シベリア鉄道で、大神さんは自分の『結婚してほしい』と言った発言を翻さなかった。
一度結婚を申し込み、それを私が受け入れた以上、それをなかったことにするなんて出来ないと。
訪欧派遣任務を速攻で終わらせ、日本に戻ってから、私のために全力で奔走する大神さん。
恋人としての大神さんとの時間、それは甘い甘い誘惑。
そんなある夜、大神さんの車で横浜に連れ出される。
横浜の夜景を一望できる大桟橋に辿り着くとカップルが一杯。
私たちもそんなカップルに見られているのかな、って大神さんと腕を組んでいるし当然か。
えへへ、私は大神さんの恋人なんだ、と改めて実感。
なんだけどどこかふわふわした気分。
なんでだろ。
ブルーライトに照らされたウッドデッキを歩き、段差に腰掛けると、大神さんが私の肩を引き寄せてきた。
肩を寄せ合い夜景を眺める私たち。
「綺麗だね」
「うん、綺麗」
なのに、
「ごめんなさい、大神さん」
口を付いて出たのは大神さんへの謝罪の言葉だった。
「川内? シベリア鉄道でのことなら俺はもう気にしていないよ」
「でも、私は軽い気持ちで、大神さんを、だまして……」
罪悪感に駆られて、涙をポロポロ流す私。
そうだ、私はずっと、ずっと罪悪感に駆られていたんだ、懺悔したかったんだ。
でも、大神さんはそんな私の目にキスをした。
「例え勘違いで、間違いで始まった恋だとしても、俺は君が好きなんだ、川内」
ああ、
「愛しているんだ、川内。だから――」
ああ、
「改めて言うよ、川内。俺と結婚して欲しい」
改めて私に、本当のプロポーズをする大神さんの姿に涙がこぼれてしまう。
今度は嬉しくて。
ダメだ。
やっぱり私も大神さんが好きなんだ、傍に居たいんだ。
恋人として過ごして分かった、ずっと、ずっと傍に居たい。
大神さんの傍にずっと居たい。
だから、だから私は――
「はいっ、喜んで」
大神さんに抱きつきながら、そのプロポーズを受けたのだった。
周囲が私たちのことを囃し立てるが気にならない。
大神さんと深いキスを何度も何度も交わした。
それから、私は本当の意味で大神さんの婚約者になった。
大神さんの実家に行ったり、永井さんに父親代わりになってもらうことを頼んだり。
でも結婚式で、永井さんは本当の娘が嫁に行くときのように泣いてくれた。
結婚式場は帝國ホテルのチャペルで。
ウェディングドレスはレンタルではなく、私のためのものをオーダーメイド。
みんなに祝福されて、私たちは誓いのキスを交わすのだった。
そして、その夜、私たちはホテルの一室に居た。
これからすることは分かっている。
本当の意味で私は大神さんのものになる。
シャワーを浴びたばかりの私をそっと抱き寄せる大神さん。
少し濡れている髪に指を絡められ、頬にキスをされる。
膝の上に抱き上げられ、何度も何度もキスを重ねる。
そのたびに愛おしさがこみ上げてしまう。
そして、私の身体はベッドに沈められていた。
これから、私は……でも少しも怖くはない。
大神さんの瞳を見つめて言う。
「大神さん、私、とっても、幸せだよ、大好き♡」
その答え代わりに大神さんは私の体にキスの雨を降らせる。
……そして私たちは今までよりずっと仲良しになったのだった。
『初夜 は じ め て の や せ ん ♡』
二人の言葉と共に大神たちから天へと霊力が放たれる。
それに誘引されるように、天井から橙色と白き光の柱が水面へと降り立つ。
光の柱は急速に広がり、交じり合っていく。
その太陽の光にも似た光の柱に触れた北海は、深海棲艦は次々と浄化されていく。
そして、光の柱が消え去ったときには北海の全ての海域は浄化されていた。
深海棲艦の居ない静かな海が一時的とは言え北海に戻ったのだ。
「…………」
「……」
だが、合体技とは言え、駆逐艦には目の毒な光景だったようだ。
レーベとマックスは顔を赤らめて視線を大神たちから逸らしている。
ビスマルクもプリンツもグラーフさえも顔を真っ赤にしている。
川内はやりすぎてしまったようだ。
と言うわけで合体技でした。他の艦娘の反応書くと洒落にならないので割愛。
川内がマジで殺されてしまう、どーしよ(^^;
にしてもギャグ夜戦封じすると川内の合体技すごい難産でした。