Fate/the alter   作:zaregoto

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#16 虚偽なるもの

「アンリマユ?!アンリマユだと!?」

 

「ご存じなのですか?マスター」

 

「知っているもなにも・・・まさか」

 

 影が自らの正体を明かした。

 

 知っているどころの騒ぎじゃない。こいつはお師匠の目的そのものだ。お師匠がやっとのことで導き出した、1つの結末。それが・・・。

 

「黒き・・・聖杯!」

 

「なんだ。知ってるんじゃねぇか。俺達の仕組みを」

 

 ヘラヘラと笑う俺に似た悪意の塊の背後から、ナニカが溢れ始めていた。

 

「俺達からしたら、早いとこ戦争をやってくれないと困るんだよ。そうしないと、復讐ができない」

 

 ナニカは、動物や人間、更にはわけのわからないものにさえも姿を変えていく。

 

「まぁ、この聖杯は本物とはほど遠い偽物なんだけどな」

 

「一体どういう意味だ!」

 

 軽い悪意を孕んだ表情で、 俺達を見据える。

 

「そのままの意味だ。まぁしかし、本物になろうとしたあげく、こいつは本物以上の力をつけちまった。この地に残っていた第4次の情念とか、そういう、非科学的なもんのお陰でな」

 

 目の前の男は何を言っているんだ。この聖杯戦争が偽物?だとしたら、こんなもんとんだ茶番じゃないか。

 

「大丈夫だぜ?必要なものは揃っている。あとは、英霊の霊力とかそういうものが必要だ。つまり、普通の聖杯と変わらんわけだ。カハハ」

 

「何を世迷い言を!キリツグ、ここは私が行きます。その間に、キャスターに連絡を!」

 

「アッ!おい!待て!迂闊に近づくな!」

 

 俺の制止も聞かず、黒いものへと接近していくライダー。確かに、アヴェンジャーは最弱のサーヴァントだと聞いている。しかし、アンリマユは!

 

 しかし、ライダーが言ったことも一理あった。この間に、キャスターに!

 

「この程度の怪物!これならば」

 

 一見、圧倒しているかのようだ。しかし、実際はそうではなかった。減る怪物よりも、増えるスピードの方が早かったのだ。キリツグは思った。やられる、と。

 

「退け!ライダー。このままでは無理だ!」

 

「くっ!確かにそのようですね。しかし!」

 

 尚も戦闘をやめようとはしない。否、増え続ける怪物故に、自分の攻撃をやめる瞬間が見出だせないのだ。

 

 次の瞬間、ライダーが、怪物に飲まれた。

 

「ッカハ!?」

 

「ライダー!」

 

 セイバーが叫ぶ。それでも、怪物はライダーに覆い被さったままだった。

 

「くそ!やむ終えん!令呪をもって命ずる!キャスター、今すぐここにこい!」

 

 この戦争で、俺は初めて令呪を使った。しかし。

 

「・・・なんだ?なぜなにも起こらない。令呪が反応しない!?」

 

「それはお前が、変わり始めている証拠だ。お前の変化故に、お前とお前のサーヴァントのパスが綻び始めている」

 

「何を!私はマスターのパスを感じるぞ!」

 

「当たり前だろ。お前は、アーサー王なんだからな」

 

「お前、さっきから言ってることがよくわかんねぇぞ!」

 

 不気味な空気が流れる中、怪物がライダーから離れていった。離れる?なぜだ。なぜわざわざそんなことを。ライダーが反撃したわけでもなく、ただ、ライダーが動けるように。

 

 怪物が退いた先には、やはりライダーがいた。しかし、何か様子が変だ。

 

「・・・・・・」

 

「ラ、ライダー?一体、どうし・・・」

 

 その瞬間、セイバーが動く。俺はそれに気をとられ、何が起こったかを理解できなかった。しかし、次の瞬間、それが何なのかよく理解できた。

 

 セイバーとライダーが、武器を合わせているのだ。まるで、二人が敵同士であるかのように。まあ実際は敵同士なんだが、今回は共通の敵ということで。そんなことをいってる場合じゃない!

