Fate/the alter   作:zaregoto

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 長い間の非更新、申し訳ありませんでした。大学の方が忙しくなり、このサイトへ来ることすら忘れていたほど、多忙な日々を過ごしていました。
 
 今は大分落ち着いているので、最終回、そして次回作についても考察中でございます。

 それでは皆様、ラストまでよければ、お付き合いください。


#19 差異

 ここは、どこだ。

 

 辺りは暗く、見回してもなにも見えない。いや、これは違う。まるで、自分の眼球が、その機能を停止しているかのような感覚。

 

 元々見えない。見ようとしないだけなのか。

 

 しかし、声は聞こえる。優しく、気高く、品のある声だ。俺は、この声を知っている。

 

「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ、参上した。マスター、指示を」

 

 聞いたことのある声。そこから察せられる場景。経験したことのある、はずだ。だが、何かがおかしい。

 

「これより我が剣はあなたと共にあり、あなたの運命は私と共にある。契約はここに完了した」

 

 見えてくるのは、金色の髪をもつ騎士。あの蔵であった、一コマなのだろう。しかし、おかしい。

 

 いない。

 

 彼がいない。

 

 彼?彼とは誰だ?

 

「悪いが、これが本当の道筋だ」

 

 誰だ!?

 

 別の声が響く。頭のなかに反響する。

 

「本当はお前が当事者となるはずだった。そして、戦いを経験し、お前は英雄になるはずだった」

 

 何を言っている!姿を見せろ!

 

 俺は見えない目を声のする方向へと向ける。しかし、その声は四方から響いていた。

 

「見ようとしないのは、お前だ、衛宮士郎。いいか?衛宮士郎とは、どういうものだ?」

 

 俺、とは。

 

「お前にしか分からない。だからこそ、運命から目を背けるな。お前の行く末を見続けろ。たとえ、どんな未来なのであっても」

 

 何、を。

 

 意識が遠くなる。響く声も小さくなり、次第に聞こえなくなっていく。

 

 その最中、思い浮かんだのはアーチャーの投影した双剣だった。

 

----------

 

「っかは!」

 

 急に苦しくなって、目を覚ます。

 

 ん?目を覚ます?どういうことだ?俺はいつ、目を覚ますような状況へと、陥った?

 

「たしか、ランサーと一緒にキリツグの所へ向かっていって、それから」

 

 俺はまるで、中世のヨーロッパにタイムスリップしたかのような状態になっていた。豪華絢爛な家具。俺のみすぼらしい服では、些か場違いだ。

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

 不意に、声をかけられた。覚えのある声だ。

 

「イリヤ」

 

「具合はどう?」

 

 そうだ。思い出した。

 

「ああ、大丈夫。昨日はありがとう、イリヤ」

 

 俺は昨晩、確かにキリツグの元へと向かっていた。しかし、その最中に問題が起きた。

 

「勝手に死んでもらっちゃあ困るの。お兄ちゃんは、私が殺すんだから」

 

「アハハ・・・・・・」

 

 影の大群だ。無数の黒い塊が襲ってきたのである。あのランサーと言えど、あの数ではどうしようもない。その時俺は、イリヤに救われた。いや、あれは救われたというのか?

 

「あの、ランサーは」

 

「さぁ?」

 

「さぁって・・・・・・」

 

「バーサーカーが何か吹っ飛ばしちゃってたのは覚えてるけど」

 

 何やってるんだランサーは。英雄の名が泣くぞ。とは言え、バーサーカーも狂化しているとは言え、名前の通った英雄。ヘラクレスだ。勝ち目がないと言われたら、もしかしたら、そうなのかもしれないが。

 

「俺は、どれくらいここにいたんだ?」

 

「丸1日寝てたわ。それほど重症でもないのに。どんな夢を見ていたのかしらね」

 

 そう言って、イリヤは不適な笑みを浮かべた。

 

 夢か。確かに何か重要なものを見ていたような。そんな気がするが、何故か思い出せない。

 

「あ、お兄ちゃん。お腹すいてない?」

 

「ん?あぁ、そう言えば」

 

 確かに空腹だった。丸1日寝ていたのなら、腹が減っていてもおかしくはない。

 

「下に夕飯ができているのよ。一緒に食べましょ」

 

 そう言われるがまま、俺はイリヤに促され、下の階へと降りていった。

 

----------

 

