艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十話 8 本土近海邀撃戦 2

今まで聞いたことのない哀れな断末魔を上げながら浄化された空母棲姫に囚われていた艦娘。

恐らく駆逐艦だとは思われるのだが、浜風に並び起伏に富んだその姿からは判別しにくい。

それでも当然の如く全裸なその姿を隠す為、大神は光武・海の収納スペースから薄手のコートを取り出すとその艦娘にかけようとした。

 

だが、瑞鶴が大神の裾を引っ張って引き止める。

 

「――ヤダ」

「え?」

 

瑞鶴の意図が理解できなくて、疑問の声を上げる大神。

その間に瑞鶴はコートを持った大神の片腕に抱きついた。

 

「私以外の艦娘の事、見ちゃヤダよ。大神さん」

「瑞鶴くん。そうは言われても、この艦娘の事を放ってなんておけないよ」

「だって、この艦娘。全裸だし……私より胸おっきいし」

「いやいやいや。瑞鶴くんが離れてくれれば、このコートをすぐにかけるから!」

 

それでも瑞鶴は大神の片腕に抱きついて離れようとしない。

大神は片手で全裸の艦娘を抱き締めたまま、コートをかけようとした腕を瑞鶴に取られている。

だから、駆逐艦らしき艦娘は大神の腕の中で全裸のままだ。

この状態で艦娘が目を覚ましたら、ひと悶着起きることは想像に難くない。

 

「ダメですよ、瑞鶴さん。あんまり大神さんにワガママ言っちゃうと、大神さんに嫌われてちゃいますよ」

「そんな……」

 

このままでは埒が明かないと、明石が横から口を挟む。

その効果はこれでもかと言うくらいに覿面であった。

 

『大神に嫌われる』

 

その一言だけで世界が終わったような表情をして、涙を滲ませ大神を上目遣いで見る瑞鶴。

 

「嫌わないで、大神さん! 私、何でもするから! 大神さんのためならどんな事だって、何だってしますから! 捨てないで!!」

「あー、どうやら先程の合体技が強烈過ぎて、瑞鶴さん若干後遺症を残しているようですね」

 

なんて事をしてくれたんだと、明石の視線が冷たい。

とにかく瑞鶴を落ち着かせないと。

そう思って瑞鶴の顔を、瞳を覗き込む大神。

 

「大丈夫だよ。君を嫌ったりなんかしないよ、瑞鶴くん」

「本当に? 私のこと、好き?」

「え……ああ、大好きだよ」

「じゃあ、キスして……」

 

そういって、瑞鶴はゆっくりと目を閉じる。

先程の合体技と同じように、瑞鶴の可憐な唇を奪えばいいのだが、合体技の異常なテンションから正気に戻った大神にはもちろん至難の業である。

 

「大神さん、意地悪しないで……」

 

目を閉じたまま瑞鶴が大神を急かす。

もうこうなったら腹をくくるしか、覚悟を決めるしかない。

 

「分かった。瑞鶴くん、いくよ」

 

そうして、大神は瑞鶴に唇を重ねる。

流石にディープキスはせずに。

 

しばしの間キスした後に大神が唇を離すと、瑞鶴は若干不満げな表情をしている。

でも、証のキスは貰えたのだ。

これ以上我がままを言うと、本当に大神に嫌われてしまうかもしれない。

そう思い、瑞鶴は大神の手を放す。

 

ようやく自由になった手に持ったコートを艦娘にかけようとする大神。

 

しかし、大神が艦娘のほうを向くと、艦娘は既に目を覚ましていた。

青筋を何本も立てて。

 

「おどれらぁ、うちを全裸のまま忘れてほっといて、いつまでイチャイチャしとるんじゃー!!」

「へぶぅっ!」

 

大神の腕の中で全裸のままだった駆逐艦、浦風が我慢の限界とばかりに大神を引っ叩いた。

往復ビンタで。

流石に今ここで浦風を離す訳にはいかないので、避けることもできずに大神はそれを受ける。

 

しかし、浦風の暴挙はそれに留まらない。

往復ビンタした後、腕を大神の首に回して抱きついて、豊かな胸を大神に押し付ける。

 

「え?」

「なんや、二人の色事見てたら、うちも切なくなってきてしもたわ。隊長さん、責任とって♪」

 

そのまま大神の唇を奪いディープキスを交わす。

 

「「「あー!!」」」

 

