Fate/the alter   作:zaregoto

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#07 日常に潜む闇

「逃げなさい!■■■■ー!!」

 

 王さまは俺を背に、そう言い放った。

 逃げ惑う民衆の中、僕に聞こえるようにできる限り大声で言った。剣を片手に、何かと戦っている。

 

「っく!」

 

「王さま!王さまも逃げないと!殺されちゃうよ!!」

 

「私はいいのです!早く!あなたがっ・・・!?」

 

 僕のほうを向いた瞬間、王さまのお腹から、何かが生えた。赤黒い液体がべっとりと付いた何かが。

 

「は、やく・・・。逃げ・・・」

 

「・・・・ひっ!」

 

 僕は一目散に走った。

 走って、走って、走って、走って。

 僕は、誰かの建物の中に入った。

 王さまが、死んだ。王さま。

 

「死んだ」

 

 どす黒い何かが、僕の中に渦巻く。ぐるぐると。

 死ぬ。死んでしまう。命が終わる。王さまの命が消えてしまった。

 その瞬間、建物がいびつな音をたてた。家具が、岩が、いろいろなものが降ってくる。

 そうして僕の意識が途切れてしまった。

 

******************************************

 

「あんた・・・いったい何を考えてるのよ!」

 

 帰ってくるなり、俺は凛からお説教をくらっていた。ものすごい剣幕である。なるほど。この女から男の匂いがしないのは、このせいか。

 

「いやー、こんなことになるとは思ってなかったんだよな」

 

「どこをどう間違えれば、サーヴァントを拾ってくる選択肢にいきわたるのよ!」

 

「失敬な、ペットじゃないんだぞ。救ってきたと言え」

 

「どっちでも同じよ!」

 

 そう。この俺が雨の森で助けた女の人は、なんとサーヴァントだったのだ。雨だったのと、この人の魔力が微弱だったのがこの結果なのか。

 

「そこまで怒らなくてもいいんじゃないか?遠坂」

 

「士郎は黙ってなさい!!」

 

 凛に一喝され、急にしおらしくなってしまった士郎だった。もう少し粘ってくれよ士郎・・・。

 

「でも大丈夫なんじゃないか?多分、この人はぐれサーヴァントだろうし」

 

「え?」

 

 そう。先ほど気づいたが、このサーヴァントにはパスが通っていない。マスターによる魔力供給がないのだ。だからこそ、これほどまでに弱体化していた。だからこそ気づけなかった。うん。そうだ。

 

「そうなの?」

 

「ええ、そうよ」

 

 先ほどまで眠っていたサーヴァントが、目を覚まし、そういった。

 

「マスターを殺し、無理やり契約を解除してきたのよ。それで弱っているところを、そこの坊やに助けてもらった。ほんと、迷惑な話よ」

 

「お、お前な」

 

「あなた、クラスは?」

 

 敵対者という目を向けたまま、凛は訪ねた。

 

「キャスターよ」

 

「それにしても、そのエルフ耳。英霊ってのはすごいんだな」

 

「なっ!?」

 

 俺はキャスターの耳を凝視していた。次の瞬間俺はキャスターの拳によって後方に吹っ飛ばされていた。

 

「ぶべらっ!?」

 

「な、何をしているの!?」

 

 キャスターのはずなのに、とても拳が重かった。

 

「ったく、自業自得よ。とにかく!あんたはいますぐここから出ていきなさい。さもないと」

 

「さもないとなんなのかしら?小娘」

 

 痛みに耐えて、顔をあげると一触即発の空気が流れていた。

 

「ま、まぁいいじゃないか、遠坂」

 

「あんたは黙ってなさい!」

 

 またも一喝される士郎。不憫で仕方ない。

 

「だったらさ」

 

「ん、何よ?」

 

 キャスターも不思議な顔をして俺を見つめる。

 

「俺のサーヴァントになればいいんじゃないか?」

 

****************************

 

