艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十一話 終 二人の選出

僅かばかりの時が過ぎて身体を乾かし着替えた大神と米田の、二人の姿は応接室にあった。

紅茶を出したメルであったが、米田の目配せに気が付き部屋を辞す。

メルの出した紅茶を一口飲んで身体を温めて、大神が口を開く。

 

「米田閣下、お待たせしました。ご多忙でしょうから今回の派遣の件、書面か加山からの連絡でもよかった筈なのに、どうしてわざわざここまで来られたのですか?」

「やっぱりそこに気付いたか。大神、今回の派遣はな、地中海奪還という過去例を見ない作戦において人間の最大戦力を遊ばせる意味はないと決定したものであるが、実は裏の意味もあるんだ。お前には伝えておくべきかと思って足を運んだ」

「裏の、意味……ですか?」

 

大神の問いに頷くと、米田も口を開く。

 

「ああ、艦娘たちのお前への過度の依存を矯正する良い機会だと思ってな」

「依存? 待って下さい、艦娘のみんなは俺に依存なんか――」

「残念だが、大神、依存してることが明らかになったんだよ。お前の狙撃によって、お前が死に瀕することにってな。お前はあの時意識不明だったから実感が薄いかもしれないが、鎮守府も、ALも、MIも、それは酷い状況だった」

「それは……」

 

米田の指摘に大神が言葉を詰まらせる。

明石の治癒によって蘇るまで意識を失っていた間の状況は報告によってしか把握していない為、返す言葉がない。

 

「だから、悪いがお前と艦娘をしばらく引き離させてもらう。なぁに、元々お前が居なくても戦えてはいたんだ。お前が不在の間に比較的軽易な作戦を一つこなしでもすれば、勘を取り戻してくれるだろう」

「…………」

「そんな心配そうな顔をするな。安心しろ、大神よぉ。お前が不在の間は永井に指揮をしてもらう予定だ、あいつならお前も安心だろう?」

「分かりました、閣下たちの判断に任せます――艦娘のみんなをお願いします。自分は単身欧州へと向かい、地中海奪還に向けて全力を注ぎます!」

 

残りの紅茶を飲み干して、気合を入れる大神。

だが、

 

「いや、待て待て待て。お前一人とは言ってはいないぞ」

「え? 今の話の流れからすれば、艦娘は帯同させられないのでは? 自分だけの派遣ではないのですか?」

「まあ、本来はそうしたいところであったんだが、お前が指揮を取る予定の艦隊には熟練した空母が居ないからな。更に言えば軽巡も居ない。だから、その辺の穴埋めを出来る艦娘に帯同してもらう事になった。二名の選出はお前に一任する、2、3日中に決定の上、返信してくれ」

「了解しました!」

「派遣期間は陸路での移動を除いて一ヶ月、事前の艦隊訓練に3週間、作戦期間は最大1週間を宛てる予定だそうだ。予め釘を刺しとくが日本から連れてく艦娘にばかり構うなよ。向こうの艦娘と花組が妬くぞ」

「花組が、どうしてですか?」

 

艦隊訓練を行うのであれば、花組は関係ないはずだ。

当然の疑問を大神は口にする。

 

「イザベル――グラン・マと言ったほうが良いか。彼女の方針でな、艦娘への霊力指導を花組を使ってやっているらしい。だから、艦隊訓練にも花組はいるはずだ」

「なるほど……」

「まあ、こちらの正規空母のような独自の必殺技や、合体技は流石にできないらしいが、それでも多少は能力の底上げはされている筈だ」

 

ならば、自分もそのつもりで欧州の艦娘には当たったほうが良いか。

 

「あと、一つ言っておくが、今回の派遣においては光武・海を持ち込む必要はない。既に仏軍のジャン・レオと山崎が連絡を取り合い今まで蓄積された戦闘データを元に、更に発展させた新たな霊子甲冑『光武・海F』を完成させている。それを使ってくれ。光武・海は派遣の間に山崎がバージョンアップさせる予定だ」

「分かりました」

「連絡は以上だ、恐らく地中海奪還はAL・MI以上の激戦に、最大規模の戦いになる筈だ」

 

その言葉を最後に米田は応接室を出ようとし、扉の前に立つ。

扉の向こうからどよめきが聞こえる、どうやら艦娘が大神と米田の会話を盗み聞きしようとしていたらしい。

 

『不味いデース! 大臣がこっち来てるデース!』

『あっ、押さないで下さい、後ろの方から順番にバラけて下さい~』

『急いでくだサーイ! みんな散らないと怒られるのデース!!』

 

