艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十四話 15 私の事好きか、はっきり聞かせて

「はぁ~」

 

大学の食堂でため息を吐く私、しばらく前にも同じ事をしてたかもしれないわね。

でも、今はお金の使い方も見直したし、財布の中身の問題ではない。

 

「はぁ~、どうしよう……」

 

問題は、好きだと自覚してしまった一郎くんの事。

これからどんな顔をして家庭教師をしたらいいんだろう。

 

「誘惑しちゃえば~」

「それが出来たら苦労しないわよ~。それに、一郎くんにそんな女なんだって思われるのは嫌」

「でも大井っち、最近合コンとかの話も断ってるんでしょ~。そこまで好きなのなら、大神くんに好きって言っちゃうのがいいと思うよ~」

「うん……」

 

そうね、正直なところ彼以外の人と付き合う事なんて考えたくない。

 

「それにしても、大神くんの人間磁石は大井っちにも有効だったか~、いやびっくりだね~」

 

 

 

そして、次の家庭教師の日、私は自分の持ってる服の中から、一番身体のラインが現れる見栄えの良い服を選んだ。

彼に告白する、そうと決めたからには手抜きなんて出来ない。

今までの家庭教師で強い香水の類は苦手なのだと分かったので、微かに薫る程度の香水をつけて

家庭教師に望む。

行くまでの道中でいやらしい視線を感じたり私に触らそうとする輩もいたけれど、彼の事しか私の頭にはなかった。

一睨みして追い返して、彼の家に行く。

 

「大井……さん?」

「どうしたの一郎くん? さ、家庭教師、始めるわよ!」

 

一郎くんが私を見て呆然としているようだったが、まずはちゃんとやる事をやらないと。

彼の隣に座って、勉強を教え始める私。

 

「…………」

 

だったのだけれども、どうも今日の彼は集中出来ていないようだ、余りはかどらなかった。

それでも、一通りのところは教え終わったので一休憩入れながら彼に尋ねる。

 

「どうしたの、一郎くん? 今日は余り集中出来ていなかったみたいだけど」

「すいません、大井さんが気になって……誰かと会っていたりしたのですか?」

 

え? 

もしかして、私の事を意識してくれてるの?

 

「ねぇ、何でそんな事を聞くの?」

「……大井さんって、彼氏とかいるのですか?」

「居ないわよ。もう一回聞いても良い? 何でそんな事を聞くの?」

 

自分の服が男性にどう見られるかは承知済み。

一郎くんは視線を引き寄せられては、思い出したように視線をそむけたりと繰り返してる。

私から少しずつ、一郎くんに近づいていく。

家庭教師の距離から、それより近い、男女の、私が望む距離へと……

微かに薫る私の香りに一郎くんは決断したかのように立ち上がって、

 

「それは……お、大井さんっ!!」

 

私を力ずくで壁に押し付けた。

いわゆる壁ドンといわれる状況だ。

 

「え? 一郎くん? なにを?」

 

私の頭の両側に手を付いて、一郎くんは私の事を覗き込んでいた。

 

「大井さんは魅力的だから、彼氏が居ても仕方がないと思ってました。でも今居ないのでしたら、今の大井さんを他の男に見られるのは嫌なんです」

「え? それって……」

「大井さんを誰にも渡したくないんです!」

 

そう言って、力強い視線で見つめられる私。

ああ、逃れられない。

彼のこの気持ちから逃れる事なんて出来る訳がない。

 

「じゃあ、聞かせて、一郎くん……私が欲しい言葉を」

「……」

「見られるのが嫌とか、渡したくないとかじゃないの、私が欲しい言葉は……」

 

私の事が好きなのか、はっきり聞かせて欲しい。

そう私が囁くと、一郎くんは私の事をしっかりと抱きしめる。

 

「……好きです」

 

ああ……

 

「あなたの事が好きです、大井さん。付き合ってください」

「嬉しい……私もあなたが好きなの、一郎くん」

 