「あんたにはセイバーがいるじゃない!2体のサーヴァントなんて、ルール違反よ」

 

 先程から話は硬直したままだった。

 

「ルール違反じゃあない。ただ、イレギュラーなだけだ」

 

「イレギュラーを許していたら、ルールなんてあったもんじゃないわよ!」

 

「これただ一度だけだ。、、、多分だけど」

 

「あの神父なら、許してくれそうだけどな」

 

 そんな問答を続けている最中、セイバーが風呂から帰ってきた。

 

「良いお湯でした。お先に失礼し、、、」

 

 この状況を見て、セイバーは固まってしまった。

 

「えっとだな、セイバー、これは」

 

「かわい、、、んんっ!」

 

 セイバーを見たキャスターが、何か言いかけたが、まあいいだろう。すぐに、元に戻ったのでスルーすることにした。

 

「あなたがセイバーのサーヴァントね。私はキャスター。あなたのマスターのサーヴァントになるものよ」

 

「ちょっ!?」

 

 あからさまに驚いた凛。しかし、セイバーは動じなかった。

 

「キャスター、ですか。よろしくお願いします」

 

「セイバーも!なんなのよ!」

 

「我々の陣営が強くなるだけです。何か問題でもあるのですか?凛」

 

 セイバーがこう言ってくれたので、凛も行き場を失ってしまったようだ。

 

「もういいわよ!好きにしなさい!」

 

「なんだ?凛。俺のことを心配してくれるのか?」

 

「ち、違うわよ!イレギュラーとして、協会側から始末されるようなことがあったら、たまったもんじゃないからよ!それに私たちは協力関係!あんたがそういう風になったら、私たちにも被害があるかもしれないの!わかった!?」

 

 一気に話しすぎて、あからさまに息切れしている。

 これが照れているなら、可愛いんだけど。

 

「マスター、契約を」

 

 そう言ったのはキャスターだった。

 

「おう」

 

 簡易的に契約を結ぶ。すると、セイバーの令呪があるのとは、反対側の手に令呪が浮き出てきた。

 

「これでよし。よろしくなキャスター」

 

「ええ」

 

「もう、本当に知らないわよ。いいわ!今日手にいれた情報を伝えるわね」

 

 諦めたように残念な表情を浮かべた凛だったが、ずっとそうしているわけにもいけないのは、分かっているようで、すぐに話を切り替えた。

 

「今日っていうと、学校で何かあったのか?」

 

「ああ。学校に結界が張られていたんだ」

 

「おそらく、結界内の人間を魔力に変える類いのモノね。士郎も感じたでしょう?あの違和感を」

 

 確かに、俺があの夜、ランサーとアーチャーの戦いを目にするために、学校へ侵入したときも、確かに違和感はあった。しかし、あの違和感に、そこまでの力はなかったはず。

 

「きっと、あの結界の完全生成には時間がかかるはずよ。違和感は日に日に強くなっている。初めて魔力を感じたのが4日前だから、設置されてから4、5日は経っているんじゃあないかしら」

 

「ないかしらって、、、。起点は探したのか?その結界を形作っている」

 

「ええ。でも考えるに、複数箇所存在していると思うのよ。あれほど大規模な結界だもの」

 

 なるほど。そう考えればそうなのか。あのとき、地脈に直接リンクされていたと考えれば、あのときの小さかった魔力は説明がつく。地脈の魔力に隠れていたのだろう。

 

「あと、、、」

 

 そのとき、凛に一喝され続けていた士郎が重い口を開いた。

 

「俺の友人が、襲われた」

 

「襲われた?なんだか漠然としてるな」

 

「ああ。俺がもし、この件に関わらなかったら、ただの、事故としか思わなかっただろう。だけど、今回は違うんだ。そう、感じる」

 

 士郎の深刻な表情から察するに、仲の良い友人なのだろう。正義に敏感な士郎だ。コレ、絡みの事柄ならば、士郎は気に止めないわけがない。

 

「体の血が抜かれていたんだ」

 

