今日は日曜日で、街は人で賑わっていた。いや、この賑わいは恐らく別のものも含まれているのだろう。
昨晩の事件、ライダー陣営が行った結界魔術だ。更に、謎の爆発。当事者であるキリツグたちは、その現場へと向かっていた。
「ま、こうなるわよね。似非神父も大変だわ」
凛はそんなことを呟いた。ふざけて言ったのだろうが、顔はふざけていない。それもそのはずだろう。これから最終的に向かうのは、彼女の『妹』のところなのだから。
間桐桜。
形式上は、間桐家の人間で、間桐慎二の妹である。しかし、それは形式上は、だ。実際は、前述の通り、凛の妹なのである。
凛によると、第4次聖杯戦争が始まる少し前、間桐の家との同盟がまだ続いていることを示すため、養子に出されたとか。間桐の家では後継者不足もあり、喜んで迎えられた。
しかし、それも形式上だったのである。
間桐慎二によると、何やらよくないことをさせられているらしい。時臣氏は、そうなることを承知の上で養子に出したのだろうか。人の価値観は、人それぞれだが、やはりあの人は優雅さに欠ける。残念なことに、それは凛にも受け継がれているようだ。うっかり、とか言うと、凛に怒られるだろうけど。今はふざけていられない。
「まずはコトミネに会おう。教会にいなかったから、恐らく現場にいるだろう。監督役は大変だからな」
「本当に、桜も巻き込まれているのか?何かの、、、間違いなんじゃないか?」
士郎が心配そうにたずねた。
「確実に巻き込まれている。初めてあのこに会ったとき、おかしな感じがしたんだよ。たぶん、俺が昔、あのジジイに会ったときに感じたのとおんなじだ。、、、えげつないことされてないといいが」
「やめなさい。やめないとぶん殴るわよ」
凛からのお説教。もう、ふざけたことは言わないようだ。否、言っても意味がないことに気づいたんだろう。
「、、、行こう」
**********
「コトミネ!」
keepoutと書かれているテープの先にいるコトミネに声をかけた。ガヤガヤとうるさかったのだが、それで気づいてくれたようだ。
「、、、お前たちか。何のようだ」
いつものように冷たい目で俺たちをみる。
「ライダーを討伐した。報酬を渡せ」
昨晩、俺たち以外のマスターに伝えられた任務。ライダーの討伐。実際には、討伐、してはいないが、それと同様の事をしたので、報酬に値するだろう。
「フン、、、証拠がないな。お前がやったとされる根拠は?」
「令呪を奪った。俺がもうあんなことはさせない。、、、キャスター、見せろ」
キャスターが霊体化を解き、腕を見せた。そこには、確かに令呪がある。
「サーヴァントがサーヴァントを使役するのは、ルール違反ではないのか?」
「あんときはそうするしかなかったんだよ。令呪は他の誰かに譲渡するか、使いきらせる。それがダメなら、自害させる。それでいいだろう」
コトミネは少し考えたあと、納得したような顔になった。
「いいだろう。しかし、約束は守れ。ただでさえお前は2体のサーヴァントを保持している。パワーバランスを考えると、戦争として成り立つか、、、」
「分かってる。、、、急いでるんだ」
やれやれと言ったような顔で、自分の腕をまくった。そこには、無数の令呪が。
「さあ、腕を出せ」
「、、、悪いが、俺じゃないんだ」
不思議そうに尋ねるコトミネ。
「ん?では誰だというのだ」
「ああ。それはな、、、」
今この瞬間から、桜救出作戦が実行される。、、、なんだか、安っぽいかもな。それでもやらなきゃならないんだろう。
**********
「く、、はぁはぁ、、、うぅ、、、、ああ!!」
薄暗い部屋の中に、声が響く。女性の声。酷く苦しそうに喘いでいる。
「やはり、慎二なぞにまかせたのが間違いじゃったのかのぅ。前回の時といい、なんなのじゃ」
しわがれた声も響いていた。大きく反響し、響く。
さらには、ガサガサと何かが蠢くような異音も響いていた。
「おじい、、、さま」
「お前もお前じゃ。未だに間桐の魔術に馴染まぬ」
間桐蔵俔。またの名をマキリ・ゾォルケンその人が、桜の沈む蟲蔵を覗きこんだ。
桜はもう忘れていた感情を抱き始める。
怖い。痛い。もう、慣れたはずなのに、どうしてこんな感情を?どうして。どうして。こんなの、平気なのに。なのに。とても、怖い。
怖いのか?お嬢ちゃん。
桜は、自分の頭の中に響く声に、自分を疑った。痛みによる幻聴かとも思えたが、その声の主は話続ける。
怖いよなぁ。当たり前さ。アンタ、やっと人並みの生活を送れるようになったんだ。あの頃とは違う。尊敬する人がいて、守りたい毎日があって、、、。ハハッ、アンタはもう人外には戻らないのになぁ。
相手を煽るかのような口調を続ける。たまらず、桜は抗議した。
怖くなんかない!私は、耐えてみせる。耐えて、それで、また、先輩と!