米田が大神の方に向き直る。

 

「な? 分かっただろ、大神?」

「あはははは……」

 

大神も流石に苦笑いを浮かべることしか出来ない。

 

『いいえ、今から散っても時既に遅いですよ』

『か、かすみサーン……』

『貴方たち! 大神さんと大臣閣下の話を盗み聞こうだなんて何をしているの!!』

『ヒィッ!!』

 

どうやら扉の外ではかすみによる艦娘の説教が始まったようだ。

 

「大神、反対側の扉を使わせてくれ、これじゃこっちからは出れなさそうだ」

 

かすみの艦娘への説教はその後2時間続いた。

 

 

 

 

 

そして、夜、大神はブリーフィングルームに艦娘たちを呼んだ。

議題は勿論、誰を大神に帯同させるかであるが、と言っても、既に大神には腹案がある。

むしろ、誰を連れて行くか納得させるのがブリーフィングの役目である。

 

「以上の経緯で軽巡と空母を一名ずつ連れて行くことになった。それで、誰を連れて行くかなんだけど――」

 

自分になるかもしれない、と大神の次の言葉を息を飲んで待つ軽巡と空母たち。

逆に最初から選考外と言われたに等しい戦艦、重巡、駆逐艦は若干むくれている。

 

「軽巡からは川内くん、空母からは鳳翔くんに付いてきてもらうことにした」

「本当? 本当にいいの!? やったー、また隊長の下で夜戦が出来るー!!」

「え、私? 私のような旧型艦が、隊長に付き添っても宜しいのでしょうか?」

 

喜びを露にする川内と鳳翔。

逆に落ち込んだ様子の他の軽巡、空母たち。

 

「なんで? なんで、正規空母じゃなくて鳳翔さんなの? 微妙に納得できない!」

 

瑞鶴が自分が選ばれなかった悔しさを露にして大神に問いかける。

 

「ああ、それはね。正規空母は一航戦二航戦が懲罰中で動けるものが少ないからさ。懲罰が終わってもしばらくは訓練も必要だろうし、守りのことを考えると、そこは手薄には出来ないよ。だから軽空母の中から選ばせてもらったんだ」

「う……分かりました」

「じゃあ、何でウチらじゃないんや?」

 

正論で返され押し黙る瑞鶴の代わりに、龍驤が手を上げて問う。

 

「そこは少し迷ったんだ、向こうの空母は練度に問題があるらしいから、そのあたりを指導できる空母として候補に上がったのが龍驤くんと鳳翔くんだったんだけど――」

「え~、そこまで候補に残ったのにウチやないん? どしてや? 最後の決め手は何なん?」

 

あと一歩で大神と帯同できたのに、と龍驤は不満そうだ。

 

「えーと、これは個人的な事情なんだけど、たまには日本食を食べたいからね。鳳翔くんは料理も上手と聞いているから――」

「そんなことで決まったんかーい! ううう、ウチも料理の勉強しとくんやった~」

 

まさか、艦としての性能、練度以外のところが決め手になるなんて。

ある意味残酷な結論を聞かされ、がっくり肩を落とす龍驤。

 

「大神さんの居ない間、料理教室でも開きましょうか?」

「ホント? じゃあ、お願いするわー。こないな理由で折角の隊長との旅路、不意にするなんてもったいないわ~!? 鳳翔! 次は譲らへんで!」

 

どうやら、大神が派遣されている間、間宮の料理教室には艦娘が殺到しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

陸に囲まれた地中海では私たち欧州の艦娘たちが徐々に人間の勢力を広げているわ。

 

そして、遂にイザベラ大統領の発案による、地中海奪還作戦が発動されたの。

地中海から完全に深海棲艦を排し、人の手に戻す為の大作戦。

私の主戦場はバルト海や北海だったけど、こんな大作戦に参加できるなんて胸が躍るわ。

プリンツ! グラーフ! みんな! それまでもっと練度を高めるわよ!

私たちの立ち位置を確保してくれたイザベラ大統領や花組の為にも負けないわ!!

 

次回、艦これ大戦第十二話

 

「北海演習作戦」

 

東洋から派遣される提督なんか居なくたって、私たちは十分に戦えるんだから!!

 

「新しい提督ですって? そんなの必要ないわ、むしろ私が日本の艦娘に一から教えてあげる」




一言でまとめると、
羽を伸ばせると思ったら、嫁の監視下だったでござるw

そしてビス子の分かりやすいフラグが立ちましたw
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