Fate/the alter   作:zaregoto

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#20 終わりの形

「あぁ、分かった。お前は、それでいいのだな?」

 

 ロンドン、時計塔。

 

 ロード・エルメロイⅡ世、もといウェイバー・ベルベットは険しい表情で電話をしていた。

 

「私が行ってもいい。今回は、お前には扱いきれないだろう。私の、失敗だった」

 

 部屋を整理していた時に見つけた、古いゲームを眺めながら言う。

 

「分かった。今までよくやった。お前は一人前の魔術師になった。・・・あぁ、ではな」

 

 ウェイバーは電話を切った。悲しみをはらんだ険しい表情。ゲームを眺めながら、呟く。

 

「ライダー。私は、私の道を行く」

 

 そう言って、ウェイバーはコートを手にして、それを羽織った。そして、ブーツの音を響かせ、部屋を後にした。

 

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「っく、いった・・・」

 

 凛は自分で自分に治療を施していた。

 

 キリツグが裏切ってから、まだ一時間しか経っていない。しかし、凛たちにとってこの一時間はとても長い一時間だった。

 

「リン。まずは士郎を探しに行きましょう」

 

 セイバーがそう提案する。

 

 凛もそう考えていた。しかし、行動しかねていた。この状況は明らかに不利だ。

 

 今回の聖杯戦争の陣営は、力の偏りが過ぎている。

 

 先程まで同盟を組んでいた凛とキリツグだったが、キリツグの一方的な拒絶によって破却された。それにより、陣営はこうなる。

 

 まずは私たち。セイバーだけ。もちろんセイバーは聖杯戦争において最優のサーヴァントだが、数には勝てない。

 

 次はキリツグの陣営。私のサーヴァントだったアーチャーと、キャスター。キリツグがセイバーとの契約を切ったのには、少し疑問が残る。もし、この陣営にセイバーがいれば、恐らく今回の聖杯戦争では最強となるだろう。

 

 キリツグにも、考えがあるのだろうか?

 

 これは可能性だが、キリツグとアヴェンジャーが手を組んだ可能性がある。アーチャーの言った事が本当なら、彼らは一度顔をあわせて、対等に話をしていたはずだ。その中で、何かがあったのならば、アーチャーの裏切りも説明がつく。

 

 きっと何かがある。アーチャーが、それにキリツグがこんなことするわけがない。 

 

 凛は半ば希望のようなことを思い続けついた。

 

 アヴェンジャーも陣営として数えた方がいいだろう。アヴェンジャーの泥に、飲まれたライダー。これにキリツグの陣営が加わると・・・。考えたくない。

 

 最後はイリヤとバーサーカーの陣営。これは、数には数えないで大丈夫だろう。危険がないわけではない。むしろそういうくくりで考えるならば、危険度は高い。しかし彼女らは、どこか違う気がする。私のように聖杯を勝ち取ることが悲願なのだろうか。願いはなく。

 

 陣営が不明なのは、ランサーと、キリツグたちが会ったとされるギルガメッシュだ。もしかしたら、この二人が組んでいる可能性がある。そうなると、イリヤの陣営を除く全てが二人以上のサーヴァントを保持しているということになる。

 

 そう考えると、この戦争はおかしい。

 

「セイバー」

 

 提案を、口にする。

 

「なんでしょう」

 

「私と、再契約しましょう」

 

----------

 

「美味しかったよ、ありがとうイリヤ」

 

「うん。お粗末様」

 

 イリヤと豪勢な食事を終えた。この屋敷に見合った食事だったが、俺にもこれを作れるだろうか。

 

 そんなことを考えながら、少し黙っているとイリヤが声をかけた。

 

「シロウは、これからどうするの?」

 

 表情からも、声色からも何を考えているのか読めない。

 

「どうって?」

 

「聖杯戦争よ。多分だけど、さっき聖杯が起動したわ。私なしにどうやって起動させたのかは、分からないけど、確かに起動した」

 

「起動・・・。どうなるんだ」

 

「そうね。誰かのお願いがかなう、かしら」

 

 イリヤが椅子から降り、歩きだした。

 

「お庭へ行きましょう。セラ、リズ、お茶を運んでくれるかしら?」

 

 イリヤに促されるままに、歩きだした。

 

 

 

