艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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閑話集 一
閑話 1 吹雪ブルマーの誘惑


鏡の前に立つ吹雪、その格好はいつものものとは違う。

そう、その下半身には、いつものスカートではなく通販で購入したブルマーを履いていたのだ。

 

「今日こそ勝負の日です!」

「吹雪ー、本気でその格好でやるのか? 午後の訓練?」

「吹雪ちゃん、やめたほうがいいよぉ……」

「艦娘には引き下がれないときがあるのです!」

 

吹雪型の艦娘の忠告にも今日ばかりは耳を貸せない。

 

天気は快晴。

救出された潜水艦娘はまだ検査入院中。

スク水が制服などと言うふざけた存在が本格参戦してしまえば、せっかくのブルマーの効果も半減してしまう。

ブルマーから伸びる足のラインを武器にするには今を持って他にはないのだ。

 

「わ、私がみんなを出し抜くんだから!」

「吹雪ちゃん、欲望丸出し……」

「あー、もうコリャだめだ。吹雪ー先行ってるからなー」

 

白雪は冷や汗を流しながら苦笑い。

猛吹雪は止まらないことを感じたのか、吹雪型の艦娘は吹雪を置いて訓練に向かう。

 

その後も鏡を前に気合を入れ直していると、予鈴が鳴り吹雪は慌てて演習場に向かうのであった。

 

 

 

慌てて吹雪が演習場に辿り着くと、本鈴がなる。

 

「吹雪くん、遅かったじゃ……ない……か……」

 

点呼表から顔を上げた大神が吹雪のブルマ姿を見て固まる。

 

「ふ、吹雪くん。どうしたんだい、その格好は?」

「いえ、たまには気分を変えて訓練しようかな、と。どうでしょうか、大神さん?」

 

その場でクルっと回ってみせる吹雪。

 

「いや、あ、その……可愛いと、思うよ」

「やったー、睦月ちゃん! 大神さん、可愛いだってー!」

「そ、そう、良かったね、吹雪ちゃん……」

 

睦月は手段を選ばなくなった吹雪に若干引いている。

 

「ブッキー、ブルマとはやるデスネー。私も負けてられないデース」

「セーラー服だからこそ、映えるブルマー。さすが吹雪さん。私も体操服一式揃えようかしら?」

 

金剛、鹿島は早速次の手を考えているようだ。

 

そして、訓練が始まる。

まずはターゲットの撃破訓練だ。

 

いつものように行おうとする大神であったが、ブルマから伸びる吹雪の肢体が眩しい。

となりを併走する吹雪をつい視線で追ってしまう大神。

 

やがて、ターゲットが間合いを越えて近づく。

 

「おい、隊長! あぶねーぞ!」

「あだっ!!」

 

結果、吹雪ブルマーに気を取られていた大神はターゲットに正面衝突するのであった。

 

無論、保健室送りとなる大神だった。

 

 

 

「はぁぁ、効果覿面でしたけど、大神さんが居ないと意味ないよぉ……」

 

大神は保健室でしばらく休むとのことだったので、天龍たちを代理にして訓練は続く。

意気消沈したせいか次の順番が回って来ても、反応が遅い。

 

ターンしようとして足から跳ねた海水がブルマを直撃する。

 

「冷たいっ!」

 

ブルマは市販のもので艤装ではない。

もちろん、水をかぶれば濡れるし冷たい。

思わず身を震わせる吹雪、ターン中であることを忘れて。

 

「きゃあぁーっ!!」

 

そのままバランスを崩し転がり、大神同様ターゲットと正面衝突する吹雪であった。

 

 

 

「すいませーん、明石さん?」

 

声をかけながら保健室に入るが明石の返答はない。

どうやら、所用で席を外しているようだ。

 

「ううう……撥水性にしないといけないの忘れていました」

 

海水で濡れたブルマーはベタベタして仕方がない。

正直気持ち悪いので、着替えたいところである。

 

「とにかく、着替えないと……ベッドのカーテンの影で着替えようかな……」

 

吹雪は着替えるために、ブルマに手をかけて下ろしながら、保健室のカーテンを開けた。

しかし、カーテンを開けて吹雪はその身体を固くした。

大神がベッドで寝ていたのだ。

 

「え……ええっ――」

 

叫ぼうとしてから、吹雪は慌てて、開いている片手で口を塞いだ。

ここでもしも大神が起きてしまったら、どう反応すればいいのか分からなかったからだ。

ブルマー姿の吹雪にさえ気を取られた大神が、ブルマーを途中まで下ろし、下着を晒け出した吹雪の姿に一体どういう反応をするだろうか、気にならないといえば嘘になる。

 

けれども、それ以上に吹雪が恥ずかしいのだ。

 

しかし非情な事に吹雪の声を聞いて、大神が目を覚ました。

 

「んぅ……あ、あれ? 吹雪くん!? そ、その姿は……」

 

