Fate/the alter   作:zaregoto

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クライマックスに近いです。

英雄王のキャラが不安定です。


#23 金色の王

 言わずと知れた英雄王は、久方ぶりに悩むという行動をしていた。聖杯戦争も終盤。王の出番ももうすぐである。

 

 しかし、だ。

 

 それでも彼は悩んでいた。本来の目的と、新たに生まれた願い。その境目で。

 

 悩みの種は、あの本物の騎士王だ。自らの全力を、打ち砕いた。あれほど高揚したのはいつぶりだろうか。

 

 英雄王としての悩みではなく、ギルガメッシュとしての悩み。久しぶりの感覚に、少しワクワクしている自分もいた。

 

 我を対等に見ている。それだけでも不敬なはずだが、しかし・・・。ヤツはアイツ(・・・)に似ている。

 

「ふん・・・」

 

 あの大空洞から抜け、今は新都にいた。もう少し先へ行けば、征服王と戦ったあの橋がある。

 

 思い出すことは、ほとんどしない。だが、かの王のことは思い出してもいいだろう。それに、ヤツ。アーサー王。今思い出すのは、あのときの会話。

 

 乖離剣を打ち砕かれ、帰路についていたとき。ヤツは傷も癒えていない体で、我を追いかけてきた。

 

----------

 

「どうした、騎士王。まだやるのか?」

 

「いや、英雄王。戦闘は終わった。あくまでもこれは後日譚だよ」

 

 ボロボロになった体を、サーヴァントに支えさせながら、近づいてきた。

 

「あんた、この闘いをどう見る?」

 

「何?」

 

 この男は、わけの分からない事を聞いてきた。

 

「この闘いだ。この聖杯戦争。今までのは含めないで、今回だけ」

 

「・・・何を言わせたい」

 

「いや、言わせたいわけじゃあない。聞きたいんだよ。お前の言葉を。英雄王の金言を」

 

 気付いていた、のだろうか?ではいつから?この闘いが始まってから?いや、それはあり得ない。言峰によれば、この男は元々参加するつもりはなかった。それか、先程?自分との闘いのときか?

 

 いや、どちらにしても、こいつはこの聖杯戦争の異常性(・・・)に気付いた、のだろう。

 

「この闘いには、意味がない」

 

「・・・・・・」

 

 英雄王の言葉を、騎士王は黙って聞いた。

 

「理由は言わずとも分かっているのだろう。聖杯戦争とは、7騎の英霊が殺し合い、聖杯を顕現させる。しかし、今回は、大幅に違う。いや、そもそもの前提が違う

 

「英霊の召喚に、意味はない、と言いたいのか?」

 

 騎士王が口を開いた。

 

「その通りだ。我は、泥を浴びたお陰で前回から顕現できている。しかし、今回の英霊たちは、根本的なものが違うのだ」  

 

「根本的?」

 

「・・・貴様と因縁がある、あの悪。ヤツに聞けば分かるだろうが、貴様は、分かっているのだろう?」

 

 騎士王は表情を変えない。否、変えられないのだろう。すでに、答えに行き着いているからだ。

 

「今回の英霊は、あのセイバーとアーチャーを除けば、全てが偽物だ」

 

「なっ!?」

 

 声を発したのは、騎士王を支えていた女狐だった。

 

「それは、どういう意味よ!?私たちが偽物?そんな、馬鹿な」

 

「・・・・・・」

 

 騎士王は表情を変えなかった。

 

「マスター、あなたは知っていたの?」

 

 女狐は騎士王に問う。

 

「思い付いたときは、まだ推論だった。その可能性もないことはない。この聖杯戦争自体、早すぎたからな。誰かが気を急いたのか、分からないが」

 

「いつ確信に至った?」

 

 今度は英雄王が問う。

 

「アヴェンジャーと話したときだ。アイツがこの聖杯戦争を偽物、と言ったときに、あぁ、やはりそうか、とね。だけどそんときは自分のことで精一杯だった」

 

 それに、と騎士王は話を繋げる。

 

「あのとき、アヴェンジャーが桜を拐う理由が見つからなかった。だから焦った。あの地獄から救ったのに、なぜ?とね。まぁ、結果を言えば、あの地獄から救えてはいなかったということなんだろう?」

 

「その事も分かっていたのか、貴様は」

 

