「君達二人もその決意は変わらないんだね?」
俺は目の前に立つ二人のシスター、スピカとエレンの二人に確認した。
「が、がんばります!」
「わたしも頑張ります。」
二人の決意のまなざしに俺も一つ頷いて決心した。
「わかった。今から二人とも俺の部下だ。」
「はい!!」
その言葉に二人は力強くうなずいた。
アウストラリス領に修道院を移設して数か月した今、
「死ぬ!死ぬ!死んじゃう!」
悲鳴をあげながらヴァリエール公爵夫人の放つ魔法を避けていた。だが、時々かすっているらしく数分したら、服がボロボロになっていた。
本当に何でこうなっているんだろう?ヴァリエール公爵夫人がやって来て俺とスバル、デネボラ、アクベンス、スピカとエレンに訓練をつけるという名目で俺達を拉致ってきたのだ。
「カウス君!がんばって!」
「カウス!がんばって!」
たまたま練習を見に来ていたカトレア様にルイズちゃんの声が重なった。
その横で、
「………強すぎるよデネボラさん。」
「………まさか、2対1で負けるなんて。」
「私の場合、鍛えているから。それに、二人かがりとはいえ、
エレンとスピカがデネボラ相手に模擬戦をしていた。
「カウス君。あの金色の鎧は何ですか?」
「アレは
「クロス?」
聞きなれない言葉に首を傾げるヴァリエール公爵夫人。
「えぇ。ここから遠方の地にアテナという戦女神がいて、その女神とともに邪悪なものを討つべく戦う
それを聞いたヴァリエール公爵夫人はしばし黙考して口を開いた。
「カウス君。スバル君。」
『はい。』
ヴァリエール公爵夫人の言葉に同時に返事をする。しかし、
「二人で模擬戦をしてください。ただし、スバル君だけクロスを着てください。」
『は?』
続くヴァリエール公爵夫人の言葉に再び同時に間の抜けた声をあげた。
えっと、このババアは人に無理ゲーをやらせる気か?
「来い!
スバルの言葉に黄金の牡牛が現れる。
「これが星座を模したという意味なのですね?」
「はい。星達に線を引いて出来た図形に肉付けして出来たものが星座です。」
そう言っていると、
「若。正直に申し上げますと俺は若を傷つけたくは無いです。」
うん。それは、俺も同じだ。
「しかし、コレは訓練ですから、全力で行きます。」
参ったな。こりゃ、覚悟決めなきゃいけないかな?
そう決心して、腰を落として重心を低く構える。
「だりゃあぁぁぁぁッ!!!!」
叫びながら、スバルに拳を繰り出す。
「………痛い。」
流石、本物の
「
スバルは苦笑しながら腕を組み、ルーンを唱える。
それに対して俺も杖を取り出しルーンを唱える。
「インフィニティー・ブレイク!」
10本の風の矢を放った直後、右に跳ぶそこを、
「グレート・ホーン!」
高速の衝撃波が俺が放った風の矢を吹き散らしてさっきまで俺がいた場所を貫いた。
「あ、危ない。」
「その安堵が命取りですぞ?若?」
その言葉通り、スバルはすでに迫っていた。スバルが振り下ろすその一撃を半歩ズレてかわす。さらに繰り出す蹴り技をしゃがんでかわし軸足を蹴るが、
「痛ぅ。お前の足は丸太かよ?」
巨木のような安定感を見せ、転ぶどころか、微塵の揺らぎすらも見せなかった。かえって蹴った足が痛いぐらいだ。
「ホントに無理ゲーをやらせる気だよ?」
呟いて、杖を構える。
「グレート・ホーン!」
高速の衝撃波を左に避け、インフィニティー・ブレイクを射つが
「グレート・」
その言葉にとっさにスバルに蹴り、その反動で距離をとる。
「ホーン!」
「エア・ハンマー!」
スバルの攻撃が風の槌を破壊する。
「うわぁっ!!!!」
グレート・ホーンをもろにくらい吹き飛ばされる。エア・ハンマーをぶつけて威力を多少は殺せたらしい。
「くぅっ。」
呻きながらも何とか立ち上がる。そこに、
「グレート・」
スバルが追い打ちをかけようとする。避けれる余裕はなし。かといって、エア・ハンマーではグレート・ホーンは防げない。やはり、ここは、道理を足蹴にして、無理を押し通すまで!そう決心して、呼びの杖を取り出す。
「ホーン!」
「エア・ハンマー!」
使う魔法は先程と同じエア・ハンマー。しかし、今度のコレは一味違う。呼びの杖を使った。2発同時だ。二つの魔法が重なり、スバルの衝撃波とぶつかる。
「「キャアッ!」」
その威力が四散し、その拍子にカトレア様とルイズちゃんの悲鳴が響いた。
「見えてきそうなんだ。牡牛の角の攻略が。」
「なら、行きます!」
そう宣言して腕組みして構えるスバル。それに対して、俺も二本の杖を構える。
「グレート・ホーン!」
「エア・ハンマー!」
衝撃波と風の槌がぶつかり合い、衝撃波を引き裂いてスバルを吹き飛ばした。その瞬間に行動に出る。
「くッ!まさか、本当に攻略されるとは!って、若がいない!」
立ち上がったスバルの口から驚きの声が漏れる。
「ここだ!タウラスの角をもらうぞ!インフィニティー・ブレイク!」
「甘い!グレート・ホーン!」
一本までに収束した風の矢を放つより早く、地面にグレート・ホーンを放ち、土煙を上げさせた。そのせいで正確に狙いをつけられなかったのか、土煙の中から黄金の闘牛がこちらに背を向ける形で飛び出した。
「そっちこそ!