 庭はきれいなところだった。生命力に溢れているというか、この屋敷に似合う庭だった。

 

「切嗣は、どうやって死んだの?」

 

 切嗣、と言われどちらなのかと悩んだが、彼女がキリツグのことをお兄ちゃんとよんでいたのを思い出して、自分の父親のことだと合点がいった。

 

「安らかに、いったよ」

 

「そう・・・」

 

 一度、静寂が流れる。

 

 イリヤの父親。切嗣に娘がいたことなんて、知るよしもなかった。更に言えば、これほど恨まれていることも。何をしたのか、気になった。

 

「じいさ・・・いや、切嗣はいったい何をしたんだ?」

 

「私を見捨てたのよ。アイツとお母様がいなくなって、私の生活は一変した。お母様が死んだのだって、アイツのせいだと聞いたわ。お爺様に」

 

 切嗣に家族がいたことすら知らなかったし、その人が死んでいたってのは尚更だった。

 

「・・・・・・それでも」

 

 少し黙ったあと、反論する。

 

「切嗣はきっとイリヤを救おうとしたはずだ。あの人は俺の正義の味方だった。俺の目標だった。そんなことするはすがない、なんてことは言い切れないだろうけど、俺は切嗣を信じるよ」

 

 イリヤが少し驚いたような顔をした。そして、口を開く。

 

「でも、それでも、私は私のやりたいことをやる。士郎に邪魔なんかさせないわ」

 

 意地でも切嗣を悪役に仕立てあげたいのか。それとも、そうしなければ自分は何をしてきたのか、という後悔に似たものを感じるからなのか。

 

 それにしてもセイバーにしても、こいつにしても切嗣は思われているな。 

 

 その時士郎は気付けなかった。背後から迫る金色の絶対王を。

 

「なるほど、ここがアインツベルンの城とやらか。・・・む?既に目当てのモノが出てきているではないか」

 

「!?」

 

 士郎は声の主のことは知らなかったが、これがどのような存在か、瞬時に理解した。

 

 あれはまずい。

 

 イリヤはバーサーカーの霊体化をとく。

 

 あれは恐らく英霊。まだあったことはないが、恐らく英雄王ギルガメッシュ。今回最大の敵だ。

 

「金ピカ!」

 

 そんなギルガメッシュを金ピカ呼ばわりするイリヤはさておき、非常にまずい状況だった。

 

「さて、我はそこの人形を手に入れなければならぬ。とく渡すがよい」

 

「何を言ってるんだ!」

 

 人形?何を言ってる?まさか、この男にお人形遊びなんていう趣味が・・・、あるとは思えないが。

 

「アインツベルンも人形遊びが過ぎたな。フン。気味が悪い。すぐに終わらせてやる」

 

 ギルガメッシュは左手をポケットに突っ込み、ゆっくりと右手を天に掲げる。

 

 何を、する気だ。

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)

 

 そう囁くと、彼の背後から無数の武器が現れ始めた。

 

「我の宝物庫にあるのは、全ての原点たる武器。我の宝、味わえ」

 

 次の瞬間、その無数の武器が文字通り飛んできた。

 

「っく!バーサーカー!」

 

 イリヤはすぐにバーサーカーを呼んだ。

 

「邪魔だ!筋肉ダルマ!」

 

 ギルガメッシュはバーサーカーを凪ぎ払おうとする。しかし、バーサーカーも名のある英雄だ。

 

 バーサーカーは飛んできた武器を凪ぎ払った。

 

「フン」

 

 ギルガメッシュは攻撃の手を弱めない。寧ろ強くなる。バーサーカーが武器を凪ぎ払うと、倍の武器を放つ。これでは埒があかない。

 

 だが、終わりは唐突に訪れた。

 

天の鎖(エルキドゥ)よ」

 

 異空間だろうか?そこから鎖が現れる。それがバーサーカーを捕らえる。

 

「神をも捕らえる天の鎖よ。動けぬだろう。なぁ、ヘラクレス」

 

 その言葉に呼応したように、バーサーカーが猛々しい声をあげた。

 

「■■■■■■■■■■■!!!」

 

「さあ、消えろ」

 

 ギルガメッシュは、これまでで最大数の武器を放とうとしていた。

 

「いや・・・いやぁ!バーサーカー!!」

 

