艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第二話 6 神通さんは鬼教官3

大神の体は迷うことなくお風呂場の中に物音一つ立てることなく入っていく。

 

どうやら気づかれてはいないようだ。

 

「ふー。訓練の後のお風呂は最高だよねー」

 

そこは、かぽーんと言う言葉が似合うような浴場。

富士山が描かれたタイルも飾られており、実に日本的なお風呂場だ。

その奥に人影が見える。

 

「もう姉さんたら、訓練は終わっていなかったのに……」

 

女だけの気楽なお風呂、神通たちは小さな手拭一つのみを手にし、惜し気もなくその裸体を晒している。

話している相手に気が行っているのか、まさか、大神が入ってくるとは思わない彼女たち。

こちらに気づいた様子はない。

 

「えー? でも、あのままずぶ濡れで訓練するの嫌だったでしょう、神通?」

「それはそうですけど……」

「だったらいいじゃない。お風呂でお肌ピカピカにして、大神さんに綺麗な自分見せ付けちゃおーよ」

「ええっ? 私そんな……」

 

訓練や遠征に行ったものの為、今の時間でも浴槽の一つには湯が張られている。

そこの淵に並んで腰掛けながら、二人は話していた。

 

(神通くんたちが……お風呂に入って……)

 

体が勝手に動いているはずの大神だったが、満更ではない様だ。

鼻の下が伸びている。

 

「じゃ私を見せてこようかな? 私、大神さんのこと気に入っちゃった。戦士として強く、教官としても上出来、なのに私たちにも優しい、いいじゃない?」

「ダ、ダメですっ!」

「なんでダメなのかなー。ふふーん。ほうら、お姉さんに話してみなさい?」

「あ、あの……そんなの姉さんにだって話せません……」

 

浴槽でじゃれあう二人。

しかし、更衣室にあったのは確か3人分の制服だった筈。

もう一人はどこに行ったのだろうかと、大神は首を傾げる。

余裕あるな、お前。

 

「川内ちゃん、神通ちゃん、ごめんなさーい。お花摘みに行ってたら遅く……」

 

そこに那珂が入ってきた。

姉たちと同じく手拭一つだけ持って、あとは全裸。

天龍や川内たちに比べればやや起伏に乏しいが、駆逐艦とは段違いの裸体を晒して。

 

「遅いじゃん、那珂ー、って……大神さん!?」

「え……大神隊長!?」

 

入り口の方に振り向こうとして、佇む大神の姿に気がつく川内と神通。

慌てて浴槽に入りその身を隠す。

だが、那珂がその身を隠す場所はない。

 

「……っ!?」

 

顔を真っ赤にして、その手で胸と腰を隠すのが精一杯だ。

 

「や、やあ、川内くん、神通くん、那珂くん」

 

冷や汗を多大に流しているというのに、川内たちに声をかける大神。

どれだけの修羅場をくぐってきたのだろうか、声には余裕さえ感じられる。

 

「そ、その……これにはワケがあるんだ」

 

が。

 

「……言い訳無用だよ! この風呂オケ喰らってよね!!」

 

見られた側からすればたまったものではない。

川内は浴槽から手を伸ばし風呂オケを手にすると、大神へと投げつけた。

わずかな間であるが見えた川内の一糸まとわぬ上半身を大神は余すことなく記憶する。

 

「い、いてええっ!」

 

そのせいか、後ろにいる那珂にオケが当たらないよう気をつけたせいか、大神の脳天にオケが直撃した。

そしてオケは次から次へと飛んでくる。

 

「す、すぐ出るから、オケを投げつけないでくれっ!」

 

大神は後ずさり、風呂場から出ようとする。

が、川内、神通も、大神も入り口近くにいる那珂の事を忘れていた。

 

「きゃっ!」

「うわっ!

 

振り返りながらお風呂場から駆け出そうとする大神と那珂は衝突し、大神の勢いのままに倒れこむ。

 

「危ないっ!」

 

このままでは、那珂は自分の下敷きになって、お風呂場の床にその身を打ち付けてしまう。

そう考えた大神は咄嗟に那珂を抱き締め、その身を入れ替え那珂の下敷きとなり床へと倒れるのだった。

 

「けふっ」

 

二人分の重みを背に受け、大神の肺から息が漏れる。

 

「……? あれ、痛くない?」

 

那珂が疑問の声を上げている。

先ほど大神が身を入れ替えたことに気付いていないようだ。

 

「大丈夫かい、那珂くん?」

 

那珂を抱きしめていた手を放しながら、声をかける。

川内に言われたようにお風呂場から出て行きたいところだが、那珂の体が上にある以上それもできない。

 

「……? ――っ!?」

 

しばしの間、自分の状態に気付いていない那珂だったが、やがて自分が全裸で大神の上に重なっていることに気付く。

全身を朱色にして起き上がり、両手に風呂オケを手にする那珂。

 

「ばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかーっ!」

 

その乱打を、大神は大人しく身に受けるのだった。

 

 

 

「……ごめん、神通くん。ついうっかり中に入ってしまって……」

 

風呂から上がり、制服に身を包みなおした神通たちに平謝りの大神。

 

「わざとじゃないなら仕方ないですけど……これからは気をつけてくださいね」

 

那珂を庇って身を打ちつけた様と、那珂の乱打を受け続けたことを見て気が治まったのか、神通たちの視線もどことなく優しい。

 

「ああ、本当にごめん。川内くん、神通くん、那珂くん」

 

もう一度謝ると、大神はお風呂場を出て行った。

 

 

 

 

 

「ふー、びっくりしたー。大神さんが入ってくるだなんて思わなかったよー」

「そうですね……これからは、こういうことにも気をつけないといけませんね」

「…………」

 

大神が去り、3人が残った更衣室。

川内たちは顔の朱がなかなか取れそうにない。

那珂にいたっては、椅子に座り込んで身動き一つしていない。

 

「でも、やっぱり大神さんも健全な男だったのね」

「見られてしまうとは思いませんでした……」

「…………」

 

いつもハイテンション気味な那珂が、黙りこくっている姿は滅多に見るものではない。

流石に心配になって那珂を見る二人。

 

「……どーしよー」

 

やがて、ぼそりと那珂が呟く。

 

「どーしよー! 那珂ちゃん、アイドルなのに、男の人に全部見られちゃったよー!!」

「抱かれちゃったし、スキャンダルだよー! どーしよー!!」

 

赤面しながら、キャイキャイと手を振ってはしゃいでいる那珂。

台詞とは裏腹に、そんなに深刻そうな様子は見えない。

 

「大丈夫そうだね」

「そうですね……」

 

結構薄情な姉妹たちであった。




サクラ大戦から、リアクションを書き起こしました。
今どきの仕様にアレンジしてはおりますが。

いろいろとツッコミどころ満載なのは伝統です。

自分も書き起こしてみてこれで良いのかと思わずツッコミいれたくなりました。

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