艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十五話 5 さかわを……コロシテ

見るも無残な姿に改造された3人の艦娘、いや、機艦娘たち。

 

「そんな……撃てない! 酒匂を、妹を撃つなんて出来ないよ!」

 

その姿を前にして阿賀野たちは砲口の狙いを定めることが出来なかった。

いや、それは陸奥たちほかの艦娘にしても同じ事だ。

共に歩んできた仲間、戦ってきた戦友、姉妹を相手に戦う事なんて出来る訳がない。

 

『ひゃっはっはっはっ! そうじゃろうなぁ。お主らはブラック提督に虐げられた過去から人一倍強い仲間意識を持っておる。同じ艦娘を撃つなんて出来んじゃろうなぁ!!』

「くっ! この外道!!」

 

陸奥の軽蔑を込めた眼差しが矢波へと向けられる。

 

『褒め言葉として受け取っておこうか。さて、お主らは撃てんじゃろうが、こやつらにはお主らを撃たせる事が出来るぞ。ほぉれ、ポチっとな』

 

そう言って矢波は何らかのスイッチをONにする。

それは機艦娘の酒匂に攻撃指示を出す物だった。

コントロールユニットから脳内へと命令を受信した機艦娘、酒匂が悲痛な叫びを上げる。

 

「や、いやあああぁぁぁっ! ウチタクない! 阿賀野姉達をウツなんて……イヤだよぉ!!」

 

それでも身体は酒匂のその意思に反して、阿賀野たちへとゆっくりと手を向ける。

そして、その手がボトリと落ちて腕から直接砲口が形成されていく。

 

『戦艦の主砲じゃ。艤装にはやはり取り付けられんかったから、腕を切り落として取り付けたがコ○ラのサイ○ガンみたいでなかなかカッコいいじゃろ?』

「酒匂……あなた、なんてことを!!」

『ふぅむ、どうやらお主らには機能美と言うものが分からんようじゃな』

 

ゆっくりと形成されていく砲口の狙いは明らかだ。

阿賀野たちはその狙いから外れようとするが、

 

『おおっと、お主ら……そう、阿賀野というたか、機艦娘No.3の砲撃を回避されては困る。せっかくのデータ取得の機会じゃ。そこに立ったまま無防備で砲撃を食らってもらおうか』

「なっ!?」

『はよせんか、さもなくば……』

 

矢波が更に何らかのボリュームをONにする、次の瞬間、

 

「きゃあああぁぁぁっ! やめてえええぇぇぇっ!!」

 

酒匂から悲鳴が発される。

脳内を虫が食い荒らすような痛みが酒匂を襲っていた。

 

『ほれほれ、はよせんか。早くせんとNo.3の精神は壊れてしまうぞ!!』

「分かったわ! 酒匂の砲撃を受ける! だから、もうやめて……酒匂に酷い事しないでぇ!!」

『そうじゃ、最初からそうすればよかったんじゃ』

 

阿賀野の叫びを聞いて、矢波は酒匂に苦痛を与えていたボリュームをOFFにする。

 

「ダメだよ、阿賀野姉! 戦艦の主砲なんかで撃たれたら阿賀野姉が死んじゃう! ワタシ、阿賀野姉を殺したくないよぉ!!」

 

コントロールユニットからの命令を必死に拒否しようとする酒匂。

その砲口の狙いはブルブルと震え定まらない。

 

『チッ、まだ反抗しよるか。一旦思い知らせたほうが良いようじゃな』

 

そして、矢波は酒匂に苦痛を与えていたボリュームを最大に設定する。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアァァァッ!!!!」

「酒匂!!」

 

苦痛の余りのた打ち回りたくても、身体は殆ど動いてくれない。

口から泡を吹きながら、酒匂は悲鳴を上げる。

そうすることしばらくして、酒匂は苦痛に喘ぎながら声を上げた。

 

「コロシテ……」

「え?」

 

酒匂が何を言ってるのか分からない阿賀野。

 

「コロシテ……あ……が、の姉、さ……かわ……を、コロシテ……」

「そんなっ!? そんな事できるわけない!!」

「この……ままだと、さかわ、阿賀野ねえを……コロシちゃう。みんなを、コロシちゃう……よ」

「……」

「だから……ね、そうなる前に……さかわを……コロシテ……」

「酒匂……」

「もう……さかわ、戻れないから……かんむすに……戻れないから…………」

「酒匂ぁ……」

 

涙を一滴流しながら、阿賀野に懇願する酒匂。

 

「だから、おねがい……」

「ごめんなさい!」

泣きながらも艤装の砲塔を、その砲口を酒匂へと向ける阿賀野。

 

「ごめんなさい! ごめんなさい、ごめんなさい酒匂! 阿賀野を許して!!」

 

残った片目から涙を流しながらも微笑む、酒匂。

 

「アリガト……ね。あがの……姉……」

「酒匂! さかわーっ!! あああああぁぁぁっ!!」

 

そして阿賀野は、その砲撃を、酒匂へと、涙と共に放つのであった。

 

 

 

「させるかーっ!!」

 

 

 

炸薬の煙が酒匂の姿を覆い隠す。

 

「ああっ……酒匂ぁ……酒匂ぁ…………」

 

けど、間違いない。今の阿賀野の砲撃なら、一撃で、酒匂を……

懇願されたとは言え、大事な、愛する妹を、自らの手で……

 

「あああああぁぁぁっ!! いやあああああぁぁぁーっ!!」

 

俯いた阿賀野の絶叫が研究所に響こうとして――

 

「泣かないでくれ、阿賀野くん。酒匂くんは大丈夫だから」

「え?」

 

そんな阿賀野を後ろから優しく抱きしめる者が居た。

煙が消え去ったとき、そこにあったものは――酒匂を庇う純白の機体。

霊力で作られた大神の分身体であった。

 

と、すれば阿賀野を抱きしめているのは……

 

「隊長さん!?」

 

大神の姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

機艦娘:全能力+40




今度は木喰大フィーバー。
いや、ホント反応が怖い。

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