敵主力撃滅艦隊7名の悲鳴が海にこだまする。

そのまま、一通りのことをした後、満足した様子で浦風は大神から唇を放す。

 

「自己紹介がまだやったね。うち、浦風じゃ、隊長さんよろしくね!」

「ああ、こちらこそよろしく、浦風くん」

 

艦娘たちの冷ややかな視線を背中に受けて、冷や汗混じりに浦風に答える大神。

浦風と握手を交わした後、肩を落としてため息をつく。

 

「はぁ、これから敵侵攻部隊主力艦隊との決戦だって言うのに、妙に疲れてきたよ」

「仕方ありませんねぇ、大神さん。決戦前に回復いたしましょうか?」

 

クスクスと笑いながら、明石が大神の手を取って提案してくる。

 

「そうして貰えると助かるよ、明石くん……ちょっと待った、集中治療室でして貰ったようなのはしなくていいからね?」

「分かってますよ、大神さん。ではいきますねっ」

 

そう言って、両手で大神の手を包むと、明石は霊力回復を大神に行う。

肉体的な損傷は殆ど受けていない大神だが、その身の疲労感が消えていく。

 

「よし、ありがとう明石くん、これで俺は万全だ。みんなは大丈夫かい?」

「損傷らしい損傷も受けていませんし、大丈夫です。大神隊長」

 

赤城からの返答に頷く全員。

 

「分かった。では、これより敵主力部隊との決戦に向かう! 睦月くん、済まないが君は浦風くんを伴い若干後方に下がってくれ!」

「了解にゃしぃ!」

 

その声に従って、大神に近づいた睦月が大神の代わりに睦月が浦風を支える。

同じ駆逐艦なのに、なんでここまで体形がと不満に思わないでもなかったがそこは言っても仕方がないので我慢する睦月。

 

「睦月さん、よろしゅうお願いするね」

「はい、睦月にお任せにゃしぃ!」

 

それを見ていた大神が頷く。

 

「よし、赤城くん、瑞鶴くん、武蔵くん、大和くん、愛宕くん、索敵機発艦を! 敵戦力の所在を確認しだい叩く!」

「「「了解!」」」

 

その号令と共に索敵機を積んだ全艦が発艦させる。

 

「赤城くん、瑞鶴くんはさっき必殺技を使用したから、次戦は通常の航空戦となる。だが、基地での索敵が正しければ敵は戦艦主体の構成らしい。恐らく、戦艦同士での殴り合いが主軸となるはずだ! 大和くん、武蔵くん、作戦『火』でいくからその火力を以って撃破してくれ!」

「ああ……この主砲で存分に撃ち合えるのか、たまらんな!!」

「そうか、それなら……そこまで期待されているなら、やるしかないわね!」

 

武蔵と大和が来る艦隊決戦のときに胸を震わせる。

 

「大神隊長、敵艦隊発見しました! 方位は南です!!」

「よし、航空戦用意!」

 

大神の号令に従って赤城と瑞鶴が弓を引き絞る。

 

「一航戦 赤城! 艦載機全機発艦!!」

「五航戦 瑞鶴! 艦載機発艦始め!!」

 

放たれた矢が艦載機へと転じる。

 

「制空は取れる筈だが、総員敵爆撃雷撃に注意を! 睦月くんは浦風くんに危害が及ばないよう留意してくれ!」

「このみなぎるパワーでお守りするのです!」

 

やがて航空戦を抜け、敵爆撃機が来襲する。

しかし、能力補正で強化された対空砲火の前に、敵機はまともな爆撃一つすることが出来ずに壊滅する。

 

「大神さ――じゃなかった、隊長さん! 航空戦で敵駆逐艦二隻撃沈! 残るは戦艦3隻と、空母になるわ!」

「分かった、もうすぐ敵目視確認範囲に入る、総員砲雷撃戦用意!」

 

そして、敵目視範囲に入る。

そこにはW島で苦戦した戦艦棲姫の姿が2体もあった。

だが、こちらにも大和が、武蔵が、なにより大神が居る。

恐れることなど何もない。

 

「行くぞ! 全艦娘、突撃! 敵を撃滅するぞ!!」

「「「了解!」」」

 

そして、戦艦の次元を超えた2隻を互いに擁した、AL/MI最大の艦隊決戦の火蓋が切って落とされた。




だからお前らは戦場で何をやっているんだと

全く関係ない備考:これ書いてたら何故か盛大に鼻血出ましたw
何故だ

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