東方狂宴録   作:赤城@54100

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 早速突入、紅魔郷編。
 日常回も入れておくべきだったかと思いますが、ここら辺は以前投稿していたサイトでも出していた分なので、変に話を挟むとおかしくなりそうと判断しそのまま投稿。


第十八話『紅魔郷第一幕・宵闇の妖怪』

 ———紅魔郷Stage1【宵闇の妖怪 ルーミア】

 

 

 

 十六夜咲夜が来たあの日からちょうど一週間が経過した今日、俺は暗い道を妖怪や妖精を倒したり追い払いながら歩いていた。飛べないわけではないが、まだまだ酷く遅いし疲れる。

 そういうわけで、俺は極々平凡に地に足つけて進んでいる。

 

『随分とまた、数が多いね』

「……この霧のせいだろう」

 

 時折、こうしてワラキアと話しながら歩く。この霧、とは夜になり急に発生した紅い霧のことだ。

 この辺で、どこに向かっているか、察しのいい人はもう気付いただろう。……俺が向かっているのはこの紅い霧の出所……即ち——紅魔館。

 

「ついに幕開け、か……」

 

 紅霧異変、旧作を除いた原作での第一作目【東方紅魔郷】。その幕が、ついに上がった。

 

『二度も幕と言うのは些かしつこいのでは?』

 

 演出家にダメ出しされたけど無視して行こう。

 

 

 

…………………………

……………

………

 

 

 

 さて、相も変わらず集ってくる妖精や妖怪を倒しながら進んでいく。倒す、とはいっても放たれる弾幕や攻撃を障壁で防ぎながら此方も弾幕を張ったり切り裂いたり、という少しばかり卑怯なやり方だが。

 ……まぁ、弾幕ごっこではないしいいだろう、うん。それにまともにやりあうのはまだ恐いし。

 

『ワンパターン……マンネリズム……刺激不足……』

 

 …………あれ、ちょ、ワラキアさん?

 

『……文句を言っても仕方ないね、安全策といえば……まぁ、問題無いだろう』

 

 半ば諦めたような声ではあるが、一応認めてはくれたらしい。いやまぁ、認めなくてもこうするしかないんだけどな。

 俺は速く飛べないから回避がしにくい、代わりに障壁を張り防ぐ……飛ぶよりこういった防御関係のほうが覚えやすかったし、マントのおかげで使うのも楽だから仕方ない。

 

『里に戻れば叱られるのは確定しているから、体力は残しておかねばならないというのもあるね』

「……あまり、思い出させないでくれるかな……?」

 

 ガックリと肩を落としながら歩みを進める。ワラキアが言ったのはどういう意味か……まぁ、簡単に言えば、俺は黙ってここまで来たんだ。一応書き置きは残したが……焼け石に水だろうなぁ……。

 何故黙って来たかというと……話などしにいったら間違いなく慧音に止められる。これが些か拙いためだ。まぁ、最終的には認めてくれるとは思うがそれでは出発が遅れてしまう。

 そうなると少しばかり面倒だ、そもそも夜だから迷惑もかかる。

 俺はレミリアの誘いを蹴った以上、異変を解決するしかない。そのためには、霊夢や魔理沙と一緒に挑んだほうが確実だろう、場合によっては俺は何もしなくていいかもしれない。

 だから最初にもあるように、紅魔館……霧の湖のほうに向かっているんだが。

 

『遭遇しないね……いやはや、影も形もないとは正にこのことだ』

 

 ……何故こうも上手くいかないのだろう? 何かしたっけかな?

 やはりまず神社に行くべきだったか……少し慌てすぎたのかもしれない。

 

『……む、あれは?』

「どうかしたのかね?」

 

 ワラキアの言葉に反応し、そちらを向く……と……。

 …………あれは球体、か? 真っ黒でふらふらと危なっかしく動いている、いや本当に危なっかしいな。

 ふらふら、ふらふらと進んでいき――ゴンッと、木にぶつかった。かなり凄い音がしたぞオイ。なんとなく心配になりながら見つめていると。

 

「…………あう……」

 

 球体が霧散し、額を押さえる少女……幼女? まぁとにかく、中から少女が出てきた。

 ……いや、しかし、あれ間違いなく……ルーミア、だよな? 紅魔郷の一面ボスを担当する……ってことは、やっぱりまだ霊夢も魔理沙も来てないってことか、なんてこったい。

 

「……あれ? …………!」

 

 おぅ、見つかった……なんか目を輝かせてるんだけど、ヤバくないかコレ? 妙に嬉しそうに駆け寄ってくるルーミア、俺を指差しながら口を開いた。

 

「そこの貴方!」

「……何かな?」

「貴方は、食べていい人る……い? あれ? 人類?」

 

 むむむ、と首を傾げるルーミア……一応人間ではないと分かるのか。

 しかし安心した、二次創作だとたまにEXルーミアとかが出てくるからな。違うようだから本当に安心。……そりゃあ、危険なのに変わりは無いだろうけど、程度が段違いだ。

 

「……んー、まぁいいわ。貴方は食べていい生物?」

 

 急に質問の範囲が広くなった!?

