Fate/the alter   作:zaregoto

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#08 三姉妹の末女

 木製の家屋に、一人の少女と老人がいた。二人は、何かを話しているようだった。

 

「ということは、これが令呪というものなのですか?おじいさま」

 

「ああ。儂も、詳しくは知らぬがな」

 

 見れば、少女は上半身を露にしていた。端から見れば、ただのセクハラのようだが、二人の顔からは、そのようなものは感じられない。それどころか、それとは真逆の真剣な表情が見受けられた。

 

 露になっている少女の背中には、何やら刺青のようなものが見える。

 

「もう、よろしいですか?」

 

「ああ、すまない」

 

「いえ、教えてくれと言ったのは、こちらですから」

 

 老人に断りを入れ、衣類を羽織る。

 

「しかし、まさかあのような者がサーヴァントだとは」

 

「儂も驚いたよ。一見、ただの赤子。それがあの英霊、なのかもしれないがな」

 

「おじいさまが仰られる通りならば、あと6騎のサーヴァントが現界するはずなのですが」

 

「しかし、そのような者は見当たらない、フム」

 

 老人は、少し考えるような素振りをした。

 

「起こるはずのない事象なのだ、これは。イレギュラー、そう言ってもよいだろう」

 

「イレギュラー、ですか?」

 

「ああ」

 

 何が起こるか分からない、と老人は付け加えた。

 少女は、傍らにいる赤子をみやった。

 

「私は、この子を守ります。この子がサーヴァントならば、いつか来る戦いのために」

 

「それがよかろう。しかし、エミリアよ、お前はこの赤子への接触を禁ずる」

 

「な、何故ですか!?この子は、まだ赤子なのですよ!?」

 表情を変えず、老人は続けた。

 

「お前が主であると、悟られぬためだ。これも、いつか来る戦いのためなのだよ」

 

「分かり、ました」

 

 悲しそうに赤子を眺めるエミリアと呼ばれた少女。わずかながら、母性本能が働いたのだろうか。

 

「この子は、儂が育てる。サーヴァントではなく、一人の人間として。お前のように、優しい子になるようにな」

 

 老人が微笑んだ。それに呼応して、少女も微笑んだ。

 

「しかし、名はお前が決めるのだ。よいな」

 

「は、はい」

 

 エミリアは赤子を見る。

 名をつけるというのは、とても重要だ。

 

「そうですね、、、あなたは、あの人のお墓の前に召喚されたあなたは―――」

 

*********************************

 

 キリツグとキャスターは穂郡原学園の校門へ来ていた。

 キャスターは婦人服に身を包み、方やキリツグはとてもとても目立つ格好をしていた。

 

「やっぱり目立つよなぁ。なぁ?キャスター」

 

「そうね、その髪色と目の色でも明らかに目立つのに、その格好だもの。異様よ」

 

 士郎からジャージを借りようと思ったのだが、士郎曰く、ジャージは学校にあるとのことで、夏用の体操服を借りたのだ。

 言っておくが、今は冬である。

 

「たいっへん寒いんだよ!アイツは何を考えてるんだよ!」

 

 言わずもがな、遠坂のことである。

 彼女にも彼女なりの配慮ってもんがあるんだろうが、これは配慮でないと、俺は思う。まあ、嫌がらせでは、、、ないよな。

 

「なにも考えてないのではなくて?」

 

「だろうな、、、」

 

 キャスターと二人で納得し合う。

 二人は校門をくぐった。前よりも大きくなっている違和感。凛が言っていたのは、当たっていたようだ。

 

「これはまずいな。明日にでも発動しそうな感じだが」

 

「そうね。でもまだ不安定よ。発動すれば、人間の精気を吸いきれないわ」

 

 誰もいない学校は、どことなく哀愁が感じられた。校舎をよく見ると、前に俺がぶっ壊した廊下が見えた。少し直ってきているが、まだ危ないだろう。逃げるためとはいえ、悪いことをした。

 

「キャスター、結界の起点を探してくれ」

 

 気を取り直して、キャスターに頼んだ。

 

「ええ。、、、かなりあるわね。これを消すのは骨がいりそうよ」

 