ソイツは無理なんじゃねぇかなぁ。
声は残酷に話続ける。
あの妖怪は、今回の聖杯戦争は見限った。恐らく、次の世代に持ち込む気だぜ?その為には、間桐の血を絶やすことは出来ない。だからこそ、アンタはまたここに入れられ、調整されているのさ。
そんな。、、、そんな。
絶望が、モゾモゾと動き回る。這いずり回り、私の体を凌辱していく。意識が飛ばなくなっただけ、それに慣れてきたということなのだろう。
それでも、この感情には慣れない。内面的な絶望。黒く深い闇。家族を失い、姉を失い、自分を失ったこの絶望。でも、失いたくない。もう、なにも。、、、先輩。
ここにはいない、憧れの人を思う。
ハハッ、今のアンタの姿を見てみろよ。そんな姿、その先輩とやらが振り向いてくれんのか?俺が先輩だったら、振り向いたりしねぇよなぁ。むしろ、走り去る。
何でそんなこと言うの?!私はこんなに頑張っているのに!酷い。酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷いぃぃぃぃい、、、、!!!
そうだ。それだ!それを俺にぶつけろよ。昔の知り合いはヘタレでよぉ。そういうのをぶつけてくれなかったんだよなぁ。俺にとっちゃ、そういうのは大好物だ。
黙れ、、、。黙れぇぇぇぇ!!
桜の感情が爆発しようとしたとき、蟲蔵に続く扉の開いた音がした。
チッ、、、。来たか。まぁいい。種は蒔いた。1つ心配なのは、こいつの中のモンだろうな。それは、アイツがなんとかしてくれるだろうが。
『偽り』の大聖杯だったとしても、仕組みはおなじなんだよなぁ。本家本元に負けないようにしないと。
彼女の中の影が、フウッと消えていく。それと同時に、彼女の意識も闇のそこへと落ちていった。
**********
「じ、じじい!」
間桐慎二は蟲蔵の扉を開いた。いつものように薄暗く、気味の悪い場所だ。できる限りなら近づきたくないが、今回は状況が状況だ。
桜がどんなことになっているかを、やんわりと教えたのだが、その後あのキリツグとかいうヤツに問い詰められ、知っていることを全て吐かされた。
その上での作戦だ。まったく!何で僕がこんなことをしなくちゃならないんだ。こいつは、間桐の人間じゃないのに!ない、、、のに。
「なんじゃ、慎二ではないか。ここに近づくとはめずらしい。さて、今回の聖杯戦争に敗退した、言い訳、考えてきたんじゃろな」
普通の顔で話しかけてきてはいるが、そこには凄味があった。一瞬気圧されそうになるが、保身のため、気をとりなおして言う。
「僕は負けていない」
「なんじゃと?」
そう言って、自分の腕をまくった。そこには、1画の紋様が描かれていたのである。
「それは、令呪。どこでそれを」
「敵マスターから奪い取ったんだよ。分かったろ?だから早く桜を蟲蔵から出せ」
ビクビクしながらそう言う。
そう。これは本物の令呪ではない。まったく効力もない急造のものであるのだ。しかし、令呪であることは本当だ。
これを手に入れた経緯は、数時間前に遡る----------
「俺が手に入れるはずの令呪を、間桐慎二にやってくれないか?」
そうコトミネに言ったのは、キリツグという僕を倒したマスターだ。何を言うのかと衛宮達の後ろから見ていたが、まさかこんなことを言うとは。
「、、、この少年は」
「分かってるよ、今回の犯人だ」
そう言って、僕の方を睨んだ。
「また問題を起こされても困るが、、、」
「大丈夫。俺たちがそんなことさせない。理由は聞かないで、受け入れてくれないか。、、、もしあれだったら、用が終わったらこの令呪は返す」
そう続けるキリツグ。しかし、僕は、、、。
「それでも無理だな」
「んだよ!分からず屋!いいじゃねーか、そのくらい!」
「無理なものは無理だ。しかし、ダメだとは言っていない」
そう告げられたキリツグは、怪訝そうな顔をする。