私からも彼を抱きしめる。

そして、私達は初めてのキスを交わした。

 

それから、私達は恋人同士となった。

 

 

 

元々学年が一年違いだし、志望する学校も別々だから、家庭教師の時間くらいしか接点がなかったのだけれど、家庭教師の時間にいちゃいちゃして彼を受験に失敗させるなんて以ての外。

 

だから、今でも自主的にやっている朝錬の時間や他の時間を使って逢瀬を、キスを重ねる。

 

クリスマスは彼の家に一泊して、正月も共に過ごし、彼の勉強を仕上げていく。

学力的にはもう問題ない、全国一位も取れたくらいだ、一郎くんは一年前の私より上だ。

センター試験も自己採点はほぼ満点。あとは、本番に備えるだけ――

 

そして二次試験直前のある日、最後の家庭教師の時間に一郎くんは言い出した。

 

「大井さん、お願いがあるんですけどいいですか?」

「なぁに、一郎くん?」

 

過去問もほぼパーフェクト。

もはや落ちる理由がほぼ見当たらない彼が、今更何を私にお願いするんだろう。

 

「試験に向けて、自分に発破をかけたいんです。だから、合格したらお願い聞いてくれますか?」

「その内容は今教えてくれないの?」

「流石にちょっとそれは……合格したら教えますから」

「……分かったわ、じゃあ、合格発表の日は二人で一緒に見に行きましょう」

 

半ば彼のほしいものは予想出来ていたけど、口にはしない。

 

 

 

そして、時は流れ、合格発表の当日、

雪の振る中、私達は彼の張り出された合格番号を確認する。

彼の番号は真ん中のほう、番号は……あった!!

 

「一郎くん!」

「ええ、大井さん! 俺、やりました!!」

 

周囲の悲喜こもごもな状況で抱き合う私達二人。

そこで始めて、一郎くんははじめてお願いを口にした。

 

「大井さん、あなたのすべてが欲しいんです」

「……喜んで」

 

そして、人目を憚ることなく私達はキスを交わす。

そしてその晩私達は彼の部屋で今まで以上に愛し合ったのだった。

 

 

 

『アイツは可愛い年下の男の子』

 

 

 

 

 

抱き合い、キスを交わす二人を中心に白と金色の清浄なる霊波の波が乱舞する。

その波動に触れた深海棲艦は次々と浄化されていく。

主管艦隊だけでなく、護衛艦隊も浄化されていく。

通常の艦は勿論、戦艦棲姫だけでなく、戦艦水鬼でさえも。

 

「ヒカリ……アフレル、ミナモニ……ワタシモ……そう」

 

そう言い残して、黒いドレスを纏った戦艦水鬼は浄化され一人の艦娘へと転化していく。

 

そうして、ゆっくりと大井と大神は唇を離す。

だが、次に大井が放った言葉は、大神たち全員の度肝を抜いた。

 

「たった二人の重雷装艦、私を選んでいいの? ……私を裏切ったら海に沈めるけどね……」

「お、大井くんっ?」

「あなた、何を言い出すのよっ!?」

 

今後、他の艦娘と合体技したら、その都度大神が海に沈められると言うことだろうか。

凄まじい独占宣言に戦慄が艦娘たちの間を走りぬける。

 

「なぁ~んて、冗談です~。一郎くんはみんなのものだって分かってますよ、はい♪」

 

しかし、大井は大神から身を離す直前、大神に囁く。

 

「キス一回で許してあげます♪ こっちは本気ですよ♪」

「大井くんっ?」

 

そして身を翻し大神から北上の元へと向かう。

 

「北上さん、先を越してしまってごめんなさいね」

「ん~、それは気にしてないよ、大井っち~。大好きな隊長とキス出来てよかったね~」

「ええっ♪ 幸せ一杯ですっ。北上さんにもこの幸せ味わって欲しいな~」

「そのあたりは隊長とその場の流れ次第かな~、でも、隊長とキス、いいね~、しびれるね~」

 

どうやら北上は粛清対象外らしいようだ。


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