艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十話 2 激震(後編)

陸軍からの連絡を受けて、深海棲艦捕縛のため単独行動が可能な巡洋艦・駆逐艦を選定する大淀。

皮肉な事に大神への好感度が高く、能力補正を大きく受けているものほど、大神の狙撃で深刻なパニック状態となっており使い物にならないのが現状だ。

いや、筆頭秘書艦という立場がなかったら自分もパニックに陥っていただろう。

 

故に深海棲艦捕縛の任務は、素の能力が高く、精神的にそれほど大きな影響を受けていない阿賀野型姉妹と白露型姉妹、初春型姉妹に任されることとなった。

 

「隊長さんを狙撃した悪いやつは、阿賀野が必ず捕まえます!」

 

そう言って阿賀野たちは警備府を後にし、龍驤、祥鳳らの航空情報を元に深海棲艦捕縛の為東京湾にて待ち構える。

無論街中で砲戦などやる訳にはいかないからだ。

 

「白露ちゃん、みんな、敵は一人。まずは敵を総攻撃でボコボコにして、戦闘能力を奪うよ」

「はいっ!」

 

やがて、水路を抜けた深海棲艦が姿を現す。

その姿は――

 

「空母? 空母棲鬼?」

 

鎮守府の最新のデータバンクと照合して、近しいものを呟く阿賀野。

だが、違う。

そのことに気が付いた矢矧が全員に警戒の言を投げかける。

 

「阿賀野ねぇ、違います! 新型の姫です! いずれにしても敵は空母、私達だけでは危険です。祥鳳さんたちと連携して事に当たるべきです!!」

 

だが、水路を抜け海上に出た空母棲姫は即座に航空機を展開し、艦娘たちへと爆撃を行う。

 

「きゃぁーっ!?」

 

その凄まじい火力に、能力補正をほぼ受けていない阿賀野たちは軽々と大破させられる。

戦闘不能となった艦娘の横をすり抜けていく空母棲姫。

 

「悔しいっぽい! せめて――!」

「隊長の受けた痛み、少しでも――!」

 

運よく無傷だった夕立と時雨は連装砲を空母棲姫に撃つ。

 

「フッ……カワイイナア……」

 

無論それはかすかばかり程の傷も与えられない。

哄笑する空母棲姫。

 

「アンシン……シナサイ……アトデマタ……シズメテアゲル!」

 

艦娘の無力を嘲笑い、悠々と東京湾を脱出する空母棲姫だった。

 

 

 

『ごめんなさい、大淀。敵深海棲艦に逃げられたわ。こちらは夕立と時雨以外全員が大破。しばらく戦闘は無理みたい……』

『敵深海棲艦に、11隻の包囲網を突破、いえ破壊されたですって!?』

 

阿賀野たちからの連絡を聞いて、大淀が大声を上げる。

どうすれば良いのか次の手を考える大淀。

隊長が、大神が居てくれたらと、どうしても思ってしまう。

 

「大淀さん、AL方面の永井司令官から連絡です。艦娘が急に慌てているがそちらで何かあったのか確認したいとの事です」

「大淀さん、MI方面からも敵増援に対して隊長の指示を仰ぎたいとの事です」

 

一瞬、大淀は話すべきか、話さないべきか迷う。

ALもMIも能力補正を大きく受けた、即ち、より大神を慕う艦娘で構成されている。

大神の現状を話せば、今の有明のように全てが瓦解する恐れがある。

けれども――

 

「……真実を包み隠さず話してください」

「……いいのですか?」

「もし黙っていて、交戦中に隊長の重態に気付かれたら状況はより最悪になります。それよりかは今のうちに話しておいて、幾分か心が平静になったところで敵を迎え撃つべきでしょう」

 

だが、時間が立てば艦娘は心の平静を取り戻せるのだろうか。

大淀にも正直自信はない。

 

「あと、硫黄島方面の迎撃部隊の編成を大神さんの指示通りにしないと……」

 

しかし、それも大神が健在だったからこそ有効であった編成。

今のこの状況で有効とはとても思えない。

 

だからといって能力補正なしで新たな敵、また来るといった敵、空母棲姫を含む艦隊に対抗できるだろうか。

何が現状において最善なのか、大淀は必死にまとまらない頭を動かし続ける。

 

と、その時、大淀の胸を痛みが走る。

 

「まさか……」

 

大神の身に何かあったとでも言うのか。

 

居ても立ってもたっても居られずに、集中治療室へと向かう大淀たち。

そこには大淀と同様に感じた艦娘が集まっていた。

 

「長門さん、武蔵さんまで……」

「すまない、だが、隊長にもしものことがあったらと思ってしまったら、居ても立っても居られなかったんだ」

 

武人として強固な精神を持つと思われていた二人でさえこれだ。

他の艦娘がどうなっているかなんて考えるまでもない。

 

窓から医療ポッドを見ると、明石が必死に大神を治療している。

だが、その表情には絶望の色が漂っている。

涙を滲ませている。

 

集中治療室に下手に入って大神の治療を邪魔する訳には行かない。

けれども、状況は確認しないといけない、明石への連絡を行う大淀

 

『明石、隊長の容態はどうなの?』

『治らないの……治ってくれないの!!』

 

泣き出すように、悲鳴のような回答をする明石。

 

『どういうことですか!?』

『怨念で汚染された傷口が塞がってくれないの! 血が止まらないの! 今は、輸血で持たせてるけどそれだって限界が! どうしよう、大淀! 大神さんが! このままじゃ大神さんが!!』

『そんな……何か手はないの!?』

 

目の前が真っ暗になりながら、何とか踏ん張って問いかける大淀。

 

『霊的治療であれば、もしかしたら――』

『なら、出来る人を一刻も早く呼んできます! 誰が居るの?』

『大神さん――』

『え?』

『私、大神さんしか出来る人を知らない……欧州には居るらしいけど、今からじゃ間に合わない』

 

大神を救う為には大神が必要。

なんと矛盾した、そして絶望的な状況なのか。

とうとう身体から力が抜けて崩れ落ちる大淀。

 

 

 

もはや、目の前には絶望しか残されていなかった。

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