南方から本土へ移動したということを踏まえていただければ、この章を詳しく読まなくても次章へはすすめます。
今章は個人的にやりたいことがあったので付け加えてみました。
昼過ぎに、提督は何時ぞやのビクトリアで迎えに来た。
『天津風』が、ちょうど朝食を終えて、荷物を纏めたころに、宿舎の表でビクトリアのクラクションが鳴ったのだ。
「天津風早く、提督がまってるよ」
背嚢を担ごうとする『天津風』を尻目に、『時津風』は急かした。
「じゃあ、留守は任せたわよ、分隊長」
「うん、いってらっしゃい」
『天津風』は階段を駆け下り、玄関でまっている『神通』に一礼する。
「提督に迷惑のないよう」
「もちろんです」
『神通』は手を振って見送ってくれた、十六駆のメンバーは上の階の窓から手を振って短い別れを惜しんでいる。
提督はビクトリアの後ろの席に乗るように勺した。
「これからどうするの」
『天津風』は荷物を横に下ろし、席に座った。
「これから北端の飛行場に向う、ちょっと時間が掛かるが我慢してくれ」
「わかったわ」
「それと――」
提督は、前を向いたまま『天津風』に装飾眩い士官用の短刀と剣帯を渡した。
「スカートは履いてきたな?」
「もちろんよっ」
少し子供扱いされたような気がしたがそれ以上は言わず、『天津風』は渡された短刀と剣帯を受け取る、いままで持ったことのある短剣より腕にズッシリくる重さだ。
「今までの飾りの短剣とは違う。重い短刀を腰から下げる以上、スカートがないと痛いだろう。それに、もう今までとは扱いが違う、一度戦場にでて戻ってきた君はもう立派な士官だ」
改めて短刀に目をやる、製造番号まで振ってあり、ロックを外して刀身を見ると確かに今までの見世物とは違う眩さを感じた。
「分かったわ」
「それじゃあ、行くか」
提督はエンジンを吹かして港の宿舎を後にした。
仲間と離れる寂しさより、これからのことへの緊張が胸を締め付けた。
少し見慣れてきた風景は三十分ほどで姿を消し、あとは道と電線を支える電柱以外目に付かないようになった。
木々すら目に付かず、脇には用水路が走り、水田や廃屋が風景を占領した。
一時間車を走らせているが、前後左右目に付くものに変わりがなく、飽き飽きするのを通り越してもはや何も感じなくなった。
「ねぇ提督、どこが“ちょっと”なのよ」
『天津風』が嫌気をぶつけた、長時間の航海なら慣れているが、何もせずただ座っていることは耐え難い。
「あと二時間くらいだ、辛抱してくれ」
『天津風』は大きく溜息を搗き、また外を眺めた。
少し走ると、遠くに大きな人工物が見えた。
「提督、あれはなに」
2~3キロ先に、畑と水田の中にポツンとある施設に疑問を持った。
「あれは陸軍の駐屯地だ、鉄塔が見えるだろ?」
目を凝らすと、敷地の四つ角に高い鉄塔が見えた、だがそこまで大きな駐屯地には見えない。
「どうしてこんな内陸に駐屯地があるの、戦ってるのは海でしょう?」
視界から消えた駐屯地など気にせず、さらに質問した。
「陸軍は我々とはまた別のものと戦ってるんだ、詳しい事は知らないよ」
「当てにならないわね」
『天津風』の好奇心はそれ以上続かず、うとうとする事もなく、ひたすら変わりのない風景を眺め続けた。
日が傾き始め、道は舗装すらされていない状態になった。
さすがの高級車であるビクトリアも、段差の大きさに対応仕切れず、乗り心地は最悪になって『天津風』はさらに苛立ちを募らせる。
辛抱して二時間待つと、さすがに風景は変わり、道の周りは背の高い木々が生い茂りはじめた。
「いい加減着くでしょう」
「ああ」
港から車を走らせ約四時間、高い湿度とコンディションの悪い道に耐え、ようやく飛行場の敷地に差し掛かった。
有刺鉄線の柵が見えるが、そこを越える時に止められることもなく敷地内に入る。
上空を双発機が低空で掠め、いよいよ飛行場が近づいたことを感じられた。
「ちょうど到着したようだ」
提督は車を急がせた。
森が開け、鉄柵と簡易的な検問所が現れた、だが車を止めるようなゲートはない。
係員らしき下士官が車に寄って来たが、何か確認する様子はなく提督を確認しただけで車の通過を許した。