「いや、これは完全に推測。キャスターの宝具であの爺との繋がりを断ち切ったあと、あの子に触れても、違和感は無くならなかった。そのときはあの蟲に浸されていたからだと思って、疑問に思わなかったけど、アヴェンジャーの元から救いだしたあと、その違和感が無くなっていた。つまり、あの子の中に、何かがあったということなんだろう」

 

「・・・そうだな。言峰は、あの娘を聖杯の器にするつもりだったようだが、アヴェンジャーは娘の中から、そうさせる原因だけを抜き取り、持ち帰った。その後、だ。ヤツが泥の中から女を出したのは」

 

「・・・・・・」

 

 騎士王の顔が険しくなる。聞きたかったのはこれか。

 

「取り出したのは、本物の聖杯の欠片。恐らく、前回セイバーが壊した聖杯の欠片を間桐の爺が回収していたのだろう。それを、あの娘に植え付けた。あの娘を器とするために」

 

「なる・・・ほどな。そうか、だからか。あの違和感は、アヴェンジャーと対峙した時に感じた嫌悪感に似ていた」

 

 騎士王は背後にある木にもたれ掛かり、顔を手でおおった。

 

「よかった。俺の選択は間違っていなかったわけだ。」

 

 騎士王は沈黙する。キャスターも黙っている。

 

 何も言えないのか、何も言わないのか。どちらかは分からないが、それでも目の前の男の表情は、晴れやかだった。

 

「泥の中から出した女ってのは・・・、いや、そうだな。もし、俺の予想が当たっているとするなら、あの人の、肉体、か?」

 

 あの人?あの女は、この男の知り合いか?

 

「それは貴様が確かめるといい」

 

 そう言って、英雄王は歩みを再び進める。

 

「そうか。ありがとう、英雄王」

 

 騎士王は、もたれ掛かっている木を背に、そのまま腰を落ち着けた。

 

「たわけ。王が無闇に礼を述べるな。底が知れるぞ」

 

 英雄王は騎士王に忠告した。それでも、騎士王は反論する。

 

「王じゃないさ。どんなに、頑張っても、俺は王にはななれない。なることができない。一度、諦めてしまったからな」

 

「ふん・・・戯れ言を」

 

 そう言って、英雄王は歩みを進めた。騎士王を背に黄金の甲冑に、月の光を纏わせながら。

 

「ヤツめ・・・。この戦争に勝利するつもりだな。分かっているのか?その意味を・・・」

 

 体を霊体化させながらそんなことを思っていた。

----------

 所変わって、大空洞。

 

「ただの人間じゃない。エミリア、か」

 

「ご名答。どうやら気付いていたか」

 

 悪意と神父、それに騎士王と魔術師が対峙する。

 

「ギルガメッシュが口添えしたのか?」

 

 神父がそう言った。

 

「自分でたどり着いた答えだ。それと、この聖杯戦争の仕組みも、な」

 

「ほう、しかし・・・」

 

 神父は騎士王を上から下まで見た。

 

「お前は、人間であることを捨てたな?」

 

「関係ない」

 

 騎士王からは、キリツグであった頃の感じが発せられていなかった。人間らしさを失い、英霊のそれを感じさせていた。

 

「ギルガメッシュと闘ったのか。命知らずなのは知っていたが、どんな魔術を使った?」

 

「・・・・・・」

 

 騎士王は口を閉じた。それについて、これ以上は話さないという意思表示だった。

 

「どうするつもりだ?お前、この器を破壊できるのか?」

 

「破壊はしないさ。俺はこの聖杯戦争を完遂させる」

 

 悪意の問いに、騎士王が答えた。

 

「・・・お前は、何をするつもりだ?」

 

「そうだな。正義の味方ごっこだよ」

 

 そう言って、騎士王は騎士王そのものに姿をかえる。見まごうことなき騎士の王。聖剣を、刃を向けた。

 

「お前だけを倒しても、聖杯だけを破壊しても、この戦争は止まらない。地脈に流れ出たこの世全ての悪(アンリマユ)を消し去らない限り、この戦争は消え去らない。そうだろ?」

 

「地脈の件についても分かってたか。だから聖杯を完成させて、その上でぶっ壊すってわけか?」

 

 騎士王は目を細めた。

 

「なるほど。だが、お前の思い通りになるかな?」

 

 そう言ったアヴェンジャーの周りから、泥があふれ出でた。その中から、ナニかがあふれる。

 

「さあさあ。お前の兄弟たちだ。恐らく、世界で一番弱く、手強い。そういうやつらだ」

 

「まさか、コイツら一体一体が英霊なの?」

 

 キャスターが呟く。

 