 

「いきなり何をする!ライダー」

 

「・・・・・・」

 

 返事がない。もはや、生気を感じない。この感覚はまるで、あの影のような。いや、まさか!?

 

「そのまさかってやつだ」

 

「アヴェンジャー・・・」

 

 相手の思っていることを読んだかのごとく、タイミングよくそう言った。

 

「こいつはもうお前のサーヴァントじゃねぇ。俺達のサーヴァントだ」

 

「闇に、飲まれたってか?馬鹿をいってんじゃねぇ!」

 

 しかし、それは目の前にある。目の前にあるのが真実であった。令呪は慎二が持っているので、そこまでは分からないが、ライダーは完璧に正気を失っている。

 

「セイバー、気を抜くんじゃねぇぞ。お前もあんな風になったら、どうしようもないからな」

「それは、分かっていますが!くっ!」

 

 セイバーとライダーは一旦離れた。ライダーの背後には、アヴェンジャーと怪物。いや。これは万事休すか?

 

「お前が本物になったんなら、こんな状況覆せるんだぜ?早いとこ思い出せよ。お前の悪意を、俺に見せてくれ」

 

「うるせぇぞ!くそ!どうすれば」

 

 わけのわからないことを言うアヴェンジャーをあしらう。しかし本当にまずい。逃げるにしても、コイツらを放ってはおけない。民間人に被害が被ることは避けなくては。

 

 次の瞬間、ライダーと怪物が特攻してきた。俺とセイバーが身構える。

 

「セイバー、令呪を使う。最大火力で宝具を!」

 

「わかりました!しかし、被害がどうなるか」

 

「コイツらが散り散りになることの方がまずい」

 

 相談している間にも、ライダーたちは近づく。

 

「くっ!やるぞ!」

 

 そう、覚悟をした瞬間だった。

 

 目が眩みそうな輝きと共に、その人はあらわれた。

 

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)

 

 

 数々の武器を召喚させ、あらわれた。

 

「我の庭で何をしている、雑種」

 

 あの日、この場所で酒を酌み交わした、金色の青年だった。

 

**********

 

 全員で家に帰っている道中、慎二に異変が起きた。

 

「くっ!う、腕が」

 

「どうした?慎二」

 

 見れば慎二の腕にあるはずの令呪が消え始めていた。

 

「慎二それ、令呪が」

 

 遠坂がそれを発見した。

 

「どうなってるんだ!ライダー!ライダー!くっそ!」

 

「慎二、またあんた変なこと」

 

「今回は知らない!でもなんで!」

 

「兄さん。ライダーに異変が起きたのではないですか?」

 

 桜が慎二のことを心配している。いや、これはライダーなのか?まぁ、そうだろう。

 

「ライダーとは念話が出来ない。何かあったんだろう。急いで衛宮の家へ戻ろう」

 

 驚くことに、慎二が先頭をきっていた。こういう言い方は失礼かもしれないが、彼からこのような言葉が出ることは、ほぼありえない。キリツグとの出会いが、彼を変えたのか。俺が、じいさんと出会ったように。

 

「そうね。アーチャー、急いで向かいなさい!」

 

「了解した、凛」

 

 霊体化を解き、その場から飛び立とうとした瞬間だった。アーチャーが、何かを察したかのように、その場に止まった。

 

「・・・どうしたのよ。早く行きなさいよ」

 

「残念だが凛、それは出来ないようだ」

 

「どういうこと、アーチャー」

 

「そういうことだぜ、嬢ちゃん」

 

 薄暗い道の先、人影がひとつ。

 

「お前は、ランサー?」

 

「おう。久し振りだな坊主」

 

 青いタイツに身を包んだ、槍兵が現れたのである。

 

「ランサー!?何の用があって」

 

「まぁ、そりゃあ戦争だろ。見たところ、セイバーと黒いマスターはいねぇようだが」

 

 そう言って、ランサーは槍を構えた。

 

「下がれ凛」

 

「え、ええ。大丈夫なの?アーチャー」

 

「当たり前だ」

 