「ったく。どこ探してもいねぇ。何やってんだよ、士郎とランサーは!」

 

 俺は、次の日の夜になっても士郎を探し続けていた。

 

「あなたの仲間は、拐われてばっかりね」

 

「そう言えばそうだが、今回ばかりはそうと決まったわけでは・・・」

 

「でもあなたの慌てようから察するに、あなたも、そう感じているのでしょう?」

 

 キャスターから鋭い突っ込みを入れられる。

 

 まぁ、確かにそうなんだが。

 

「それに、マスター。あなた、どこか変わった?」

 

「は?何が?」

 

「いえ。何かが違うというか。何かを決めたような顔をしているというか」

 

 高度な魔術を使える人間は、こうも鋭いのか、と突っ込みを入れたくなる。まぁ、だからこそ英霊に昇華されたのか。

 

「ま、そうかもな。お前にゃ、辛い思いをさせるかもしれない」

 

「ふふ、そんなものは生前に経験済みよ」

 

「そりゃすごいな」

 

 そんな会話を続けているうちに、ある場所に着いた。そこは、俺がこの町に来て初めて踏み入れた土地。

 

「アインツベルンの森か。なるほどな」

 

「結界ね。なるほど、そういうこと」

 

 キャスターも何かを理解したような顔だ。

 

「じゃあ大丈夫だ。帰ろう」

 

「いいの?マスター」

 

 キャスターが不思議そうな顔をする。

 

「アイツなら大丈夫。大丈夫。・・・多分だけど。アヴェンジャーに捕まってないなら、いい」

 

「そう。マスター」

 

「んあ?なん・・・っ!?」

 

 キャスターから声をかけられたので、振り向こうとした瞬間だった。とてつもない魔力が、伝わってきた。遠くから伝わっているようだが、それでもこの大きさだ。

 

「これは」

 

「そう。起動させたのね、聖杯を」

 

「起動!?聖杯を!?何故、今!」

 

 魔力が分かるものだけにしか分からないこの感じ。願望器足りうる聖杯のはずなのに、なのに。

 

「この禍々しい魔力はなんだ。・・・・・・そうか。アヴェンジャーの言ってたことは、ほとんど合ってたわけだ。なるほど、偽物か」

 

 偽物。確かにそういっていた。

 

「偽物?それは、いったいどういう」

 

「悪いけど聞かないでくれ。そんなことよりも、聖杯を誰かが起動させたのだとしたら、俺は、行動を起こさないとならない」

 

「行動?」

 

 キャスターの訝しげな顔が目にはいる。それもそのはずだろう。だが、それでもやらないといけない。

 

「復讐だ。俺を弄んだ連中への、な」

 

「そう。せいぜい頑張りなさい。私はあなたのサーヴァント。あなたがおかしくならない限り、どこまでもついていくわ」

 

「・・・・・・」

 

 ありがとう、キャスター。

 

 まずは魔力の中心へ。始めるのはそれからだ。

 

----------

 

「これは!?」

 

 同時刻、衛宮邸。凛も、膨大な魔力量に気付いていた。

 

「なに?何が起こったの!アーチャー!」

 

「ふむ、どこかの阿呆が始めたようだな」

 

 霊体化を解いたアーチャーが言った。

 

「始めた?!まさか、だけど、もしかして聖杯を起動したっていうの?」

 

「まさにその通りだ、凛」

 

 焦りを露にする凛。しかし、起動してしまったものはしょうがないのだ。いや、されてしまったと言うべきか。

 

「でもおかしくない?恐らくだけど、まだ誰も敗退していない、はず。なのに、どうして聖杯は起動しているの?」

 

「・・・キリツグとアヴェンジャーの話を聞いた」

 

 アーチャーはゆっくり話始めた。

 

「こんかい現界した聖杯は、これまでの聖杯戦争で使用された聖杯ではないらしい」

 

「と言うと、遠坂も、間桐も、アインつベルンも関わっていないということ?」

 

「ああ。アヴェンジャーが言うには、第四次よりも前に行われようとした、擬似的な聖杯戦争」

 

「に、偽物なら、聖杯としての能力は」

 

「それは大丈夫だろう。長い間、破壊されず、何かの中に保存されていたと言っていた。何かが何なのかは、教えてくれなかったが。大聖杯から切り離された存在だといっても、聖杯は聖杯だ。機能は変わらん」

 