 

「駄目だ、私は用があるからね……食べられるわけにはいかないよ」

「そーなのかー……」

 

 お、生そーなのかーだ。でも確か原作だと一回しか言ってないらしいんだよなぁ……何故あそこまで浸透したのか不思議だ。

 ……ん? なんかルーミアが構えて……飛びかかってきた!?

 

「でも頂きまーす!」

 

 ちょっ、でもってなんだよでもって! やべぇ食われ———

 

 ———ガンッ!! と、あわや頭に噛みつかれるか、というところでそんな音が響いた。

 

「いっ!?」

「……あぁ、そうだった」

 

 ……障壁張ってたの忘れてた……あぁルーミア顔面打ち付けちゃったよ、痛そう。歯は折れてないよな? 妖怪だから大丈夫だとは思うが、口開けてたわけだから少し拙いかもしれない……。

 

「い、いひゃい……」

「……大丈夫かね?」

「うぅ……貴方、今いったい何したの?」

 

 涙目で此方を見上げてくるルーミア、どうやら自身のぶつかったものが何か分からず疑問らしい……が

 

「だから言っただろう、食べられるわけにはいかないと。対策はしているのだよ?」

 

 まぁ、答えるわけにはいかない、大丈夫だとは思うが……念には念を、というやつだ。まだ俺のほうを唸りながら見上げてくるが、こればっかりは諦めてもらうしか無いだろう。

 しかし悪い気もするので、慰める意味を込めて頭を撫でる。……うん、手入れはあまりされてないようだが……やわらかい髪質だ、これはこれで良いな。

 

「……ねぇ」

「む、なにかな?」

「貴方を食べるのは諦めるわ、だから何か食べ物くれないかしら?」

「……成る程、代わりの物を要求してきたか」

 

 苦笑しながら、まぁそれで解決するならいいかとマントの中からおにぎりを包んだ袋を取り出す。これらは家を出る前に、腹が空いたらと思い作っておいたものだ。

 ちなみに具は梅干とわさび菜……安価で手に入り、尚且つ美味いし腐りにくい、個人的には非の打ち所の無い具だと思う。

 まぁそれは置いといて、おにぎりを手渡す……と、もきゅもきゅと食べだすルーミア。こうして見ると普通の少女なんだがなぁ……。

 

「あむあむ……むぐ……見かけによらず、もきゅもきゅ……渋い趣味してるね……んくっ……はぁ」

「見かけによらずとはまた、否定し難い言葉を……」

 

 苦笑を浮かべながら返す。実際、ワラキアの見た目でこの具の選択は微妙なところだろう、俺の個人的な趣味で選んだわけだし。

 

『いや、これらはいいと思うよ。腐りにくく美味、安価で手に入りやすいから弁当に実に向いている』

 

 おい待て、いつから主夫になった。そんなんだからお前はパパキアとか呼ばれるんだぞ。

 

『ふむ……パパか、人だった頃はいちおう子持ちではあったが……いやはや、違和感を覚えつつも何故か受け入れられるね』

 

 ……あれ、なんかパパキア受け入れちゃった? 拙いだろうそれは……なんというか、キャラとして拙いだろう。

 

「ねぇ」

 

 っと……急にマントを引っ張られて少し驚いた。どうやらルーミアが食べ終わり、話しかけてきたようだ。

 口元に付いた米粒を取ってあげながら聞き返す。

 

「どうかしたのかね?」

「お代わりはある?」

 

 …………え?

 

「も、もう食べ終わったのかね……?」

「えぇ、美味しく頂いたわ。で、お代わりはある?」

 

 ……早いな、いちおう5つあったんだけど……早いし、速い……。人間食おうとするだけあるのかな、よく二次創作じゃ大食いキャラだし……うーん。

 

 

「すまないね、それしか持ってきていなかったのだよ」

「そうなのかー……」

 

 まさかの二回目……そんなにショックだったのかな? でも無いものは無いからなぁ……申し訳ないけど、諦めてもらうしかない。

 ……っと、しまった。とりあえずルーミアに襲われるフラグ(食的な意味で)も回避したし、さっさと先に進まないと。

 

「さて、私はそろそろ行くとするよ。用事があるからね」

「どこかに行くの?」

「この紅い霧の出所に」

「この霧の……そう、ならこのまま進めば着くはずよ」

 

 俺が先程まで進行方向としていたほうを指差し、ルーミアが言った。よし、やっぱりあっちのほうで合ってたな……少し不安だったけどこれで安心して進める。

 ルーミアも会話した感じ割と普通だし、信用できるな。

 

「そうか、ではこのまま行くとするよ。情報、感謝する」

「こちらこそ、おにぎり感謝するわ。おかげで少しは持ちそうだもの」

「ふむ……なら次の機会には沢山ご馳走するとしよう」

 

 言いながら歩き出す。背に受ける、楽しみにしているわ、という声に手を振ることで返し、ちょっぴり後悔もしながら。

 

 

 

———Stage1 Clear!

 

……飲血鬼祟り中……




 弾幕ごっこは男がやるものじゃないらしいからね、戦わないのも仕方ないよね!

 ぶっちゃけ大の大人が小さい子相手にって絵面が、こう、うん。世界観的に仕方ないのとか、そういうのを気にしない人もいると思いますが、個人的にこんな感じでいけるとこはいきます。
 無理そうならバトル入ります、主にズェピアが死にかけます……なんだじゃあ気にしなくていいやん!(主人公軽視

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