「ダメだ!イリヤ!」

 

 バーサーカーの元へと行こうとするイリヤを抱き止め、後ずさる。

 

 そして、ギルガメッシュは武器を放った。

 

 武器がバーサーカーを襲う。防ぐ暇も、動く暇さえも与えず、武器の応酬が続く。

 

 そして、武器の雨がやむ頃には、バーサーカーは動かなくなっていた。

 

「バー・・・サーカー」

 

 イリヤがその場にへたりこむ。

 

 イリヤを守らないと。考える前に体が動いていた。士郎は双剣をトレースし、ギルガメッシュのもとへと走っていた。

 

「うぉおぉぉおおおお!!!」

 

「邪魔だ、贋作者」

 

 ギルガメッシュは士郎に対し蹴りを放っていた。士郎はそれなら持ちこたえられると考えたが、そうはならなかった。双剣で防いだはずの蹴りは、その双剣を砕き、士郎を後ろの瓦礫へと吹き飛ばしていた。

 

「っかは・・・!!」

 

 士郎の意識はかすれつつあった。それでもイリヤを守るため、動こうとする。しかし、体は動かない。

 

 だめだ。

 

 くそっ・・・。

 

「いやぁ・・・いやだよぉ。死にたく、ないよぉ」

 

 泣き崩れるイリヤ。ギルガメッシュはイリヤのそばまで来ていた。

 

「喚くな人形。お前の心臓と、器は有効に活用してやる」

 

 ギルガメッシュの腕が振り上げられ、イリヤを貫こうとしていた。

 

 だめだ。誰か!イリヤ、を!

 

 

 

「ギルガメッシュゥゥゥゥゥ!!!!」

 

 

 

 イリヤの命が終わろうとしていた刹那、響き渡る声と共に、男が走ってくるのが見えた。

 

 あれは・・・まさか。

 

「来たかぁっ!!騎士王!!」

 

「キリ・・ツグ」

 

 二人目の正義の味方が、現れた。

 

 ギルガメッシュはイリヤを突飛ばした。そして、先程までのライダースーツ姿から、金色の鎧を纏う騎士へと変貌を遂げた。

 

 そして、異空間から一本の剣を取りだした。それを向かってくるキリツグに振る。

 

 ブォン!

 

 しかし、ギルガメッシュの攻撃は空振りに終わった。キリツグは間一髪のところでそれを避けたのだ。避けたキリツグは、飛ばされているイリヤを追った。

 

「なに!?」

 

 ギルガメッシュはあからさまに悔しそうな顔をしている。

 

 そんな中、キリツグはイリヤを抱き止めた。

 

「お兄、ちゃん」

 

「大丈夫か?怪我はないか?」

 

 イリヤは目に涙をため、キリツグを見上げる。

 

「どうして、ここに?」

 

「約束、だからだ」

 

「約束?」

 

 イリヤは不思議そうにキリツグを見た。

 

「言ったろ?必ず救うってさ」

 

 そう言うと、キリツグはイリヤを抱え士郎の元へとやって来た。そして、無言で士郎に渡す。

 

 そしてゆっくり振り返り、ギルガメッシュを睨んだ。 

 

「フン、無駄なことを」 

 

「言ったよな?俺の大切な人間を傷つけるな、と」 

 

 その言葉と共にキリツグはギルガメッシュのもとへ走る。その最中、キリツグはどこかで見たような剣を出現させた。

 

 あれは、投影? 

 

「はぁっっ!!」

 

 キリツグはギルガメッシュへと剣を振る。ギルガメッシュも対抗し、剣を振り抜いた。

 

「フン!」 

 

 二人は剣をつばぜり合った。

 

「思い出したのか?貴様は何者なのか」

 

「思い出したわけじゃない。ただ、聞かされただけさ」

 

 ギルガメッシュが剣を振り切った。キリツグはそれを防ぎきり、間合いを取る。

 

「俺が誰かなんて関係ない。アーサー王でも、キリツグでも。やるべきことができたんだ。だから、あんたのしようとしていることを止める」

 

「フハ・・・フハハハハ!よい。よいぞ!我を前にしても物怖じせぬその心意気!益々お前が欲しくなったぞ」

 

「俺は人間を捨てて英霊として、戦ってやる。キャスター!」

 

 キリツグは叫んだ。すると、キリツグたちから少し離れた位置に、キャスターが現れた。

 

「士郎たちを安全なところへ!」

 

「ええ、わかったわ」

 

 そう言うと、キャスターが近づいてきて囁いた。

 

「無茶なことをしたものね、坊や。でも、怪我は、ないみたい、ね?」

 

「え?ああ、そうみたいだ」

 

 おかしい。確かに意識を失いそうになるくらいの怪我は負ったはずだ。だが、なぜ?