すぐ目の前に滑走路が左右に走り、右奥にはトタン張りの格納庫が三個建てられている。
中が空の格納庫内にビクトリアを止めて、すぐに外に出て格納庫の横にある小さな管制塔に向う。
滑走路を一周した、先程の双発機が格納庫前でエンジンをアイドリングしている。
「こんなところに、ようこそお出でなさいました」
管制塔の下には管制士官の大尉が待っていた、ここの航空隊と兼任らしく、航空隊の徽章もつけている。
「すぐには・・・、無理そうだな」
提督は双発機に寄って集る整備員を察して言った。
「軽いエンジンのオーバーホールが必要ですが、夜までに飛ばせるようにします」
「ありがとう」
時間の目処を立てると、提督は双発機に近寄った、『天津風』も後を付いて行く。
機体のドア下にタラップが設置され、ドアが開くと中から『鳳翔』が出てきた。
「やっと帰ってきてくれて嬉しいよ」
『鳳翔』はいつもの袴に、階級章や勲章をつけたコートを折りたたんで手に持って降りてきた。
「飛ぶのは自分じゃなくて艦載機だけで十分です」
「何はともあれおつかれさま、入れ違いですまないが司令部を頼むよ」
『鳳翔』が実戦部隊に配属されるという事は、最前線の主力として一翼を担う事になるという事だ、長時間移動以外の疲労の色が見えるのも窺える。
「新しい秘書艦になったのよね、どうかこの人をお願いね」
丁寧に『鳳翔』は頭を下げた。
「い、いえ。私なんかで良ければお任せください」
『天津風』も『鳳翔』より深く頭を上げた、この短時間で秘書艦がどれだけ大変か学んだ『天津風』からすれば、頭を下げずにはいられなかった。
結局『鳳翔』は再び時間をかけて司令部施設までもどることになる、乗ってきたビクトリアは燃料さえ入れればまた帰れるので問題ない。
挨拶が済むと『天津風』は不安を抱いた、自分が乗る事になるだろう『鳳翔』が乗ってきたこの双発機についてだ。
「このかわいい機体はなんなの?」
整備員が左右のエンジンをばらしているが、シルエットが丸っこく滑らかで、戦闘用とは見えない。
「この機体はそこらの機体と一緒にするなよ、安心と生存性で言うならこいつを使った移動だダントツで安全だ」
「ならなんでここに来るときコレを使わなかったのよ!」
『天津風』は諸々の感情を込めて提督に罵倒の言葉を浴びせた。
「この百式司令部偵察機三型改はもう稼働機が十機そこらしかなくて貴重なんだ、それにペイロードは船に負けるからな」
「手ぶらな今しか使えないって事ね」
元はハイスペックを誇る偵察機だが、偵察の情報が活かせる状況がなくなったため、高高度飛行能力と最高速度を活かせる現在の移動手段に落ち着いた経緯がある。
エタノール水噴射による強力な出力を誇るエンジンによって高度6000メートルで約時速640キロが出せる、上昇限度も10000メートルまでと高高度爆撃機より速い速度で同じ高度を飛べる便利な“移動手段”である。
各国から運用されているもっとも美麗な機体と評され、この三型改は写真撮影機などの偵察機材を下ろして三~四人まで乗れるように改造されたものだ。
だが、移動手段としてはとても贅沢で、しかも深海棲艦の機体の解析はあまり進んでいないため、艦載機という縛り故高高度を飛行できないという考察からこの機体を移動手段の最も有効な手段として現在に至る。
他の機体は見つからず、格納庫から左右1000メートル伸びる二本の滑走路がもったいないほどだ。
「他の機体はどうした、前来たときはもっと見えたが」
提督は管制士官に尋ねた。
「最近は比島がきな臭いからあっち方面に付きっ切りなんですよ、ここの中隊もそれでここ一週間は不在です」
「そんな話が絶えないな、ここいらは」
大陸といい『新』島といい、陸軍管区ではきな臭い話題が後を絶たない、今年に入ってからずっとそうだ。
全体的に今年は全軍が慌しい傾向にある、我々もそうだが重要な事柄が今年度に集中している。
考えは尽きないが、日はそれに関わらず落ち続ける。
