Fate/the alter   作:zaregoto

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#09 knocking

 間違っていた。

 

 私は、公にはなってはいないものの、優れた血統の直系にあたる。そう、祖父からは告げられていた。昔から、いや今でもそれを心に置いて、生きていた。胸を張って言える事だ。

 

 しかし、今私は、そのことを今日のこの日ほど疎ましく思うことはないだろう。

 

 私がこの血に縛られていなければ。振り回されていなければ。生まれて来なければ、この運命は変えられただろう。

 

 命が消えるその瞬間まで、エミリアはそう思い続けていた。正体不明の敵に、腹部を刃物で刺されながら。敵から距離をとり、無理矢理刃物を抜いた。

 

「う、あぐぅ、、、!!」

 

 酷い激痛が、彼女を襲う。それでも彼女は膝をつかなかった。余命僅か。自分自身で分かる、最後のこと。それでも、彼女は諦めなかった。

 

 間違っていたとしても、後悔はしないように。

 

 この瞬間に出来る、全てを彼女は行おうとしていた。

 辺りを見回す。焼け野はら、ほどではないが、炎に包まれているのは確かである。生存者を探した。しかし、それは無意味になった。命という命が感じられないのだ。

 

「それ、でも。あの子、、、だけは!!」

 

 彼女は左手を天へと向けた。

 

「令呪において命ずる!私のサーヴァント、生きなさい!!そして!幸福になりなさい!」

 

 三画あった令呪は、残り一画へ。エミリアは、残った令呪見て思った。

 もしあの子が本当にサーヴァントならば、私が死ねば、あの子も消える。あの子を救う方法は、1つしかない!

 

 村の中心には、一際輝く場所があった。それは、数多くの魔術師が求めた聖杯の輝きに他ならなかったのである。

 度重なるイレギュラーにより、出現してしまった聖杯。しかし、偽りと言っても、聖杯は聖杯だ。やってみる価値はある。

 

 少女は敵を睨み付けながら、言い放った。

 

「私は!あの子を救う!お前がどれ程恐ろしい化け物なのだとしても、私はお前を打ち砕くッ!」

 

 少女は目の前の敵に向かって、そして聖杯に向かって走り出した。

 

************************************

 

「これで終わりだ」

 

 俺は最後の起点に手をかざし、それを解除した。

「お見事ね。やれば出来るじゃない」

 

「うるさいな、出来るっていったろが」

 

「あら。何度か失敗したのは誰かしら?」

 

「う、くぅ、、、」

 

 そんなことをしていると、遅れて凛とアーチャー、更に士郎がやって来た。

 

「こっちは終わったわよ。そっちは?」

 

「こっちも、今終わったところだ」

 

 校内に存在する結界の起点を、二組に別れて解除していたのである。それも、今終わり、校内全体に広がる違和感はきれいさっぱりなくなった。

 

「キャスターの呪符は効くわね。めんどくさい手順を踏まずに、こうも簡単に解除できるなんて」

 

「伊達にキャスターを名乗っているわけではないのよ」

 

「これで、ここは大丈夫なのか?」

 

 士郎が不安そうに聞いてきた。

 

「そうだな。とりあえずは、だが。しかし、アイツらが同じことをしないとは限らないから、警戒は必要。それよりも、、、」

 

「どうかしたの?」

 

 凛が不思議そうに問う。

 

「ライダーのマスターの持っていた本。あれは恐らく偽臣の書だ。マスターは他にいると見える」

 

「なるほどね。だから信二みたいな三流の魔術師にも、サーヴァントを扱えたのか」

 

「なぁ、なんなんだ?その偽臣の書ってのは」

 

「令呪を一画使って、マスター権を一時的に他人に譲渡できる代物だ。マスターの代役みたいにな」

 

 説明をし終わると、凛だけが訝しげな顔を浮かべていた。

 

「凛?どうした?」

 

「、、、いえ。なんでもないわ。今日の所は帰りましょう」

 

「そうだな。士郎、腹へった。な、セイバー、、、って、あれ?」

 

「帰ったらまず、セイバーにお説教しないとよね。彼女がいれば、今回の件は、いくらか簡単に済んだんだもの」

 

 俺たちは、月明かりに照らされながら衛宮邸へと帰った。

 

*********************************

 

「士郎!これはどーいうことなのかしら!?お姉さん、不純異性交遊は許しませんよー!!」

 

 帰宅した俺たち、というよりも士郎に待っていたのは虎の咆哮だった。

 藤村大河。士郎たちの学校の教師で、切嗣とも接点があったらしい。

 

