艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十五話 8 因果応報

大神たちの目の前にて北方棲姫の腹を食い破って開かれたアビスゲート。

だが、それは地中海で見たアビスゲートよりもかなり小さい様に見える。

そこから最も近い深海棲艦であるはずの北方棲姫への怨念の流入も起こらない。

ゲートから深淵拠点が現れる気配もない、つまり……

 

「アビスゲートの開放は不完全なのか?」

「いいや、これでいいんじゃよ! もともと北方棲姫はアビスゲートを開かせるためだけのエサ! ゲートを力の源として使うのは、ワシらじゃ!!」

 

そう言って、木喰はレバーを引いて装置を作動させる。

 

「火車、先ずはお前から行くか?」

「ええ、この世界に生れ落ちてから久しぶりの魔力、怨念、たっぷりと頂きましょうか!」

 

ボリュームをMAXにすると、アビスゲートから莫大な怨念、魔力が火車へと流れ込んでいく。

 

「そうか、これがお前たちの切り札だったのか! 深海に魂を売ったのも……」

「流石に察しがいいのう、大神一郎。わしらは深海に魂など売っておらんよ! 最初からこれを目的にして取引しただけじゃ!!」

 

かつての五行衆としての力を、それ以上の力を求めるために動いていたのか。

 

「はははははっ。良いですねぇ! この感覚、かつての自分を取り戻すようですよ!! 試し撃ちさせていただきましょうか! 五行相克! 紅蓮火輪双!!」

「まずい! 狼虎滅却! 金城鉄壁!!」

 

火車から怨念に包まれた魔界の炎が上空に打ち上げられるのを見て、大神は防御技を発動する。

魔界の炎は大神たちの周囲に落ち大神たちを燃やそうとするが、金城鉄壁がそれを阻止する。

 

「ふむ、まだ威力が足りませんか。まだ、まだまだ怨念が必要なようですね!」

「了解じゃ! 大神よ、考えても見ろ! ただの船の意識、記憶、恨みに怨念が、魔力が宿る事で人間を、現代兵器を圧倒する深海棲艦が誕生するのじゃ! なら、人間に直接その怨念が宿ったらどうなると思う!? 当然出来るのは深海棲艦を、艦娘を凌駕する新たな生命体の誕生じゃ!! 喜ばしいことじゃろう! 艦娘なぞもう要らん! ワシらはワシらの力で深海を越える!!」

「そうなる事を狙っていたと言うのか!?」

「ああ、ワシらは全盛期を超える力を身につける! 大神!! おぬしにはもう止められん!!」

「そうです! 私は! 人間を! 越える!!」

 

アビスゲートへと近づく火車に更に莫大な怨念、魔力が流れ込んでいく。

 

「はははははっ! 最高の気分ですねぇ! この身に満ちる全能感! もう既に私は、京極すらも越えた!! 後は大神! 貴様をこの力で血祭りに、艦娘は陵辱でも……アガッ!?」

 

突如、火車の片腕が歪に盛り上がる。

 

「どうしたのじゃ、火車!?」

「木喰、怨念の流入の停止を! これ以上は私の身に収まり……アガアァッ!!」

 

苦悩する火車の様子を見て、急ぎボリュームをOFFにする木喰、だが、アビスゲートから火車への怨念の流入は止まらない。

 

「くっ、流入を停止できぬ。なぜじゃ!? 何故アビスゲートをコントロールできぬ!? こんなのは計算外じゃ!!」

「ぎゃあああああぁぁぁっ! やめろおおおおおぉぉぉっ! これ以上、これ以上私の中に入ってくるなあああああぁぁぁっ!!」

 

流入し続ける怨念に耐えられないと、火車の腕が、肩が、足が次々に歪に盛り上がっていく。

それだけではない、火車の意識そのものも怨念に塗りつぶされ様としている。

もはや火車は、火車である事を示す全てを失っていく。

 

「木喰……貴様あああああぁぁぁっ!!」

「ぎゃあああああぁぁぁっ! ワシを燃やしてどうするんじゃ!? やめろ、火車!!」

 