「へっ、言ってくれるじゃねぇか。まあいいさ。弓兵ごとき、俺の槍の錆びにしてやる」

 

「その言葉、そっくりそのまま返してやる。こい、ランサー」

 

 すぐにでも、戦いを始めてしまいそうな空気だ。

 

「やめろ!こんな民家が多い場所で」

 

 俺は堪らず叫んだ。

 

「ふん。そのようだ。行くぞランサー」

 

「あいよ。次にぶちのめすのはセイバーだ。そうあのマスターに伝えておけ、坊主」

 

 そして闘気を駄々漏れにさせながら、どこかへ飛び去っていった。

 

「いいのか?遠坂」

 

「いいわよ。とりあえず、家へ戻りましょう」

 

「その心配は必要ないわ」

 

 どこからか声が響いた。妖艶な女の声。

 

「キャスター?どうしてここに」

 

「どうしてって。異変が起こったからに決まっているでしょう」

 

 その声と共に、キャスターが霊体化を解いた。

 

「マスターとのパスが揺らいでいる。何かがあったのでしょう」

 

「待てよ。それって、一緒にいなかったってことか?」

 

「そうね。マスターたちは、出掛けていった。私を置いてね」

 

 なんだか、含みのある言い方だがこれで家へ帰る必要はなくなった。

 

「場所は分かるのか?」

 

「少しなら。けれどあなたたち全員を連れていく必要はないわね」

 

「だ、だったら僕を連れていってくれ!」

 

 そう言ったのは慎二だった。

 

「慎二だけじゃ危ない。俺たちも」

 

「衛宮は黙ってろ!ライダーは僕のサーヴァントだ。マスターの僕がいかないでどうする。それに、キリツグさんに何かあったなら・・・」

 

「慎二・・・」

 

 関心したかのように呟き眺める遠坂。

 

「だったら私も」

 

「桜はだめだ。お前は衛宮たちと一緒に・・・」

 

 桜もそう言ったが、慎二に制されてしまった。しかし。

 

「ライダーは元々私のサーヴァントです。兄さんがいくと言うのなら、私だって!」

 

「桜、お前」

 

 慎二なりの心配だったのか。しかし、それも桜によって制される。慎二の変化が、桜にも影響したのだろうか。いい変化だ。

 

「分かったわ。あなたたち二人を連れていくわ。残りの二人は、帰っていなさい」

 

「そんな!俺たちだって」

 

「いいの?鍵を開けたまま出てきたのだけれど」

 

「な!?」

 

 忘れたのか、計画通りだったのか分からないが、確かに帰らないと。しかし。

 

「いいわよ。キャスターに任せましょう。それに、キリツグだっているんでしょ?だったら大丈夫よ」

 

 そう言い切る遠坂だった。

 

「えらくキリツグの事を信頼しているんだな」

 

「ま、まあね。とにかく行くわよ士郎」

 

 そう言って、俺たちはその場を離れた。

 

 そして、3人が見えなくなる所まで来た。

 

「本当によかったのか?桜だって・・・」

 

「あの子がああやって自分から言ったのよ。あの子の意見を尊重してるだけ」

 

 そうは言っているが、顔は心配していた。

 

「アーチャー、聞こえる?」

 

 遠坂は念話で話しかけた。

 

「私はここだ、凛」

 

 すぐ背後からその声はしていた。驚き、振り向けばそこにはアーチャーがいたのである。

 

「アーチャー?なんでここに。あんたは、ランサーと」

 

「もちろんだ。どうやら、戦闘が目的ではなく、足止めが目的だったらしい。もしくは、特定の誰かをキリツグの元へと導くために、私との戦闘を装った、とでも言えようか」

 

 見たところそのようだ。彼の体には傷という傷が見当たらなかった。

 

「もっとも、それはヤツのマスターの命令であり、ヤツ自身の目的ではなかったようだが」

 

「どういう意味よ、アーチャー」

 

 アーチャーから告げられたのは、思いもよらないことであった。それ故に俺たちはそれを告げられたのにも関わらず、ただ呆然と立ち尽くしてしまった。

 

