艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第六話 6 対潜掃討戦――前哨戦

「――聴音、開始よ」

 

水面に一人立つ五十鈴。

装備は、九三式水中聴音機、三式水中探信儀、そして九四式爆雷投射機。

対潜装備3点セットといった方が良いかもしれない。

 

自らの足を緩め、水中を伝わる音に耳を傾ける五十鈴。

足を緩めないと聴音に差し障りがあるとは言え、敵勢力下の海域で足を緩める事はやはり非常に恐ろしい。

 

もし、航空部隊が来たら――

 

嫌な想像が五十鈴の脳裏を掠めるが、それに左右されることなく五十鈴は聴音を続ける。

やがて、水中を航行するモノ特有の雑音が、水を掻き分ける音が聞こえてくる。

 

それは自分達艦娘と同様に自らの身一つで以って、水中を行くモノ。

 

艦娘たちと相対する敵性存在。

 

深海棲艦の潜水艦。

 

「距離は、単独聴音だけじゃやっぱり掴めないか」

 

自らの為すべき事の手順を振り返るかのように、五十鈴は用いる装備の変更を決定する。

だが、これから行うことは相手にこちらの存在を示す事ともなる、どうしたものか――

五十鈴は近くにいるはずの遼艦、川内たちに連絡して三角法で位置を測ろうかとも思った。

と、そこまで考えて、五十鈴はその無意味さに気付く。

相手が潜水艦で目視確認できないのに対し、こちらは水上標的、見つかることなど気にしても仕方がない。

 

それよりも、今は、確認した敵潜水艦を可及的速やかに撃破する方が優先した方が良い。

 

「探針音はこっちの方向で良いわね。いくわよ、探針音!」

 

探針音が、五十鈴より深海棲艦へと発射される。

しばしの間を置いて、敵に反射した探針音が波形として五十鈴の脳裏に刻まれる。

もはや、敵の存在は丸見えに等しい、潜水艦特有の隠密姓はもうない。

 

「よしっ! 敵は3隻ね」

 

距離も位置も数も全て掴んだ。

 

水飛沫を上げながら、五十鈴は海面を駆ける。

敵の位置を掴んだからといって、戦いはこれでは終わりではない。

迅速に行動しないと敵の行動を許してしまう、ここからは時間との勝負だ。

 

敵の存在が推定される領域に辿り着くと、

 

「これで終わりよっ! 爆雷投射!!」

 

海中に次々と爆雷を投射する。

五十鈴の聴音に始まる計測が確かであれば、これで――

 

やがて、爆雷の爆発音とそれに混ざって敵の圧壊する音が次々と聞こえてくる。

数は3。

それは探針で明らかになった潜水艦数と等しい。

 

爆雷音が収まった海に再度聴音を行なうが、敵潜水艦の存在を匂わせるものは聞こえては来ない。

 

「大丈夫そうね、よかっ――」

『こちら、響。其方の状況は?』

「うひゃう!?」

 

安心して一息つこうと思った五十鈴だが、いきなりの響からの連絡にひっくり返った声を上げる。

心臓に悪い。

 

「……何かあったのかい?」

「何でもないわよ。潜水艦3隻を発見、撃破したわ」

 

少しの時間を置いて合流した響に、戦果を報告する五十鈴。

 

 

 

有明鎮守府を経ってから、数日。

 

本日未明に到着した中部太平洋海域での対潜掃討だが、掃討は順調だ。

 

装備の乏しかった以前と異なり、対潜艦全員が、聴音機、探針儀、爆雷投射機の全てを装備出来ていることがある。

 

聴音で、敵の存在を探り、

探針で、敵の存在を明らかにして、

爆雷で、敵に止めを刺す。

 

この一連の対潜行動は、一旦味わってしまうと装備なしでの対潜哨戒は無理かもしれないと思う程に対潜装備の有無は大きかった。

 

「お疲れ様。第一艦隊とも連絡を取り合ってるけど、向こうも潜水艦の発見ペースはかなり落ちてきたみたいだ。撃破数も計50を越えている。集合したら、隊長に改めて連絡しよう」

「掃討完了かしら?」

「潜水艦についてはそう言って構わないだろうね」

 

そう五十鈴に返す響だったが、作戦会議で挙げられた敵航空兵力の確認が取れていない。

恐らく大神も、同様に敵航空兵力についての対処を考えているのだろう。

でなければ、軽空母に対潜メインの艦載機ではなく、対空にも重きを置いた艦載機を載せてはいない。

 

そして――、

 

そう響が思った直後、艦載機による索敵を行なっていた瑞鳳から連絡が届く。

 

「みんな、隊長! 敵航空兵力を発見したわ!」

「やはり居たか。神通くん、響くん、君達の艦隊は?」

 

瑞鳳の連絡は大神にも行なわれていたらしい。

大神から、2艦隊の状況を問う連絡が入る。

 

「こちら、神通です。対潜第一艦隊は合流中」

「こちら、響。対潜第二艦隊も合流中だよ」

「敵航空戦力との距離は?」

「対潜第一艦隊とは二戦闘区域、対潜第二艦隊とも二戦闘区域離れています。あ、敵空母にヲ級改flagshipを確認、戦艦タ級flagshipもいます!!」

 

瑞鳳から悲鳴交じりの報が届く。

ヲ級改、戦艦のflagship、どちらかが居るだけでも突破は難解、両方となると尚更だ。

だが、ここを力づくに回避したところで、敵航空戦力を捨て置いたとしたら後詰の大神たちに負担を後回しにするだけ。

ならば、自分達の行なう事は一つ、敵兵力を討つしかない。

 

「分かった! なら、第一、第二艦隊は即時合流。合流後、予定通り敵航空兵力確認時の戦力の再編成を行なう! 第一艦隊の暁くん、叢雲くんは対潜第二艦隊に編入!!」

「第一艦隊、了解しました!」

「一人前のレディとして、了解したわ」

「しょうがないわねぇ、分かったわよ」

 

大神の声に第一艦隊の面々の声が届く。

 

「代わりに第二艦隊の千代田くん、瑞鳳くんを対潜第一艦隊に編入する!」

「第二艦隊、了解」

「やった、おねえと一緒だ!」

「了解しました」

 

続いて、第二艦隊の了承の声が届く。

これで第一艦隊には軽空母が4隻。ヲ級改といえども引けはとらない。

 

「再編成後、第一艦隊は敵航空兵力を叩いてくれ! 第二艦隊は敵航空兵力と行動を共にしているであろう敵主力潜水艦の排除を!」

 

大神の連絡が終わると共に、第二艦隊の面々が集ってくる。

 

ここからが、本当の戦いだ。

 

 

 

 

 

艦隊再編成

 

対潜1   神通 千代田 瑞鳳 千歳 祥鳳 那珂

 

対潜2   響  吹雪  暁  叢雲 川内 五十鈴




完全対潜MAPって、1-5と同じくらい早い登場だったので、この頃は対潜装備揃ってなかった人って多かったんじゃないかな。

その割には途中に空母と戦艦が居るのがかなり辛い敵構成でしたね。

自分は駆4軽1航戦1で無理矢理抜けていきましたが、大破撤退上等な自分達と一発勝負で負けられない大神さんでは構成も変わってくるのではないかと。

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