「英霊の偽物だ。だが、気を抜くなよ、キャスター。そして・・・」

 

 言葉を置き、騎士王はまた呟く。

 

「やるぞ、バーサーカー」

 

 そう、騎士王は呟く。今、騎士王が率いる3人目のサーヴァントのクラスを。

 

 呟くと同時に、霊体化していた狂戦士が姿を現した。

 

「■■■■■■■■■■■!!!!」

 

 狂戦士とされた英雄は、咆哮する。目の前の敵に向かって。

 

「貴様、3体目のサーヴァントを従えているのか。しかも、それがあのバーサーカーとは。馬鹿げている。死を選ぶような物だぞ」

 

「俺は特別なんだよ。なんてったって、かの有名な騎士王様だからな」  

 

「それでは回答になっていない。そもそも、お前は、その令呪を、どうやって手に入れた?(・・・・・・・・・・・)

 

 騎士王は目を細めた。その眼で、神父を見やる。

 

「そこにいるキャスターが契約破りを宝具としているのはしっている。しかしだ。恐らく、そこにいるキャスターではその令呪に耐えることができないだろう」

 

「そうだな。だから、俺が手ずから奪ってやったまでだ」

 

 なに?

 

 今度は神父が怪訝そうな顔をした。

 

 確かに宝具を使わず、令呪を奪った例は存在する。しかし、それも令呪のある腕を切り落とすという、強行策を取ったから出来たことのはずだ。

 

 しかし、イリヤスフィールの場合は違う。あの娘の令呪は、体全体に達している。となると・・・。

 

「殺したのか?あの娘を」

 

「馬鹿言うな。なんで救うと約束した相手を殺すんだよ」

 

 そう言って、騎士王は自分の腕を露にした。

 

「それは・・・」

 

 確かに、令呪がもうひとつ存在する。セイバーとの契約を破棄したことは分かっていた。ゆえに、この男の腕に存在する令呪は1つのはず。見えるのは両の手の甲に1つずつ。

 

 さらに、だ。仮に令呪を奪えたとしても、あの膨大な魔力量に耐えることが出来ないだろう。

 

「まぁ、裏技だ。さっきの闘いで、あのカードの本来の使い方は理解できた。だからだよ」

 

 なにがだから、だ。全くわからない。この男は、一体?何を。

 

「流石は異端児。気味の悪い」

 

「そっくりそのまま返してやるよ。行くぜ、バーサーカー。凪ぎ払え。キャスターは援護。俺は、エミリアを救う」

 

 2騎の、いや、3騎の英霊が黒い英霊の大群に向かっていった。

 

「おもしれぇ。神父、お前は下がってな」

 

 2つの陣営が、ぶつかる!

 

----------

 

「貴様、英雄王!」

 

 対峙するのは金色と鈍色たち。

 

 英雄王ギルガメッシュは二人を卑下するような目で眺めていた。

 

「お前たちがだらだらとやっているから、手を出してしまったではないか」

 

 なぜだ?なぜ攻撃が来ない。

 

 先程の初撃。確かに最高の一撃だった。しかし、二撃目が来ない。英霊王は二人を眺めているだけだった。

 

「何をしに来た」

 

「それは先程言ったはずだ。終わらせるのだよ、この茶番を」

 

 そう言うと、英霊王は衛宮邸内の庭へ足を下ろした。

 

「この場でどちらかが消えるのも一興であったが、しかし、やはり我が手ずから行うのがよかろうて」

 

 しかし。

 

 しかし、だ。そう言っているのに、彼は攻撃してこない。どちらかといえば、アーチャーの方を敵視している気がする。

 

「だが」  

 

 英雄王が言葉を発し、そこで切る。そして次を語った。

 

「この戦争ほど我の気分を害する物はない。故に!」

 

 英雄王が右手を上げる。するとどこかの空間から、一本の剣が現れた。

 

「消えろ!贋作者!」

 

 それを、アーチャーに向かって投擲した。

 

 ガンッッ!!

