艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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閑話 二 蒼龍、飛龍とデート 後編

「うーん、デザートもコーヒーも美味しかったー! 大・満・足!!」

 

食事を終え、真っ先にフランス料理店を出た飛龍が軽く駆け出してこちらを振り向く。

 

「そうだね。デザートもミニサイズのケーキ、アイスの盛り合わせにクリームブリュレまでついていたから、ランチ価格だとしても本当に格安だな。覚えておいて損はないお店だよ」

「ふ~ん? 隊長、そのうち誰か連れてくるんですか、私達以外に」

 

若干拗ねた口調で蒼龍が大神の袖を引っ張る。

 

「俺? 俺が連れてくるとしたらさっき話にあった間宮くんと伊良湖くんかな。あのミニトマトのコンポートは有明鎮守府でも出来れば食べたいから、二人には味の秘密を解析して欲しいね」

「やだ、それって隊長の下心全開じゃないですかー」

「あらかじめ、それを言った上で連れてこないと間宮さんも伊良湖ちゃんも怒っちゃいますよ」

 

別の意味で下心を隠そうともしない大神の言葉に蒼龍と飛龍が吹き出す。

 

「それだけ、気に入ったって事さ。まあ、俺は今奢りとかは若干辛いから艦娘のみんなで来てもいいんじゃないかな? 俺も休みはしばらくは取りにくいだろうし」

「そうですね~。あ、そうだ♪ 空母のみんなにお昼のお料理の写真とか送ろっ。『前菜のミニトマトのコンポートが最高だったよ』って、お店の場所もつけて、と」

「私も私も♪ なんて書こうかなー。『私なんか隊長さんにあーんしてもらったよ♪ いま隊長さんと3人でデート中なの、どうだ羨ましいかー』って書いちゃえ」

「え、飛龍そんな事も書くの? じゃあじゃあ、私も『私も隊長にあーんしたよ♪』っと」

「ちょっ!?」

 

他の艦娘を煽るメッセージを送ろうとする飛龍に驚愕する大神。

ついこの間、艦娘魔女裁判をやらかしたばかりなのに何書いてるのさ君達。

 

蒼龍のメッセージには「美味しそうですね、でも量が足りるか心配です」とか「店の場所ありがとっ、私達も今度行こうよ翔鶴ねえ!」と穏やかな言葉が書かれていたが、後のメッセージを見た途端、「大神さんとデート、昼食で『あーん』……流石に心が激昂します」や「なんかウチのことコケにされた気がするわー、気のせいやないよね?」、「全員爆走! 準備出来次第有明鎮守府を出発! 目標、新宿の隊長さん! 私も隊長さんと!」と本気度がガラリと変わった。

 

空母たちのグループ会話なので、大神のスマホには表示はされないが、もしされたなら大神は盛大に冷や汗を流していただろう。

でも、魔女裁判はもう行われない、だから二人は気楽だ。

 

「これからは正々堂々隊長を取り合うの! だから、情報は正しく伝えないとね♪」

「そうそう、後の事は気にしない♪ 今を全力で楽しむの♪ あ、でもちょっとフォローしとこっと、『隊長、そのうち他に誰か連れてくるつもりだよ、選ばれるといいね』って」

「いいっ!?」

 

人、それを新たな火種を投げ込むと言う。

静まり返る空母たちのグループ会話、それが逆に怖いのだが二人はのんきだ。

 

「さて、連絡も終えたし、ショッピングに行こうかな。何から見ていく蒼龍?」

「どうしようか。化粧品はあんまり使う機会がないから、買い足す必要はあまりないし……」

 

ショッピングの予定を考え始める二人。

それで大神は午前中に神谷から受けた連絡を思い出した。

有明鎮守府の皆には大淀を経由して伝わっているだろうけど、この二人に伝わっていない可能性もあるからだ。

 

「ちょっといいかな、二人とも」

「ん? どうしたの隊長?」

「いや、技術部の神谷さんから午前中に連絡を受けたんだけど、君達の能力を更に上げる装備がもうすぐ開発できそうなんだよ。具体的には年明けくらいには何とかなりそうなんだってさ」

「「本当!? どんなタイプの装備なの!?」」

 

それは聞き捨てならない情報だと、飛龍と蒼龍は大神に差し迫って次の言葉を待つ。

 

