艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十三話 5 トゥーロンでの一日1

作戦会議の翌日にトゥーロンに到着した大神たちのトゥーロンでの生活は、フランス政府によって借り上げられた邸宅で行われている。

合わせて15人が一つ屋根の下に住む生活を3週間も行うのだ、自然とお互いの心の距離は近くなっていく。

秘書艦としての業務も、提督としての業務もない彼らはどんな生活を送っているのだろうか。

 

本日はその一日を追いかける。

 

 

 

午前五時半。

 

提督としての日頃の事務作業がないため、大神はまだすやすやと寝ている。

そんな大神の部屋の中に数人の艦娘たちが音を忍ばせて入ってくるのであった。

その手にはマラカスが握られている為、音が鳴らないように抜き足差し足忍び足の足運び。

君たちはいつからニンジャになったのだろうか。

 

「ねぇ、ウォースパイト、本当にイチローに朝からこんな事やるの?」

「ええ、エリカちゃんに以前聞きました、オオガミのさわやかな目覚めにはこれが一番だって。ここ数日はオオガミの目覚めに間に合わなかったけど、今日こそは」

 

どうやらウォースパイトはトゥーロンでの大神との生活が始まってからずっと、ずーっとこの機会を待っていたらしい。

 

「えへへ、何かちょっとしたイタズラをするようで楽しいですね、ビスマルク姉様」

「まあ、それは否定しないけど……」

 

そんな会話をしながら大神のベッドに近づいていく3人。

両手にマラカスも持った、お互いの間隔も少しあけた、準備万端だ。

 

そして3人はマラカスをシャカシャカ振り出した。

 

「っ!?」

 

その音に文字通り飛び起きる大神、その眼前には。

 

「「「おはよう~♪ おはよう~♪」」」

 

とエリカ直伝の『エリカおはようダンス』を大神に披露する、ウォースパイト、ビスマルク、プリンツの三人の姿があった。

元々フランス語だった箇所は英語だったり、ドイツ語だったりと歌のほうは完全に揃ってはいないが、踊りは一糸乱れぬ見事なものだ、踊り簡単だしね。

ウォースパイトとプリンツはニコニコ笑ってノリノリで踊っているが、ビスマルクは恥ずかしさが抜けきらないようだ、顔が若干赤い。

 

「…………」

 

まさか、ここに至って『エリカおはようダンス』を食らうとは夢にも思っていなかったらしい。

唖然呆然とする大神。

そうこうしているうちにウォースパイトたちの『エリカおはようダンス』は締めへと向かう。

マラカスを振りながら、クルクルクルクルクルクル回って、

 

「「「おはよう、大神さん♪ ヘイっ!!」」」

 

3人ともマラカスを振り上げて踊りを締めくくる。

エリカに食らったとき同様に、どう返せば良いものか分からない大神。

 

「オオガミ、エリカちゃん直伝の踊りでさわやかな朝を演出してみました」

 

そんな、大神にウォースパイトは顔を近づける。

 

「あ、ああ……さ、さわやかだったよ」

 

流石に『頭が痛くなったよ』と言うわけにもいかず、エリカのときと同様に返す大神。

 

「エリカの言うとおり、朝はやっぱりマラカスですね」

「そうですね~♪、癖になっちゃいそうですね~♪ アドミラルさんも喜んでくれましたし、これから毎朝ダンスしちゃいましょうか?」

 

プリンツが聞き捨てならない言葉を言い始めた。

自分の朝を死守する為にもそれだけは止めなくてはならない大神、一生懸命言葉を選びながら二人の会話を止めようとする。

 

「い、いや、毎日は君たちも大変だろうし、それは良いよ」

「うーん、それもそうですね」

「確かに毎日早起きするのは、ちょっと大変かもしれませんね」

 

大神の言葉に少し考え込む二人。

これで自分の朝は守られる、ホッと一安心しようとした大神だったが、ウォースパイトは止まらなかった。

 

「それじゃあ、皆さんで持ち回りにしましょうか?」

 

そう言ってウォースパイトがドアを開けると、鳴り響いたマラカスの音に目覚めた艦娘たちが大神の部屋の前に集合していた。

 

「いいですね! 提督にさわやかな朝を迎えてもらって、これからも毎日頑張りましょう!!」

「まあ、姉さんがやると言うのなら」

 

イタリアが賛同したことによって場の雰囲気は傾きかけている。

不味い、不味すぎる。

このままでは、なし崩し的に大神の朝はエリカのさわやかな朝に奪われてしまう。

と、3人の中でビスマルクだけは、恥ずかしがりながら踊っていたのを大神は思い出した。

もしかしたら反対してくれるかも、と僅かな期待を込めてビスマルクに視線を向ける大神。

 

「イチロー?」

 

ビスマルクも大神の視線に気付いたらしい、これはいけるだろうか。

――だが、

 

「やだ、イチロー……私の踊り、ウォースパイトやプリンツと比べて変だった? 踊りなんてあまりやっていないから自信がなくて……」

 

ビスマルクは大神の視線を別の意味で捉えたようだ。

これでは『変な踊り』と言うわけにはいかない、ビスマルクを傷つけてしまう。

 

「いや、ビスマルクくんの踊り、可愛かったよ」

「そう! そうなのね、可愛かったのね! 良いのよ、イチロー。私の踊りをもっと褒めても」

 

大神にかわいかったと褒められてビスマルクはご機嫌だ。

もう『エリカおはようダンス』を止めるものは居ない、大神はおとなしく観念した。

 

以後、トゥーロンでの訓練終了まで、艦娘の『エリカおはようダンス』は毎朝続くのであった。

 

合掌。

 

 

 

午前六時。

 

大神と日本の艦娘は剣の修練を、欧州の艦娘は体操などの基礎訓練を行っている。

当初は自分もジャパニーズ・サムライ・ブレードの技術を教えてもらおうと、ビスマルクなどが、

 

「日本の艦娘ばかりズルい! 何でイチローは私たちは駄目だと言うの!?」

 

大神に食ってかかったのだが、

 

「決戦は3週間後と決まっているからね。ここで新しい技術体系を身体に下手に覚えこませたら、咄嗟の時の反応が誤ったり遅れてしまうかもしれない。だから、君たちのここでの朝練では基礎体力などをメインにさせてもらうよ」

 

と、大神に説明され諭された。

 

「た、確かにそうだけど……」

 

確かに大神の話も尤もである。

数週間後に決戦が控えているのだから、むやみやたらに新技術に手をつけるよりも今まで身に付けた技術に磨きをかけたほうが良いのは確かだ。

仕方がないと自分を納得させてプリンツと柔軟体操などを行いながら、大神の剣の修練を見やるビスマルクたち。

でも、

 

「やっぱりいいなぁ……かっこいいなぁ…………」

 

裂帛の気合を込めて二天一流の型を次々と繰り出す凛々しい大神。

そして川内や鳳翔に一手ずつ手取り足取り、小太刀術を教え込む大神を見ていると、やはり日本の艦娘たちが羨ましくなってしまう。

 

そして、決意するのだった。

 

決戦が、地中海奪還作戦が終わったら、絶対に、ぜーったいに剣を教えてもらうのだと。




ヤバイ、艦娘がエリカに侵食されるwww

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