 

 アーチャーはそれを自らの夫婦剣で砕く。

 

「なんだ・・・??」

 

 士郎は思わず口から溢してしまった。

 

 ギルガメッシュは自分たちを攻撃していない。アーチャー1人を攻撃している。それが疑問でしかなかった。現れた時のヤツは、俺たち2人を目の敵にしているように見えたからだ。

 

「フン・・・」

 

 ギルガメッシュの背後にはまだ、多くの武器が存在していた。

 

「下がっていろ雑種」

 

 明らかに俺の方を見て言っていた。  

  

 確信した。こいつは、俺を敵と認識していない。いや、敵にすらされていない、のか?それはそれで、なかなか来るものがあるな。

 

「俺の味方をするのか・・・?!」

 

「勘違いするなよ雑種」

 

 アーチャーの方を睨みながら此方に向けて言葉を発した。確かに、声色のそれが味方にするものではない。

 

「我は我の目的のために、必要なことをするだけだ。そう。この戦争の今後のために」

 

「英雄王ともあろうものが、そのような小僧に肩入れするのか。さすがは王様だな」

 

 アーチャーが皮肉っぽくギルガメッシュに告げる。それを聞いたギルガメッシュは、興味なさそうに冷ややかな目で口を開く。

 

「笑わせるな贋作者。我は我のしたいことをするだけだ。何度と言わせるな」

 

 ギルガメッシュは背後に控えている宝具たちへと意識をこめる。

 その宝具一つ一つが、有名な刀剣などの武器だ。もしくはその原点。その一つ一つをあろうことかギルガメッシュは、自らの腕のように使役していた。

 

 汗一つかかずに、それを、発射する。

 

「くっ!?」

 

 アーチャーは夫婦剣でそれをいなし、砕き、かわす。

 

「どうした?贋作者」

 

 アーチャーは間一髪でそれをこなす。必要最小限の動きでそれを成している。それは、この状況の均衡を保っていることに他ならなかった。

 しかし、アーチャーの動きも徐々に鈍くなる。英霊とはいえ、疲労することはある。それとは反対に、ギルガメッシュの攻撃の手は緩められることはない。

 

「ここは・・・退くしかないようだな」

 

 アーチャーはそう告げる。そう告げたアーチャーに向かってギルガメッシュは未だに冷ややかな目を向けていた。

 

「よい。許す。今はその時ではない。今すぐ退いて、騎士王に伝えろ。我はこちら側についた、とな」

 

 アーチャーは訝しげな表情を浮かべ、そのまま霊体化していった。それを見逃すギルガメッシュ。

 いや、まて。今、なんと言った。

 

「おま、え?今、なんて」

 

 士郎があたふたしているなか、ギルガメッシュは纏っていた鎧を解き、ライダースーツの姿になった。

 

「だから、言っているだろうが、たわけ。勘違いするな、と!我はこちら側につくと言っただけだ。味方になるとは言っていない!」

 

 いや、それは言っていることと同義なのでは?とは言わない。ギルガメッシュの顔は完全にキレていたからだ。

 ギルガメッシュはこちらの方に向き直ると、そのまま直進する。何かをされる?そう思ったが、ギルガメッシュはそのまま歩いていって、家の方へ向かっていった。

 

「お、おい!どこにいくんだ!」

 

「・・・・・・」

 

 その問いには答えず、そのまま進み、あろうことか土足で家に上がり込んでいった。

 

「お、お前!待てよ!」

 

 士郎はそのあとを急いで追った。

 

----------

 

 士郎はギルガメッシュに「靴だけは脱いでくれないか」とだけ言った。それに対し、ギルガメッシュは「ふん・・・」とだけ言って、靴を脱いで士郎に向かって投げた。

 そして、今に至っている。とりあえず、煎茶を出し時間が流れていた。

 

 そんな均衡を破ったのは、存在を忘れられていたあの子だった。

 

 襖が開く。

 

「シロー、大きな音がしたけど、どうした・・・」

 

「ム?」

 

 空気が凍りつく。少し前まで、殺すだの殺されるだののやり取りをしていたのに。こんな状況で。

 眠っていたはずのイリヤが、襖を開いて立っていたのだ。背後には二人のメイドがいた。

 

「キ、キンピカ!!」

 

「アインツベルンの人形か。ここにいたのか」

 

 また、ギルガメッシュをキンピカ呼ばわりしたのはさておいて、だ。この状況、一体どうしたものか。

 

 深い夜が続くなか、士郎は一人、頭を抱えていた。

 

----------

 

 黄金の王は夢を見る。

 

 

 かつて共に戦い、倒れた泥人形の夢。

 

 

 神より造られた人形。天の鎖。

 

 

 英雄の王は夢を語る。

 

 

 二回目の生を受けた、この現代の戦場で。

 

 

 存在するはずのない騎士王に。 

 

 

 最古の王は夢を叶える。

 

 

 見て、語り、叶える。

 

 

 この偽りを、壊すために。

 

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