 

「とりあえず、あのお城の頂上へ。あなたたちも見えていた方がいいでしょう」 

 

----------

 

 士郎に聞こえただろうか?ちょっと啖呵を切ったら、口が滑ってしまった。だが、俺がこれからする事を見れば、鈍感な士郎でも分かってしまうだろう。

 

「認識が、己を決める、か。個を持たないアンリマユが、よく言ったもんだ」

 

「さぁ、見せてみろ。我を楽しませてくれるのか?」

 

 ギルガメッシュは胸を張り、ふんぞり返っている。

 

 こいつは、ホントに王様の中の王様だな。俺も生前はこんなんだったのか?仲間に裏切られたってのも納得がいくよ。ってか、まだ生きてるのに、生前ってのもおかしいか。

 

「悪いが、俺はアーサー王としての自分は覚えてない。全くな。だから本来の力を出せるか分からないし、もしかしたらあんたの眼鏡に叶う人間じゃあないかもしれない。だが、しかしだ。アヴェンジャーは言っていた。お前の認識で、変わる、と」

 

 キリツグは、体の中心に力を込めた。

 

「俺は英霊になる。認めるよ、俺は英霊なんだ。人間、キリツグ・E・ペンドラゴンじゃない。英霊、アーサー・ペンドラゴンだ!」

 

 次の瞬間、キリツグの足下が急に輝きだした。目も眩んでしまうような輝きを、ギルガメッシュはそらすことなくいる。

 

「あれは、英霊召喚の魔方陣なの?いや、でも、まさか、マスター、貴方!」

 

 キャスターが溢したのを、士郎は見逃さなかった。

 

「どういうことだ?キャスター」

 

 しかし、キャスターはなにも言わない。言えないのか、言いたくないのか。士郎は、二人の方に向き直った。

 

「くそ。やはり、すでに人間として認識された俺じゃあ、役不足なのかもな。だったら」

 

 キリツグは、懐から1枚のカードを取りだした。タロットカードのような大きさで、表には中世の騎士が描かれている。

 

「これは、ダメだって言われてたんだけどな。ごめんミスタウェイバ」

 

 キリツグは魔方陣へと、そのカードを置いた。

 

夢幻召喚(インストール)

 

 そして-----、辺りが光であふれた。

 

 

 

 

 

「フン」

 

「あれは!?」

 

「マスター・・・」

 

「お兄ちゃん・・・」

 

 

 光が晴れ、キリツグの姿が露になった。

 

 見慣れたシルエット。青い肌着に、銀色の鎧。あれじゃあまるで・・・。

 

 

「セイバーじゃないか!!」

 

 士郎は叫ぶ。

 

 キリツグは自分の姿をまじまじと見た。

 

「この姿になっても、記憶は戻らないか。しかし、このカード、俺の体に馴染みすぎている。これは、もう戻れないかもしれないな」

 

 凛が1度、俺がこの姿になったと言っていた。自分の意思でなったわけじゃなかったが、その時は戻ることができた。

 

「もとより、そのつもりだ。この世界に、未練はない。俺は、サーヴァントセイバー」

 

 キリツグは聖剣を構える。

 

「さあ、いくぞ英雄王。武器の貯蔵は十分か?」

 

「ハッ!!」

 

 二人は一気に間合いを詰めた。

 

----------

 

 セイバーと凛は暗い夜道を走っていた。

 

「人が誰もいない。おかしい。暗いとはいえ、まだ人がそとにいてもおかしくない時間だ」

 

「恐らくキャスターでしょうね。人払いをするなんて、やっぱり、キリツグには何か考えがあるんだわ」

 

 その時、アインツベルンの城の方向で、一筋の光が降り注いでいるのが見えた。

 

「あれは?・・・っく!?」

 