「いや、だから藤ねぇ。さっきもいったろ?ここにいるキリツグはえーっと、切嗣を頼ってこの家に来て、遠坂は家がリフォーム中でその間、ホテル暮らしってのも可哀想だから、俺が呼んだんだよ!」

 

「遠坂さんのことは分かりました!だけど!この人!切嗣さんを頼ったキリツグさんって何よ?お姉さん、頭がゴチャゴチャで!」

 

「それはぁ!」

 

 いよいよ、士郎が可哀想なので俺も助け船を出そう。

 

「あー、えっと大河さん、だっけ?」

 

「んん!?はい、そうですが?」

 

「実は俺の両親が、貴方が知っている衛宮切嗣さんに大変よくしてもらっていたんですよ。それで、彼のような人に育って欲しいってことで、名前をそのまま貰ったんですよ。だから俺の名前はキリツグ。キリツグ・ペンドラゴンなんです」

 

 一瞬、大河の顔が止まる。どうやら、彼女の中での状況整理が始まったらしい。それも終わったようで、笑顔に変わった。

 

「つまり、あなたは切嗣さんに恩返しにきたと!」

 

「えーっと、あー、、、、うん。そうです」

 

 本来の目的はそれなんだが、今言ったことはその事じゃないし!考えることを放棄したのか。本当に教師か!?

 とまぁ、都合がよいので心のなかで突っ込むだけにしておいた。しかし、だ。

 

「、、、、、、」

 

 こう見ていると、切嗣は魔術社会で広く知れ渡っているものとは酷くかけ離れている。いや、恐らく切嗣の本当ってのは、こういう平和なものなんだろう。

 そう感じてしまうと、目頭が熱くなってきた。

 

「平和の代償、か」

 

「どうかしたの?マスター」

 

 俺の様子に気付いたのだろう。見かねたキャスターは、俺に声をかけてくれた。

 

「ん?いや、なんでもないんだよ。なんでも、ない」

 

 そうだ。なんでもないんだ。彼は、もうここにはいないのだから。

 

 俺たちは大河を含めた数人で夕食を食べた。ここ最近ゴタゴタしていたので、ゆっくり食事をしたのも久しぶりのような気もした。今は、士郎とセイバーが食器を片付けている。

 

「大河は帰ったのか?」

 

 いつの間にか居なくなっていたので、士郎に聞いてみた。

 

「ああ。なんか、実家で用が有るみたいでさ。というか、その最中に寄ったらしいんだよ。わざわざ夕飯を食べに」

 

「じゃあ、心置きなくセイバーに理由を聞けるな」

 

 大河が居たので、聞けなかったが、今なら大丈夫だろう。

 セイバーが急にいなくなったわけを。

 

 あのあと、大河がやって来てセイバーも遅れて現れた。だから、話ができなかったのだ。というより、それより大河を対処する方が大変だった。

 

「、、、分かりました」

 

「セイバーは、何をしていたの?」

 

 凛が少し怒ったような口調で問いただした。

 

「人と、会っていました。いえ、ただの人間ではなく、英霊です」

 

「無事でよかったな」

 

 嫌みっぽく言ってみたが、セイバーは気付かない。

 

「前回の、聖杯戦争に参加していた英霊と、会っていたのです」

 

「え!?ちょっ、、、待ってセイバー。今、一気に疑問点が増えたのだけど!?どういうこと!?セイバー、この聖杯戦争、2回目なの?」

 

「はい」

 

「なんで言わなかったのよ!?」

 

「聞かれなかったので」

 

 お前、機械じゃないんだから。

 

「、、、キリツグは、さほど驚いてないみたいね。まさかとはおもうけど、知ってたの?」

 

「まあ、そのまさかです」

 

「あなたも!なんで言わないのよ!」

 

「別に、言ったところでどうにもならないだろ。2回続けて参加するなんて、稀有なこと、そうそう起きないからな。でも、起きたわけだ」

 

 前回の参加者。つまり、今回のアサシンだと推測できる。なにせ、ここにいる3人。イリヤのバーサーカー。青タイツのランサー。そして、あのライダー。消去法から言って、最後のアサシンが妥当だろう。

 

「前回の、アーチャーでした。英雄王ギルガメッシュ、それが彼の真名です」

 

「バビロニアの半神半人の王か。まさか、人類最古の王が、アサシンとは」

 

「あり得ます。彼は宝具として、多くの宝具を貯蔵しているのです。彼の蔵の中に」

 

