艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十四話 13 反撃! パラオ強襲艦隊撃滅戦3

連合艦隊二艦隊の同時出撃による敵の完全撃滅。

今回の出撃における最大の戦いがこれから始まるのかと思うと、どよめきは期待へと変わる。

 

「イチロー! 欧州戦力は戦艦が多いわ、主管撃破を行う水上打撃には是非欧州艦を!」

 

ビスマルクが手を上げていち早く発言する。

しかし大神はゆっくりと首を振る。

 

「欧州戦力は巡洋戦艦、高速戦艦が多いからね。今回は速度よりも火力を優先したい。だから、今回の水上打撃には君達も知っているだろう大和型を用いる!」

「MIの最終戦に引き続き私達を……大和、感激です!」

「任せてもらおうか、大佐! 大佐の来援から力が有り余って仕方がないんだ!」

「あれが世界最大の艦、大和型……」

 

艦娘の中でも一際背の高い二人に、欧州の艦娘の視線が向けられる。

 

「詳細は今から発表する! 水上打撃艦隊は――

 

第一艦隊 大和 武蔵 長門 ウォースパイト 飛鷹 隼鷹

第二艦隊 伊58 神通 リシュリュー 北上 大井 時雨 夕立 大神

 

以上の編成で向かう!」

 

「えっ、なんでゴーヤ選ばれてるでちか?」

「主力部隊の戦いの前に前衛部隊との戦いがあると予想されるんだ、けれども鬼級の軽巡であっても潜水艦を優先して狙う行動パターンは既に分析出来ている。だから――」

「ゴーヤは……デコイなんでちか? 囮なんでちか……」

 

自分が艦隊内の囮と知って気を落とす58。

 

「言葉は悪くなるけどそれは否定しない、だけど!」

 

そんな58を後ろから大神は抱き締めた。

おなかに回された大神の手の感触を水着越しに感じてパニクる58。

 

「わっ!? わわっ!! ゴーヤ水着だから、抱き締められると色々感触がーっ!?」

「君への攻撃は必ず俺が守る! あくまで敵の行動の誘導がメインなんだ、信じてくれるかい?」

「信じるでちっ! 信じるから、離してほしいでち、恥ずかしいでちーっ!!」

 

そんなひと悶着があった後、続いて空母機動部隊の編成を発表する大神。

大神の直接指揮下ではない為、通常の編成条件で選ばれたそれは、

 

第一艦隊 イタリア ローマ 加賀 大鳳 鳳翔 グラーフ

第二艦隊 川内 白露 村雨 ビスマルク ガングート 足柄

 

と決まった。

一点通常と異なるのは、

 

「但し、連合艦隊の統率は鳳翔くんに取ってもらう。通常であれば一航戦の加賀くんに任せたいところだけど、日欧混成なこの艦隊だからね。両者の戦いを見て分かっている鳳翔くんにお願いしたい。鳳翔くん、いいかな?」

「はい、大神さんの拝命とあらば、全力で引き受けさせていただきます!」

「高速統一された君達の艦隊は当然俺達よりも敵主管の近くに到達するだろう、主管艦隊周囲の機動部隊をひきつける形と成る筈だ。そうして敵艦隊が陣形を崩したところを俺達が突入する!」

 

大神の意図に気付き頷く鳳翔。

 

「なるほど、戦略的にも囮を使う訳ですね」

「ああ、俺達は北ルート、空母機動部隊は南ルートで敵主管へと進軍する。その他の艦娘は残存潰走中の敵部隊を殲滅する! 全洋上戦力を以って出撃するぞ! 全艦娘、抜錨せよ!!」

「「「了解!!」」」

 

 

 

こうして大神たちはパラオ泊地を出撃、分進する前に遭遇した敵前衛部隊を休息後の腕慣らしとばかりに26隻がかりで殲滅する。

 

「4バイノ、センリョクダナンテ……ヒッドーイ! ワルナカチャン、ムクレチャウゾー!」

 

実も蓋もない叫び声を上げて爆沈する軽巡棲鬼であるが、艦娘爆弾を仕掛けようとした敵にもはやかける情けなどない。

 

「春雨や山風たちを酷い目に遭わせた報いっぽい? 情けも容赦も無用よ!」

 

夕立の勇ましい声が海上に響き渡る。

それは全艦娘の意思でもあった。

 

「よし、ここから俺たちは南北に分かれ分進する! 鳳翔くん、頼んだぞ!」

「はい、お任せ下さい!」

 

その後、大神たちは北側の水上打撃部隊主力と遭遇するが、鬼、姫級の存在しない艦隊など、もはや大神たちの敵ではない。

前衛部隊と同様に一撃で殲滅する。

と、機動部隊の鳳翔から連絡が届く。

 

『大神さん、私達は敵機動部隊主力を撃破、主管護衛の空母棲鬼率いる機動部隊と遭遇しました! 私達と遭遇した事で主管護衛の為の大きな意味での輪形陣が崩れています! 主管部隊への突入、撃破をお願いします!!』