 少しの間、沈黙が流れる。

 

 凛は悩んだ。早くこの戦争を終わらせないと、まずい。ただでさえイレギュラーなのだ。もしこの事が協会にバレたら、どうなるか。

 

「でも、アヴェンジャーは、どうしてキリツグにそんな話をしたのかしら。アヴェンジャーの目的が、偽聖杯を使って復讐することなら、キリツグはきっと邪魔するわよね」

 

「・・・さてな。そこまでは知らん。アヴェンジャーの気まぐれだろう」

 

 その時凛は見逃していたが、アーチャーはおかしな表情をしていた。板挟み、だからだろう。

 

「リン・・・・・」

 

 居間の襖が急にあいた。

 

「セイバー」

 

 現れたのはセイバーだった。そう言えば、先程から姿が見えなかったが、どこにいっていたのだろう

 

「先程の魔力波は、恐らく」

 

「ええ。聖杯が起動したわ」

 

「私は、士郎を、キリツグを探しに行きたいです」

 

 セイバーの表情から読み取れるのは、深い悲しみ。士郎を拐われたことに対するものだろうか。

 

「大丈夫よ、セイバー。キリツグなら、何とかしてくれる、はず」

 

 その時だった。庭の方から、自然に発せられるとは思えない音が響いた。

 

「キリツグたちが、帰ってきたのかしら」

 

 凛たちは縁側から庭へと出る。そこには思った通り、キリツグとキャスターの姿が。しかし、士郎の姿はない。

 

「キリツグ?士郎は見つけたの?」

 

「・・・・・・」

 

 キリツグは口を閉じたままだ。凛はキリツグの変化に気付いた。それでも、普通に言葉を紡ぐ。

 

「そう言えば、聖杯が起動したの。あなたたちも気付いていたわよね?」

 

「・・・・・・」

 

 まだ話そうとしない。流石の凛も、堪忍袋の緒が切れ始めたようだった。

 

「あんたねぇ!こっちが話しかけているのに、だんまりってなによ!」

 

「なあ、凛」

 

 唐突に口を開くキリツグ。その声色はどこか、凄味を帯びていた。

 

「俺、始めようと思うんだ」

 

「はじ、める?何を」

 

「戦争を」

 

 次の瞬間、キャスターが魔弾を放ってきた。

 

「きゃっ!?」

 

「凛!!」

 

 アーチャーは凛を防ぐ形で、魔弾を弾いた。

 

「キリツグ、何があった」

 

「腹は決めてたんだよ。こうなる運命だって知ってたからな」

 

 キリツグとアーチャーの視線が交わる。

 

「止めてください!マスター!」

 

 セイバーがその間に割ってはいった。

 

「邪魔だ、セイバー」

 

「何を考えているのですか!我々は同盟を!」

 

「元々敵同士だろ」

 

「しかし!」

 

「あー、もう、いいや。お前、いらねぇ。キャスター!!」

 

 ボソボソと何かを呟いたキリツグは、キャスターを呼んだ。そして、キャスターに何かを言っていた。

 

 次の瞬間、キャスターが急に間合いを攻めて、懐の短刀を取りだし、セイバーに突き立てた。

 

 突然の事と、マスターの乱心により、自らも乱れていたセイバーには、反応できなかった。

 

破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)

 

 自らの決別の証である宝具を、セイバーの心臓に突き立てる。そして、キリツグとセイバーの契約は破られた。

 

「くっ!?」

 

「なぜ!キリツグ!」

 

 キリツグの冷ややかな目が、アーチャーを除く二人を突き刺す。

 

「これは復讐なんだよ。復讐。そう。復讐なんだ」

 

 キリツグはそう、自分に言い聞かせているようだった。

 

「アーチャー」

 

 キリツグは、アーチャーを呼んだ。

 

「お前も、俺と来い。お前の悲願を叶える、手助けをしてやるよ」

 

「何がお前をそうさせた。あの過去か?」

 

「まぁ、俺にもいろいろと考えるところがあるんだよ。キャスター、アーチャーにも契約破りを」

 

 キャスターは了承し、アーチャーにゆっくり近づく。

 

「アーチャー!応戦しなさい!今は!戦わないと!」

 

 しかし、アーチャーは動かない。そして次に、口を開いた。

 

「悪いな、凛」

 

 キャスターはアーチャーにも、契約破りを突き立てた。

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