歪に盛り上がり続ける身体に火車はもはや、人としての形すら意識すら保てなくなりつつある。

自分をこのような形にした怨念のままに、火車は木喰を燃やし尽くそうとする。

 

「ぎゃあああああぁぁぁっ!! ワシが、ワシが燃えるーっ! やめろ、やめるんじゃーっ!」

「アアアアアあああああぁぁぁぁぁあああああぎゃあああああ品krjfしおあhbふぉえjvlhoayfreg@wyih0rvqifgwhhoifeえqgwgyーっ!!!!」

 

火車はもはや人間では発音できない言語を放ちながら、自らをこのような姿にした木喰を手、否、触手で持ち上げ地面へと叩きつける。

その膂力は既に人間の限界を遥かに超えている、だから――

 

ぐしゃっ

 

と、音を立てて木喰の体は四散した。

引きちぎられた木喰の上半身が大神の前に転がってくる。

 

「こんなの、こんな事計算外じゃ……」

 

その言葉を最後に息絶える、それが木喰のあっけない最後であった。

 

だが、木喰を哀れに思う時間などない。

その間も、火車への怨念の流入は絶えず行われていたからだ。

 

「キャアアアッ!」

「なによ、これ! 離しなさいよ!!」

 

もはや醜き肉塊と貸した火車から触手が伸び、曙と雲龍を捉える。

そして、人の形を保っていたときに放った言葉の通り、曙と雲龍を陵辱しようとする。

触手が曙のセーラー服の隙間から潜り込み、胸を絞り、ショーツを引き摺り下ろそうとする。

 

「やだあああっ、助けてぇっ!」

「大神さん以外の人となんて、やだあっ!」

「曙くん、雲龍くん! せいっ!!」

 

曙と雲龍を助けるため、二刀を振るい触手を切り刻む大神。

だが、触手の一部は曙と雲龍にまとわりついたままで、何ともいえない嫌悪感を二人にもたらす。

曙にいたっては髪飾りが落ちてロングへアーとなっていた。

 

「ううう、気持ち悪いよぉ……」

「服が汚れてしまいました、すごくイヤ」

 

だが、二人をお風呂に入れる時間などはさすがにない。

大神は人外と化した火車に対して砲撃を行った戦艦、重巡洋艦に状況を確認する。

 

「陸奥くん、伊勢くん、妙高くん、砲撃の効果は!?」

「ごめんなさい、まるで効果がないわ!!」

「砲撃で焼き払っても、それ以上に肉塊が大きくなっていくの!!」

「このままじゃ、この研究室、いえ研究所、ううん下手をしたら外にまで!!」

 

確かに元火車であった肉塊には、絶えず怨念が流入し続け肥大化している。

これが万が一、外界に出たら被害は甚大だ。

 

「ごggぎょうそうkkこく gぐれんmmまえんじん」

 

対処を一瞬考えあぐむ大神たちに、火車の新たな技が炸裂する。

 

「あああああぁぁぁっ!!」

「きゃあああぁぁぁっ!!」

「いやああああぁぁぁっ!?」

 

黒炎に焼かれ、痛みを露にする艦娘たち。

その姿を目にして、火車の残された意識が愉悦の声を上げる。

 

「ssそうそp@うう、そうsそう、それgggがみたkkkかったんです! もeえろ! Mmもっと燃えろ!! n何かも燃eeえてしまえ!!」

「火車……」

「mmっもうおいhgbhkl;ぺろおpうぇえろ!! Mmlkphjぢおty3ほwkg0えqrgろ! 燃えhmtl;khネイgh13うbえk;ぇjてしまえーっ!」

 

もはや、火車はこちらの言うことなど理解できないのだろう。

だが、大神は覚悟を決める。

 

「火車、お前を成敗する!! 阿賀野くん!!」

「え? はいっ? 隊長さん!?」

 

自らの傍に居た阿賀野に伸びる触手を切り払い、その手を引いて抱き寄せる。

 

「これだけの質量、破邪の剣風でも浄化しきれるか分からない。だから、合体技で行く!」

「はいっ! 隊長さん!!」




今後の合体技については思案中なのですが、結論が出るまではラブラブメインで行きますよー

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