艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第八話 8 観艦式 前編

秋雲の同人誌を見てぶっ倒れたさくらたちに、怪訝な顔をする大神。

おかしい。

女の子が気絶するような過激な内容なんて、自分が読んだところまではなかった筈。

後半には一体どんな内容が描かれているのだろうか。

 

「あー、ちょっと待って、大神さん! それはまた後で、二人っきりのときに!!」

 

大神が同人誌の後半を読もうとしているのを察して、止めようとする大神。

というか、二人っきりの時に読ませてどうするつもりだったんだ秋雲。

 

「これは……!?」

 

大神は同人誌の後半を読んで絶句する。

R-18行為が乱発し、卑猥な言葉が乱れ飛ぶ。

秋雲を責めたてる大神、大神の欲望をけなげに受け止める秋雲。

やがて絶頂を迎える二人。

だが、大神のモノはいきり立ったままで、今度は秋雲が大神に奉仕を始める。

 

加山や他の悪友と春画展などを見に行ったことがあった為、多少の免疫はあった大神だが、この内容はそれでも過激だ、描写が緻密で変にリアルすぎる。

大神には過激すぎる。

頭に血が上って、一瞬クラッとする大神。

 

秋雲を見ると、不安半分、期待半分の瞳で大神を見ていた。

ドン引きされることを、嫌われることを恐れているのだろうか。

それとも何かを期待しているのだろうか。

 

まさか、さっき見た同人誌のような行為を? されることを?

 

「いやいやいや、そんなことあるわけが無い」

 

首を軽く振ると、深く深呼吸して邪念を追い払う大神。

3回ほど深呼吸する頃には、気分も落ち着いた。

だが、これだけは聞かねばなるまい。

 

「まさか同人誌って……」

「えーと、2割くらいはこんな本だよ」

 

おおう、と天を仰ぐ大神。

 

「とすると、艦娘の本も……」

「えへへ、艦娘の方は2割よりちょっと多いくらい」

「……一応確認させてくれ秋雲くん、艦娘の相手役って――」

「今年の夏コミはぶっちぎりで大神さんだよ! 前はね、ブラック提督とかによる陵辱ものもあったんだけど、華撃団になってから無くなっちゃったみたい! 絵師仲間にも聞いてみたけど、大神さんと艦娘の恋愛ものが最有力だよ、よかったね!」

 

自分と艦娘の恋愛話が、大量に溢れかえると言うのか明日は。

しかも、その2割強はさっき読んだようなR-18本。

艦娘の陵辱ものなんて冗談ではないけれど、だからと言って正直あまりよくない。

 

「アッキ~、さっきの話本当デースか? 明日は私と隊長がフォーリン・ラブするような本もあるのデースか?」

「うん、あると思うよ」

「Yeah! 明日はコミケに行かない手はありまセーン!」

「秋雲さん、じゃあ私と大神くんの本は……」

「鹿島さんは有明の女王って言われるくらい絵師界隈じゃ人気だし、大神さんとの仕官学校時代のエピソードも広く知られているから、たぶん一番多いんじゃないかな?」

「本当っ! 大神くん、明日は一緒に見て回りましょうよ、うふふっ!」

 

年増呼ばわりされて落ち込んでいた金剛と鹿島だが、明日のコミケ事情を聞いて復活した。

 

「それで大神さん、コミケのことはともかく、この子達のことはどうするんだい?」

「あ……」

 

観艦式の時間まであまり時間はないし、自分達が関係者席まで送っていくのは流石に問題がある。

どうしたものかと大神が考えていると、米田や山口、一馬が大神を訪れた。

 

「やっぱり大神の所にいたか、ん、何で気絶しているんだ?」

「いやー、それは、あはは……」

 

まさか、R-18本を読ませて気絶させたとはいえない大神。

 

「まあ、いいか。そろそろ観艦式の時間だからな。これ以上いても流石に邪魔になるだろう? 席に連れて行くぜ」

「そうですね、そうしていただけると助かります」

 

気絶したすみれたちを軽々と抱え上げる一馬たち。

大神の楽屋を立ち去っていく。

 

「それじゃあ、観艦式、気張ってやれよ」

「了解しています。無様は勿論晒しませんよ」

 

 

 

 

 

明かりが落とされ人で渦巻く西1ホール。

観艦式の開催は、コミケ開催と同じく午前10時。

そのため人の移動は、どの列よりも最速で行われた。

企業ブースに行くことよりも、1日目のサークルの同人誌よりも、艦娘を見ることを選んだ人々がその時をいまや遅しと待ちわびている。

 