 キャスターが言うには、学校の至るところに魔力の痕跡があるそうだ。取り付けた際では、微弱で凛でも感じられるかどうかのところだろう。

 キャスターならば、この魔力でも見つけることが出来るだろうが。

 

「一個一個やっていくしかないだろう。まぁ、その前に凛たちと会わないとな」

 

「あの小娘、こんなになるまで、放っておくなんて」

 

「しょうがないだろ。俺も凛もただの魔術師なんだからな。お前とは違うんだよ。あ、そう言えばさ」

 

 ここで俺は、昨日聞けなかった事を聞くことにした。

 

「なに?」

 

「お前の真名はなんなんだ?聞いてなかったなと思って」

 

「そうね。わかったわ」

 

 少し渋っているように思えたが、それでもキャスターは教えてくれるようだった。

 

「私はメディア。コルキスの王女、メディアよ」

 

 メディア、か。これは、よく知らないな。裏切りの魔女であることは知っているが、それ言うと怒りそうだ。あまり深くは聞かないようにしよう。

 

「そうか。改めてよろしくな、メディア」

 

「あら、あなたは私のことさえも調べているのかと思っていたのだけれど。知っているのではなくて?」

 

 知っていることを言ったら絶対怒る。それ以外は知らないんだが。

 

「ま、俺に必要なのは昔のお前じゃなくて、今のお前だからな。なにやってても、気にしないよ。自分のパートナーのこと信頼できなきゃ、この戦争勝ち残れないさ」

 

 一度驚いたような顔をしたが、すぐに元の表情に戻った。

 

「そう、、、。賢明ね、前のマスターよりは好感が持てるわよ、あなた」

 

「そいつぁありがとう。さ、行こう」

 

 一瞬微笑んだように見えたが、気のせいか?

 俺はキャスターを引き連れて、中へ進んでいった。

 

*********************************

 

「来たわね、来たところ悪いけど士郎を追ってちょうだい」

 

 やっと、みつけた凛は女の子の介抱をしていた。女の子は酷く衰弱している。

 

「一体、何があったんだ?これは、一体」

 

「サーヴァントね。結構な機動力から見れば、恐らくアサシンかライダー。まったく、士郎ってばそれを追って森に入っていっちゃったのよ」

 

「アイツ、、、あれほど言ったのに!セイバーは?」

 

 辺りを見てもセイバーの姿は見当たらない。

 

「分からないわ。いきなり居なくなっちゃったのよ。あれは、とかいって」

 

 セイバーもセイバーだ。そんなことするやつには見えないが、よほどのことがあったのだろうか。

 とにかく、今は士郎だ。

 

「おっしゃ、行くぞキャスター。凛はその子を」

 

「分かったわ。ったく!アーチャーのやつも、何処行ったってのよ!英霊ってのは、あんなやつばっかなの?」

 

 グチグチと文句を垂れる凛を後目に、森へ進んでいった。

 見れば、確かに人が通った後と、わずかながら魔力の痕跡がある。

 

「急がないと、あの坊や、死ぬわよ」

 

「分かってるよ!くそ!急ぐ!」

 

 そう言って、俺は足に魔力を込めた。

 

「あなた、それは」

 

「あ?なんだよ」

 

「そのカードよ、1枚1枚に膨大な魔力を感じるわ」

 

 見せてはいないが、キャスターにはばれてしまったようだ。

 俺は宝石魔術の他に、カードを使った魔術も使う。協会から逃げ出すときに、かっぱらってきたもんだ。これがなんなのかは、分からないが、大変重宝している。

 

「いずれ話す。今はそんなことを、、、」

 

 とかなんとかやっている間に、どうやら求めていた場所についたようだ。

 そこには、腕から血を流す士郎がいた。そして、本を持った青年と目をおおった女。あれが恐らくサーヴァント。

 

「士郎!無事か」

 

「キリツグ、助かった」

 

 士郎は満身創痍。遠くでは分からない、細かい傷で一杯だった。

 

「くそ!仲間を呼んだか、衛宮め。やれ!ライダー」

 

 青年は俺たちにサーヴァントをけしかける。

 

「ここで確実に殺します。シンジ、宝具を使用します」

 

 そう言って、ライダーは目をおおっていたものを外した。

 宝具?まさか、魔眼の類いか?!