 セイバーが急に足を止めた。

 

「どうしたのセイバー!?」

 

「いえ、急に力が抜けて」

 

「魔力供給は十分なはずよ。でも・・・え?これって」

 

 凛はセイバーを見て驚いた。

 

「貴方のステータスが、下がってる。なんで?」

 

 なんと、セイバーの能力が低下していたのだ。

 

 凛には覚えがあった。あの光。もしや。

 

「前にもこんなことが、あれは確か、キャスターと戦っていた最中。鎧を維持できなくなって」

 

「まさか、キリツグ。・・・急がないと。行くわよ!セイバー」

 

 その時だった。目の前に、大きな黒い塊が出現した。

 

「な!?これは」

 

「よう、お二人さん」

 

 人をからかうような声が、辺りに響く。

 

「おまえは、アヴェンジャー!」

 

 黒い塊から影を引き連れて、アヴェンジャーが姿を現した。その影の中には、ライダーの姿もある。

 

「おせっかいを言うようだが、あそこには行かない方がいいぜ?特にセイバー、あんたはな?」

 

「なんだと?」

 

 アヴェンジャーが意味深なことを口にした。もしかして、キリツグがセイバーと同じ姿になったことと関係があるんじゃ。

 

「セイバー、あんたは喰われるぜ?本物に。いやぁ、まさかあそこまで、人間の体で再現するとは。尊敬するぜ、さすが"俺たち"だ」

 

 そう言って、影たちを整列させた。

 

「計画はずいぶん進んでる。セイバー、ここでおまえをあの聖杯へと送れば、完遂へと近づく」

 

「何を考えている!?」

 

 アヴェンジャーはゆっくり話し出した。

 

「あの聖杯はちとイレギュラーでね。大聖杯と繋がっていない聖杯なんだ。見方を変えれば、あれもひとつの大聖杯なんだよ。汚染された聖杯から産み出された、全く新しい形の聖杯。それと、俺にはマスターがいないの、わかるよな?そうだ、俺のマスターは聖杯そのものなんだよ。それもそのはずだ。何せ、あれはこの世すべての悪(アンリマユ)の塊だ。俺は常にあれと、直結している」 

 

 影がゆっくりと近づく。力を失いつつあるセイバーだけでは、おそらく!

 

「そして俺は天の杯(ヘブンズフィール)ならぬ、魔の杯(デモンズフィール)を完成させ、この世に悪をばらまくんだ。自分達で作り上げた悪意からしっぺ返しを食らわせられる。皮肉な話だよ、な!だから、大人しく、あの聖杯に帰れ」

 

「っく!アヴェンジャー!」

 

 影に飲まれたライダーがセイバーに襲いかかる。

 

 ここでセイバーが倒れたら、どうしようも!

 

 その時、セイバーの前に人影が現れた。

 

「やめて!ライダー!」

 

 その人影に阻まれ、ライダーは攻撃を止めた。

 

「さ、桜・・・。あなた、なぜここに!」

 

「ごめんなさい、姉さん。だけど、私、なにもしてなんからいられないの!もう、弱いままの自分は嫌なの!」

 

「さ、桜ぁ、はや、速い」

 

 そして遅れて慎二が姿を見せた。

 

「し、慎二!あんた、桜を見張ってなさいって言ってたでしょ!」

 

「しょうがないだろ!これが桜の意思なんだから!」

 

 凛は桜を見る。迷いのない真っ直ぐな瞳。

 

「やめて、ライダー。私と戦いましょう。影と!」

 

 ライダーは、明らかに動揺していた。意思を失ったはずなのに、ライダーは迷っている。

 

「ラ・・・・サク、ラ」

 

 いける。元に戻せる。これなら!

 

 凛は奇跡を見いだした。これなら、まだ勝機はある。勝てなくても、ライダーを元に戻せれば、逃げ仰せることは可能だ。

 

 しかし、その瞬間だった。

 

「ッチ。しょうがねぇか。ライダー、令呪において命ずる、自害しろ」 

 

 慎二から奪った令呪を、アヴェンジャーは使用した。

 

「っえ?」

 

 ぶしゃぁぁぁあ。

 

 ライダーは自分の持っていた武器を自分の喉に突き立てた。

 

「いやぁぁぁぁ!!ライダァァァア、!!」

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