「よくやってくれた、鳳翔くん。みんなも聞こえたかい、俺たちは敵主管部隊へ突入する」

 

そうして進撃を続けていると、やがて鳳翔率いる空母機動部隊に気を取られた敵主管艦隊の背後が見えてくる。

事ここにいたって、声を抑え静かにしている理由などない。

敵の背後を取ったのだ、敵を混乱させるためにも――

 

「行くぞ! 全艦娘、突撃!! 作戦『火』で壊滅させるぞ!!」

「「「了解!!」」」

「ナニィッ!? ウシロヲ、トラレタダト!?」

 

自艦隊の周囲を守っている護衛艦隊が居る筈なのに、後背を取られた事に混乱する敵主管部隊。

 

「敵の混乱を回復させはしない! 全艦一巡目の砲撃を直衛の重巡ネ級と空母ヲ級に集中! まずは手数を奪う!!」

「クッ! カンムスバクダンハ、フハツダッタノカ! ……ヤクニタタヌ、イマイマシイ……ガラクタドモメッ!!」

「ふざけるなっ! 生命をガラクタ扱いするな!!」

 

敵旗艦のその言葉に激昂する大神。

砲撃戦で直衛が沈んだ隙に霊子タービンで距離を詰め、敵旗艦に接近する。

 

「キサマガ、オオガミイチロウカ!? ワレラガサクヲ、ナンドモクツガエシオッテ!!」

「艦娘はガラクタなんかじゃない! お前達の言いようにしていい存在じゃない!!」

 

敵の巨大な砲撃を、拳を交わしすり抜けながら二刀で斬り付ける大神。

だがあまりに巨大な拳は一撃では両断するに至らなかった。

 

「ガァッ! ナカナカ、ヤルジャナイカ……ハッ! ダガ、モトハトイエバ……オマエタチガ、イイダシタコトダゾ、ニンゲン!!」

「何ですって!?」

「どういうことなのよ、それ!?」

 

その言葉に動揺を見せる艦娘たち。

艦娘に爆弾を仕掛けるなんて、非道な真似を一体誰が思いついたと――

とそこまで考えて、艦娘たちは、特に元警備府の艦娘と佐世保鎮守府の艦娘は、ある一件を思い出していた。

 

 

 

 

 

 『龍驤ーーっ! この野郎、ならお前らも道づれにしてやる!』

 

 そういうと渥頼は懐から一つのスイッチを取り出す。

 

 『お前らには知らせてなかったが、こういう時のためにお前ら6人の艤装には爆薬が仕込んでいるんだよ!!』

 『な、なんやて?』

 『こんな浅瀬じゃ沈めるには事足りないが――お前らの肌を焼くには十分だ!』

 

 驚愕する6人だったが、艤装の何処に仕込まれたか分からない状態では、取り外すこともできない。

 

 『焼け爛れた、醜い姿になりやがれーっ!』

 

 

 

 

 

『渥頼、あのバカ野郎、深海にまで魂を売りよってたんか!!』

 

有明鎮守府で龍驤が叫ぶ。

 

「夕立、あの人嫌いだったぽ――ぽいじゃない、あの人嫌い! いやらしかったし」

「僕もあの人は嫌だった。ずっと視線がいやらしかった」

 

時雨と夕立が渥頼の視線を思い出して身を震わせる。

 

「アクライ、アア、ソンナナマエダッタナア……ヒトリハ……」

「そんなっ、それじゃ……私達の戦いは一体何のために…………」

 

回復したとは言え、最も心を病んでいた大井が信じられないとばかりに頭を振る。

自らを抱き締め、戦意を失い、血の気の失せた大井が、単装砲を取り落とそうとする。

 

「大井くん!」

 

そんな大井を大神は正面から抱き締めた。

 

「!? 隊長? 何をなさるんですか?」

「すまない、今全ての人間を信じてくれとはいえない。けれど、俺達を、華撃団を信じてくれ!」

「そんなの決まってます! 私が最も信じられる、一番信じられる人は隊長しか居ません! 舞鶴のみんなを救って、野分たちを艦娘爆弾から救ってくれた人を! あなたを信じられなくて、誰を信じられるって言うんですか!!」

 

大神を抱きしめ返す大井、単装砲が海に落ちるが、そんな事はもう気にならなくなっていた。

 

「大井くん……」

「ごめんなさい、隊長! 信じられる貴方が、大好きな貴方が居るのに取り乱して! 私はもう大丈夫です!! 行きましょう! 敵艦隊に止めを刺しましょう!!」

「ああ、大井くん、行くぞ!!」

 

そして二人は更に深く抱きしめあった。




あれ? 
夕立合体技にするつもりで書いてたのに、あっという間に大井が勝手に動いて掻っ攫った!?
……あれー?

ごめんなさい。

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