「どういう意味だ?」
「この少年、間桐慎二は魔術回路をもっていない。令呪を受け取ったところで、サーヴァントを操ることは出来ないのだよ」
「は?じゃあどうやって、、、!成る程、だから偽臣の書というわけか」
勝手に納得されても困るのだが、その通りなのである。僕は、魔術の血統に恵まれながらも魔術回路を持っていなかった。僕の代ではもうすでに、そうなってしまったのである。
「なんだよ、、、じゃあ計画が台無しじゃねぇか。どうすれば、、、いや、待てよ?」
そう言って、僕は命令された通りに、じじいの前にいるのだ。
しかし、じじいも僕が魔術回路を持っていないことを知っている。目の前で起こっていることが、おかしいことだとは気づいているはずだ。
けれど、じじいはなんの反応も示していない。これは、この小僧はそのような嘘をついて、なんの意味があるんだ、という意味なのだろうか。もしくは、キリツグが施した『あること』が功を奏したのだろうか?
彼が行ったのは、疑似魔術回路の埋め込みだ。魔術回路を持たない人間でも魔術が使えるという代物であるのだが、これは有限なのである。1度魔術を行使すると、魔術回路が壊れてしまうのである。
しかし、どちらにしてもおかしいことにかわりないだろう。何せ、魔術回路を持たない人間が、一晩でそれを手に入れるのだ。よほどの奇跡がなければありえない。
それでも興味を示さないのは、本当に僕のことはどうでもいいのだろう。別にこのジジイにどう思われようとも、まったく意に介さないが、しかし憐れみの目で見られるのは嫌だ。
「、、、まぁいいじゃろ。桜を部屋で寝かせてやれ」
考えていたのだろうか。いや、気が変わったと表現した方がいいのかもしれない。ジジイは蟲をどかした。その中から、桜が顔を出した。
僕は蔵の底へ降りて、桜のもとへ駆け寄った。
これでやっと、僕の役目が終わる。
「もういいぞ!キリツグ!」
**********
間桐慎二の声と共に、俺は蔵の壁を破壊し、中へと入った。
「、、、なんじゃ」
「けっ、、、辛気くせぇ場所だ」
ゾォルケンは動じていないようだが、驚いているとも取れるかもしれない。
「久し振りだな、蟲ジジイ」
「、、、だれじゃお前ら。何のよう、、、いや、そうか」
そう言って、蟲蔵の底にいる桜を一瞥した。ゾォルケンはニヤリと笑った。
「お主、協会の異端児か、、、。大きくなったのぅ」
「あそこから抜け出せたお陰で、ここまで大きくなれた。そう言う意味では、あんたに感謝しなきゃいけないかもしれないな。だが、、、!」
そう言って、一瞬でゾォルケンの手前までステップする。俺は拳を振り上げ、振り抜いた。
「それとこれとは話が別なんだよ!」
対応できなかったゾォルケンは、まともにそれをくらってしまった、、、かに、見えた。
「?!」
振り抜いた拳は無数の蟲たちに遮られ、ゾォルケンには届いていなかったのだ。
蟲たちはそのまま俺の体を這いずろうとしている。俺は急いでそれを振り払い、またゾォルケンとの距離を取った。
「桜!」
蟲蔵の底から、慎二に支えられ出てきた桜に、遅れてやってきた凛が駆け寄った。
「桜!桜!ねえ、桜ってば!」
「気を失ってるだけだろ。多分大丈夫だ。日頃こんなことをされていたなら、恐らく生きている」
「うっ、、、」
目に涙を潤ませながら、桜を抱き寄せる凛。そのまま凛は慎二を見た。
「な、なんだよ」
「あんたにこんなこと、本当は言いたくないけど。でも、それでも、慎二、ありがとう」
凛からの突然の感謝に慎二は唖然とした。慎二からしたら、それはとても貴重なことだった。なにせ、彼が知っている凛は、優雅で、美しく、そして気高い女だ。その女が見せた涙を、慎二はまじまじと見ていた。
「僕は自分のためにやったんだ。さ、桜は関係ない!」
ツンデレともとれるそんな対応は、少なからず慎二に好意を抱かせ足るものになった。