そんな中二人の艦娘の姿がステージ上に上がる。

赤城と加賀だ。

 

周囲から歓声が上がるが、二人は人差し指を立てて「しー」と歓声を静める。

十分に静まったことを確認すると、二人は観艦式に伴う注意事項を読み上げていく。

 

その内容は、イベント、コンサートなどでよく言われる注意事項と同じだ。

 

「以上のことが守られない場合、退場処分などもありますのでお気をつけください」

「最悪、艦娘の砲撃による直接処分もありえるわ。気分が高揚するのは分かるけど、程々に」

 

それはむしろご褒美だ、と一瞬どよめく会場。

だが、二人はそのどよめきを無視して、

 

「「それでは!――」」

 

と大きな声を放つ。

 

ちょうどその声にあわせて、コミケと観艦式の開催アナウンスが為される。

拍手で両イベントの開催を歓迎する人々。

 

 

 

拍手が鳴り止むと同時に赤城がステージ脇のデスクへと移動する。

 

「改めまして自己紹介を。本観艦式の総合進行を勤めさせていただきます正規空母 赤城です。皆さん宜しくお願いいたします」

 

ペコリと頭を下げる赤城に再度歓声が上がる。

 

「観艦式第一陣、入場!」

 

赤城の言葉に合わせ、艦娘たちがステージ上に登壇し、更にセンターステージへと歩いていく。

 

第一陣は加賀、天龍、龍田、長良、五十鈴、名取、利根、筑摩、蒼龍、飛龍、吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、磯波、伊勢、日向、大井、北上、古鷹、加古、飛鷹、隼鷹、鹿島、大淀である。

 

艦娘が登場するたびに沸き返る会場。

 

全ての艦娘はセンターステージにて周囲を見渡すと、一言、そしてワンポーズを取る。

再びそのたびに会場は沸き返る。

 

例えば加賀は、

 

「私達のために西1ホールをこれだけ埋めていただけるとは、流石に気分が高揚します」

 

と言って、ポーズをとった。

普段無表情な加賀がポーズをとったことに歓声が上がる。

 

 

 

有明の女王、鹿島が登壇したときは文字通り狂ったかのような熱狂した歓声が投げかけられた。

 

「ありがとうございます、うふふっ」

 

そう言ってひらひらと手を振りながらセンターステージへと移動する鹿島。

センターステージの近くの席にいた鹿島ファンなどは、涙を流して喜んでいる。

 

『でも、私の身も心も、もう全て大神くんに捧げてしまったんです、ごめんなさいね」

 

その一言にどよめく会場。

 

「あ、あら? どうしたのかしら」

「鹿島さん、喋ってます、爆弾発言喋ってます!!」

 

次にセンターステージに向かう予定だった大淀が慌てて、鹿島にツッコミを入れる。

 

「あらら、どうしましょう。ついっ♪」

「鹿島さん、わざとでしょう! 皆さん、大神さんは私達にそういう事はされていません! ご安心ください!!」

 

大淀の発言に、それはそれで、どよめきが走る。

つまり艦娘も、大神も、フリーということなのか。

自分達にもチャンスがあると言うことなのか。

 

ごく少数ではあるが、艦娘や大神にガチで恋しているガチ恋勢などは、その言葉に大きく歓声を上げる。

 

その他にも、艦娘百合派や、大神BL派なども歓声を上げている。

 

「もうっ、ここで周知の事実にしたかったのに」

「しなくて結構です! ああ、もう私、自分の台詞忘れちゃったじゃないですか!?」

 

センターステージでそんな様子でじゃれあっている二人。

 

だが、このまま放置すると進行に問題を来たす。

そう判断した赤城は二人の間に矢を一本放つ。

 

「きゃあっ!」

「きゃっ!」

 

すぐ横を通り抜けた矢に冷や汗を流す二人。

 

「鹿島さん、大淀さん、退場処分に致しますよ」

 

笑っていても目が全く笑っていない。

今の赤城に逆らうのは危険だ、そう判断した二人はおずおずとメインステージに戻るのであった。

でも、ぶっちゃけ大淀はとばっちりである。

 

全員がメインステージに横並びになって揃う。

 

「観艦式第一陣、礼! 退場!」

 

一礼を行い、第一陣がメインステージから降りていく。

 

次は歌唱任務の時間だ。




全員に順番に一言ずつ喋らせるのも単調かなと思い、敢えて抜粋としています。

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