フライで肉薄しながら、杖を振り上げる。
「
おかしい。と何かが警鐘をかき鳴らしているけど、その正体に気づかず、杖の表面に焔を圧縮して出来た蒼白い炎の剣をヘッドパーツの角目掛けて振り下ろした。
「何ッ!!!!」
角どころか、ヘッドパーツが吹き飛ぶ。それだけではなかった。ボディパーツが、レフトアームパーツが、ライトアームパーツが、レフトフットパーツが、ライトフットパーツがカシャンと音を立ててその場を離脱して、牡牛のオブジェ形態に戻る。しかし、
「スバルがいない!」
そうそこには
「グレート・ホーン!」
マズイ!慌て振り返るよりも、先程よりも遅く、威力の弱い衝撃波が俺の意識を刈り取った。
「痛ぅ。」
呻いて目を覚ます。何やら頭の下に柔らかいものがあるような?
「起きた?」
安堵したかのようにルイズちゃんが問いかける。そこで漸く俺がルイズちゃんに膝枕されている事に気づいた。
そばには、何故か、カトレア様が羨ましそうに見ていた。
「起きましたか?カウス君。体の様子は大丈夫でしょうか?」
俺に模擬戦をするように仕向けたヴァリエール公爵夫人も心配していたらしい。声に安堵の色が含まれている。
「大丈夫です。ご心配お掛けしました。」
「それなら、良いです。それよりは聞きたい事があるのですが。」
「あ、私もです。」
「俺もだ。スバル。」
申し訳なさそうに身を固くしているスバルに目を向ける。
「スバル。アレは俺の弱さが原因だからスバルが気を病むな。それより、いつの間に
『フェイク・パーシ?』
聞いた事の無い名前に皆が首を傾げている。俺もあの脱衣は思いつかなかったし。
「あぁ。今、思いついて、ぶっつけ本番で試して見たんです。」
今、思いついたって、天才か?
「カウス君が知りたい事を聞きましたし、こちらの番ですよね?」
「ハイ。すみません。」
「では、スバル君は杖を構えていたようには見えませんでしたが?」
「
その解説に、納得したのか、ヴァリエール公爵夫人。ちなみに俺がやったんじゃないぞ?俺は、ラインだし。
そこにルイズちゃんからの質問が来た。
「さっきの魔法、私達を助けてくれた時より弱いみたい。」
「あぁ。
「それって反則じゃない?高い守備力を持っている上にラインでも、スクウェアになれるんでしょ?」
「でも、デメリットも有る。ラインがスクウェアスペルを扱うということは消費する精神力もスクウェアメイジの4倍になるんだ。」
なるほど、と納得したのかルイズちゃんは何も言わなくなった。その代わりなのか、カトレア様が挙手した。
「はい?何ですか?」
「カウス君の属性は水と土だって聞いているけど風も使えるのね?」
ゲ!そういえば!そうだった!無理ゲーやらされて忘れてた!
「………ここにいる皆だけの秘密にしてください。」
俺の言葉にカトレア様はクスクスと笑っていた。しかし、次の瞬間、倒れてしまった。
「カ…ト……レア?」
俺の呟きがその場に響いた。