「原初の王だから、あらゆる宝具の原典を持っているとかか?」

 

「え?!そんな!、、、どんなチートキャラよ、まったく」

 

 凛は目を丸くして言った。

 

「つまり、これで7騎のサーヴァントが出揃ったわけだ。ここからが、本番、か」

 

 やっと、聖杯戦争というものが始まったらしい。7人のマスターとそのサーヴァントによる殺し合い。ま、今回は6人なんだけど。

 

 ピンポーン。

 

 シリアス濃厚な話をしているその時、玄関の呼び鈴が鳴った。

 

「誰だ?こんな時間に」

「こんな時間って、まだ7時じゃないか」

 

「まぁそうか」

 そう言って、士郎は玄関に急いだ。

 

 、、、、、、、。

 

 声は聞こえないが、立ち往生しているらしい。時間がかかっている。

 俺がここに住まわせてもらうと分かった時点で、俺はこの屋敷に簡単な結界を何重にもしてかけた。並の魔術師では破れないだろう。サーヴァントならば分からないが、キャスターにも以前誉められたので、多分大丈夫だ。

 だからこそ、ここまで緊迫した空気になる必要はないのだが。

 

 みんな無駄に神経を尖らせている。

 これも、いよいよ、始まったからだろう。

 

 そんなことを考えていると、トコトコと二つの足音が聞こえてきた。

 

「えっと、来客だ」

 

「ま、間桐さん」

 そこにいたのは、紫色の髪の毛の、大人しそうな女性だった。

 

*********************************************

 

「間桐桜です。みなさん、よろしくお願いします」

 

「いや、これはこれはどうもご丁寧に」

 

 彼女は士郎の家によく来ているらしく、久し振りに来て、このような大所帯になっていたことに初めは驚いていたが、落ち着いてきたようだ。

 

 凛が彼女のことをチラチラと見ていることは気にしないでおこう。

 

「キリツグさんは、先輩のお父様と御関係があるのですか?」

 

 いきなり突っ込んだことを聞いてきた。

 

「そうだな、彼は命の恩人だ。理由は聞かないで欲しい」

 

「え。す、すみませんでした。出過ぎたことを」

「いや、いいんだよ。切嗣を知っている人間からしたら、謎だからな」

 

 とても優しそうな女の子だ。話していて、そう感じられる。

 

 しかし妙だ。何かを感じる。別の何か。彼女の中に。間桐と言ったので、恐らくマキリの蟲ジジイのところだろう。先程出会ったライダーのマスターも間桐と言うらしい。そして、彼の偽臣の書。

 

 ひとつの選択肢として、彼女がライダーの本当のマスターとして心に留めておくとする。もし無関係だったとしたら、悪い。

 

 あのジジイがまさかこの聖杯戦争に参加していることは、恐らくないだろうが、そういう選択肢もあり得る。

 

 また、もしこの子がジジイの実験体になっていたとしたら。その可能性も大いにある。俺にやろうとしていた妙な魔術。それがこの子にされていたとしたら。

 

 この子も、救ってやらないと、いけないかもしれない。

 

「でも驚きました。こんなに大勢いたこともそうですけど、遠坂先輩もいらっしゃったなんて」

 

「ええ、、、」

 

 それはそうと、凛は心ここに有らずという状態だ。

 これは、心配?いや違う。これは、恐怖なのか?凛はこの子に恐怖している。そうなのか?

 

「桜、今日はどうしてこんな時間に?」

 

「いえ、兄さんのことなんですけど」

 

「慎二が、どうかしたのか?」

 

 士郎の表情が若干強張る。恐らくあの場にいた者は皆顔をしかめるだろう。

 

「兄さんが帰ってこないので、もしかしたら、先輩の家に来ているのかと思いまして」

 

「来てないよ」

 

「そう、ですか」

 

 この子はただ自分の兄を心配しているだけなのだ。

 

「、、、、!?」

 

 その時、俺の脳内に妙な感覚が襲った。

 魔力の波。風に、空気に乗って届いてきている。ここにいる全員がそれを感じていた。

 

 全員が。桜を含めた全員だ。

 

「これは」

 

「この嫌な感じ、感じたことがある。これは、学校のやつと同じ」

 

「ああ。何故気づけなかった!!学校はフェイクだ!本丸は別の所に!」

 

「慎二のやつ、やってくれたわね、、、。ぶん殴るだけじゃ済まさないんだから!」

 

 俺たちは、桜に帰ってもらい魔力の発信源へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

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