大神はすぐに自分の状況については理解した。

 

訓練中にブルマ姿の吹雪に気を取られ、ターゲットに正面衝突したこと。

それを明石に笑われて少し嫉妬されて、保健室で簡単なたんこぶの処理をした後、しばらくベッドに横になっているよう言われ、横になっているうちに自分は寝てしまっていたのだろう。

 

けど、何故吹雪がここに居るのだろうか。しかもブルマを半分下ろした姿で。

おまけに下着も濡れて肌にくっついており、下着越しに吹雪の肌が透けて見えている。

非常にエロ――もとい、危険な状態だ。

 

流石にそんな姿の吹雪を直視することは、大神のモラルに反する。

視線を吹雪に合わせないようにする大神。

 

「久しぶりに訓練中に転んだら、頭をターゲットにぶつけちゃって、それにブルマが濡れちゃって、その……着替えようと……」

 

たしかに吹雪の額は僅かに赤くなっている。

しかし、ぶつけたものによるものなのか、それとも赤面によるものなのか吹雪には分からない。

吹雪は下着を手で隠したまま、少しずつ後ろに下がっていく。

 

「……あの、ごめんなさい、私、出て行きますね……」

 

だが、大神はもう十分に休んだ。出て行くべきなのは大神だろう。

それに艦娘が殆どの鎮守府とは言え、男が全く居ない訳ではない。

今の吹雪の姿を他の男に見せることに、大神は何故か抵抗を感じてしまう。

 

「い、いや……その、俺こそごめん。俺はもう十分に休んだから、吹雪くんこそベッドを使ってくれ」

 

そう言うと、大神は保健室から出て行った。

大神がカーテンを閉め、保健室の扉を閉め出て行くのと同時に、吹雪はその場にしゃがみ込んだ。

 

恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がなかった。

 

だが、このままというわけにもいくまい、万が一風邪でも引いたら大神に迷惑がかかる。

そう思い、吹雪はカーテンの影で着替えを始める。

 

でも大神がベッドで寝ている光景が、吹雪の頭から離れてくれなかった。

 

すぐ横から着替えを大神に見られているような気になって、赤面が引いてくれない。

 

「はぁ……大神さん……」

 

着替え終わった吹雪は、窓に映った赤面している自分の顔を見て、ため息をついた。

ベッドの傍まで行き、大神が寝ていた箇所に何気なく自分の手を置いてみる。

ベッドは、まだ大神の体温でほんのりと温かかった。

 

更に吹雪の顔が赤くなった。

 

自分がこのベッドで寝ている光景を想像してしまったのだ。

 

「お、落ち着いて、落ち着くのよ、吹雪……今、寝る必要なんてないんだから」

 

自分を落ち着かせようと、そう口に出して言ってみるが、効果はなかった。

むしろ、どんどん心臓の鼓動が早くなっていくような気がした。

はっきり言うと、吹雪はベッドに横になりたいのだ。

大神の体温が消えてしまわないうちに。

 

「大神さん……失礼します……」

 

しばらく躊躇してから、吹雪はベッドに潜り込んだ。

大神が寝ていたのとちょうど同じ場所に、自分の体を横たえる。

吹雪は布団越しに温かさを感じていた。

 

大神の温もりだ。

 

「ああ、大神さん……大神さぁん……」

 

切なくて、自分でも気付かないうちに、吹雪は大神の名を再度呼んでいた。

 

掛け布団をかけると、その温もりが二重に増えたようなする。

枕から、ベッドから、掛け布団から……吹雪は体中で大神の体温を、匂いを感じていた。

 

「なんだか……大神さんに抱きしめられてるみたい……」

 

吹雪の大神に対する想いが、そう感じさせる。

でも警備府での最初の戦闘でも、その後の戦闘、訓練でもこんなに優しく抱きしめられたことはない。

もし大神に恋人にするように抱き締められたのなら、こんな風に感じるのだろうか。

 

「大神さん、抱きしめて欲しいよぉ……」

 

けれども、戦闘でも訓練でもないのに自分から言う事は恥ずかしくてできない。

それに、大神が自分の事をどう思っているのか、はっきりとはわからない。

もしかしたら、他に誰か好きな艦娘が、女の子がいるかもしれないのだ。

 

 

 

そんな取りとめもないことを考えているうちに吹雪は静かな寝息を立て始めた。

 

大神に抱きしめられ恋人としてキスされる自分を夢に見ながら。

 

「吹雪くん、おやすみ」

 

実際に、大神におでこにキスされているなどとは夢にも思わず。

 

 

 

 

 

 

なお、後日、吹雪を真似してブルマーを履こうとする艦娘が激増したが、大神の集中が途切れてしまっては訓練の邪魔になると、大淀・明石が判断。

あえなくご禁制の品となるのだった。

 

合掌。




ギャグ調にするはずが甘めの話になったw

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