シーキューブの春亮×錐霞の短編です。この2人しかほぼ出ません。
「夜知・・・今日、私の家に来てくれないか?」
錐霞にそんなことを言われ、春亮は呆然とする。
「いんちょーさん?いきなり何を?」
「これも禍具のせいであることはわかってる。でも、衝動を押さえきれないんだ。」
禍具、またか・・・。そんなことを春亮は考えていた。ここのところ、しょっちゅう禍具に関わってきた。まぁ、家にはフィアやこのはもいるし、時々父親から禍具を送られてくる春亮の環境を考えれば仕方ないのだが。
そして、その環境ゆえに春亮は禍具に関わろうとしてしまう。
「わかったよ。」
そして、春亮は肯定してしまう。
「本当か!?夜知。」
そして、錐霞は顔を真っ赤にしていた。
☆
「あともう少しで夜知が来る・・・。そうすれば、私は夜知と2人きりに・・・。」
それを考えただけで、錐霞は春亮への気持ちを押さえきれず、ベッドの上でゴロゴロと暴れ回る。これは最近は毎日の出来事だ。
錐霞は1人この部屋で、つい春亮のことを考えてしまう。春亮が本当に自分を好きだったら?とか、もし付き合ったら?とか、そういうことを考える度に錐霞はベッドの上を転がり回る。
そして、転がり回りながら、錐霞は1つの招き猫を見ていた。
これこそが、禍具、呪われた左手招き猫。
頭の中で浮かんだ人物を、自分の近くに常に置いておかなければいられなくなる禍具。錐霞も例外ではなく、昨日、たまたま拾ったその翌日、つまり今日春亮を家に呼んでいた。
「でも・・・夜知を家に呼んだところでどうするんだ?禍具のせいでこんなことをしてしまったが、呼んだ後何するかなんで全然考えてなかったな・・・。」
そして、ピンポーンという音とともに
「いんちょーさん。来たぞ。」
春亮の声が聞こえた。
何をするか考える時間が欲しいとするならもう少し遅く来て欲しいと思うし、もっと春亮と一緒にいたいと考えるならもう少し早く来て欲しいと思う。そんな感情の中、錐霞は春亮を『招く』。
☆
「それで、禍具ってのはどれだ?」
「あぁ、それはこの招き猫だ。」
「左手招き猫か・・・。それでいんちょーさんが俺を呼んだってことは、人を家に入れたくて仕方なくなる禍具とか?」
「まぁ、だいたいそんなところだ。」
しかし話題もすぐ尽きてしまう。錐霞も何か話そうとは思っていなかったからである。禍具の特性上、家に入れたところで何するかなんてのは自分で考えなければいけないのである。
しかし、春亮を帰すことはできない。それが禍具の呪いだからだ。
そこで、口を開いたのは春亮だった。
「この禍具、このはでも使って壊すか?」
確かに、春亮の言う通り、こんな禍具は壊した方がいいと錐霞は思う。
しかし、これを壊したら春亮と一緒にいられない気がした錐霞は、すぐにそれを肯定することはできなかった。
「なぁ、夜知、私は、しばらくこの禍具を取っておきたい。」
「え?」
「そうすれば、いつでも、夜知と一緒にいられそうな気がするからな。」
錐霞は自分でそんなことを言ったことに気づいて恥ずかしくなる。こんなの、もうほぼ告白レベルじゃないか。錐霞はそう思った。
「いんちょーさん?」
春亮は錐霞の本心には気づかないものの、錐霞の様子が変わったことには気づいた。
そして錐霞は、そんな自分の本心を隠すように言った。
「いやいや、変なことを言って悪かった。あぁ馬鹿げている。こんな禍具。壊してしまえ。」
「いやでもいんちょーさん、さっき壊したくないって言ってたじゃないか。」
「そ、それはだな・・・。」
錐霞は悩む。ここで禍具を壊せば呪いは無くなる。しかし、その呪いによって錐霞は春亮を家に誘うことができた。そして2人は今2人きりで一緒にいる。