「どうやら、これは聖杯戦争ではないらしい」

 

*********

 

「お、王さま?」

 

「ギルガメッシュ!」

 

「え?」

 

「え?!」

 

 マスターと私は、同時に違うことを叫んだ。

 

「おま、ギルガメッシュって、この人が、お前の言った?」

 

「え、ええ。いや、それよりも、マスター!この男と顔見知りだったのですか?」

 

 二人して困惑していた。この状況もだが、マスターがこの男と知り合いであったなんて。

 

 マスターから伝えられていなかったことに、セイバーは少し憤慨していた。少し憤慨というのも、おかしな話だが。

 

「まさかあんたがギルガメッシュだったとはなー。久し振り」

 

「フン。貴様、我が誰か判らずに酒を酌み交わしていたというのか?不敬。しかしよい。今宵は許そう」

 

「マ、マスター」

 

 マスターが、ギルガメッシュと気兼ねなく話している。何も考えていないマスターもそうだが、そのように扱われているギルガメッシュも満更ではなさそうな。いや、ただ興味がないだけ?であれば、すぐにやられてしまっているはず。

 

 その時、セイバーには彼らが同じ場所に立っているように見えていた。自分を外して。

 

「久方ぶりだな、セイバー」

 

「何のようだ!ギルガメッシュ!」

 

「そう憤るな、器が知れるぞセイバー。いや、貴様は、違ったのだったな」

 

 あのときの話がよみがえる。彼の言った偽物ということの真意。今なら聞き出せるかもしれない。しかし、状況がそうはさせなかった。

 

「助けてくれたのはいいが、王さま。あんた、今回の戦争のサーヴァントだったんだな」

 

「おかしなことを言うではない。我は、我の回りにいる蝿を潰しただけにすぎん。救った覚えはない」

 

「ツンデレかよ。・・・まあ、いいか。あんた、あれをどう見る」

 

 そう尋ねられると、考える素振りもなくすぐに答えた。

 

「なに。あれはただの泥だ」

 

「泥?」

 

「ああ。聖なる杯に溜められた、忌々しい、本性」

 

「本性・・・。いったい、誰の」

 

 私がそういうと、ギルガメッシュは私を見つめた。

 

 そうして、ひとつ間をおき答える。

 

「人間だ」

 

「ったく、あぶねぇじゃねぇか」

 

 砂煙の舞う中、アヴェンジャーが姿を現した。同時に、影の怪物も再び現れ始めた。

 

「英雄がこんなことしていいのか?」

 

 不敵な笑みを浮かべ、そう訪ねる。

 

「黙れ。貴様ごときの顔を、我に向けるでない。とく頭を垂れよ」

 

「へいへい。だが、今回は退かせてもらうぜ。あんたが出てくるなら話が変わる」

 

 現れた怪物を消し、その場を去ろうとする。

 

「逃がすと思うか、下朗」

 

「俺は最弱なんだ。最優のサーヴァントと、最強のサーヴァントが相手じゃ、結果は見えている。ま、勝つことが目的じゃあないんだがな。今回は、お前らに譲ってやるよ」

 

 ニヤニヤとほくそ笑みながら、アヴェンジャーは闇へと溶けていく。英雄王は逃がすまいと、その闇に対して宝具を放った。

 

「無駄だぜ英雄王。とにかく今は退く。それと、キリツグ」

 

 アヴェンジャーはマスターへと声を掛けた。

 

「・・・・・・」

 

 マスターは声もなくそれに応じる。

 

「お前の本当を知りたかったら、俺の所に来い。無論、一人でな。来なければならないということはない。ただ、お前が変化を望むなら、俺を探せ」

 

 その瞬間、我々と敵との間に新しい影が現れた。

 

「ん?なんだ?」

 

 砂煙が舞う。英雄王を除く全員が、それを固唾を飲んで見守った。

 

「あら、もう終わり?」

 

 現れたのは、キャスターと、間桐兄妹であった。

 

「キリツグさん!ライダー!」

 

