転送を行う、転送後の場所が初期地点だ、開始までそこを離れられないよう魔法陣が展開されている。転送後にカウントダウンを開始、0になり次第に戦闘開始だ』

 

 僕たちの足下に転送の魔法陣が浮かぶと同時に、目の前の画面が消える。

 若干の空間の揺るぎの後、僕達が転送された先は海上にある建造物の上だった。周囲を見渡すと似たようなビルが海上に建造されている。

 

 おそらくこれが戦闘空間で、話に聞いていた演習用の建築物なのだろう。

 今度は目の前にカウントダウンのウィンドウが現れた、数字は……5分。

 

 ――――仕込みをするには十分な時間だ。

 

「あー。……どうしよ、緊張してきた」

 

 服の上から戦闘用のコートを羽織り、装備類を装着し終えたアリサは意味もなく手を閉じたり開いたり、きょろきょろと周囲を見渡したりとせわしない。

 

 アリサの格好(かっこう)は動きやすさを重視した長袖のシャツとズボンに、僕が作ったお揃いのロングコート。

コートの両腰の部分に開けたスリットからは、左右それぞれズボンのベルトに装着された剣群用の魔法刃の柄が装備されたホルスターが出されている。

 

 対する僕の格好は同じくシャツとズボンにコート。アリサと違うのは、両腰のスリットから出るホルスターにはそれぞれ拳銃――ファイブセブン(対魔導師用弾頭)――、両手には肩からたすき掛けにSMG(サブマシンガン)のP90――こちらも対魔導師弾頭だ――を左右それぞれ一丁ずつ。

 両手が塞がってるけど、弾装交換に関しては魔法で代用するので問題なし。反動も魔力による筋力強化や反動制御で対応可能だ。

 腰の後ろの部分には大きめのウエストポーチが一つ、中には魔法に使う触媒などをすぐ取り出せるように保管中。

 剣軍乱舞用の柄を装備してないけども、これはただ単にアリサと違って魔法で取り出せるからだ。

 

 落ち着きの無いアリサを横目に、僕は一つ小さな缶を取り出すと中に入っていた飴玉大の半透明な薬を手にとって口に含む。

 前にアルフの治療で飲ませた薬と違って、これは甘みをつけても問題ないので飲みやすいように調味してある。ちなみにこの薬はレモン味だ、甘酸っぱくて美味。

 

 コロコロと口内でそれを転がしながら、アリサに呼びかけつつ肩を突ついた。

 

「アリサ、アリサ」

「なに、どうしたの?」

 

 僕に反応してこちらを向いたアリサの肩と腰に、手を伸ばして抱き寄せる。

 

「ちょ!?」

「アルフにシた時に約束したぶん、いまスるね――――」

「え……――――ん……む!」

 

 軽く眼を目を瞑ってアリサに口づけし、口内の薬を彼女側へ舌で押し込んだ。

 

「――――……ん、これでいい」

 

 薬が溶けて無くなるまで、たっぷり3分ほど続けていた口づけを終えて唇を離す。

 腕を緩めてアリサを解放すると、くてっと膝から崩れ落ちた。力の抜けたアリサの手から杖が離れ、カランと音を立てて床に転がった。

 

「……う」

「う?」

「うううーーーーっ!」

 

 どうかしたのかとしゃがんで様子を見ようとした僕を、アリサの両手が弱々しくぽかぽか叩く。

 

「――――は、初めてだったのに……ばかぁ」

 

 両手自身のを頬に当ててふるふると顔を振るアリサなのだけど、表情は嬉しそうというか恥ずかしそうというか……嫌がってはないと思うのだけど。

 

「緊張は吹っ飛んだ?」

「吹っ飛んだわよ、緊張なんて!」

「それはなにより。……いまの薬は僕とアリサを魔術的につなぐ薬」

「つまり?」

「アリサは僕の過剰分の魔力を使える、一度に使用できる総魔力量も増えるはず。あとは僕が発動する援護系の魔法が効きやすくなるとか……まぁ実感したほうが早いかも」

「……かなり凄いじゃない、ソレ」

 

 僕の説明を聞いたアリサが感心した風に声を上げた。

 

