艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第二話 10 空を飛べ……ません

「総員、花見の準備をせよ!!」

「え?」

 

大神の号令に混乱する艦娘たち、当然といえば当然だ。

戦いに赴くにあたって花見の準備をしろ、まったく関係ないではないか。

 

「分かりました! 朝潮、お花見の準備をいたしま……す?」

 

艦娘たちは何度か首を傾げ、そして飲み込もうとしてやはり錯乱していた。

それでもしばらくのときを置いて賛同の声が上がりだす。

 

「とっとと敵を片付けて花見をしようって事ね。大神さん言うじゃない!」

 

言葉の裏の意味を汲み取って、やる気を出している川内・天龍たち、

 

「あまり気をつめずに花見が出来るほど余裕を残しておけって事ですね、確かにちょっと緊張しすぎてたかもしれません」

 

また言葉の意味を深く汲み取って、幾ばくかリラックスした様子の神通たちなどである。

 

「はあ、何言ってるのよ!? あんたバカ?」

「意味不明……」

 

勿論、満潮や初雪のようにドン引きしている者もいた。

 

「みんな行くぞ!!」

 

が、続く大神の声に促されて艦娘たちは演習場から港湾施設へと移動する。

 

 

 

 

 

「確認された敵艦隊は2、ひとつは水雷戦隊、もうひとつは戦艦が確認されている。これに対して俺たちは2艦隊で出撃する」

 

司令官と連絡を取り、現時点での情報を把握した大神たちは出撃に先立ち打ち合わせを行う。

昨日と今日見た艦娘たちの基礎訓練における動きを思い出し、大神は敵に当たる戦力を決めていく。

 

「第3艦隊である神通くんたちと11駆のみんな、そして俺と吹雪くんは戦艦がいる側――おそらく敵主力艦隊を叩く」

「大神隊長たちは敵戦艦撃破のための遊撃という位置づけですか?」

 

通常最大6隻からなる本来の艦隊編成を崩しての7隻を以っての出撃、神通が大神の意図を確認する。

 

「そうだ。砲撃戦に下手に参加すると、足を引っ張りかねないからね。俺たちは敵戦艦を確認次第、君たちとは別方向から最大速度で突入し鎧袖一触で殲滅する」

「……了解しました、お任せします」

 

大神の刃が振るわれる姿を直接目のあたりにしていない神通は、大神を一瞬気遣うような視線をするが、小さく首を振ると頷く。

 

「吹雪ちゃん、頑張ってね。戦艦は任せたから」

「まかせて、白雪ちゃん!」

 

逆にバルジの装甲板をたやすく断ち切ったところを見ている11駆は安心している。

敵戦艦も同様に一刀両断することを疑っていない。

 

 

「第2艦隊の天龍くんと8駆のみんなは敵水雷戦隊の撃破を頼む」

「おお、任せな! 一昨日と同じ役割、見事果たして見せるぜ」

 

大神の指示に天龍達は大きく頷いた。

 

「ふっふっふっ、昨日からやけに調子が良いんだ。負ける気がしないぜ!」

 

腕を回して好調をアピールする天龍に大神は苦笑する。

だが、敵を侮った様子はないし問題はないだろう。

 

 

「6駆のみんなは、龍田くんと一緒に警備府に居て敵増援が現れた場合の抑えとなってくれ」

「えー、少尉さん。私たちお留守番なの? もっと私たちを頼ってもいいのよ?」

 

雷はちょっと不満そうだ。

自分の好調を分かっているだけに、今度は良い所を見せたいのだろうか。

 

「これも大事な役割なんだ。警備府のこと、頼みたい」

 

大神は屈み込み、雷の視線に高さを合わせて雷を見つめる。

 

「……分かったわ、少尉さん。ここのことは私たちに任せて!」

 

元よりたいした不満ではなかったのか、大神の視線に頷く雷。

龍田と合流するため、司令部へと歩を進める。

 

 

「あと、明石くんは――」

「待ってました、私、何をすれば良いですか?」

 

自分の名前が出ずにそわそわとしていた明石。

望みは薄いと分かっていながらも、若干期待に瞳がキラキラしている。

 

「工作艦だからね、お留守番をお願いするよ」

「えー、なんて、ね。分かってますよ。酒保でお花見の準備してますからね!」

 

