艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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砂糖蜂蜜漬け、これでオシマイです。


第十三話 11 トゥーロンでの一日7(特訓編)

本物と比べても遜色ない合体技を炸裂させた大神だったが、そんな彼を待っていたのは司令室への呼び出しと注意であった。

曰く、作戦前から敵を壊滅させてどうする、と言ったものであった。

大神自身もやりすぎていたかと思ってはいたので、そこは素直に受け取り謝罪する。

むしろ問題なのは――

 

「ねぇ、イチロー。ビスマルクのデート案やっぱり復活させましょうよ。トゥーロンは軍港だから少し遠くの街に足を伸ばしても良いわね。すっごく楽しいと思うわ!」

 

合体技の後遺症で、かんっぜんに大神にベタ甘になったウォースパイトをどうするかである。

瑞鶴のようにしばらくしたら落ち着いてくれるだろうか。

呼び名も変わっているし。

 

「イチロー……私とウォースパイトの特訓、内容の差が凄く激しい気がするんだけど…………」

 

帽子の影で視線が見えなくなったビスマルクが怨めしそうな声を上げていた。

ドンドロドロドロと後ろから聞こえそうな、今にも黒ミサを始めそうな雰囲気すらしてる。

はっきり言って怖い。

 

「ビスマルク姉さま、特訓は始まったばかりです。次はもっとラブラブな特訓が出来ますよ!」

 

そんなビスマルクを宥めるプリンツ。

 

「プリンツはいいわよね。鳳翔の合体技だったらイチローに抱き締められるし」

「えっ? でも、アドミラルさんを子ども扱いするのは難しい……かも?」

 

そして、本日最後の特訓としてプリンツの特訓が始まる。

 

 

 

プリンツ    :鳳翔

 

「……こんにちは、プリンツおねえちゃん…………」

「うふふっ、ボク可愛いね。ねえ、私の事ママって呼んでも良いんだよ!」

「ぐふうっ! じゃ、じゃあ、プリンツママ…………」

 

大神は子供らしい言葉使いで必死に話しているが、本式の合体技と違って、何故か大神が子供化する特殊空間は発生していない。

そう、今大神は子供を演じているだけなのだ。

 

艦娘に甘い言葉を囁く事は酒の勢いで出来ても、流石にこれは恥ずかしいらしい。

大神が素面に戻ろうとしていた。

もちろん特訓の首謀者がこれを見過ごす訳がない。

 

「カット、カットカットカットー!」

「ウォースパイトくん、やっぱり……ダメかい? 最初だけカットするとか」

「勿論ダメよ、イチロー! スタートが肝心なんだから始めはもっと子供らしく『ママ』って!」

 

大神の案を一蹴するウォースパイト、

鳳翔との合体技にもなかった、ある意味大神のトラウマでもある言葉を言うよう強制する。

 

「大神さん、私の事『ママ』って呼んでも良いんだよ?」

「大神さん、宜しければ私の事を『お母さん』と呼んでみます?」

 

唸る大神の様子が楽しいのか、川内と鳳翔も大神の事をからかい始めた。

ポーラやリベッチオたちもそれに参加する。

 

「ぐふぅっ!」

 

最初はそのたび七転八倒していた大神。

だが、やがてゆらりと立ち上がると、

 

「子供になった気分で本読み、というか子供の演技付きか……俺いつから花組に、レニになったんだっけ? ふははは、もうなんでも来い! 子供でも何でもやってやるさ!!」

 

完全に開き直った大神の姿があった、はてさて何が起こる事やら。

 

 

 

(はじめからやり直し)

 

 

 

「こんにちは、プリンツおねえちゃん!」

「うふふっ、ボク可愛いね。ねえ、私の事ママって呼んでも良いんだよ!」

「はい、プリンツママ! ママのおっぱいのみたいな!!」

「ええーっ!? そ、それはダメっ!」

 

「「「ぶふーっ!!」」」←噴く一同

 

お隣に引っ越してきた彼に初めて会ったとき、彼は未だ幼い幼い子供だったの。

可愛い子だなー、それが私の彼への最初の印象。

お、おっぱい!? そんなの飲ませられないよ! そもそも出ないし!!

 

留守が多い彼の両親の代わりに、私の両親は彼を家に遊びに良く来させてた。

でも私の両親は結構ずぼらで、彼の面倒は殆ど私の役目だったの。

そんな私を、彼は母親代わりのように思っていたのかもしれないかなー。

 

「プリンツママ~、あのね……」

「ダ、ダメなんだからね! ママのおっぱいはママの恋人の為のものなんだからね!!」

「こいびとならいいの?」

 

うう~、あくまで母親代わりなんだからね!

本当におっぱいはあげられないんだからね!!