「正確には、精気ね」

 

 凛が口を挟む。

 

「おそらく、彼女はサーヴァントに襲われたんでしょう。今回の結界との関係性はまだ小さなものだけど、他人を犠牲にして、力を得るということは一致しているし。まったく、あの結界もそうだけど、三流魔術師のやることよ」

 

「血を吸うことで、精気を奪う英霊か。思い当たるので言えば、串刺し公としても名高い、ヴラド・ドラクル伯爵とかだろう」

 

「串刺し公?誰なんだ?」

 

 ハテ?とでもいったような顔で俺に問いかける士郎。仕方ないか、知識の浅い、ただの学生なんだから。

 

「ワラキア公ヴラド三世。15世紀のワラキア公国の君主だった人だ。後のドラキュラのモデルになった人物だよ」

 

「その、ヴラドって奴は血を飲んでたのか?」

 

「いや、ドラキュラに関する過去の人間ならもう一人いる。血の伯爵夫人、エリザベート・バートリーだ」

 

「あなた、よく調べているわね」

 

 キャスターが感心そうに俺を見ていた。

 

「まあな。師匠の部屋には、沢山の本があって、手当たり次第に読んでたんだよ。まさか、こんなところで役にたつなんて、な」

 

「それで、、、そのエリザベートってのは?」

 

「悪い悪い、、、。確か、ハンガリーの貴族で、少女を惨殺した人間だ。その惨殺っていうのも、若い女の血を浴びると、美貌が保たれるってのを信じての行動だったんだ。浴槽一杯に、アイアンメイデンっていう拷問器具で出した血を浸し、そこに入る。この二人がドラキュラっていう物語のモデルなんだよ」

 

 結構スプラッタ全開な話になってしまった。キャスターは物怖じしていないが、凛や士郎、なんとセイバーまでも、若干引いてた。

 

「と、とにかく、そういう可能性もあるから、要心しろよって話だ。分かっているのといないのとじゃあ、違うだろうが」

 

「え、ええ、そうね。とにかく、明日も結界の調査ね。そこで、キリツグ。あなたにも来てもらいたいのだけど」

 

「俺?入れるのか?」

 

 答えはノーだろう。日本人なら怪しまれることはないが、俺は金髪の外人だ。必ず目立つ。

 

「人が居なくなってから、行動するから大丈夫よ。でも念のために、士郎に学校指定のジャージを借りておきなさい」

 

「あいよ。分かったな?士郎」

 

「ああ」

 

 3人はこれからの事を決定した。しかし、彼らはまだ知り得なかったのだ。これから、起きる惨劇の鐘が、警鐘をならしているということを。

 

************************************

 

「聖杯戦争とな。あやつら、面白いことをする」

 

 レンガ造りの一室で、ローブを被った老人たちが大きなテーブルに一同に会していた。中心には、何やら小さな瓶。中には、何かが入っていた。

 

「あの魔術師たちに出来たのだ。我々に出来ないわけがない」

 

「聖杯に貯まった魔力を使い、願いを叶える。万能の願望器か、カハハなるほどのぅ」

 

「そして、ここにあるのは、かの有名な王の血族の血液である。これは紛れもない、聖遺物足るであろう」

 

 おそらく、一番偉いであろう老人が小瓶を掲げた。

 

「本当に、やるのですか?私は責任を負えませんが」

 

 中の慎重そうな老人が言った。

 

「この神秘、試す価値はあろう」

 

 そうして、老人の中の何人かが、英霊召喚の義を執り行った。

 

 しかし、それらは失敗に終わった。

 

「何故だ!何故成功しなかった!、、、なんだ。これはなんだ!?」

 

 老人たちは、黒いナニかに飲み込まれていく。

 

 そうして、その場には誰もいなくなったのであった。

 

 しかし、それから凡そ60年後、その不安定な召喚によって擬似的に産み出されてしまったのである。

 

 一人の赤子の泣き声と共に。




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