熱帯であるここ周辺は湿度が天敵で、少なからず機器に影響を及ぼす、空気密度の問題で航空機が揚力を上手く得られないということもある。
エンジンブロックは組み立てられ、長時間飛行に向けての最終チェックが行われている。
スターターが起動され、エンジンがアイドリング状態になり、駆動部の確認が続いているが、これでもまだ発進には程遠い。
少々複雑なエンジンなため多少運転が安定しているからといって安心できない、その上高高度を飛ぶため与圧キャビンの密閉の確認もその都度行われる。
夜の離陸までまだ時間はある、ゆっくり待つだけだ。
『天津風』と提督は少ない荷物をキャビン後方に固定し、自分が乗る座席を確認した。
偵察機器を下ろして、そこに席を後付しただけなのがよく分かる作りで、窓割りが座席に合っていない上に、あまり広いとは言えない。
日が落ちて、辺りが橙色の残光に満ちた頃、ようやく航空機燃料が注入され始めた。
航続距離は増槽含めて約4000キロ、エンジンがもてば大陸まで直行できる、本土までは一回の補給で到着できる。
だが移動距離約8000キロの旅は二日掛かる、しかもその大半が空の上に居ることになり、体力も気力も必要になってくる。
エンジン排気口から青い焔が垣間見え、高出力で安定していることが窺える。
最小限の食糧とや水、通信機器、機銃の弾丸を積み込み、あとは搭乗するだけになった。
「では行くぞ、天津風」
暗闇の中、二人は同じく二人の乗組員と共に搭乗し、離陸の用意が整う。
縦に並んで座るほど細い機体で、さらに与圧ようの外壁の厚さもあり、幅は1メートルくらいだ。
提督は操縦席の後ろに座り、その後ろに『天津風』が座る、本来二人乗りなので改造したとはいえ全体的に少し窮屈だ。
左右をエンジンに挟まれた座席は決して居心地の良いところではないが、体が動かないため落ち着いた姿勢で座る事ができる。
滑走路は真っ暗で、一番端についても主翼の航海等灯しか見えない。
前方はひたすら闇で、管制塔が薄っすら光っているのが確認できる。
「では、離陸します」
機長が騒音に負けない声で叫んだ。
エンジンが吹かされ、舗装されたダートの滑走路を加速していく。
離陸速度に近づくと機尾が浮き、増槽があるため余裕を持って2000メートル滑走し離陸した。
ある程度の高度まで上昇すると航海灯も消し、敵味方信号だけを発し高高度へ向けて上昇し始める。
真っ暗な視界から、雲の上へ抜けると月光を反射させる海だけが眼下で怪しく光っている、人の営みなど幽かにしかうかがい知る事ができない。
『天津風』自身、飛行機で空を飛ぶなど初めてで、表には出さないがかなり緊張していた。
今は暗いため高さが分からないが、夜が明ければその高さに驚愕するだろう。
何れにせよあと半日はこの状態が続くため、夜が明けてもどうもしようがない。
高度が高くなり8000メートルに差し掛かると、エンジン音が小さくなり環境もよくなってきた、予めもらったヘッドセットも外せるほどになったが、五月蝿いのに変わりはなかった。
上に窓があり、自分より上空には特に雲はなく、一面の星空が目に飛び込む、普段灯りの少ない地上でも十分見れるが、空気の澄んだ高空で見える星の煌きは格段に眩く見える。
機体が安定し、上昇が止まると機は半自動操縦になり緩やかに時間が経っていくようになる。
『天津風』の後ろにある7.7mm機銃が物々しいが、それ以外は穏やかでゆっくりできる雰囲気だ。
夜は更けて月は視界から消えた、『天津風』は少し興奮していて今まで経験した事のない飛行機への搭乗に心浮かれている。
やがて水平線の向こうから太陽が昇り、雲間から日輪が広がり朝を告げた。
朝が見えると『天津風』は睡魔に任せて寝てしまった、やはり明るいというのは一つの安心材料なのだろう。
提督は下に陸地が見えるまで起きていたが、その後着陸まではしばらく仮眠を摂ることにする。
そこからさらに三時間ほど飛び続けると、大陸が下に見え始め機体は高度を少しずつ下げる。
補給地は目下の陸軍領ナインガンドーの沿岸部に海軍陸戦隊の駐屯地がある、その飛行場に一日の滞在許可があるのでそこでできるだけ機体の整備と燃料補給を行う。