アドミラ――じゃなかった、彼の視線が怖いよ~。

 

 

「今日こんなことがあったんだ、プリンツお姉ちゃん」

 

小学生になった彼は剣道をはじめたの。

よっぽど合っていたのか連戦連勝。

賞を取るたびに私に報告しに来てくれた。

彼はやんちゃで、元気で、でも悪いことが許せない、正義感に溢れた子。

時には年上でも目上の人でも譲らない、でも理不尽な力は振るわないそんな優しい子。

ママと呼んでくれてたときみたいに『おっぱい』と言うこともなくなったし一安心だよ。

 

――と思っていたんだけど、

 

「じゃあ、ご褒美のキスが欲しいな、プリンツお姉ちゃん」

「え”。キ……キス?」

「ダメかな?」

 

うう~、報告に来るたびにほっぺとか額にキスをせがまれるようになって大変。

だけど、彼の視線に晒されると断る事が出来ない、ううん、そうする事を私も望んでたのかな。

悔しいけど、もうその頃にはたぶん――

 

 

「おはよう、プリンツ姉さん」

 

中学になって、刻一刻と成長していく彼は、どんどん背も伸びて、凛々しく、かっこよくなって、周りの女の子が放っておかない様になった。

彼から私の家に来ることも減ってきた、小学校のころまではあんなに私にベッタリだったのに。

『ご褒美のキス』をねだる事もなくなってきた。

そう思うと寂しい。

いつかは彼女も出来るのかな、そう一人部屋で考えると胸が痛む。

そして、キスとかその先の事を二人で――そう思ったら涙が出てきた。

 

「ヤダ、そんなのイヤだ……」

 

もう自覚していた、彼が好きだって。

でも、私は彼より年上で、彼が振り向いてくれる筈ない。

 

「やだな、プリンツ姉さん。俺が好きなのはプリンツ姉さんだよ」

 

そんな事が態度に表れていたのか、彼はそんな私の懸念を笑い飛ばしてくれる。

ねえ、期待しても――いいの?

 

両思いなんだって。

 

 

そして、彼が高校に入学してしばらくして、士官学校の受験勉強に勤しむ彼に夜食を届ける。

もう受験勉強に忙しい彼から私の家にやってくることは殆どない。

だから、何かと理由をつけて彼の家に行く私。

そんな私を私と彼の友人たちは『通い妻』と呼んでいた。

囃し立てる友人たちを、彼は否定もせずにさらりとかわす。

 

その様子を見ていた私の友人たちは、私を呼び出して彼に告白しろと言い出した。

 

「でも……私と彼じゃ年の差が……」

 

そんな風に躊躇う私を、あんまり遠慮してると自分たちが奪うぞとビスマルク姉さまとグラ――もとい、友人たちは脅してくる。

ちょっと! これは私の合体技なんだからね!!

 

このままでは本当に他の誰かに奪われてしまう。

そう思った私だけど、彼の前に立つと『好きです』、その一言がどうしても出てこない。

だから彼の帰宅後夜食を届けに行った時、勉強に勤しむ彼の邪魔になると分かりながら、その背中に抱きついた。

 

「プリンツ姉さん!?」

「違うの、もう姉さんじゃ嫌なの……私、私は……あなたのことが……好きなの……」

 

そこから先はもう言葉が出てこなかった。

でも、振り返った彼が私の事を抱き締めてくれた。

 

「!?」

 

はじめて抱き締められる彼の腕は力強く、胸はこんなに広い。

私より小さい筈だった彼は、いつの間にか私を抱き締められるくらい、腕の中に納められるくらい

大きくなっていた。

そして、彼が耳元で囁く。

 

「やっと言ってくれたね、プリンツ姉さん」

「え……だって、私はあなたより年上で……」

「そんなの関係ない、俺はずっと言ってきたじゃないか、『俺が好きなのはプリンツ姉さんだよ』

って。初めて会ったときから、俺はずっとプリンツ姉さんの事しか見てなかったんだ」

「ああ……」

 

嬉しい。

こんなに時間が経ってしまったけど、私たちは両思いだったんだ。

そのことが嬉しくて涙が出そうになる。

 

「待って、プリンツ姉さ――いや、プリンツ、泣かないで欲しい。笑っていて欲しいんだ」

「……うん」

 

そして、微笑んだ私の唇を彼は――大神さんは奪った。

 

 

 

『ずっと貴方が好きだった』

 

 

 

やはり桃色の霊力が炸裂する。

これで、合体技の特訓は一応終わった筈なのだが、二人が離れる様子はない。

酔って気分が完全にその気になってしまっている大神は、プリンツを抱き締めたまま囁く。

 

「ねえ、プリンツくん。『こいびとならおっぱいくれるの?』」

「――――――っ!!?? あ、え、や、それは、言葉のあやと言うか……」

「ダメなのかい?」

「……あ、アドミラルさんが、望まれるなら――」

 

危険だ、このままでは乳繰り合いかねない。

そう判断したグラーフがスリッパで二人の頭を引っ叩いた。

 

 

 

忘れてならないのは、この特訓風景はあくまで一日目だけの話である。

これから数週間、川内と鳳翔も交えて合体技の特訓は続くのだ。




幼児プレイ
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