 慎二が叫ぶ。

 

「あらら。タイミングよく、器の方から来てくれたのか。天は俺に味方している」

 

 霊体化寸前であった体をアヴェンジャーは元に戻し、完全に実体化した。

 

「架空元素・虚数の属性をもつ魔術師はそういない。さらに言えば、間桐のもつ吸収の魔術。俺たち側他ならない」

 

 何かを呟いたアヴェンジャー。次の瞬間、アヴェンジャーは桜の背後へと現れた。

 

「だから、お前を貰うぞ」

 

「え?!」

 

「さッ!?」

 

 影が、桜を包む。そして、何も見えなくなった。

 

「桜!」

 

「よっと・・・」

 

 アヴェンジャーはまた、距離をとる。

 

「キリツグ!もうひとつ追加だ。俺の話を聞きたかったら、尚且つこの娘を救いたかったら俺の所に来い。もう一度いうが、一人で、な」

 

「ま、待て!」

 

 慎二が勢いよく叫ぶ。そして、全速力でアヴェンジャーに向かっていった。しかしそれも空しく、空振りに終わった。

 

 そして、何もいなくなった。

 

**********

 

「私のせいよね。私としたことが、彼女の属性のことは知っていたのに。だからこそ、使えると思ったのだけれど」

 

 ギルガメッシュを除く俺たちは帰路についていた。あのあと、ギルガメッシュはさも興味をなくしたかのように、何も言わず消えていった。彼が現れたのは、何故なのか。俺たちを救うため?ただの気まぐれ?今となっては、確かめる術はなかった。

 

「キャスター!お前のせいに決まっているだろ!何故守らなかった!お前はサーヴァントだろ!」

 

「やめろ慎二。あれは誰のせいでもない。なるべくしてそうなった。おそらくそうなんだろう」

 

 蟲爺の一件のさい、気づくべきだった。彼女の中に秘めるもののことを。違和感ってのは、それだったのか。ライダー戦のときに出会った黒い大群。それのことを覚えていなかったことが、今回の失敗の原因。誰のせいでもないとは言ったが、そういう面では俺のせいなんだろう。くそ!折角あの子を救えたのに。あの子を救い出せたのに。水の泡になってしまった。

 

 しかし、アヴェンジャーの言ったこと。その真意を確かめたい。もちろん、彼女を救いたいってのが一番だ。しかし、それと同じくらいか、ヤツの知っている、俺のことを知りたかった。

 

「こんなことは、だめだな」

 

「マスター」

 

「ん?」

 

 キャスターがローブの頭の部分を脱いで、こっちを向いた。また、あの顔だ。何かを諦めたような顔。

 

「アナタ、救いにいくのよね?」

 

「あたり、まえだ。もちろん、ひとりでな」

 

 言葉に詰まった。救うため?それとは違うことも考えてた自分が恥ずかしかった。いや、それでも、俺は。

 

「キリツグさん、僕も」

 

「駄目だ」

 

「何故!?桜は僕の妹で・・・」

 

「俺たちは人質を取られているのと同じだ。相手の条件を飲まずして行ったところでどうなる?どうなるかわからないだろ」

 

「それは・・・」

 

 慎二の熱い心を目の当たりにした。士郎の言った、根はいいやつってのも、案外真実味が出てきた。

 

「とにかく、1度帰って、作戦会議だ。士郎に言えばどうなるか目に見えているが、言わないわけにはいかないだろう」

 

「士郎の性格を考えると・・・」

 

 セイバーが心配そうな目で俺を見つめる。

 

「大丈夫だよ、セイバー。なんとかなるさ。いや、なんとかしなきゃいけないんだ」

 

 俺たちは、その場を去ることにする。先程まではあれほど賑わっていたのに、今では気持ち悪いほど静かだ。

 

 これから、どうすればいい?彼女を救ったあとは?もし、あの影の正体が・・・。いや、そこまで考えるのはやめよう。考えるのを完了してしまったら、きっと分かってしまう。

 

 彼らの背後では、大きな月がうすら笑っているかのように光続けていた。

 

 

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