 

「士郎!キャスター!アイツの目を見るな!」

 

「フン、遅い」

 

 運悪く、サーヴァントの目を見てしまった俺たちは、体が石のようになり、身動きが取れなくなってしまった。

 

「、、、、!」

 

 士郎と俺は、口も動かせなくなった。

 

「これ、は、石化の、、、!」

 

「さすがキャスターですね。口なら動かせるようですが」

 

 まずい。これは、結構まずい。令呪を使用して、セイバーを呼び寄せたいのだが、声も出せないこの状況では!

 

「やれ!ライダー!!!」

 

 青年が叫ぶ。俺たちは、死を覚悟した。

 死ぬ?俺が?

 切嗣に救ってもらったこの俺が、命を落とすのか?

 

 それは、、、、ダメだ!!

 

 迫り来るライダー。それに呼応して、俺の内魔力が上昇していく。俺の持てる最大限の魔力を、口の感覚神経へと向ける。これ以上魔力を行使すれば、俺は死ぬ。だが、ここで、こんな形で命を落とすくらいなら!!

 

「、、、せ、、い、」

 

 ものすごい速さで迫るライダー。

 

 まだだ!まだ足りない!

 

 その時、何故か士郎の魔力が急激に上昇した。

 その上昇に伴い、石化の枷がとける士郎。

 

「ッカハ!?なんで!?」

 

 それに驚いたのか、ライダーは足を止めた。

 

「なぜ、私の石化が解けたのですか」

 

 その時だ。

 その時、頭上から1本の槍、のようなものが、降り注いだ。

 

「悪いが、それは私の協力者なのでね。殺されては困るのだよ」

 

 赤い外套に身を包んだ、褐色の男。

 

「ア、アーチャー?」

 

「フッ、だらしないぞキリツグ。それに魔女。お前ならばなんとかなったのではないか?」

 

 俺とキャスターに言葉を投げ掛けるアーチャーだった。

 

 青年の顔は、みるみるうちに焦りの色を見せ始めた。

 

「-----------」

 

 何かを口にしたキャスター。それに呼応して俺の石化が解けた。

 

「もう少しで解けたのよ、このくらいの魔術。それにアーチャー。私を魔女と呼ばないで。、、、殺すわよ」

 

「ホウ、やってみるかキャスター」

 

「お前ら、喧嘩してる場合じゃねぇぞ!さぁ。これで形勢逆転だ。どうする?偽物のマスター」

 

 ライダーのマスターは顔を酷く歪ませた。

 

「くっ!に、逃げるぞ!ライダー!」

 

「逃がすと思うか」

 

 アーチャーが言う。

 目をおおいなおしたライダーは、冷静にマスターの元へ寄っていった。

 

「逃げますよ、シンジ」

 

 と、同時にライダーの周りの空気が変わる。

 まさか、、、これは。

 

「避けろ!お前ら!」

 

「騎英の、、、」

 

 ライダーの魔力が、形を成していく。

 

「手綱!!」

 

 天馬が姿を表し、ものすごい速さで俺たちに向かって特攻していった。

 間一髪で、俺たちはそれをかわした。

 

 彼女たちの通った後には、道が出来ていた。地面は抉れ、木はなぎ倒されていた。酷い破壊力である。

 

「こ、これは」

 

 驚きの表情を隠せない士郎だった。

 

「なるほど。ライダーたる所以は、あのペガサスか」

 

 そう言ったのはアーチャー。

 

「そうか。石化の魔眼、ペガサス。アイツ、ゴルゴン三姉妹の末娘、メドゥーサ」

 

 天馬の飛んでいった方向を眺め、命の危険を感じたものの、情報を手に入れられたことに少なからず喜びを感じていた。

 

******************************

 

 教会近くのある森の中に、セイバーと、ある男がいた。

 

「やはり、あなたでしたか」

 

「、、、、」

 

 セイバーはその男のことを知っているようであった。友人関係ではなさそうだ。それは、彼女の目が語っていた。

 

「アーチャー」

 

「久し振りだな、セイバーよ」

 

 月夜に照らされながら、金色に輝く男と、金色を手にする少女は、瞳を交わらせていく。

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