「ああ、艤装と違って常に身に付けるタイプの装備だからアクセサリー類に近いタイプになるんだってさ。だから、冬のボーナスとかでアクセサリー類を購入するのは控えて欲しいってね」

「ええっ!? じゃあ、もし大神さんの贈ってくれたアクセサリーと被っていたら……」

 

自分の能力は向上させたい、でも大神に贈られたアクセサリーを代わりに外すのは嫌だ。

心配そうな表情をする二人。

 

「ああ、そこは心配しなくていいよ。俺が皆に渡したアクセサリーとは被らないようにしてくれるってさ。流石に俺もオケラになる覚悟で購入したものが無用の長物になるのは厳しいからね」

 

苦笑する大神を抱きしめる蒼龍たち。

 

「無用の長物だなんて、そんなことないわ!」

「そうだよ、隊長さん! 今の私達にこれ以上の宝物なんてないよ!」

「ああ、二人にそう言ってもらえると選んだ甲斐があった……――っ!?」

 

二人と視線を合わせようとする大神だったが、今の状態で視線を合わせようとすると、押し付けられた二人の胸の谷間がはっきりと見える事に気が付いた。

慌てて視線を逸らす大神。

だが、蒼龍たちは今、自分達から視線を逸らされた事に少し傷ついた。

 

「ねぇ、もしかして、私達の想いって重すぎるのかな?」

「そんな事はない。俺は君達に想われて嬉しいって思ってる」

「じゃあ、なんで視線を逸らすの。逸らさないで、私達を見てよ……」

「だって今君達と視線を合わせたら、君達の豊かな胸の谷間が目に入るから――っ!!」

 

そこまで言って、顔を真っ赤にして自分が大失言した事を悟る大神。

逆に、蒼龍たちは大神の初心な行動に笑みが零れる、傷ついたなんて考えた事がバカバカしい。

 

「ふぅ~ん、隊長。見てもいいよ、蒼龍の、おっぱい♪」

「そっかぁ~、隊長さん、私の胸の谷間も大きいって思ってくれてたんだ~、じゃあ、お礼に、触ってもいいよ♪」

「むむ、飛龍ばっかりズルい。じゃあ、私のも、触っていいよ♪」

「いいっ!?」

 

迫る二人から逃れようと一歩下がろうとする大神だが、抱きつかれている状態では離れられない。

こんな場所で下手にバランスを崩して倒れたりする訳には行かない。

そうこうしている内に蒼龍と飛龍は大神の首に手を回した、ますます逃げられなくなる大神。

 

「ほぉら、早く私達を見て♡ 見てくれるまで離れてあげないわよ♪」

「そうだよ、見て、触ってもいいんだよ。た・い・ちょ・う・さんっ♪」

「……はぁ」

 

逃げられないことを悟った大神は覚悟するのであった。

ふんわりやわらかだった。

ふんわりやわらかだったと言う事だけを記す。

大事な事なので二回言った。

 

 

 

その後、3人は洋服を見て回った後、映画も一本見ることにした。

蒼龍と飛龍の選んだ映画の種類はホラー映画。

大神の左右に二人は座り、恐怖シーンが流れるたびに、きゃあきゃあ叫びながら大神に抱きつく。

いや、もうこれは盛大に抱きつきまくるためにホラー映画を選んだと言うべきか。

と言うか、二人とも本当はホラー映画怖がっていないだろ。

大神も絶えず二人に抱きつかれて胸を押し付けられてキスされて、もはや映画に集中する余力なんか残っていなかった。

結局正面を見ている時間のほうが短かったのではないかと思えるくらいで、何があったのかすらよく覚えていない。

 

「まあ、二人が楽しそうならそれで良いか」

 

でも、映画館を出た蒼龍と飛龍は満足そうなので納得する大神。

 

「二人とも叫び過ぎで喉が渇いていないかい? 喫茶店にでも寄っていく?」

「うーん、もう夕方ですからいいですよ。ここで何か食べると夕飯が入らなくなっちゃいますし」

「蒼龍の言う通りですね。有明まで一時間かかりませんし、ペットボトルでお水でも飲めればそれでいいです」

「分かった。それじゃあ、二人とも帰ろうか有明に」

 

少し先を行く大神が二人に手を伸ばす。

 

「「はいっ!」」

 

蒼龍と飛龍はその手を幸せそうに握り締めるのだった。




大事な事なので二回言った。

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