「まぁアリサ一人だから、これが六人七人とかになったら逆に全体的な弱体化すると思う」

 

 欠点や副作用の無い薬なんて、そうそう無い。カウントダウンを見てみれば、残りは30秒を切ったところだった。

 

「――――じゃあ、悔いのない戦いを」

 

僕は腕を伸ばすと、アリサに向かって拳を突き出す。

 

「――――ええ、ありがと。ジークも頑張って」

 

 片手に杖を握ったアリサが、空いた片手で僕の拳にコツンと自身の拳を触れさせた。

 二人揃って小さく笑う。

 

 

 ――――さぁ、戦いを始めよう。

 




前書きにもあったとおり、HDDが逝かれたので『全編書き下ろし』ならぬ『全編書き直し』になりました……泣ける。


以下説明、設定など。

『僕たち二人、既にお風呂も入り終わって』
――もちろん男女別ですよ?

『魔力刃型』と『実体剣型』
魔力刃型……柄の方に、刻印や術式を彫り込まれたタイプ。魔力を流し込むと魔力で編まれた刃が現れる。敵を極力傷つけずに捕らえることや、携行性に優れる。

実体剣型……金属の刃の方に刻印や術式を彫ってあるタイプ。魔法が無効化されても、実体を持った刃なのでダメージを与えられる可能性が高い。ただし、そこそこ嵩張るので主人公のように何らかの収納方がないと辛い。

『P90が2丁、ファイブセブンが1丁』
筆者がサバゲーで愛用している銃のため、手元にあるぶん勝手が分かるので採用した(小声)

『純粋な攻撃魔法を使えない』
主人公は『魔力で鍛えて物理で殴る』を地で行くスタイル。

『アリサと揃いで作ったコート』
ペアルック(死語
形状のイメージは、『ムシウタ(角川スニーカー文庫)』の特環のメンバーが着ているコート。夏涼しく冬暖かくなるように魔法を仕込んだりしている、無駄に技術力を積み込んだ一品。

『こーいうのは綿密に作戦練って挑む』
「(主人公が)高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に」対応する。つまりは行き当たりばったりの、主人公のアドリブ任せ。

『アリサはフェイトに再挑戦』
戦闘模様はカットされる予定。
要望があれば、番外編orオマケという形で書こうかと。

『『たれぱ○だ』ならぬ『たれありさ』だ』
どなたか、絵心のある人が描いてください、私は美術の成績がずっと『2』でした……。

『そしてそのまま僕の枕に顔を埋めると、『ん゛ー』と形容し難い声を上げつつ小さく足をパタつかせた。』
TVアニメ『グリザイアの果実 第3話』を見て、衝動的に書き加えた。後悔はしていない。
はたから見ると、『お風呂上り』の『男女が二人きり』で『一緒にベッドの上』である。

『「ふ、ふーん……ジークは女の子の髪が短いのと長いの、どっちが好き?」
「長いほうが好き」』
筆者がリリカルなのはのSSを書く上で、絶対に改変しようと決めていたところ。アリサはショート(A's最終話)より、ロングのほうが似合っていると思う。

『軽く眼を目を瞑ってアリサに口づけし、口内の薬を彼女側へ舌で押し込んだ』
拙作36話のフラグ回収、アルフと同様に薬の口移し。ただし、ファーストキスはレモン味。
恐らく『レモン味のキス』の初出は、ザ・ピーナッツ(日本語版)が歌っていた「レモンのキッス」だと思われる。

以上、説明ならびに設定などでした。
『ここ説明不足だっ!』などありましたら、感想欄からいただければお答えします。

また、ご意見ご感想などありましたら、こちらも感想欄からいただけると幸いです。感想を励みに頑張ります。

次回更新は、8割ほど終わってるのでわりとすぐです。

次回予告
「素晴らしい、さすが僕の弟子、愛してる。あとで何でもしてあげる」
『ちょおおおおぉ!? そ、その言葉、忘れないでよね!』
「ん!」
第39話『三つ巴の戦場&墜ちる雷光』
お楽しみに。

ご意見募集
『本作品におけるPSP版シナリオ 「魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE -THE GEARS OF DESTINY-」について』
活動報告に記事を挙げておきますので、そちらでご意見いただけると幸いです。

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