増槽は燃料が完全に空になったのを確認すると空中投棄され、さらに高度が落とされる。
雲の下まで下がると、下は沿岸の島嶼が目立ち、航海灯も再び燈された。
沿岸部に沿ってさらに三十分飛び続けると、オープンパラレル式の大きな飛行場が見えてくる、陸海軍航空隊共有の駐屯地だが、そこにある航空機は百機弱しかない。
管制塔からの誘導があるわけでもなく、ギヤを降ろし何事もなく着陸した。
着陸したと同時に作業員が近寄ってきて燃料補給や簡単な整備をし始める、時間は整備や燃料補給にかかる時間に関係なく二時間で離陸するらしい。
時刻は八時過ぎで、正午前にはこの管区を飛び立つ、たった二時間だが手足を伸ばせる時間ができたことを提督は喜んだ。
だが『天津風』は、着陸時の相当な衝撃も、周りで唸るレシプロエンジン音も、彼女の耳には届かないらしくずっとぐっすりである。
このままもう一度のフライトはきついが、このまま寝ているのならば起こす理由は提督にはない、むしろこのままのほうが提督にとっても幸せだ。
「ぐっすり寝かせてやってくれ、起きると彼女が五月蝿いぞ」
提督は機に集う整備士達に面白半分で警鐘を鳴らした、寝ているならそのままにするに越した事はない。
「それはもう、皇后様が乗っているように静かにしてますよ」
整備長が気張って言い、整備士達がそろって笑う。
東南のきな臭さを感じない陽気でしばらくは安心できるだろう。
それよりも、『天津風』に最近休みの無かったことを提督は気に掛けている、むしろ彼女が休むならそれを最優先したところだ。
連続した任務に休む暇を与えら得なかった事がずっと歯痒いところだったので、提督自身がそうさせたかったのもある。
提督も、機から降りて特に何をするわけでもなく、飛行場の高官と多少の世間話をしてすぐに戻った。
結局、二時間の間特に何事もなく作業が進み、十一時少し過ぎた頃再びエンジンが回される。
寝たままの『天津風』を乗せて、百式司偵は離陸した。
「――ん、今どこ?」
『天津風』はけたたましい機内の騒音にようやく起こされた。
手を一杯に伸ばそうにも前にしかスペースがないため出きる限り手足を伸ばすに限られた。
「すまんな、三時間前に中継飛行場を出発した。起こさないほうが良いと思ってのことだったんだが・・・」
騒音に耐えかねて『天津風』は再びヘッドホンをかけた。
「それでよかったわ、休日並みに寝たのは半月振りくらいだもの。それより何でこんなに五月蝿いの」
周りを見回して、機体が高度1000メートル以下を高速で飛んでいる異様な状況に気がつく。
「ここら辺は植民地が多くて領空が斑なんだ。暗黙の了解でバレなきゃいいんだが、バレたら撃墜されるかもしれんからな、あと一時間は最高速度で低空を飛び続ける」
エンジンが精一杯の回転数を叩き出し、速度が500キロを超えている状態で高度500メートル強を飛んでいる、並の戦闘機では追いつけない。
辺りは湿地と岩礁が混在し、機はその海との狭間を飛び続ける。
また、上空は薄暗く垂れ込めたスコールの雲で満たされ、雨こそ降らないもの気象状況はかなり不味い。
低空で飛行機雲を棚引かせ、機は目的地へと急ぐ、目指すは本土最南端の海軍所属飛行場だ、そこまでいけばあとは陸路が待っている。
目下はもっぱら海になり、もう三十分も飛ぶと陸地は遠方へと遠のいた。
領空を抜け出し、危険な海上に進出するにあわせて機体は急上昇をはじめる。
加給機の甲高いタービン音が振動になり伝わってくるのがわかった、機体の角度はほぼ四十五度近い。
高度8000メートルにつけると、あとはひたすら本土に向って飛行するのみだ。
揺れの少ない高空で、ようやく昼食となった。
と言っても、あるのはビスケット十枚とブリキ製のカップに入ったコーヒーが精々用意できるものだった。
与圧しているとはいえ機内は寒く、温度は二桁行かないくらいしかない、航空機用のコートを纏ってはいるが寒さが感じられないときはない。
緊張感のない旅はやたら退屈に思えてならず、『天津風』は何度も目下の海を眺め尽くした。