「分かってるわよ、でも感謝してるわ」
「くっ、、、!!」
そんな光景を背後に、俺はゾォルケンと対峙する。
「慎二よ。よもや、遠坂の倅と、手でも組んだのではあるまいな」
「だまってろよジジイ。あっちはあっちで青春してるんだ。さぁ、、、。俺たちも青春しようか。、、、セイバー!」
セイバーが霊体化をとき、俺の横へ並んだ。
「キリツグ、私は行けます」
「あぁ、行こう。聖杯戦争始まって以来の、初めての共闘だ。胸が踊る」
考えれば、セイバーと共に戦ったことはいままでなかった。偶然がそうさせたのだろう。
「おじいちゃん相手に気が引けるが、どう見てもあんたは、か弱いおじいちゃんって顔じゃないよな」
「、、、ここで死ぬわけにはいかんのじゃよ。桜にはこれから、介護をしてもらわなくてなならんからな」
その言葉と同時に、セイバーが猛攻を仕掛けた。それでも、ゾォルケンの操る蟲は大量かつ、強度があり、セイバーでも抜けきれない。恐らく、生身の人間だから、手加減でもしているのだろうが。それだけではないように思える。
こいつ、本当にジジイなのか?
そう思えるくらいセイバーの攻撃に対応していた。しかし、セイバーはサーヴァント。剣の英霊だ。押されることはない。次第に、ゾォルケン自身にも攻撃が通るようになっていた。
セイバーは、1度蟲と距離を取ると、キリツグの方を見た。
「セイバー、大丈夫か?」
セイバーに声を掛ける。
「ええ。これくらいのものならば。しかしマスター。なんだか、嫌な予感がします」
「それは俺も同じだよ。あのジジイからは、嫌な感じしかしねぇ」
「いえ、そういうことではなく。、、、まるで霞を切っているかのように、手応えがないのです」
「手応えが、、ない?どういうことだ、、、」
それを聞いていたのか、ゾォルケンはニヤリと笑って、言った。
「手応えがないのは当たり前じゃよ」
「どういうことだ!」
セイバーが吠える。
「儂はおらんからのぉ。ここには」
そう言って、自身の心臓部をとんとんと指差す。
「儂はほれ、今は遠坂嬢の腕の中じゃ」
「なにを、言っている」
その瞬間、俺の中の彼女への違和感と、ゾォルケンの言いたいことが、ガッチリと合わさってしまった。
「貴様、、、まさか!」
「儂の孫に対して、言うことではないのじゃが、桜はまだ、人質なのじゃよ、儂の」
間桐桜の中には、ゾォルケンがいる。そういうことを言っているのだ。だとすれば、俺たちがしていることは。
「桜を殺されては、意味がなかろう?儂も殺したくはないんじゃよ。失うには惜しい、検体じゃからな」
その言葉に、凛が口を開いた。
「こんのジジイ!さっきから聞いていればこう偉そうに!桜はあんたの玩具じゃないのよ!それに、私は桜をあんたなんかにわたしたわけじゃないんだから!」
「お前の父親がしたことじゃ。お前は関係ない。もらったものをどうしようと、儂の勝手じゃ」
こんな時に、こんなことを思うのは、いささか不躾なのだろうが、やはりそういうことをされていたのか。しかし、自らを入れる何てことをするとは思っていなかった。桜の中に、ゾォルケンがいる。あいつはまだ、それがどういうものなのかは言っていないが、恐らく、それが本体。だからこその、儂はおらん、なのだろう。
「今回は見逃しておいてやる。じゃから桜を置いて、ここから去れ。慎二、貴様もじゃ」
「くそっ、、、」
正直、手がない。後ろに控えている士郎、アーチャー、更にはライダーの意味もなくなってしまった。
ここは、このまま去った方がいいのだろうか。いや、それはだめだ。恐らく、俺たちがまたやって来ることは、ゾォルケンも理解している。完全に調整されてしまえば、もはや、救いだしたところで意味はない。壊れきってしまう。どうしようもないくらいに。
ならばどうする。
考えろ。考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ、、、、。
