そして、
「と云うことがあって、今は療養中なの、山城」
「扶桑お姉さま、そんなお辛いことがあったなんて! この山城、お姉さまの為になら身を粉にして、お風呂からトイレまで介護させて頂き……ぐふふ」
「はい、ドクターストップです。そんなのは必要ありませんからね、山城さん。扶桑さんの負担を増やさないで下さい」
「なんで!?」
佐世保の艦娘が到着し、日本中の艦娘がようやく一箇所に集う。
その頃には大神・明石によって舞鶴の艦娘の状況についての周知も終わっていたため、佐世保の艦娘にもあらかじめ知らせておくべきと明石を帯同させようとしたのだが、何故か全員が顔を合わせることとなった。
もちろん、明石の医師としての確認を取った上で。
佐世保の艦娘の出迎えは恙無く終わり、姉妹や同型艦が集い再会を喜び合っている。
幸い、佐世保の艦娘の状態は良好のようだ。
一部暴走気味の艦娘も居るようだが。
いや、龍驤が不満そうな顔をしている、何か不満でもあるのだろうか。
そのことに気付いた大神は龍驤の下へ向かう。
「どうしたんだい、龍驤くん?」
「……納得いかんのや」
納得いかない、まさか艦娘が集っている状況に不満でもあるのだろうか。
これだけの数の艦娘が揃うのだ、トラブルの発生は予想していたが、まさか最後になって。
「納得いかんのや! なんでうちらだけサラッと流されとるんや!? ここは、うちらもなんやトラブルおきて、そこの色ボケ一航戦とか榛名みたいに『きゃっはぁ~ん、おおがみさぁ~ん』となる流れと違うんかい!? そうなる準備もしてきたんやで! おめかしして!!」
いや、ただの暴走だったようだ、と云うかメタな発言はしないように。
「「色ボケなんかしていません」」
「榛名も色ボケなんかしていません!」
冷たく切り返す赤城と加賀、でも僅かに頬が赤い。
一方、榛名は顔が幾分か赤面している。
「ん~、榛名の顔が赤いデース。まさか……」
「ち、違います、金剛お姉さま! 確かに素敵な方とは思いますが……」
「ソウダヨネー! 隊長はかっこいいのデース! 強いのデース! 素敵なのデース!! でも、隊長は私のものなのデース、榛名相手でも譲ってあげないのデース!」
「……いつからクソ隊長があんたのものになったのよ」
金剛の発言に、曙がボソリと小さい声で突っ込みを入れる。
本来なら誰にも聞こえないくらいの小さい声で。
「おおっと、テレポーター、じゃなくて、曙ちゃんのちょっと待ったコールが入ったー! さすがご主人様ですね!」
それを漣がすかさず拾い、大声で回りに振りまく、というかキミ発言ふるいね。
艦娘の視線が曙に集中する。
「ちょっ、漣! あんまり大声で広めないでよ!!」
「えー、でも言った事は事実じゃない。戦わなきゃ、現実と!」
そうやって漣は曙を押し、金剛と対面させる。
「Oh 次のチャレンジャーは曙デースカ。いいデショー! 私は誰からの挑戦も受けるのデース!」
曙をビシッと指差して、誰にも負けないとばかりに胸を張る金剛。
当然、そんな金剛と対峙すると云うことは、
「へー。曙って、金剛さんと対峙しちゃうくらい、隊長の事好きなんですかー」
大神が好きだといっているに等しい。
周囲から上がる声に凍りつく曙。
「わ、わたし……わたし……」
今度は顔どころか首まで真っ赤に染める曙。
凍ったり赤くなったり忙しいね。
「うわあぁぁぁぁぁん! 私は、クソ隊長の事なんて、なんとも思ってないんだもんー!」
真っ赤になったままその場から逃げ出す曙。
これ以上見られることが限界だったようだ。
「Yeah! 私の勝ちなのデース! これで、隊長は……あれ、隊長が居ないのデース!」
一方、
「どうしたんだい、鹿島くん、いきなりに外に。気分でも悪くしたのかい?」
当の大神は、その頃鹿島によって外に連れ出されていた。
人に酔ったのかもしれないと、鹿島を心配そうな眼差しでみる大神。
「外の空気を吸うだけで大丈夫かい? 背中でもさすろうか? 明石く――」
「ええ、出来れば……お願いします……」
何を言おうとしたのか察知した鹿島は、大神の声をさえぎる。
明石を呼ぼうかと思った大神だが、鹿島本人がそう言うのならさすってあげた方が良いだろう。
鹿島に近付いていく。
そこを、
「おぉー、これが渥頼に天誅を下した噂の大神さん! しかも密会場面! 写真パシャリと」
青葉が撮影する。
もちろん無断で。
「ええっ!? 密会場面?」
「よしっ、予想通りタイミングばっちり。既成事実の完成です!」
驚く大神に対し、ガッツポーズを取る鹿島。謀ったな、鹿島。
「大神くんが坊やだからです!」
そこを大神を探していた金剛達が強襲する。
「鹿島ー! 隊長を連れ出して何してたデースカ! 白状するデース!!」
「Ура!」
あっという間に取り囲み、やいのやいのと賑わう、その表情には悲嘆の色はもうなかった。
有明鎮守府の本当の意味での始動は、深海棲艦との真の戦いは、これから始まる。
命短し恋せよ艦娘
紅き唇あせぬ間に
完(嘘)
俺達の戦いはこれからだ! みたいな感じになりましたが、まだ終わりませんよ!
続きますので!
ということで次回予告。
艦娘も集い、私達の反攻が本格的に始まる。
対象は忌まわしきあの地。
大事な人が沈んだ海。
約束を果たそうと、攻略隊に志願した私。
待ち受けていたものは、黒く染まった――
次回、艦これ大戦第六話
「第二次W島攻略作戦、アネモネの花を取り戻せ!」
暁の水平線に勝利を刻むのにゃしぃっ!あれ?
「忘れてなんかいない、ずっと覚えてた! だから戻ってきて! 帰ってきてよ、如月ちゃん!!」