艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十五話 2 火の海と化す海軍本部

「海軍中将 関――いや、黒鬼会 元五行衆が一人 火車!! ブラック派を唆しクーデターを企てた罪でお前を逮捕する!!」

 

憲兵隊、月組を率いて火車の執務室へと突入する加山。

 

「そうですか、流石は華撃団――月組。そこまで調べ上げられては仕方がありません。出来れば海軍の手勢を集めた上で退きたかったのですが、ここは私一人で退かせてもらいましょう」

 

そう言って机のスイッチを押す火車。

だが、そのスイッチには何も反応しなかった。

 

「……おや? 海軍本部に仕掛けたものが反応しませんね」

 

火車が放火魔であり爆弾魔である事は、加山たちは『前の世界』での戦いから良く知っている。

だから、海軍本部に放火装置や爆弾を仕掛けられた可能性があると加山は判断し、火車の執務室以外に仕掛けられた放火装置や爆弾については調査を行った。

故に――

 

「残念だったな、火車! お前の執務室以外に仕掛けられた放火装置、爆弾は全て解除済みだ!! 逃げる術などないぞ、火車!!」

「関中将? 海軍に爆弾を仕掛けたと言うのは本当なのですか!?」

 

中将が海軍に放火装置を、爆弾を仕掛けたと聞いて火車の副官が慌てふためく。

そんな事をする人間だとは思っていなかったらしい。

一方、火車本人はその様子にも慌てた様子を見せない。

 

「なるほど、やはり流石ですね。……でも、こちらはどうでしょうか?」

 

そう言ってもう一つのスイッチを押す火車。

今度はそれに呼応するかのように海軍本部の各地で爆発音と衝撃が聞こえてくる。

地面を揺るがすほどの大爆発に足が一瞬もたれる加山たち。火車の副官はバランスを崩し床に倒れ臥せっている。

その隙に執務室の脇に出来た小さい通路、おそらくは火車の逃走路が生じる。

 

「爆弾はもうない筈なのに何故爆発が!? 一体、何をした火車!!」

「おやおや、察しの悪い方達ですねぇ」

 

加山の方を振り向いた火車が酷薄な笑みを浮かべて加山たちを嘲笑う。

 

『加山隊長!!』

 

そこに憲兵の取調室、渥頼の取調べをしていた月組から加山へと緊急連絡が入る。

火車から視線を逸らすことなく、連絡に応える加山。

 

「今は火車の逮捕で時間がない! 後にするんだ!!」

『しかし、加山隊長……渥頼が突然爆発しました! 怪我人が多数出ております!!』

「なんだって!?」

 

あまりの事態に思わず火車から視線を逸らしてしまう加山。

その隙に火車は逃走路の近くへと移動する。

 

「艤装に仕掛けた爆弾……渥頼が爆発……艦娘爆弾……火車まさか、お前!?」

 

呟くように今まで起きた事象を繰り返す加山は、一つの可能性に思い至って声を上げる。

 

「その通りですよ! 艦娘の艤装に爆弾を仕掛けた私が、深海に艦娘爆弾をもちかけた私が、どうして役に立つかどうかも分からない人間に爆弾を仕掛けていないと思ったんですか!?」

「人間に爆弾を仕掛けただと!? 貴様、正気か!?」

 

残虐極まりない事を嬉しそうに言い放つ火車に加山の怒りの視線が向けられる。

だが、火車は常人には耐えられないほどの眼圧にも視線にも動じない。

それどころか、嬉しそうに笑い狂う。

 

「ええ正気ですよ! 本当なら手勢はもっと役に立つ場面で爆発させたかったのですが、私のために時間を稼げるのです。彼らも喜んで散ってくれるでしょう!!」

 

火車の副官が信じられないと言う表情をする。

自分達をブラックと蔑む海軍を改めさせるために、『太正会』の手から正しき海軍を、華撃団から艦娘を取り戻すために集まった同志達を爆発させるだなんて信じられなかった。

 

「関中将!? あなたはなんてことを……同志を……」

「同志? 笑わせないで下さい、ただの人間と私が同格だなんて勘違いも甚だしい」

 

ゴミを見るような目で副官を見下ろす火車。

 

「と言う事は……火車、お前は…………」

「ご想像の通りですよ、月組隊長。今爆発しているのはブラック派と言う奴ですね。あなた方には感謝してほしいですねえ!! クーデターを起こそうとした人間を、ブラック派提督1558人を逮捕して取り調べる手間をわざわざ省いてあげたのですから!!」

「火車ーっ!!」

「おっと、長話が過ぎましたね。私はこれで失礼させていただきます。ああ、副官のあなたにも最後の命令を差し上げましょう。爆発して、私が追われない様に逃走路を塞ぎなさい」

「そんな!? 関中将!!」

 

蒼白になった副官に残酷な命令を下し、火車は逃走路を用いて脱出する。

 

「火車、待て!!」

 

火車を追おうとした加山たちだったが、その瞬間副官が白く光り――

 

 

 

そして、火車の執務室からも爆発音と爆炎が上がるのだった。

 

 

 

この日生じた海軍における連続爆発事件を最後に、かつてブラック派と呼ばれた派閥は消滅した。

クーデターを起こすほど不満を持っていた、先鋭化していた人間は一人残らず爆死し、そしてそれに近かった人間たちも、ブラック思想・行為の行き着く先が同志を、人間をも爆弾化・手駒化した火車の残虐な行為に及ぶと知ったからである。

 

しかし、未だ首魁である火車は捕縛出来て居ない。

 

軍内で炸裂した1558発の爆弾により多数の死傷者が発生して、海軍は混乱の極みへと突入し、月組、憲兵隊にも多大なる被害が生じたためである。

 

『加山たち月組も火車の副官の爆発で重症を負った、連続爆発事件による海軍の被害は計り知れない。すまんが火車の捕縛には今海軍は動かせない』

『分かった、火車の捕縛と研究所の制圧には陸軍を用いる、射殺も許可する予定だ。海軍は統制の回復を最優先としてくれ』




火車大フィーバー。
そしてブラック派全滅、でもやり過ぎたかな。
反応が怖い。

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