幾分かの間が開いたあと、ゾォルケンが口を開いた。
「もはや儂と桜は、言ってしまえばマスターとサーヴァントのような存在じゃ。桜は操り人形と言ってしまっても過言ではないじゃろうよ」
凛が、声もなく怒りを露にしている。まさに鬼の形相。
まてよ?そうだ。キャスターの宝具って確か、、、。
「キャスター!」
俺はすぐにキャスターを呼んだ。キャスターは霊体化をとき、姿を現した。
「何かしらマスター」
「ひとつだけ聞く。お前の宝具は、契約を打ち破るものなのか?」
俺とゾォルケンを見比べたあと、口を開く。
「いいえ。私の宝具は対魔術宝具であり、魔術そのものを打ち破る宝具。だからこそ、令呪による契約を断ち切ることができたの。まぁ、サーヴァントの宝具のような、神秘性の高いものはそうそう出来ないだろうけれど」
「それを、桜に放て。塵も残さず、あの子の中の蟲をけし去るんだ。恐らくだが、もうあのジジイは人間ではなく、魔術そのものといってもいいだろう。ならば、、、!」
ならば、桜を傷つけず、ゾォルケンのみを消し去ることができるかもしれない。しかし、意味がないかもしれない。あれを魔術と判断されなければ、効果がないからだ。
「、、、何をこそこそと話しておるのじゃ。儂の言ったことが聞こえなかったのか?早くここから、、、」
「いや、お前はここで倒れるんだよ」
虚勢をはる。はらなければ、作戦がばれる。もはや、キャスターを呼んだことでそれは分かられているかも知れないが、それでもだ。
下手な動きをせず、
「、、、なんじゃ!?」
少し間が開いた後、ゾォルケンの肉体が形を成せなくなっていた。まるで粘土のようにドロドロとしており、終いには生命であったという面影すらなくなってしまったのである。
そして次の瞬間、桜を刺した傷痕から何かが飛び出した。
「き、、、貴様らぁぁあ!!!」
一匹の小さな蟲だ。そこから、ゾォルケンのものとされる声がする。これが、ゾォルケンの本体?まさか。
「チェック、、、だな」
「無様ね、、、こんな姿になるまで生にすがろうとするなんて。同じ魔術師として、遺憾の意を露にせざるを得ないわ」
キャスターが侮蔑の目を、目の前の蟲に向けている。
「くっ、、、アサシン!儂を連れて逃げろ!、、、アサシン?」
突然ゾォルケンがそう叫んだ。、、、アサシンだと?ということは、こいつもマスターなのか?
「アサシンならば既に倒したよ。マキリ・ゾォルケン」
破壊された壁から、アーチャーが顔を出し、そう告げた。
「アーチャー、、、悪かったな、雑用を任せて」
「気にしなくていい。そのお陰で、ネズミがかかったからな。というわけだ。貴様は、詰んでいるのだよ既に」
「くっ、、、覚えておけぇぇぇ!!」
そう叫び、ゾォルケンは姿を消した。
「、、、!逃がすか!」
「追わなくていい。キャスターの宝具を食らったんだ。もうもたない」
凛は怒りの表情で言ったが、俺がそう言ったため、勢いを失ってしまった。
「、、、そんなことより、桜よ。この子を、、、士郎の家へ運びましょう」
「そうだな、、、」
わずかな時間で、桜を奪い返すことに成功した。しかし、何かがおかしい。まだ、キリツグの中からは不安が消え去ることはなかったのである。
**********
ボロボロになった館に、一人の青年が佇んでいた。
体には刺青。まるで普通ではなかったのである。
「うっくぁぁぁぁ、、、。よく寝た。アイツは器を都合よく洗浄してくれたわけだ。さすが王さまだぜ」
そう言って、刺青を隠すように服を羽織る。
「さてと、、、本当の戦いはここからだ」
館の扉まで歩き、そしてあける。
そして、こう言った。
「サーヴァント、アヴェンジャー、召喚に応じ、、、いや、無理矢理参上した。まぁ、ひとつだけ席が空いていたからな」
青年は歩き出す。この世全ての悪を背負いながら。
11.20改変