そのつもりだったのか、明石は身を翻すと雷たちの後を追いかけていく。

 

残るは戦場を駆けるもののみ。

 

「よし、みんな出撃するぞ!」

「「「了解!」」」

 

大神の号令と共に、港湾施設から艦娘たちは海へと駆け出した。

 

「じゃ、吹雪くん」

「はい、大神さん」

 

一組を除いて。

やはり、どこか締まらないのが大神の現状だった。

 

 

 

 

 

「神通くん、索敵機が戻ってきたら分進しよう」

「分かりました、もう少し待ってくださいね」

 

海面を掻き分けながら、6+1?の船影が海を往く。

天龍たちは先に発見した敵水雷戦隊の撃破に向かっている、敵艦数は4、おそらく撃破は問題ないだろう。

あとはもう一方の敵艦隊を確認すれば――

 

「神通くん、未だ索敵機からの連絡はないのかい?」

「ええ……おかしいですね、そろそろ何か連絡があっても……」

 

神通が呟くのと時を同じくして、水平線に機影が写る。

が、その数は一つではない。こちらの放った索敵機は神通の一機のみ、数が合わない。

 

「あれは――こちらの索敵機ではない?」

「敵です! 敵航空部隊です!!」

 

大神の言葉に被せて、神通の声が響き渡る。

目視出来る数は既に50を超えている。

水母に出せる機数ではない、敵に空母が存在する事は確実だ。

 

「こちらの海上航空戦力、第4艦隊は未だ遠征中だったな」

「はい、本日中には戻ってくるはずなのですが、司令室設備の修理が終わってないので連絡は……」

「一昨日の攻撃で、警備府の航空隊も大打撃を受けているし。支援は期待できないよ」

 

川内の言うとおり、敵戦艦からの艦砲射撃により飛行場はしばらく使い物にならない。

水上機のみで対処できる数でもない。

 

「対空砲火で対処しないとダメか。総員、対空砲火準備!」

 

大神の声に合わせて連装砲を、機銃を構える艦娘たち。

だが、大神の武器は二振りの刀のみ。

 

「大神隊長は退いて下さい、その刃では無理です!」

 

神通が撤退を促す。

敵は自在に空を飛ぶ航空機、例え戦艦を両断できるとしても――その懸念はもっともだ。

 

「いや、やれないことはない。吹雪くん!」

「はい!」

 

大神の意図を悟ったか、吹雪が大神の体を支える。

視認出来るほど、霊気が立ち上り高まっていく。

 

「狼虎滅却! 天地一矢!!」

 

突き出した刃から雷光が空を翔る。

その速度、マッハ30。

戦艦を一撃で破壊するには物足りない威力だったが、航空機相手ならば――

 

「やったか?」

「ダメです! あれだけでは」

 

敵艦載機目掛けて放たれた雷は、敵航空機隊に一筋の穴を作る。

が、その穴は小さい。おそらく撃破できたのは数機だろう。

大神は再度雷光を放つが、やはり航空機隊に穴を再度作ったのみ、全滅には程遠い。

 

「みんな、吹雪と大神隊長を中心に円陣を作って!」

 

その間にも敵機影との距離は距離はなくなっていく。

神通は大神たちと敵航空機との間に立ち塞がり敵機に発砲する。

 

「神通くん! 良いんだ!」

 

数機が撃墜されるが敵は意にも介さず。

敵艦攻から数多の魚雷が投下され、神通へと殺到する。

が、神通は回避する様子を見せない、大神たちを守るためか。

 

「させるか! 神通くん!!」

 

叫ぶ大神から霊気が分身のように放たれ、神通へと向かう攻撃を遮る様に立ちはだかる。

 

 

 

複数の爆発音が響き渡った。

 

 

 

が、神通にはかすり傷一つない。

 

「大神隊長!? え、いったい何が……」

 

眼前に居る筈のない大神の姿を見て、神通は慌てて振り返り後ろに大神がいることを再確認する。

何が起きたのか、理解できず戦場であることを忘れ呆然とする。

 

 

――庇う、発動。




指摘の点を直す形でプロット変更。
大勢には影響しませんが、ちょっと書くのに時間かかりました。

その分楽しめるものになってれば良いかな。

あと少しピンチらせました。

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