この一緒にいたいという感情が禍具の呪いなのか、それとも自分の本心によるものなのか、もし後者だとしたら、錐霞は禍具に助けられていることになる。
その禍具を壊してもいいのだろうか?いや、禍具であればこそ壊さなければいけないのか。そして錐霞の出した結論は・・・。
「私はこの禍具を壊したくない。馬鹿げているかもしれないが。」
「そうか、だったら壊さなくても・・・。」
「いや、それでも壊す。そのために、今からこの想いに決着をつける。」
錐霞は、今ここで決着をつけると決めた。もう禍具に頼った2人きりなんてもう嫌だ。これからは、自分の想いで、春亮のそばにいたい。
「私は、夜知のことが好きだ。だから、たとえ禍具を壊しても、夜知に近づいてもいいだろうか?やっぱり禍具の力なんて馬鹿げている。だから、これからは私自身の想いとして、夜知のそばにいたい。」
そして、錐霞は想いを伝える。
こうするしかなかったのだ。禍具を壊し、かつ春亮のそばにいるためには、呪いとしてではなく、恋人として、春亮と一緒にいるしか方法はなかったのだ。
それに対して春亮は、予想外の事実に驚きながらも、返事をする。
「なんか、いんちょーさんと俺が恋愛関係なんて想像もつかなかったよ。俺といんちょーさんの関係なんて、学級委員長とクラスメイト、または禍具と共闘する存在くらいだな。そう思っていた。今まではな。」
そのあとに、春亮はこう告げる。
「だが、いんちょーさんが俺を好きだと言ってくれて、そしたらいんちょーさんが、突然、女の子に見えてきたんだ。今までそんなこと全然考えてなかったのに、いんちょーさんのことを、異性として意識しちゃったよ。」
錐霞の表情は複雑だった。自分を異性として意識してくれたのは嬉しいが、それは今からの話であり、今までの春亮はそうではなかったということである。
それでも、錐霞は我慢できない。今ここで結ばれなければ、また春亮の感情は冷めてしまう気がした。ならば、少しだけでも自分を意識している今、春亮を自分のことを好きにさせればいい。自分は今までずっと好きだったのだから、それができる気がしていた。
「ならば、それでいいじゃないか。私が、夜知に、私を好きだと言わせてやる。」
だから、それだけ言っておく。
そして春亮も
「いんちょーさん、これからは、少し進んだ関係として、よろしくな。」
その一言だけを、告げた。
「なぁ、関係が進展したというのなら、そのいんちょーさんってのやめないか?・・・・・春亮。」
「あぁ、そうだなぁ、でもけっこう恥ずかしいぞ。・・・・・錐霞。」
お互いの名前を呼び合うだけで2人とも顔を真っ赤にしてしまうということは、春亮も、最初から錐霞のことが好きなのではないかとも思ったが、錐霞が今自分のそばにいる。そして今自分が錐霞を好きである。その2つの事実があれば、どちらでもよかった。
☆
その夜。
「くそぉぉぉ、一時の感情に任せてあんなことを言ってしまうとは・・・馬鹿げている!!いやでも、そもそも私は夜知・・・いや、春亮のことが好きなのだからいいんじゃないのか?ああもう!考えているだけで恥ずかしい!!」
錐霞は、いつも通り、ベッドの上で暴れ回っていた。
その暴れ方は今までよりも激しく、そして、今までより、ずっと幸せそうだった。
他にもいろいろなCP短編を企画中です。ネタが思いついて、作者の余裕があればの話ですけど。
現在企画中:学校の階段(幸宏×真琴)、とある魔術の禁書目録(上条×美琴)、他。琴がついてるのは偶然です。
ちなみに新年1発目の投稿はバカと文月学園と学園都市になるでしょう。