夕方になると、澄み切った雲一つ無い夕焼けが眼下一面の雲を橙色に染め上げ、日は後方へ落ちていく。
六時間の飛行の末、やっと気象観測機で本土らしき陸地を観測し、そのさらに一時間後に本土の海軍西部駐屯地司令部との連絡がついた。
一日長の連続飛行は本職のパイロットでも堪える、初めて航空機に乗る『天津風』は尚更で、その上暇な時間を持て余していたため、忙しかった頃が少し恋しかった。
日は水平線に隠れ、辺りは星が煌き始める、さすがに整備されたエンジンも連続運転に耐えかねて燃焼効率が悪くなり、頻繁に排気口から赤い燃焼炎が出始める。
「管制塔からのエスコートに乗りました、あと半時で着陸できます」
機長が提督に呼びかけた、機はまだ大陸に差し掛かったばかりだが、これ以上の北上には無理がある。
高度を少しずつ落し、エンジンも平常時の350キロ程度の速度で抑えて降下を計る。
雲の下に下りると、『天津風』はすぐに下の光景を眺めた。
街の夜の光は少し内陸に入ったところに固まっていて、沿岸部には若干の灯りと軍関係の施設しか見当たらなかった。
指定されたコースで三十分緩やかに降下していると、高度3000メートル辺りで海軍航空隊所属の五式戦闘機が一機案内にやってきた。
航海灯が点けられ、さらに高度が落とされる。
1000メートルを切ると、眼下に広大な飛行場基地が広がるのが分かった、多くの鉄塔が立ち並び、大きな格納庫や立派な管制塔が確認できる。
煌々と灯る案内灯や敷地内を照らす外灯は無く、微かに光る一本の筋が滑走路の真ん中に走るのみしか確認できない。
戦闘機は後方に下がり、百式司偵に着陸するよう促した。
ギヤを降ろし、フラップを開いて高度を下げていく、長さ1000メートルのゆったりした滑走路が設けられていて十分に夜間でも着陸できた。
白いラインが通り過ぎ、周りの施設と同じ目線にまで降りてくると、降着装置のタイヤが滑走路を掴み機体に僅かな衝撃が伝わってくる。
フラップを前回にし、機体は滑走路の端の格納庫前で丁度止まった。
エンジンが直ちに停止され、降りるためのタラップが運ばれてくるまでしばらくかかった。
その間に『天津風』と提督はコートを脱ぎ、すぐに移動できるように備える。
キャノピーが開けられ、先に下りた提督が『天津風』の手を取り降りるのを手伝ってタラップを降りた。
「大丈夫か」
提督はふらつく足元を見てそのまま手を添えた。
「半日まともに動いてなかったんだもの、無理ないわ」
「またこれから丸一日移動だからな、すまないがもう少し辛抱してくれ」
「まったく、面倒臭いのね」
提督は『天津風』の荷物と自分の軍刀を取ると、すぐに格納庫に向った。
「すぐに移動の手筈を整える、そのあいだ少し待っていてくれ。移動は車だ、こんどこそゆっくりできるだろう」
「はぁ。期待はしないわ・・・」
溜息を搗き、提督の後に続いて格納庫に向った。
数十日ぶりの帰投に、安堵を覚える暇も無く、再び移動する羽目になる。
だが、少なくとも行きの海路よりは幾分マシだったのは確かだ。
本題はこれからだ、秘書艦としてここまでついてきたのはいいものの、上級監理職がこれほど多忙だと思い知らされるばかりである。
戦闘に比べればまだ楽だが、決着が点け難いこの役職で、あの忌まわしき任務を負わされた彼女達をどういう形で弔うかが問題だろう。
まだはっきりしない目を擦りながら、『天津風』は提督と並んで格納庫へ向った。
今回やりたかったことは、ずばり百式司令部偵察機三型を登場させてみたかったということです。
今章は、前にご指摘をいただいた、天津風を休ませて上げたいかも!というご要望に沿ったものにしたつもりです。
今後はこのお話の全容を掘り下げて、世界観を露にしていきます。
それまで艦娘による戦闘は一切ありません、小説内で言うと7月には戦闘を再開する予定です。
その他ご指摘あればお願いします。
お気に入り登録15件、そのほか沢山の閲覧ありがとうございます!!
本小説も一周年です、皆さんのおかげでここまで順調に書くことができました。
もっといっぱい評価をもらえるようにがんばりますのでよろしくお願いします。